はいからさんが通る

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はいからさんが通る』(はいからさんがとおる)は、大和和紀による日本漫画。また、これを原作として製作されたアニメおよび映画、舞台の演目、テレビドラマである。

作品概要[編集]

大正時代を主舞台とし、設定年代当時の様々な民間風俗や漫画連載当時のサブカルチャー(『宇宙戦艦ヤマト』、『科学忍者隊ガッチャマン』、『ロッキー・ホラー・ショー』、『ゴジラ』シリーズなど)を由来としたギャグなどを取り混ぜながら大正デモクラシーシベリア出兵関東大震災を駆け抜けて結ばれる一組の男女とそれをとりまく人々の恋愛模様を描くラブコメ作品。

週刊少女フレンド』(講談社)に1975年7号から1977年10号まで連載された(本編は1977年の7号まで。8・9・10号は番外編)。番外編を含めコミックス全8巻、文庫版全4巻が出版されている。

1977年(昭和52年)度、第1回講談社漫画賞少女部門受賞。

連載中より、いくつかの他メディア化が実施・放送された。これらの版では、尺の関係もありストーリーが原作の結末まで描かれたことはなく特に伊集院忍シベリア出兵後の経緯が大幅に省略されることが多い。

1978年6月3日から1979年3月31日まで、日本アニメーション製作の連続テレビアニメ版が、朝日放送(ABC)を制作局としてテレビ朝日系で放送(全42話)。当初は1年間の放送予定であったが、番組打ち切りによる終了の影響で、ストーリーが最後まで描かれることはなかった。

1979年KTVで連続ドラマ化。キャストには宝塚歌劇団の生徒が起用されている。

1987年南野陽子を主演とし、東映による製作・配給で実写映画版が公開。

その後、1985年4月15日 CX月曜ドラマランドで単発ドラマ化(約90分)、2002年1月2日には TBS系で新春特別番組として単発ドラマ化(約120分)。

2017年より大和和紀画業50周年を記念し、劇場版アニメが前後編二部作で制作・上映予定。この劇場版アニメでは各メディア作品では初めて、原作のストーリーを最後まで用いて描く構想になっている(詳細は#劇場版アニメの節を参照)。同年10月に宝塚歌劇団によるミュージカル版も公演される予定[1]

本作を体現する最もわかりやすい言葉が、平塚らいてうの『青鞜』創刊号所収の文(創刊の辞)の冒頭、「元始女性は太陽であつた。真正の人であつた。今、女性は月である。他によつて生き、他の光によつて輝く。」。本作では女学校時代から番外編まで、この言葉が重要な鍵となっている。

補足[編集]

作中に登場する跡無女学館は跡見学園がモデルとされている。また紅緒の勤務先の冗談社も名前その他を本作の出版元である講談社に由来しており、作中では紅緒が講談社の社歌を歌ってごまかす場面も存在する。

雑誌連載時に掲載誌に広告が掲載される部分は、単行本では雑談や「みことば(御言葉)」等が掲載されるコーナーとなった。また、作品内の元ネタ紹介や近況報告等が多い中、本編最終巻(単行本では第7巻)ではコーナー自体が作者の「ありません」宣言を受け休止した事がある[注 1]。同コーナーでの作者の自画像は長丈スカートのセーラー服を着用して、咥え煙草の時もある。また所持している薙刀は時として死神の鎌等の小道具に変化する場合がある。

実写作品は配役の都合と時代考証の観点から、主要キャラクターである伊集院忍少尉の設定が純粋な日本人(原作では日本国籍を持つ日本と東ドイツ人のハーフ。母がドイツ人であるため)として変更されることが多く、役者も「純粋な日本人らしく見える者」を起用している。

あらすじ[編集]

時は大正。「はいからさん」こと花村紅緒は竹刀大槍を握れば向かうところ敵なし、跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘。ひょんなことから知り合ったハンサムで笑い上戸の青年将校・伊集院忍が祖父母の代からの許嫁と聞かされる。忍に心ときめくものを感じながらも素直になれない紅緒は必死の抵抗を試みて数々の騒動を巻き起こす。伊集院家に招かれ、花嫁修業をすることになった紅緒だったがそこでも相変わらず騒動を起こしてゆく。しかし、やがて紅緒と忍はお互いをかけがえのない存在と思うようになるのだが、非情な運命によって引き裂かれてしまう。

忍の戦死の公報が届いたことにより、未亡人同然となった紅緒は没落しかけた伊集院家を支えるべく働きに出る。上司の青江冬星に支えられながら雑誌記者となった紅緒だったが、革命に揺れるロシアから亡命したミハイロフ侯爵の姿に我が目を疑う。侯爵は容姿・性格ともに亡くなったとされる忍に瓜二つであった。忍を忘れ去ることなど出来ぬまま、それでも力強く生きる紅緒の姿に女嫌いの青江も心動かされる。

やがて明らかになる真実。忍を恋慕いつつも、皆の幸せのため紅緒の下した苦渋の決断。そしてその先に待ち受ける運命とはいかに。

登場人物[編集]

キャストはアニメ/劇場版アニメ2017/テレビドラマ/劇場版ドラマの順

花村紅緒(はなむら べにお)
声・演 - 横沢啓子/早見沙織/三田寛子/石川梨華/南野陽子
主人公。17歳→22歳。跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘で生まれついての騒動屋。特技は剣道槍道で、忍とも互角に渡り合う。自他共に認める酒乱で、時々酒を飲んではよくトラブルを巻き起こし懲りる。大好物はつくね。家事全般は苦手。劣等生だが英語は得意。「洗濯板」等と揶揄される体型だが、実は際立つほどの美人である[注 2]。黙っていれば外見は愛らしく、その気立ての良さと芯の強さから、忍のみならず蘭丸や青江、鬼島からも好意を寄せられる。母親が早世し、男手一つで育てられた。当初は忍に反感を持っていた。次第に忍が気になり、後には心底愛するが、自身の起こした騒動がもとで忍が左遷・シベリア出兵させられ、伊集院家も巻き込んだ悲劇を辿るという憂き目を見る。
気丈にも髪を切り落とし、母の形見(白の喪服)で葬儀に出席し、忍亡き後の伊集院家を支え続ける決心をする。家計を支えるため働きに出ることを決意し、紆余曲折を経て冗談社に入社する。女嫌いの編集長・青江にしごかれ雑誌記者として成長を遂げてゆくが、運悪く反政府運動家の疑いをかけられ投獄される。持ち前の度胸とマイペースな性格で刑務所暮らしも乗り切り、青江やミハイロフ侯爵の奔走もあって無事釈放される。侯爵の正体が判明し動揺するが、他に身寄りのないラリサのことを思い身を引く。苦しいときの支えとなってきた青江からのプロポーズを受け入れ、大正12年9月1日に挙式するが、未曾有の大災害に巻き込まれる。
最終回で運命の人と結ばれ、番外編では一児の母。なお体型は全編通してほとんど変わらなかった。
伊集院忍(いじゅういん しのぶ)
声・演 - 森功至/宮野真守/野口五郎/沢村一樹/阿部寛
紅緒の許婚陸軍歩兵少尉。普段は朗らかで優男と見られがちだが、皮肉屋で笑い上戸。交際が広く、社交界の花形として女性に人気がある一方、高屋敷のような文人たちとのつき合いもある。伊集院伯爵の息子と東ドイツ人女性の間に生まれたハーフであり、祖父母に育てられた。両親の結婚は許されず、母親は夫と引き裂かれた後ロシア貴族に嫁ぎ、父親は自分を捨て外国で他界した。祖母のたっての願いを断り切れず、許嫁と会うべく花村家を訪ねる途中で木から落ちてきた紅緒を助けた。ハイカラを毛嫌いしているせいで、当初は紅緒をからかってばかりいた。健気で可愛げもある紅緒に惹かれ、大切な女性と思う。
軍人としては気骨もあるが派手な容姿故に誤解を受けることが多い。部下の為に命を賭ける勇敢さも持ち合わせている。それが禍してシベリアで消息を絶ち作戦行動中行方不明、やがて引き揚げて来ていた部下により忍の戦死の報せが届く。
藤枝蘭丸(ふじえだ らんまる)
声・演 - 杉山佳寿子/梶裕貴/未登場/未登場/未登場
花村家の隣に住む、紅緒より1歳下の幼馴染。歌舞伎女形役者。美少年。女性的で大人しい性格故に、お転婆な紅緒には振り回されがちであったが、小さいときから彼女に片思いしている。彼もトラブルメーカー。忍の戦死後、紅緒から実家に戻るよう諭され泣く泣く役者稼業に戻った。歌舞伎座に取材に行った紅緒と再会し、その後もなにかと手助けする。紅緒を一途に想い続けるが、弟分としてしか見られなかった。
番外編で紅緒と性格が正反対な女性と恋に落ち、交際に反対する堅物の兄と悪戦苦闘を繰り広げるが、最後にとんでもないオチが待っていた。
北小路環(きたこうじ たまき)
声・演 - 吉田理保子/瀬戸麻沙美/未登場/吉澤ひとみ/篠山葉子
紅緒と同じ女学校に通う親友。華族出身で忍の幼馴染。成績優秀で美人。進歩的な思想を持ち、女性解放運動に傾倒しているせいで、紅緒とは違った意味での問題児だった。密かに思いを寄せる忍と紅緒の関係を知らずにそれぞれと仲良くしていたが、二人が許嫁と知って激しく動揺するが、忍の気持ちを知ると身を引いた。
女学校卒業後は新聞社の婦人記者となり、モダンガールを地で行く。冗談社に入った紅緒と再会し、公私にわたって仲良く付き合う。後に鬼島と出会い、育ちの違いから反発しながらも次第に惹かれて行く。

花村家[編集]

元は武家屋敷で平屋建ての日本家屋。

花村(はなむら)少佐
声・演 - 永井一郎/石塚運昇/未登場/伊武雅刀/河原崎長一郎
紅緒の父。陸軍少佐で忍の上官。旗本の子孫。妻に先立たれてからは男手一つで紅緒を育ててきた。紅緒のお転婆ぶりを時に叱りつつも、娘の真っ直ぐな思いを認める良き父親である。堅物故に妻の亡き後は独り身を通していたが、吉次に一目惚れする。娘同様の酒乱の気がある。なお本編では名前が不明のままだった。
ばあや
声・演 - 鈴木れい子/同左/未登場/未登場/千石規子
花村家の家事を取り仕切る老婆。アニメ版および映画版での役名は「あごなしばあや」。いまだに島田髷を結っており、肥満体で顎がなく目も星印であることが多い。紅緒の素行には手を焼いており、如月とは意気投合していた。紅緒が諸々の事情で伊集院家を出た際には紅緒が「暇を出された」と嘆き悲しんだ。

伊集院家[編集]

伯爵家で忍の実家。西洋建築のお屋敷で広大な庭が広がる。

伊集院伯爵
声・演 - 宮内幸平/麦人/未登場/御木本伸介/丹波哲郎
忍の祖父。ハゲ頭にヒゲ、頭の固い頑固者。時代錯誤な言動と行動で騒動を起こすご老体。肥後もっこすの矜持を持つ薩摩藩藩士明治維新の頃は倒幕のために戦っていた維新志士。幕府方士族の娘である紅緒に当初は嫌悪感を隠さず、事あるごとに衝突していたが、その感情が伯爵夫人への愛の証である事がわかり和解する。素直に認めていないが、紅緒の真っ直ぐな性格を気に入っている。忍の戦死後、世間知らずであることが禍して親類に財産を騙し取られ、伊集院家は没落してゆく。後に諸々の事情から紅緒が伊集院家を出て行こうとした際には責任を感じて腹を切ろうとした。
伊集院伯爵夫人
声・演 - 峰あつ子/谷育子/吉行和子/風見章子
忍の祖母で公家出身。紅緒の祖父と恋に落ちるが、明治維新で敵味方に分かれたため、「いつか2つの血をひとつにしよう」と誓い合って別れる。おっとりした雰囲気の穏やかな老婦人。息子同然の忍を溺愛、紅緒のことも気に入っていた。忍の戦死を聞かされ倒れて以来、すっかり体が弱る。一時は危篤状態に陥るが、紅緒の機転で持ち直した。
如月(きさらぎ)
声・演 - 山田礼子/一城みゆ希/根岸季衣/野際陽子
伊集院家の奥女中。伊集院家にやってきた紅緒のがさつな態度にあきれ、厳しい花嫁修業を施そうとする。後に紅緒の理解者となり、忍の戦死後、他の使用人たちが暇を出される中、一人残って紅緒とともに伊集院家を支え続ける。紅緒が伊集院家を離れたときは涙ながらに見送った。酒乱の気があり、牛五郎に惹かれている。
牛五郎(うしごろう)
声・演 - 増岡弘/三宅健太/未登場/未登場/柳沢慎吾
二の腕の金魚の刺青と怪力が自慢の車屋(人力車引き)。駆落ち中の紅緒たちに絡むが、叩きのめされて子分を志願する。紅緒に負けるまで喧嘩で負けたことがないと豪語していた。紅緒を「親分」と呼び、女だとは思っていない。伊集院家にも押しかけで出入りするようになり、紅緒を支える。「金魚の牛五郎」の通り名を持つ。
天丸&地丸
忍の愛犬。天丸が無垢で地丸が黒と白。忍の他にはあまり懐かなかったが紅緒には懐いた。初対面の筈のミハイロフ侯爵には懐いたため、彼が忍であるという疑惑が深まる。

狸小路伯爵家[編集]

亡命したミハイロフ侯爵夫妻が身を寄せた西洋建築の屋敷。

サーシャ・ミハイロフ侯爵
声・演 - 森功至/未発表/未登場/未登場/未登場
ロシアの貴族。ドイツ人であった忍の母親・エリナが再婚相手のロシア人貴族との間にもうけた子供。忍とは異父兄弟。ロシア革命の後、革命軍の追跡を逃れ妻のラリサとともに日本に亡命してきた。容貌は忍とうり二つで、出会った紅緒は激しく動揺する。紅緒に対して思わせぶりな発言をしつつ、なにかと助力していた。後に自ら正体を明かす。
ラリサ
声・演 - 小山まみ/未発表/未登場/未登場/未登場
ミハイロフ侯爵の妻で、ロシア革命を逃れて日本に亡命してきた。重大な秘密を隠しており、夫に近づく紅緒を快く思わない。その体は結核に蝕まれており、余命幾ばくもない。
物語を大団円に導くキーパーソンであるが、読者の憎まれ役
エリナ・ミハイロブナ(ミハイロフ夫人)
忍とサーシャの母親でドイツ人。結婚が許されず忍の父と別れた後、先代ミハイロフ侯爵の妻となりサーシャを生んだ。ロシア革命を逃れてサーシャ夫妻と共に逃亡し、日本にいる忍を頼ろうとしたものの、二人とはぐれる。満州で山賊に襲われて行き倒れていたところを馬賊時代の鬼島に発見され看取られた。
狸小路(たぬきこうじ)伯爵
声・演 - 水鳥鐵夫/未発表/未登場/未登場/未登場
ロシアから亡命したミハイロフ侯爵夫妻を自宅に受け入れた人物。見た目は信楽焼の狸そっくりで紅緒からからかわれる。取材を口実にミハイロフに近づこうとした紅緒を快く思わず、以後も妨害を続ける。

冗談社[編集]

青江が経営する零細出版社。社員は紅緒とつめ子を入れてもたったの6人。三流雑誌「冗談倶楽部」を発行している。壁には毎週妙な標語が貼られている。連載作家も併記する。

青江冬星(あおえ とうせい)
声・演 - 井上真樹夫/櫻井孝宏/未登場/未登場/田中健
社長兼「冗談倶楽部」編集長。紅緒が真っ青になるほどの美男子。母は遊び好きの浪費家で、冬星を身ごもりながら冬星の父と別れ、銀行家に嫁いでいる。そのことから母を始めとする全ての女性に対し不信感を抱くあまり女性アレルギーになった。唯一女性を感じさせない紅緒に恋心を抱くようになるが、紅緒の心の中から忍が消えない限り土足で踏み込むような真似はするまいと決めている。
合併騒ぎで会社経営が傾いた際には紅緒たちの奮闘で凌いだものの、後に伊集院家を救うために信念を曲げる。
番外編では渡仏して紅緒にそっくりな不良少年と知り合うエピソードが語られた。38歳で没した。
作者によれば平安時代を舞台にした作品「ラブパック」の主役カップル、菜の君と疾風(かぜ)の子孫である。
袋小路つめ子(ふくろこうじ つめこ)
冬星の見合い相手。冬星に一目惚れするが、冬星が見合いを断る理由にと紅緒を紹介したことから、紅緒に対抗して冗談社の押しかけ社員となる。一応良家のお嬢様らしいが、空手4段・合気道3段という猛者であり、歩くと地面が揺れ、泣くと壁が崩れるなど、冬星からは「女ばなれどころか人間ばなれ」と評される。
高屋敷要(たかやしき かなめ)
忍の親友。文士崩れであだ名は「快傑ライオン丸」。忍曰く口は悪いが根はいい奴とのことだが、初対面の紅緒を見て忍をロリコン呼ばわりした。美人に弱く、環に思いを寄せていたがまったく相手にされていなかった。実は純文学を標榜する人気作家。登場当初はゲストキャラ的扱いで伊集院家のパーティの客の一人の新進気鋭の新人作家として登場し、物語に関わるキャラになったのは後年。その為に本来なら紅緒とは面識があるはずだったが、忍の戦死扱いが原因で二人の距離が大きく離れた為にお互いすっかり忘れ去り、さらに要の方は軍人嫌いになった。冗談社が経営不振に陥った際、紅緒が原稿依頼に行ったものの前述の理由でまったく相手にされず、環の説得でようやく執筆を承諾した。要の人気もあって冗談社は持ち直したものの、彼の自宅には思想犯も出入りしていた為に、それが原因で紅緒が絶体絶命の窮地に陥ることになる。
江戸川端散歩(えどかわばたさんぽ)
声・演 - 永井一郎/未登場/未登場/未登場/未登場
冗談社の編集者となった紅緒が担当した作家。見た目は吸血鬼ドラキュラそのもの。ノリが良く、奇行癖がある変人だが気さくな面もある。代表作は「廃人二十面相」。

帝国軍人[編集]

鬼島森吾(おにじま しんご)
声・演 - 安原義人/中井和哉/未登場/未登場/本田博太郎
忍が小倉連隊(歩兵第14連隊)へ転属になったときの部下。隻眼で左の頬には十字傷のある強面。階級は軍曹。彼を中心とした小隊は「兵隊やくざ」として鼻つまみ者となっていた。当初はエリート将校である忍に対し反感を持っていたが、彼のさばけた性格と外見に似合わぬ男気が気に入り親しくなった。忍と共にシベリアに出兵したが、忍が鬼島を助けようとして敵兵に斬りつけられる(その場面を見た部下が引揚げ後に伊集院家及び紅緒に忍戦死を報告する事になる)。鬼島自身帰還することが出来ず、共に戦死したものと思われていた。
辛うじて生き長らえた鬼島はそのまま軍を抜け脱走兵となり、自分たちを見捨てた日本軍への憎しみを抱き、満州馬賊の頭目となった。彼の率いる一団は「黒い狼」の名で恐れられるようになる。日本軍を狙っては暴れ回っていたところ、現地に取材に来ていた紅緒と賊らしい形で出会い、そこで紅緒が忍の話にあった許嫁本人と知る(名前だけは忍から聞いていたので知っていた)。後に、忍のことを想い死のうとした紅緒を救っている。恩人の婚約者とは知りながら紅緒に惹かれ、後に馬賊を解散して日本に戻り、伊集院家の居候となる。サーシャと忍の母・エレナの最期を伝えるため狸小路伯爵家を訪れた際、ミハイロフ侯爵の正体をいち早く確認するが本人の希望で黙っていた。しかし、苦しむ紅緒を見ていられなくなる。同じく紅緒と忍を複雑に見守ってきた環と知り合い、当初は反目するものの次第に惹かれ合う。
番外編では、少年時代に大人の女性に淡い恋心を抱き、左目を失うことになった事故について描かれた。また、彼の不器用な優しさを改めて知った環と歩む未来が暗示されている。
作者によれば『科学忍者隊ガッチャマン』で人気のあったキャラクター、コンドルのジョーがモデルである。
印念(いんねん)中佐
声・演 - 肝付兼太/をはり万造/未登場/未登場
陸軍中佐で紅緒の父や忍の上官。尊大かつ陰険で私怨を忘れない性格、かつ顔立ちと風貌が特徴的[注 3]。酒場で酒乱の紅緒と喧嘩になり、その怨恨から忍を戦地に追いやるため小倉連隊への左遷を働きかけた。後に大佐に昇進し、満州の駐在武官に赴任したが、紅緒と鬼島達の襲撃を受け、その際の死の恐怖から発狂して廃人となる。
大河内(おおこうち)中将
声・演 - 未登場/中博史/未登場/未登場/未登場
陸軍中将で忍や花村少佐の上官。第一師団長。温厚で理解のある人物。しかし、印念の謀略で忍が小倉連隊に左遷されたときは、紅緒の懇願も空しく命令を覆すことは出来なかった。後に投獄された紅緒をある人物の依頼で救った。セリフに「アヤヤ」「オヨヨ」という言葉が混ざるのは大河内傳次郎の口癖を模したものである。なお後年の作品『紀元2600年のプレイボール』にネタキャラとして登場している場面がある。

その他[編集]

花乃屋吉次(はなのや きちじ)
声・演 - 増山江威子/伊藤静/未登場/未登場/松原千明
柳橋芸者で、やくざ者をも一喝して退ける気丈な美女。忍の戦友の内縁の妻だったが、夫が第一次世界大戦で戦死し、自殺を図ったところを忍に救われる。忍に好意を寄せていたが、紅緒と知り合い早くから彼女のよき理解者となる。一時、芸者修行をしていた紅緒の面倒をみていたが、軍人の客とトラブルを起こしたため、紅緒に旧知の青江冬星が経営する冗談社を紹介した。後に花村少佐に好意を寄せられるようになり、震災に際して命懸けで助けた花村と結ばれた。
羅鈍のお定(らどんのおさだ)
投獄された紅緒が知り合った女囚で牢名主。顔を継ぎ合わせたような傷跡[注 4]が特徴。新入りながら傍若無人な紅緒をシメようとするが返り討ちにされた。後に出所して花村家に押し売りに来た際に紅緒と再会。嫌がらせのため花村家に居座る。花村少佐に一目惚れしてつきまとうがフラれた。どもり症で上手にしゃべれない。

書籍情報[編集]

当初は少女フレンドコミックスとして単行本化された。

講談社コミックスデザート版 全8巻
講談社漫画文庫版 全4巻

2016年12月より新装版が順次発刊予定。

画集[編集]

連載終了直後に他作品のイラストも含めた画集が発売された。テレビアニメ版の放送に合わせて再版されている。

  • フレンドDELUXE 特選カラーイラスト集 大和和紀の華麗なる世界 はいからさんが通る
    • 1976年9月10日初版発行 講談社

イメージソング[編集]

TVアニメ版と前後して新派で舞台化された際に、主演の水谷良重が歌うイメージソングもフィリップス・レコードから1978年7月に発売された(FS-2096)。ジャケット裏には大和和紀の直筆メッセージが掲載されている。

  • 「はいからさんのラブ・ソング」(3分50秒)
  • 「はいからさんが通る」(2分54秒)
    作詞:大和和紀 / 作曲:中村泰士 / 編曲:槌田靖織 / 歌:水谷良重

テレビアニメ[編集]

1978年6月3日から1979年3月31日まで、朝日放送(ABC)を制作局としてテレビ朝日系で放送された(全42話)。当初は1年間の放送予定であったが、原作中盤時点(シベリア出兵に従軍した忍が、記憶喪失となりロシア貴族として帰国した時点)で、放送が打ち切り終了となり、原作の結末である関東大震災後の大団円まで描かれていない。

1980年代は日本テレビ(関東ローカル)で、2003年にはNHK-BS2で再放送が行われた。2000年代にはCS放送アニマックスファミリー劇場でたびたび全話放送が行われ、2010年代も2012年1月他局系のCSテレビ局・フジテレビTWOでの放送が行われている。

2016年12月21日に全話収録のDVD-BOX及びBlu-rayBOXがワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメントより発売された。

横浜の放送ライブラリーでは第1話「紅緒は花の十七才」の閲覧が可能である。また、角川が一時期運営していたYoutubeのアニメ無料配信チャンネル「AniChan」でも同話を公式扱いで公開していた時期がある。

テレビアニメ版の中途での打ち切りにより、後の代表作『あさきゆめみし』他数作が、何度かアニメ化の話があったが原作者サイドが断っている[要出典][注 5]

原作者の大和和紀によるとテレビアニメ版が放送されていた時間帯にモスクワオリンピックの中継を編成することが決まり、急遽打ち切りが決まったという。大和自身はテレビアニメ版の製作には直接タッチしていなかったが、打ち切りが決まった時点で残りが10回から3回分に減らされたことから協力を仰がれた。しかし、テレビアニメ版のストーリーの進展が原作の半ば部分だったことから大和自身もどうすることもできず未完という形で放送を終了することとなった。この件を重く見た製作元の日本アニメーションは大和に何度か完結編の製作を持ちかけたが、完結編兼リメイク版の製作が始動したのはテレビアニメ版の終了から38年後のことだった[2]

キャスト(テレビアニメ)[編集]

スタッフ(テレビアニメ)[編集]

主題歌(テレビアニメ)[編集]

放送リスト[編集]

話数 サブタイトル 絵コンテ 作画監督
1 紅緒は花の十七才 よこよこお 田代和男
2 おさらば駈落ち 吉田浩 水村十司
3 恋の二日酔 高垣幸蔵 永樹龍博
4 浅草どたばたオペラ 松浦錠平 田中英二
岸義之
5 それいけ見習い花嫁 熊瀬哲郎 田代和男
6 かりそめのウエディングマーチ 吉田浩 田中英二
水村十司
7 伯爵さま! ごめんあそばせ 高垣幸蔵 田中英二
8 泣きません勝つまでは 吉田浩 田中英二
西城隆詞
9 初めての胸のときめき 田中英二
岸義之
10 召しませ愛の特効薬 田代和男
11 ようこそ嘆きの園遊会(パーティー)へ 田中英二
水村十司
12 踊れ! 悩ましの美少女?! 熊瀬哲郎 田中英二
西城隆詞
13 恋は思案の帆かけ舟 吉田浩 田代和男
14 思い乱れて花二輪 馬越彦称 田中英二
岸義之
15 さようなら古きものヨ 高垣幸蔵 永樹龍博
16 いざさらば落第花嫁 吉田浩 田中英二
水村十司
17 さすらいの花びら 田中英二
西城隆詞
18 恨み買いますご用心 藤原真理
19 つかの間の幸せ 田中英二
水村十司
20 相合傘のお二人は? 高垣幸蔵 永樹龍博
21 命みじかく悩み果てなく 吉田浩 田中英二
岸義之
22 散る花咲く花恋の花 高垣幸蔵 富永貞義
23 きのう天国、きょう地獄 吉田浩 田中英二
西城隆詞
24 陸軍さん許せない! 田代和男
25 行かないで! 少尉 富永貞義
26 女らしく! お酒をやめて 高垣幸蔵 永樹龍博
27 赤い夕日のシベリアで 馬越彦称 田中英二
水村十司
28 男の戦い女の戦い 吉田浩 田中英二
西城隆詞
29 硝煙弾雨のシベリアで 田中英二
岸義之
30 花と散る少尉の最後! 田代和男
31 ああ涙もかれ果てて 富永貞義
32 黒髪きって捧げます よこよこお
大滝勝之
田中英二
水村十司
33 明日に向ってまっしぐら 吉田浩 永樹龍博
34 芸者紅千代こんばんは 田中英二
西城隆詞
35 美しき嘘 富永貞義
36 泣いて笑って初月給 田中英二
岸義之
37 いとしの少尉いまいずこ 田中英二
水村十司
38 馬賊恋しや少尉どの 山崎勝彦 永樹龍博
39 流れ流れて馬賊の詩 よこよこお 田中英二
西城隆詞
40 少尉は生きてる心の中に 吉田浩 田代和男
41 飛行船で飛んできた人 田中英二
岸義之
42 嗚呼! 大正ろまんす 田代和男
富永貞義

劇場版アニメ[編集]

劇場版 はいからさんが通る
前編 〜紅緒、花の17歳〜
後編 〜東京大浪漫〜
監督 古橋一浩(前編)
加瀬充子(後編)
脚本 古橋一浩
原作 大和和紀「はいからさんが通る」
出演者 早見沙織
宮野真守
音楽 大島ミチル
撮影 荻原猛夫(グラフィニカ
制作会社 日本アニメーション
製作会社 劇場版「はいからさんが通る」製作委員会
配給 ワーナー・ブラザース映画
公開 日本の旗 2017年11月11日(前編)
2018年(後編)
上映時間 97分(前編)
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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大和の画業50周年の一環として、テレビアニメと同じく日本アニメーションが前・後編の二部作で制作、順次公開予定[3]。『劇場版 はいからさんが通る 前編 〜紅緒、花の17歳〜』は同年11月11日[注 6][4]、『劇場版 はいからさんが通る 後編 〜東京大浪漫〜』は2018年公開予定。

概要で前述したとおり、テレビアニメ版では描かれなかった原作のラストエピソードまでがアニメ化される。監督は前編を『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』などの古橋一浩が担当。後編は『リストランテ・パラディーゾ』などの加瀬充子が担当。

キャスト(劇場版アニメ)[編集]

スタッフ(劇場版アニメ)[編集]

主題歌(劇場版アニメ)[編集]

夢の果てまで」(前編)
作詞・作曲 - 竹内まりや / 編曲 - 増田武史 / 歌 - 早見沙織

実写映画[編集]

1987年12月12日に東映より公開。

キャスト(実写映画)[編集]

スタッフ(実写映画)[編集]

  • 企画 - 植田泰治
  • プロデューサー - 稲生達朗、河瀬光(東映)、河井真也(フジテレビ)
  • 原作 - 大和和紀
  • 脚本 - 西岡琢也
  • 音楽 - 萩田光雄大谷和夫
  • 音楽プロデューサー - 石川光
  • 音楽事務 - 新井明美
  • 撮影 - 大町進
  • 美術 - 高橋章
  • 照明 - 篠崎豊治
  • 録音 - 宗方弘好
  • 編集 - 中野博
  • 助監督 - 三輪誠之
  • 進行主任 - 杉崎隆行
  • 記録 - 高津省子
  • 撮影効果 - 吉岡健一
  • 音響効果 - 原尚
  • 背景 - 植田泰明
  • 装置 - 開米慶四郎
  • 装飾 - 小原昭
  • スタイリスト - 金丸照美(ICA)
  • 衣裳 - 東京衣裳
  • ヘアーメイク - アートメイク・トキ、奥村弘子
  • 刺青 - 霞涼二
  • 擬斗 - 岡田勝
  • 監督助手 - 山仲浩充、岡田周一、光石冨士朗
  • 撮影助手 - 勝倉米明、山本一成、中川克也
  • 撮影効果助手 - 佐藤信一
  • 照明助手 - 石丸隆一、矢島俊幸、岡秀雅、石川英行、中島淳司
  • 録音助手 - 渡辺一夫、佐原聡
  • 美術助手 - 山崎秀満、原田恭明
  • セット付 - 貫井健二
  • 装飾助手 - 松宮廣之、永野洋、小谷恒義
  • 音響効果助手 - 須田良三
  • リーレコ - 岡村昭治
  • 編集助手 - 椎名信明
  • ネガ編集 - 橋場恵
  • スチール - 原田大三郎
  • 宣伝 - 第四宣伝企画室
  • 制作宣伝 - 石井薫
  • 演技事務 - 福岡康裕
  • 製作進行 - 市山隆治、岡英祐
  • 現像 - 東映化学
  • 監督 - 佐藤雅道

主題歌(実写映画)[編集]

はいからさんが通る」 作詞:小倉めぐみ/作曲:国安わたる/歌:南野陽子

テレビアニメ版で使用された楽曲とは全く異なる。

同時上映[編集]

ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎狂騒曲

TVドラマ[編集]

1979年版 / 連続番組[編集]

宝塚テレビロマン・はいからさんが通る』として、宝塚歌劇団の団員の出演で1979年4月7日より1980年8月30日まで関西テレビで放送された。宝塚歌劇では珍しい、テレビ用のオリジナルミュージカルだった。

肖像権及び権利上の関係から再放送や映像ソフト化は行われていない。

演出・脚本
キャスト

1985年版 / 単発番組[編集]

フジテレビ版。

キャスト
スタッフ
  • 脚本:
  • 演出:福田真治
  • プロデューサー:中曽根真弓
  • 技術協力:東通
  • 制作:フジテレビ、泉放送制作

2002年版 / 単発番組[編集]

TBS版。『モーニング娘。新春! LOVEストーリーズ』の一つとして放送された。

キャスト

関連項目[編集]

  • 反地球 - 番外編「はいからさんがこけた」に登場する空想上の地球。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 作中で「未曾有の大災害(関東大震災)が発生した」との展開とその後のネタバレを避けるための休止である。
  2. ^ 鬼島からは「ちんくしゃ」「ナインペターン」、伊集院伯爵夫人からは「おじいさまにそっくり」、環からは「ジョン・デンバーまっつぁおの丸顔のくせに」と評される。なお作中ではその他に彼女の風貌や外見、特に胸に対する各種の悪口が散見される。
  3. ^ 作中で誰もが彼の人相に関して、「らっきょうを逆さにしたような顔で、陰険そのものの目付きに、富士山型のおちょぼ口、とどめが恐怖の点々まゆげ」という言葉を用いる。なお途中で遮られる事も多く、明確に最後まで言い切ったのは紅緒と牛五郎のみ。
  4. ^ 紅緒からは国鉄の地図のようだと評された。
  5. ^ 『あさきゆめみし』に関しては2009年にフジテレビの深夜アニメ枠・ノイタミナでのアニメ化が進められたが、諸般の事情により最終的にはオリジナルアニメ作品『源氏物語千年紀 Genji』として放送された。詳細は当該項目先を参照。
  6. ^ 当初は出典にあるとおり、前編を2017年2月3日に公開予定であったが、同年3月、正式に公開日の順延が発表された。

出典[編集]

外部リンク[編集]

ABC制作 テレビ朝日 土曜19時台前半のアニメ枠(1978年6月 - 1979年3月)
前番組 番組名 次番組
はいからさんが通る
関西テレビ制作 土曜18時台前半枠(1979年4月 - 1980年4月)
前番組 番組名 次番組
ザ・タカラヅカ
宝塚テレビロマン・はいからさんが通る
OH!タカラヅカ
フジテレビ 月曜ドラマランド(1985年4月15日)
前番組 番組名 次番組
はいからさんが通る