飛地

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飛地(とびち、飛び地)とは、一つの国の領土や行政区画の内、地理的に分離している一部分である。土地の一部が「他所に飛んでいる」と見られることからこう呼ばれる。

地図上黄・赤色は東ティモール。大部分を占める黄色の場所とは離れた赤色の場所(オエクシ)が飛地にあたる。

概説[編集]

イタリアの一部(カンピョーネ・ディターリア、地図中央)がスイスに囲まれた場所に「飛んでいる」

Aの領域がA以外の領域によって、複数に分断されている状態にあるとする。Aの主要地域以外のその他の領域が飛地である。ある領域を飛地と呼ぶかどうかは、その行政単位の地形政治交通などの状況によって判断される。もっとも、その判断も意見が分かれることがしばしばある[1][2]。以下に、ケースごとの飛地について概説する。

飛地が内陸部で他の行政単位に完全に囲まれているケース

ある行政単位Aに対して、別の行政単位Bが近傍に存在しているとする。そこで、Bの内部領域にAの領域が存在し、かつ、そのB内部のAの領域が完全にBの領域で囲まれているとき、その囲まれた領域はAの飛地である。このケースに限っては、ほとんどの者がこれを飛地と認め、そのことには異論がないことが多い[2]。なお、ここでは仮に、本土と飛地を分断する行政単位を単一のBとした。が、本土と飛地を分断する行政単位は複数であってもよい。例えば、行政単位Aに対して、複数の行政単位BとC(及びD、E、F…)の領域によって分断された飛地もある。これは以下のケースでも同様である。日本和歌山県北山村が例として挙げられる。Googleマップ

本土と飛地が同一の地に所属し、飛地が水域に面しているケース1

ある行政単位Aが、同一の地に複数の領域をもつとする。そして、Aの本土は内陸にあり、一方で、Aの本土以外の領域が水域に面しているとする。かつ、それらのAの複数の領域が、別の行政単位Bの領域によって分断されているとする。そのとき、Aのこれらの領域は、本土と飛地の関係にあるといえる。この場合も、上記と同じく多数の者が飛地であると認める事が多い。パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区(本土)に対するガザ地区(飛地)が例として挙げられる。Googleマップ

本土と飛地が同一の陸地に所属し、飛地が水域に面しているケース2

前述のケース1と似ているが、ある行政単位Aが、同一の陸地に複数の領域をもつとする。そして、それらのAの複数の領域について、本土を含めたすべての領域が水域に面しているとする。かつ、それらのAの領域が、別の行政単位Bの領域によって分断されているとする。このときも、上記と同じく、Aの複数の領域は、本土と飛地の関係にあるといえる。しかし、この場合は、飛地と呼ぶかどうかについては議論の余地がある場合が多い[1]。例えば、アメリカ合衆国におけるアラスカ州は飛地であると判断されることが多い。Googleマップ 一方で、同じ条件を満たすトルコイスタンブルがあるトラキア地方は、本土と海峡を介して近接しており、飛地とはみなさないことがある。Googleマップ

本土と飛地が水域で分断されているケース

上記のケースに当てはまらず、本土と飛地が同一の陸地に所属しないケースである。これが飛地かどうかについては、微妙なケースである。以下にさらにケースを細分化する。

ある行政単位Aが、複数の島にわたって複数の領域をもつとする。そのとき、Aの所属するある一つのにおいて、その島に存在する行政単位がAだけの場合は、その島は飛地と呼ばれることはまずない。例えば、広島県廿日市市における厳島東京都における伊豆大島などは飛地ではない。Googleマップ

上記の通り一般的に島は飛地ではない。しかしながら、その島に複数の行政単位の境界線が通っている場合は、飛地となり得る。具体的には、ある島の対岸に、複数の行政単位AとBが存在するとする。AとBが、その島にも領域を有しており、その島内にそれらの境界線が引かれている場合は、飛地の可能性がある。例えば、大阪府関西国際空港の空港島とそれを分断する対岸の自治体(泉佐野市田尻町泉南市)は、空港島をめぐって交通が分断されていることもあって、飛地を構成しているといえる可能性がある。Googleマップ また、瀬戸内海において岡山県香川県の県境で分断された井島なども、場合によっては飛地とみなされることもある[2]Googleマップ

上記の通り境界線を持つ島は飛地である可能性がある。しかしながら、島に境界線がなくても、飛地となる可能性もある[2]。この場合は島である必要はなく、本土と海峡などによって分断されているだけの領域も含まれる。例えば、茨城県猿島郡境町は、利根川北岸が本土であるが、町の境界線が利根川を越えて南岸側にもかかっている。この境町の利根川南岸の領域は、飛地と呼べる可能性がある。Googleマップ しかしながら、仮定の話ではあるが、もしも、この利根川南岸の領域が、本土となどで連絡した場合は、これを飛地として扱うかは意見の分かれるところである。一方で、逆に、橋ができたが故に、飛地とみなされる可能性が出た例もある。長崎県松浦市には、福島という島がある。福島には境界線はなく、上記の原則にあてはめれば、飛地ではない。しかし、1967年に福島と佐賀県伊万里市に間に橋がかけられた。これにより、松浦市の本土から福島へは、伊万里市を通らねばならなくなったため、福島は松浦市の飛地と呼べる可能性がある。Googleマップ なお、2008年時点で、陸路・海路とも、福島と伊万里市を結ぶ交通手段はあるが、福島と松浦市は直接結ばれていない[2]

二重飛地

主に上記の「飛地が内陸部で他の行政単位に完全に囲まれているケース」などの飛地において、発生しうる現象が、二重飛地である。ある行政単位Aの飛地が、A近傍の別の行政単位Bの領域の内部にあるとする。このBの内部にあるAの飛地のさらに内部に、Aの飛地に囲まれたBの領域が存在する場合がある。その場合、このBの領域は「飛地に周囲を囲まれた飛地」であり、二重飛地と呼ばれる[2]。例としては、大阪府・兵庫県大阪国際空港内における、豊中市内部にある池田市の飛地の内部にある豊中市の二重飛地などがある。Googleマップ

飛地ができる要因[編集]

封建制下においては、同一の君主の所領が各所に分散していることは珍しくなかった。国民国家形成の際に旧来の領邦の境界を引き継ぐこともあり、その際に領土や行政区画に飛地が残ったという事例がヨーロッパ・インド・日本に多いようである。

その他の要因としては以下のようなものがある。

上記のようにして形成されたものの多くは、飛地と呼ばれる。しかしながら、飛地が植民地である場合には、領土という観点では飛地であっても、飛地と呼ばないのが普通である。例えば、かつてのインドイギリスの飛地であるとはいえない[1]

上記のように、飛地は生成される一方で、解消されたり、再生成されたりする動きもある。例えば、日本では、住居表示の実施、土地区画整理等に伴う行政区画の変更、市町村合併などにより、飛地は次第に解消される場合もあるが、合併交渉の破綻により細分化される事例もある。


国家の飛地[編集]

過去に飛地だった地域[編集]

行政区画の飛地[編集]

以下に挙げる飛地はあくまで代表的な例であり、これ以外の小さな飛地は多数存在する。

アメリカ合衆国[編集]

大韓民国[編集]

  • 京畿道安山市大阜島
    • 周囲は京畿道始興市華城市仁川広域市甕津郡。もともとは京畿道甕津郡の所属であったが、1995年に甕津郡が仁川広域市に編入された際に生活圏の関係で仁川広域市への編入ではなく京畿道への所属を選択したため(安山市への編入は1994年12月26日)。なお、安山市の中心部に行くには始興市など他の都市を通らなければ行くことができない。
  • 仁川広域市江華郡
    • 橋でつながっている先は京畿道金浦市。もともとは京畿道所属であったが、1995年に仁川広域市へに編入されたため飛地になった。
  • 大邱広域市達城郡多斯邑、河濱面
    • 1981年7月1日慶尚北道達城郡月背邑、城西邑が大邱直轄市(現・広域市)に編入されたため。1995年に達城郡は大邱広域市に編入されたが多斯邑、河濱面の飛地状態は解消していない。
  • 全羅北道完州郡伊西面

中華人民共和国[編集]

ドイツ[編集]

日本[編集]

市町村合併(平成の大合併)による飛地事例[編集]

いずれも非隣接自治体同士が合併したための飛地である。飛地になる予定も含む。

既合併・既編入[編集]
見た目は飛び地ではないものの、実質的な飛び地[編集]

合併によるその他の飛地[編集]

  • 北海道檜山振興局管轄区域
    • かつて檜山支庁に属していた熊石町が、渡島支庁八雲町と2005年10月1日に合併。これに伴い、檜山支庁の管轄区域は2つに分断(離島を除く)された。組織変更により檜山支庁管轄域はそのまま檜山振興局に引き継がれている。

合併以外の事情により発生した飛地[編集]

過去に飛地だった地域[編集]

合併により解消された飛地[編集]
合併以外の事情により解消した飛地[編集]
赤色で示された区域が2004年時点の桜島赤水町。本体は左下、新島は右上の島である
  • 鹿児島県鹿児島市桜島赤水町新島
    • 桜島の北東部沖にある島で、2004年の市町村合併までは桜島町大字赤水字新島であり鹿児島市東桜島地区とは行政連絡船で接続されていたが、桜島町には直接接続できなかった。2004年11月1日の合併(桜島町の鹿児島市編入)により、自治体の飛地は解消した。自治体としての飛地解消後も、桜島赤水町は桜島南西部(本体)と桜島北東部(新島)があり、飛地となっていたが、2006年平成18年)2月13日に桜島赤水町より新島の区域が新島町として独立し、町丁の飛地も解消した[10]

自治体単位の飛地[編集]

郡部単位の飛地[編集]

日本における郡部単位の飛地を参照。

江戸時代の藩の飛領[編集]

対馬府中藩
本領の対馬が地理的に稲作耕作が困難な土地であった為、以下の飛領を持っていた。
肥前国基肄郡養父郡松浦郡の各一部
筑前国怡土郡の一部
豊前国宇佐郡下毛郡の各一部
下野国都賀郡安蘇郡の各一部

フランス[編集]

ボスニア・ヘルツェゴビナ[編集]

ドイツ[編集]

過去に飛地だった地域[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c 吉田一郎 『世界飛び地大全-不思議な国境線の舞台裏』 社会評論社、2006年ISBN 978-4784509713 
  2. ^ a b c d e f 浅井建爾 『日本列島飛び地の謎』 廣済堂出版、2008年ISBN 978-4331513477 
  3. ^ ロバーツ岬
  4. ^ a b c d 飛地の生成には太閤検地が絡んでいる。詳細は大阪国際空港#空港建設以前を参照のこと。
  5. ^ 飛び地のように見えるが、道路一本で市境はつながっている。(地図
  6. ^ これら4箇所の飛地は、市域確定時に該当する土地の所有者が住んでいた市に帰属したため。朝日放送ムーブ!「ムーブ!の疑問」より
  7. ^ a b c 詳細は大阪国際空港#空港建設以前の補足記事を参照のこと。
  8. ^ 関西国際空港#北側連絡誘導路を参照のこと。
  9. ^ ただし、現在でも浅子町・小佐々町から佐世保市中心部へ最短距離で移動するためには、佐々町を経由しなければならない事情は変わらない。
  10. ^ 平成17年鹿児島県告示第1871号(町の区域の設定及び変更)

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]