ゲリマンダー

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ゲリマンダー(英語:Gerrymander)は、選挙において特定の政党や候補者に有利なように選挙区を区割りすることをいい、本来的にはその選挙区割りが地理的レイアウトとして異様な場合を指していう。

目次

概説 [編集]

サラマンダーになぞらえられているエリアが一つの選挙区を構成する
2004年のアメリカ合衆国下院議員選挙区の例。イリノイ州4区では、シカゴを取り囲むヒスパニック系住民の多い2つの地域を高速道路1本で繋いだ異様な形をしている

1812年、アメリカ合衆国マサチューセッツ州の当時の知事エルブリッジ・ゲリーが、自分の所属する政党に有利なように選挙区を区割りした結果、幾つかの選挙区の形が奇妙なものとなった。そのうちのひとつがサラマンダーの形をしていたことから、ゲリーとサラマンダーを合わせた造語・ゲリマンダーが生まれた(左絵参照:サラマンダーになぞらえられているエリアが一つの選挙区を構成する)。

米国下院選挙では、選挙区の一票の格差を人為的に拡大することによって特定の政党や候補者に有利な選挙に導くことは難しい。一方で、米国では階級・民族・人種の違いで居住区が分かれており、その違いが投票傾向に反映される傾向が強い。このため地域と投票傾向に相関性があり、小選挙区制における選挙区割りを操作することにより投票結果を操作することが可能となり、特定の政党・候補者を有利にすることができる。

例えば、市民権運動以降においてマイノリティであるアフリカ系候補者を当選させるために、地理的には散在する黒人の多い地域を人工的に一選挙区にまとめることでアフリカ系議員の当選を図るなどの措置がとられた例がある。このように、複数の特定エリアを一つの選挙区に包含しようとする場合、選挙区割りは異様なものとなりがちで、各選挙区をつなぐ回廊に当たる部分が細く長くなり、ゲリマンダーの一つの典型となる。

一選挙区から一人しか当選しない小選挙区制を採用している場合には、特定の政党に投票する傾向の強い地区を分割し、相対的に多数が別の政党に投票する傾向のある選挙区に吸収させることで、特定の投票を無効化することができる。主要政党が合意の下で互いにそれぞれの候補に有利になるよう選挙区を分割することで安定選挙区を作り出し、毎選挙における流動性を低下させることが企図されることがある。

日本 [編集]

日本では、中選挙区制が歴史的にとられていたこともあり、一つの選挙区の規模が大きかったことから、その区分けは大まかなもので市町村の地理的区分けに従ってなされ、恣意的な区分けを行う余地はもともと少なかった。そのため、元来の意味でのゲリマンダーはほとんど発生しなかったが、一票の格差の拡大や、選挙制度そのものの改定を指してゲリマンダーと呼ばれることもあった。

これまで衆議院選挙に小選挙区制を導入しようとした際に、小選挙区制度の導入そのもの、ないしはその区割りにおいて、与党に有利な制度を導入しようとしているとして、野党などを中心にゲリマンダーであると批判された。

マスコミなどは、その当時の有力者や内閣総理大臣の名の一部を冠して床マンダー床次竹二郎)、ハトマンダー第3次鳩山一郎内閣)・カクマンダー第2次田中角栄内閣)などと揶揄した。

1994年以降、衆議院の小選挙区の区割りを策定するにあたっては衆議院議員選挙区画定審議会が法律で決められた小選挙区数に照らし合わせて行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行った選挙区区割り案を内閣に勧告した後で、内閣から提出された選挙区区割り案が国会で審議されることが慣例となっている。

ゲリマンダーの手法 [編集]

選挙区割りを変えることで一方の側に有利な選挙結果を生み出す例。左図の区割りでは、4つの選挙区とも赤党と青党が均衡している。この区割りを右図のように変えることで、3つの選挙区で青党が勝利し、赤党は1区だけしか勝てないよう操作できる。

ゲリマンダーの手法としてはまず、一票の格差を意図的に上下させることが挙げられる。例として、地方保守層が主な支持層の場合などは、都市部の一選挙区当たり有権者数を大きくすることで、都市部の一票を薄める手法が用いられる。

一票の格差を用いずに、特定の政党に有利な区割りとして用いられる手法の例としては、特定の政党の支持者が多い地域を統計的に明らかにし、対立政党の支持者が多い地域をなるべく少数の選挙区に詰め込んでしまうことにより、それらの選挙区での勝利をあきらめるかわりに、それ以外の選挙区で自党がギリギリ勝利するようにする方法が挙げられる。つまり、自党が敗北する選挙区では自党支持者の死票を最小限に抑え、自党が勝利する選挙区では対立候補の死票を最大限に増やすように区割りする。このため、自党と対立政党との間の、得票から議席への変換効率に差が生じ、各党の議席占有率を操作することが出来る。

例えば、二大政党の選挙で有権者が10万人、内訳として与野党の支持者が5万人ずついるエリアを、有権者が2万5000人ずつの4つの小選挙区に分割する場合、与野党で2議席ずつを分け合うのが自然である。しかし、1つの選挙区に野党支持者を2万5000人集中させることができれば、その選挙区では完全に敗北するものの、残りの3選挙区の有権者には、与党支持者があわせて5万人いて、野党支持者があわせて2万5000人しかいないことになるため、残りの3議席を与党が全て獲得することを期待できる。

この理は、一番極端な場合で、有権者が16万0008人として、与党支持者が6万0006人、野党支持者が10万0002人の場合にも同様に適用でき、そのときには、3/8の支持を得ているに過ぎない与党が6議席(与党支持者1万0001人に対し野党支持者1万人)、5/8もの支持を得ている野党が2議席(与党支持者0人に対し野党支持者2万0001人)となる。しかも、各選挙区の有権者数は2万0001人と平等であり、一票の格差は見られない。

すなわち、選挙区割りをコントロールすることができる政党が、実際の支持者の割合と乖離した有利な結果を得ることができることになる。小選挙区で政党が二つしかなく、片方の政党が選挙区割りを完全にコントロールできる場合、一票の格差を用いなくても、片方の政党の議席占有率を支持率の2倍近くにすることができる。

関連項目 [編集]

区割り
選択・意思決定