併合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

併合(へいごう、: Annexation)は、ある国家領土の一部または全部を、合意により他国が譲り受けること[1]主権の完全移行を伴わない占領保護国保護領化、租借とは区別される。政治の分野でいう併合は、離散的な分割の逆と捉えるか、連続的な分離の逆と捉えるかで含む範囲が異なる。類義語としては、統合合併統一合体などがある。

武力を背景とした一方的な現状変更の場合、第三国が併合を違法且つ無効として承認せず、地図上では併合前の国境が用いられることもある。1968年のイスラエルによる東エルサレム併合や、1990年のイラクによるクウェート併合、2014年のロシアによるクリミア併合などでその例が見られる。

「併合」は、強い側の拡張主義や、強制的 / 片務的な意味合いが強いため、合併合邦統合統一などといった用語に置き換えられることがある。

併合の例(国際的に認められていないものも含む)[編集]

1949年以後[編集]

  • ウクライナ南東部
2022年9月にドネツィク州ルハーンシク州ザポリージャ州ヘルソン州ロシア編入。詳細はロシアによるウクライナ4州の併合宣言を参照。
  • クリミア
2014年3月にクリミア自治共和国セヴァストポリがロシアに編入。詳細はロシアによるクリミアの併合を参照。
  • ドイツ民主共和国
1990年10月3日ドイツ民主共和国が解体され、5つの州としてドイツ連邦共和国に編入。詳細はドイツ再統一を参照。
  • クウェート
1990年8月にクウェートイラクに併合され、カズィマ州と改称させられたが、米国を中心とする多国籍軍がイラクを撃退(湾岸戦争)し、再度独立を回復した。
  • 東ティモール
1976年7月17日インドネシア東ティモールを併合して第27州とするが国連ポルトガルが容認せず、また独立派のゲリラにより紛争になる。1999年には国連の協議の下で、インドネシアとポルトガルが併合に同意したが紛争が続く。2002年に独立。
  • 西サハラ
1975年スペイン領であった西サハラモロッコに併合。国際的には承認されず、また反モロッコのポリサリオ戦線が併合に抵抗する。1991年から国連の平和維持活動が始まったが紛争は解消していない。
  • ゴア
1961年にポルトガル領であったゴアインドに併合。
  • チベット
1951年[2][3]または1959年チベット中華人民共和国に併合[4][5][6]
  • エルサレム
第三次中東戦争でのイスラエルの占領区域のうちエルサレム東部が併合される。ヨルダン川西岸地区ガザおよびゴラン高原のイスラエルによる法的位置付けは、占領地のままとされる。

戦間期から第二次大戦[編集]

  • オーストリア
1938年オーストリアドイツに併合。詳細はアンシュルスを参照。第二次世界大戦の後に分離。
  • チェコスロヴァキア
1938年ミュンヘン会談を受けチェコスロバキアズデーテン地方がドイツに併合。後にドイツはチェコスロバキアを解体しベーメン・メーレン保護領およびスロバキア(被保護国)として勢力下に収める。詳細はチェコスロバキア併合を参照。
  • バルト三国
独ソ不可侵条約付属秘密協定に基づいたソビエト連邦の軍事圧力下において、1940年8月にエストニアラトビアリトアニアにおいて親ソ左翼政権が樹立。ソビエト社会主義共和国としてソビエト連邦に加入。
  • モルドバ
1940年6月、ルーマニアベッサラビアと北ブコビナがソビエト連邦に併合。ベッサラビアの大部分はモルダビア・ソビエト社会主義共和国(現・モルドバ)となり北ブコビナとベッサラビアの黒海沿岸部はウクライナ・ソビエト社会主義共和国に組み込まれた。
  • エチオピア
1936年5月、エチオピア帝国イタリアに併合(〜1941年)。

第一次大戦以前[編集]

  • 大韓帝国
1910年8月、大韓帝国日本に併合。詳細は韓国併合を参照。
  • ハワイ
1898年8月、ハワイ共和国アメリカ合衆国に併合。詳細はハワイ併合を参照。
  • 琉球王国
1879年3月、琉球王国が日本に併合。詳細は琉球処分を参照。
  • テキサス
1845年テキサス共和国がアメリカ合衆国に併合され、同時に26番目の州となる。詳細はテキサス併合を参照。
  • 東蝦夷地
1799年、東蝦夷地(北海道太平洋岸および千島)が公儀御料幕府直轄領、ただし仮上知)となる。詳細はアイヌの歴史を参照。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 字通,ASCII.jpデジタル用語辞典,世界大百科事典内言及, 日本大百科全書(ニッポニカ),デジタル大辞泉,世界大百科事典 第2版,普及版. “併合とは”. コトバンク. 2022年2月8日閲覧。
  2. ^ 防衛年鑑刊行会編『防衛年鑑 1960年版』防衛年鑑刊行会、昭和35年2月22日第1刷発行、169頁。
  3. ^ 別所裕介現代チベットの牧畜社会を対象とした 「家畜慣行の60年史」作成」『財団法人三島海雲記念財団研究報告書』第51巻、2015年、180頁。
  4. ^ 併合 - ブリタニカ百科事典, the Chinese annexation of Tibet in 1959.
  5. ^ 河合明宣「陸封された地域の「解放」―インド・アルナーチャル・プラデシュ州とブータン―」『ヒマラヤ学誌』No.13、2012年、303頁。
  6. ^ チベット併合の経済的成功を強調「人権侵害はデマ」]”. テレ朝 news (2019年3月28日). 2020年7月3日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]