防空識別圏

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青は日本、赤は中国、緑は韓国の防空識別圏

防空識別圏(ぼうくうしきべつけん、: Air Defense Identification Zone, ADIZ)とは、各国が防空上の必要性から領空とは別に設定した空域のことである。英称の頭文字から「アディズ」や「エイディズ」と呼ばれることがある。

防空識別圏では、常時防空監視が行われ、(通常は)強制力はない[1]が、あらかじめ飛行計画を提出せずここに進入する航空機には識別と証明を求める。さらに領空侵犯の危険がある航空機に対しては軍事的予防措置などを行使することもある。

民間航空機の航空での安全のために国際的に割り当てられ、各国が分掌管理する飛行情報区(FIR)とは異なる。

目的[編集]

空軍力への対抗[編集]

ワシントンD.C.の防空識別圏

自国の航空機が平和時に他国の防空識別圏内を飛行する場合には、事前に飛行計画を提出することで望まない偶発的紛争や軍事的緊張が高まるのを防ぐよう配慮されていると一般的には理解されている。ただ、この防空識別圏は国際法で確立したものではなく、領空領土の範囲を定めたものではない。

多くの国において領海は12海里に設定されており、他国機が領海上空の領空を侵犯してから領土上空に到達するまで、旅客機でも1分強、超音速軍用機であれば数十秒あれば可能であり、領空侵犯を確認してから対応するのでは手遅れになる危険がある。従って領空の外周の空域に防空識別圏を設定し、届けのない航空機が防空識別圏に進入した時点で戦闘機を向かわせて警告を行う。さらに領空侵犯が確認され、指示に従わない場合には空軍力による強制措置を含む対応がなされうる。そのためのスクランブルは、当該機が防空識別圏に進入する姿勢を見せた時点で行われることが多い。時に、防空識別圏に侵入した時点で軍事力を用いた措置をとる、あるいはとられるような誤解がされるが、上述の通り防空識別圏は自国の主権の及ぶ範囲ではなく、強制力を用いる法的根拠は全くない。

テロリズムへの対抗[編集]

ハイジャックした旅客機を地上のテロ目標と激突させる手法が用いられた9・11テロの後、米国メリーランド州ボルチモアワシントンD.C.にまたがる首都地域は、領空内の飛行許可を得ている民間航空機等の侵入をも絶対に許さない特別な防空識別圏を設けている。

日本国の防空識別圏[編集]

日本の防空識別圏(外側線内)

日本国の防空識別圏(JADIZ)は、防衛庁長官の定める「防空識別圏における飛行要領に関する訓令」(防衛庁訓令第36号)第2条第1項により定義されている。同訓令は、防空識別圏における自衛隊の使用する航空機の飛行要領を定めることにより、日本国の周辺を飛行する航空機の識別を容易にし、もって対領空侵犯措置(自衛隊法第84条)の有効な実施に資することを目的とするものである(同訓令第1条)。

日本国の防空識別圏は1945年にGHQが制定した空域をほぼそのまま使用しており[2][3]航空自衛隊の対領空侵犯措置の実施空域に指定している[要出典]。おおむね、他国との中間線付近に設定された外側線で囲まれる空域から、内側線(おおむね領海線付近を通っているものの、先島諸島大東諸島対馬能登半島の先端、佐渡島の一部、東京都三宅島以南、道東道北の一部などの領土は内側線の外に位置する。)によって囲まれる空域を除いた空域として規定されている。

なお、航空法第99条に基づいて国土交通省が提供する航空情報の一種である「航空路誌」(AIP)においては、有視界飛行方式により国外から防空識別圏を経て日本国の領域に至る飛行を行う場合、飛行計画航空管制機関に提出すること、事前に提出された飛行計画と異なる飛行を行う場合は航空交通業務機関および自衛隊レーダーサイトに無線通報することを要請している[4]。これはあくまで要請であって法的義務ではない。

脚注[編集]

  1. ^ 下記のワシントンD.C.の防空識別圏など、領土・領空内の識別圏には強制力があるものがある。
  2. ^ 第180回国会議事録 参議院外交防衛委員会 第9号 国会図書館
  3. ^ 【なぜ解きコリア】日本の領土なのに、竹島の上空を自衛隊機は飛べない? 産経新聞2011年8月15日
  4. ^ 国土交通省航空局発行『航空路誌』(AIP Japan)ENR 5.2 演習及び訓練空域並びに防空識別圏(2012年9月20日改訂)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]