地方公共団体

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地方公共団体(ちほうこうきょうだんたい)あるいは地方自治体(ちほうじちたい、英語: local governmentドイツ語: Gebietskörperschaft)とは、国家領土の一部を統治し、その地域における住民を構成員として、地域内の地方自治を行うために、法令で定めた自治権を行使する団体自治体)をいう。

日本の法律上の正式名称は「地方公共団体」ではあるが、通称では「地方自治体」とも呼ばれており、さらに短くして単に「自治体」と呼ばれることも多い。機能としては地方政府であり、たとえば市であれば英語で「city government[1]」、中国語で「市政府[2]」などと訳すことが一般的である。

概説[編集]

単位[編集]

一般的に、自治を階層別に分けると、「基礎自治体(市町村役場など)<広域自治体(県庁、州政府、地方王国政府など)」の順で大きくなる。底辺ほど数が多く、広域になるに連れて少なくなる。

以降でも述べる「単位系」においては、基礎自治体規模を規模を出張所規模をで示して区別する。

基礎自治体[編集]

都市村落、即ち「点」「コミュニティー」を範囲とする地方公共団体を基礎自治体という。単位系では、都市を、村落をとして分ける場合もあるが、「○○市」「○○村」を区別しない場合もある。尚、「○○市」「○○村」を区別せずに一括して扱う国家は、ヨーロッパに多く見られる。

広域自治体[編集]

(州)など、広い範囲を治める地方公共団体や、複数の基礎自治体が集まって構成される地方公共団体を、広域自治体という。「」「エリア」の概念となる。

単位の種類には、、県、道などがある。規模は「郡<県<道」の順に広くなり、は小さな広がりを、は大きな広がりを指す。規模が大きく異なる為、県規模と道規模の行政区画を区別する事が多い。

各国の地方公共団体概略[編集]

国ごとに地方公共団体の法的位置づけ、あり方、その数などは異なっている。

アメリカ合衆国[編集]

  • 単位系:共同体委員会 (ニューヨーク)、村 (バーモント州)市・町・村・郡区・非法人地域郡・州立大学・独立市州・居留地・地区・領土<中央政府:三層制

詳しくはアメリカ合衆国の地方行政区画を参考のこと。

出張所
基礎自治体
広域自治体

フランス[編集]

  • 単位系:コミューン地域圏<中央政府:三層制

フランスは、日本と同様に一般に中央集権国家と位置づけられているが、地方行政区画の単位は以下のように明快に整理されており、「国と地方は対等」という自負も強い。(※詳細は「フランスの地方行政区画」を参照。)

1982年に、フランソワ・ミッテラン政権下で地方分権法が成立し、知事官選制が廃止され、行政単位では地域圏が設置された。

基礎自治体
(首都でも村落でも、基礎自治体は全て「コミューン」と呼ばれる。コミューンの総数は約36000個にも上る。)
広域自治体

イタリア[編集]

  • 単位系:コムーネ<中央政府:三層制

イタリアは、1861年頃のイタリア王国成立以後、フランスに近い中央集権的な行政制度が見られる。財源は中央政府から地方公共団体に振り分けられる。

基礎自治体
(首都でも村落でも、基礎自治体は全て「コムーネ」と呼ばれる。コムーネの総数は約8100個。)
広域自治体
  • (provincia)
  • (regione)

スペイン[編集]

  • 単位系:ムニシピオ自治州<中央政府:三層制

スペインは中央集権的とされるが、1978年の憲法改正以後、自治州への地方分権が進んでいる。

基礎自治体
(首都でも村落でも、基礎自治体は全てムニシピオと呼ばれる。ムニシピオの総数は約8100個。)
広域自治体

大韓民国[編集]

  • 単位系:洞・邑・面・区市・郡・広域市特別市・道<中央政府:二層制

大韓民国は典型的な中央集権国家であるが、地方分権促進の動きもある。(※詳細は「大韓民国の地方行政区画」を参照のこと。)

基礎自治体
広域自治体

日本[編集]

  • 単位系:特別区(都)・市・町・村都・府・県<中央政府:二層制

数に着目すると、2001年(平成13年)1月26日の時点で、市が695、町が2,186、村が566、合計3,447だったが、その後市町村合併が進み、2011年(平成23年)11月11日の時点で、市が786、町が749、村が184、合計1,719になった。市を最も多く持つのは埼玉県、町を最も多く持つのは北海道、村を最も多く持つのは長野県である。

詳細は下の#日本の地方公共団体を参照のこと。

日本の地方公共団体[編集]

地方公共団体の意義[編集]

地方自治法上の地方公共団体[編集]

地方自治法上の「地方公共団体」には以下のような種類がある(地方自治法1条の3)。

このほか「市町村の合併の特例に関する法律」に規定する特別地方公共団体として合併特例区がある。なお、行政区政令指定都市の下位にあるが独立した地方公共団体ではない。

地方自治法上の位置づけにより「地方公共団体」は以下のようにも区分される。

  • 基礎的地方公共団体
市町村と特別区がこれにあたる。
  • 包括的地方公共団体(広域的地方公共団体)
都道府県がこれにあたる。

地方公共団体は法人格を有する(地方自治法第2条第1項)。

なお、以下の地方公共団体は廃止されている。

かつての特別地方公共団体の一種。2011年(平成23年)8月1日、地方自治法の一部を改正する法律(平成23年5月2日法律第35号)により廃止。既存の事業団は特例措置により存続する(同法律附則第3条)。

憲法上の地方公共団体[編集]

日本国憲法第92条から第95条にかけて地方自治に関する規定を置いている。

1963年(昭和38年)の最高裁判所判決によれば「憲法が特に一章を設けて地方自治を保障するにいたつた所以のものは、新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となつて処理する政治形態を保障せんとする趣旨」であるとし、この趣旨から憲法上の地方公共団体とは「単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである」としている(最大判昭和38・3・27刑集17巻2号121頁)。

憲法上の地方公共団体の範囲について学説は分かれているが、通説は憲法上の地方公共団体は地方自治法上の地方公共団体のうち都道府県と市町村(普通地方公共団体)を指しているものと解している[4]

憲法は地方公共団体の組織及び運営に関する事項ついて「地方自治の本旨に基づき、法律で定める」と規定しており(日本国憲法第92条)、普通地方公共団体の組織や運営に関する事項は地方自治法を中心とする法令によって定められている。

地方公共団体の住民[編集]

市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村及びこれを包括する都道府県の住民となる(地方自治法第10条1項)。

地方公共団体は住民福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うこととされている(地方自治法第1条の2)。

住民は、法律の定めるところにより、その属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有し、その負担を分任する義務を負う。(地方自治法第10条2項)。

住民の権利には次のようなものがある。

地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する(日本国憲法第93条2項)。

地方公共団体の組織[編集]

地方公共団体には議事機関として議会、執行機関として地方公共団体の長及び各委員会・委員が置かれる(地方自治法上の執行機関[5])。

地方公共団体の組織は議会を構成する議員と地方公共団体を代表する長をともに住民が直接選挙する二元的代表制をとり首長制あるいは大統領制と呼ばれる[6]。ただし、日本の地方公共団体の組織には議院内閣制的要素も多く取り入れられており、議案提出権や予算提出権、議会解散権が認められていないアメリカの大統領制とは異なるものとなっている[7][8]

議事機関[編集]

地方公共団体には議事機関として議会が設置される(日本国憲法第93条1項、地方自治法第98条)。任期は4年である(地方自治法第93条1項)。なお、町村の場合、条例で議会を置かずに選挙権を有する者の総会(町村総会)を設けることができる(地方自治法94条)。

地方議会は次のような権限を有する。

  • 条例、予算、決算等の議決権(地方自治法96条)
  • 選挙の実施(地方自治法97条)
  • 事務に関する書類及び計算書の検閲権、事務の管理・議決の執行・出納の検査権、事務に関する監査請求権(地方自治法98条)
  • 普通地方公共団体の公益に関する事件についての意見書提出権(地方自治法99条)
  • 百条調査権(地方自治法100条)
  • 長の不信任決議権(地方自治法178条)

執行機関[編集]

普通地方公共団体の長[編集]

普通地方公共団体の長として、都道府県に知事(都道府県知事)、市町村に市町村長が置かれる(地方自治法139条)。任期は4年である(地方自治法第140条1項)。

普通地方公共団体の長は次のような権限を有する。

  • 統轄代表権(地方自治法147条)
  • 事務管理執行権(地方自治法148条)
  • 議会招集権(地方自治法101条)
  • 議案提出権(地方自治法149条)
  • 予算案提出権(地方自治法211条)
  • 長の議場出席(地方自治法121条)
地方自治法では議長から出席を求められたときに限られている。
  • 再議権(地方自治法176・177条)
  • 解散権(地方自治法178条)
地方自治法では不信任決議がなされた場合に限られている。
地方自治法では議会が成立しないとき等は議決すべき事件を処分することができるとする。
委員会及び委員[編集]

委員会は規則その他の規定を定めることが出来る(第138条の3)。

設置しなければならない行政委員会及び委員(第180条の5)

委員会の委員または委員は非常勤である(第180条の5第5項)

補助機関[編集]

副知事副市町村長会計管理者吏員などが置かれる。

附属機関[編集]

地方公共団体の権能[編集]

地方公共団体は財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる(日本国憲法第94条)。

事務の処理と行政の執行[編集]

地方公共団体は、その事務を処理するにあたっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないとされている(地方自治法第2条第14項)。

  • 自治事務地方自治法2条第8項)
    • 地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のもの
    住民基本台帳の整備(地方自治法13条の2)
    公園、病院の設置
    都市計画の決定
    飲食店営業許可
  • 法定受託事務(地方自治法2条第9項)
    • 第1号法定受託事務:国が本来果たすべき役割に係るもの
    戸籍に関する事務
    旅券の発行
    国道の管理(直轄国道を除く)
    • 第2号法定受託事務:都道府県が本来果たすべき役割に係るもの

条例の制定[編集]

日本国憲法第94条では、地方公共団体に条例規則の制定権(自治立法権)を保障している。憲法にいう条例には地方自治法に規定される条例、地方公共団体の長が定める規則及び地方公共団体内の行政委員会が定める規則その他の規程が含まれている。

条例は、法令に違反しない限りにおいて定めることができ(地方自治法第14条第2項)、また自治事務のすべてについて定めることができる。

条例には、2年以下の懲役禁錮、100万円以下の罰金、5万円以下の過料等を科することができる(地方自治法第14条第2項)。

条例については、住民による制定改廃請求が認められ、又、地方公共団体の長が再議に付することができるなど(地方自治法第12条、第74条、第176条)、国の法律にはない制度がある。

  • 委任条例
法令の授権に基づいて制定する。

財産の管理[編集]

  • 会計年度(地方自治法第208条)
  • 予算
  • 収入
    • 地方税(地方自治法第223条)
    • 分担金(地方自治法第224条)
    • 使用料(地方自治法第225条)
    • 加入金(地方自治法第226条)
    • 手数料(地方自治法第227条)
    分担金、使用料、加入金、手数料に関する事項は、条例で定める(地方自治法第228条1項)
  • 決算(地方自治法第233条)
  • 契約
    • 一般競争入札:不特定多数のものが参加する入札である。
    • 指名競争入札:特定の複数のものが参加する入札である。
    • 随意契約   :特定のものを選んでする契約である。
    • せり売り    :不特定多数のものが参加し、口頭か挙手で価格を決める契約である。
  • 指定金融機関(地方自治法第235条)
  • 現金及び有価証券の保管(地方自治法第235条の4)
  • 出納閉鎖(第235条の5)
    翌年度の5月31日をもって閉鎖する。
  • 財産
    公有財産、物品及び債権並びに基金をいう。(地方自治法第237条)
  • 住民監査請求(地方自治法第242条)及び住民訴訟(地方自治法第242条の2)

公の施設[編集]

公の施設とは、普通地方公共団体が、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するために設ける施設をいう(地方自治法第244条第1項)。

国との関係、地方公共団体相互間の関係[編集]

国又は都道府県との関係[編集]

  • 関与
    • 関与の意義(地方自治法245条
      1. 普通地方公共団体に対する次に掲げる行為
        1. 助言又は勧告
        2. 資料の提出の要求
        3. 是正の要求
        4. 同意
        5. 許可、認可又は承認
        6. 指示
        7. 代執行
      2. 普通地方公共団体との協議
      3. 普通地方公共団体に対して具体的かつ個別的に関わる行為
    • 関与の法定主義(地方自治法245条の2
    • 関与の基本原則(地方自治法245条の3
      国は、普通地方公共団体が関与を受ける場合には、必要な最小限度とし自主性および自立性に配慮しなければならない。
    • 是正の要求(地方自治法245条の5
      各大臣は、その担任する事務に関し、都道府県の自治事務の処理が法令の規定に違反していると認めるとき、又は著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、当該都道府県に対し、当該自治事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる。
    • 是正の勧告(地方自治法245条の6
    • 是正の指示(地方自治法245条の7
    • 代執行(地方自治法245条の8
    • 法定受託事務の処理基準(地方自治法245条の9
    所轄大臣は、都道府県の法定受託事務について基準を定めることが出来る(同条1項)。
    都道府県は、市町村の法定受託事務について基準を定めることが出来る(同条2項)。
  • 関与の手続
  • 紛争処理
  • 国の関与に関する訴えの提起(地方自治法251条の5

地方公共団体相互間の関係[編集]

  • 紛争処理
    • 自治紛争処理委員(独任制機関)
      事件ごとに設置され、普通地方公共団体の間の紛争の調停、都道府県の関与に関する審査を処理する(地方自治法251条1項、2項
      委員は、総務大臣または都道府県知事が、任命する。
  • 都道府県の関与に関する訴えの提起(地方自治法252条
  • 普通地方公共団体相互間の協力
  • 条例による事務処理の特例
    都道府県は、条例により知事の事務を、市町村に処理することとすることが出来る(地方自治法252条の17の2)。

脚注[編集]

  1. ^ City of Yokohama City Government
  2. ^ 札幌市政府
  3. ^ Neal H. Hutchens. A COMPARATIVE LEGAL ANALYSIS OF STATE CONSTITUTIONAL AUTONOMY PROVISIONS FOR PUBLIC COLLEGES AND UNIVERSITIES メリーランド大学カレッジパーク校, 2007
  4. ^ 野中俊彦 et al. 2006, p. 351-357.
  5. ^ 山本淳, 小幡純子 & 橋本博之 2003, p. 31.
  6. ^ 山本淳, 小幡純子 & 橋本博之 2003, p. 29-30.
  7. ^ 佐藤俊一 2002, p. 49.
  8. ^ 松下圭一, 新藤宗幸 & 西尾勝 2002, p. 22-23.

参考文献[編集]

  • 佐藤俊一 『地方自治要論』 成文堂、2002年ISBN 9784792331719
  • 松下圭一 『自治体の構想(4)機構』 岩波書店、2002年ISBN 9784000110945
  • 野中俊彦 『憲法Ⅱ』 有斐閣、2006年、第4版。ISBN 4641130005
  • 山本淳 『行政法』 有斐閣〈有斐閣アルマ〉、2011年、第2版補訂。ISBN 9784641121898

関連項目[編集]

法的手続
基礎自治体
広域連合・広域自治体

外部リンク[編集]