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伊調馨

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伊調 馨
2016年10月、国民栄誉賞表彰式での伊調馨
個人情報
生誕名伊調 馨
国籍日本の旗 日本
生誕 (1984-06-13) 1984年6月13日(40歳)
青森県八戸市
家族伊調寿行(兄)
伊調千春(姉)
スポーツ
競技レスリング
クラブALSOK
獲得メダル
日本の旗 日本
女子 レスリング・フリースタイル
オリンピック
2004 アテネ 63 kg級
2008 北京 63 kg級
2012 ロンドン 63 kg級
2016 リオデジャネイロ 58 kg級
レスリング世界選手権
2002 ハルキス 63 kg級
2003 ニューヨーク 63 kg級
2005 ブダペスト 63 kg級
2006 広州 63 kg級
2007 バクー 63 kg級
2010 モスクワ 63 kg級
2011 イスタンブール 63 kg級
2013 ブダペスト 63 kg級
2014 タシュケント 58 kg級
2015 ラスベガス 58 kg級
アジア大会
2002 釜山 63 kg級
2006 ドーハ 63 kg級
レスリングアジア選手権
2004 東京 63 kg級
2005 武漢 63 kg級
2008 済州 63 kg級
ユニバーシアード
2005 イズミル 63 kg級
2008年北京オリンピックでの伊調馨。
2012年ロンドン五輪レスリング競技・女子フリースタイル63 kg級表彰式の様子。表彰台の左から2人目・金メダルが伊調馨。

伊調 馨(いちょう かおり、1984年昭和59年〉6月13日 - )は、日本の女子レスリング選手、スポーツ科学者学位健康スポーツ科学学士中京女子大学2007年)、健康スポーツ科学名誉修士中京女子大学大学院2008年)。

アテネ北京ロンドンリオデジャネイロオリンピック金メダリスト、紫綬褒章受章者(2004年、2008年、2012年、2016年)[1][2]女子個人として人類史上初のオリンピック4連覇を成し遂げ、2016年国民栄誉賞を受賞した[3][4]。別階級の女子レスリング選手である伊調千春と姉妹でメダリスト。青森県八戸市出身。身長166 cm。

人物

伊調千春も女子レスリング選手で、アテネオリンピック北京オリンピックにおいて女子48 kg級銀メダリスト。伊調寿行もレスリング選手で所属する綜合警備保障(ALSOK)でコーチを務める[5][6]。渾名は「きんさんぎんさん」。

紫綬褒章を2004年、2008年、2012年、2016年に受章[1][2]。アテネ五輪での金メダル獲得により青森県県民栄誉賞・八戸市市民栄誉賞、北京五輪での金メダル獲得により青森県県民栄誉大賞・八戸市市民栄誉大賞、ロンドンオリンピックでの金メダル獲得により青森県県民栄誉大賞(2回目)、八戸市民特別栄誉大賞、第60回菊池寛賞[7]を受賞。

リオデジャネイロオリンピックでの金メダル獲得により国民栄誉賞の受賞が決まった[8]ほか、青森県県民栄誉大賞(3回目)及び八戸市民特別栄誉大賞(2回目)[9][10]、第45回ベストドレッサー賞(スポーツ部門)[11] を受賞した。

2016年10月20日、国民栄誉賞の表彰式には振袖で臨み、伊調の和服文化への想いから西陣織による金色の帯が記念品として贈呈されている[3][4]

経歴

2016年10月、安倍晋三内閣総理大臣より国民栄誉賞を授与される伊調馨(左)

兄と姉の影響から青森県の八戸クラブでレスリングを始め、長者中学校在学中には全国女子中学生選手権で2連覇を達成し、早くから大器の片鱗を見せる[12]愛知県の中京女子大学附属高校(のちの至学館高等学校)から、女子レスリングの強豪校として知られる中京女子大学(のちの至学館大学)へと進学。56 kg級時代はライバルの吉田沙保里に苦戦したが、63 kg級に階級を上げてからは無敵の存在となった。なお、中学時代は柔道に取り組んでいたこともあり、2年の時に全国中学校柔道大会の52㎏級に出場するも、予選リーグ1勝1分で決勝トーナメントには進めなかった[13]

2004年のアテネオリンピックでは、姉の千春は銀メダルだったが、「千春のためにも必ず勝つ」と奮起し、金メダルを獲得。「千春と一緒に取った金メダルです」と述べた。

2008年の北京オリンピックでも金メダルを獲得し[14]、2連覇した[15]。姉の千春は銀メダルを獲得し、2大会連続で姉妹同時メダルとなった。8月18日の記者会見で姉妹揃って現役引退することを表明した[16] が、帰国後、引退表明を撤回(姉の千春も同年9月10日に引退を撤回)。約1年間カナダ留学などをして静養した後、2009年に復帰。2010年には3大会ぶりに出場した世界選手権で6度目の優勝を果たした[17]

2012年のロンドンオリンピックでも金メダルを獲得し、日本人選手としては野村忠宏に次いで2人目で日本人女子選手としては初めてとなる、同一競技におけるオリンピック3連覇を達成した[18][注釈 1]。2013年の世界選手権では全試合テクニカルフォール勝ちで優勝。新たに58 kg級で挑んだ2014年の世界選手権では、決勝でロシアのバレリア・コブロワを10-0で破るなど全試合テクニカルフォール勝ちで、世界大会12度目の優勝を飾った[19]。2015年8月の世界選手権では、決勝でフィンランドのペトラマーリト・オッリを10-0で破るなど全試合無失点のテクニカルフォール勝ちで、世界大会13度目の優勝を成し遂げた。これにより12月に行われる全日本選手権に出場さえすれば、規定によりリオデジャネイロオリンピック代表に内定することになり[20][21]、その全日本選手権でも通算12度目の優勝を飾った[22]。2016年のリオデジャネイロオリンピックでも決勝でロシアのワレリア・コブロワを終了間際に3-2で逆転勝ちしてオリンピック4連覇を達成した[23][24]

2018年12月の全日本選手権には57㎏級に出場して一次リーグで川井梨紗子とのオリンピックチャンピオン同士による対戦になったが、1-2で惜敗して2001年に吉田沙保里に敗れて以来日本の選手に17年ぶりの敗戦を喫して連勝記録も70で止まったものの、決勝では1-2でリードされながら終了間際に2ポイントを取って、3-2で逆転勝ちを収めた[25][26]。2019年のアジア選手権では準決勝で北朝鮮のチョン・ミョンスクに4-7で敗れて3位に終わった[27]。全日本選抜選手権では決勝で川井に4-6で敗れた。これにより、今大会で勝った川井とプレーオフで世界選手権代表を争うことになった[28]。プレーオフでは3-3ながらビッグポイントの2ポイントを川井に取られたことにより敗れて、世界選手権代表の座を逃した[29]。その後、世界選手権で川井が優勝し、2020年東京オリンピックの代表に内定したため、伊調の5大会連続オリンピック出場は成らなかった[30]

2021年8月7日、東京オリンピックレスリング女子フリースタイル50キロ級のメダルセレモニーでプレゼンターを務め花束を贈呈した[31]。また、8月24日に行われた東京パラリンピックの開会式では日本国旗を運ぶベアラーを務めた[32]

2022年9月9日、世界レスリング連合(UWF)は、日本から吉田沙保里、伊調馨、小原日登美の女子3人が殿堂入りしたと発表した[33][34]

連勝記録

伊調は吉田沙保里とともに女子レスリングにおいて連勝を続け、「不敗神話」で知られている。2007年5月のレスリングアジア選手権において太腿の怪我で不戦敗となったのを除くと、実際に試合をして敗北したのは2003年5月のサラ・マクマンとの試合まで遡り、以来2014年の世界選手権まで172連勝している[35][36]。2014年からは25戦連続無失点を記録していた[37]

2016年1月29日にロシアで行われたヤリギン国際大会決勝で、モンゴルプレブドルジ・オルホンに0-10の大差でテクニカルフォール負けを喫し、189連勝で記録はストップした[38]

2004年のアテネオリンピックでは63 kg級で優勝。以来、2008年の北京オリンピック63 kg級、2012年のロンドンオリンピックの63 kg級、リオデジャネイロオリンピックの58 kg級で4大会連続優勝を果たし、近代オリンピック史上6人目[注釈 2]、女子選手では初の個人種目4連覇を達成した[39]

戦績

  • 2001年
  • 2002年
    • ジャパンクイーンズカップ63 kg級優勝
    • ワールドカップ63 kg級優勝
    • 世界選手権63 kg級優勝
    • 全日本選手権63 kg級優勝
  • 2003年
    • ジャパンクイーンズカップ63 kg級優勝
    • 世界選手権63 kg級優勝
    • ワールドカップ63 kg級優勝
    • 全日本選手権63 kg級優勝
  • 2004年
    • ジャパンクイーンズカップ63 kg級優勝
    • アテネオリンピック63 kg級優勝
    • ワールドカップ63 kg級優勝
    • 全日本選手権63 kg級優勝
  • 2005年
    • ジャパンクイーンズカップ63 kg級優勝
    • ワールドカップ63 kg級優勝
    • ユニバーシアード63 kg級優勝
    • 世界選手権63 kg級優勝
    • 全日本選手権63 kg級優勝
  • 2006年
    • ジャパンクイーンズカップ63 kg級優勝
    • ワールドカップ63 kg級優勝
    • ユニバーシアード63 kg級優勝
    • 世界選手権63 kg級優勝
  • 2007年
    • ジャパンクイーンズカップ63 kg級優勝
    • 世界選手権63 kg級優勝
  • 2008年
  • 2010年
    • 世界選手権63 kg級優勝
  • 2011年
    • 世界選手権63 kg級優勝
  • 2012年
  • 2013年
    • 世界選手権63 kg級優勝
  • 2014年
    • 世界選手権58 kg級優勝
  • 2015年
    • アジア選手権58 kg級優勝
    • 世界選手権58 kg級優勝
  • 2016年
  • 2018年
    • 全日本選手権57 kg級優勝

関連情報

著書

  • 一日一日、強くなる 伊調馨の「壁を乗り越える」言葉講談社、2016年8月。ISBN 978-4062729604https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000202020 

映像

脚注

注釈

  1. ^ 同大会では55 kg級の吉田沙保里も3連覇を果たしているが、競技日程が63 kg級の方が1日早かったため伊調が初の女子3連覇となっている。
  2. ^ その他の個人種目4連覇達成者はオリンピックで多数の金メダルを獲得した選手一覧#個人連覇を参照。伊調以前の4連覇達成者はいずれも記録を競う競技で、格闘技系競技では伊調が初。

出典

  1. ^ a b 吉田 沙保里選手 伊調 馨選手 紫綬褒章受章のお知らせとお礼”(2012年11月2日). ALSOKニュース. 綜合警備保障. 2016年10月2日閲覧。
  2. ^ a b 秋の褒章、772人20団体の受章決まる”. 朝日新聞デジタル (2016年11月2日). 2021年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月7日閲覧。
  3. ^ a b 松本晃 (2016年10月20日).“国民栄誉賞 伊調馨選手に授与 記念品は金色の西陣織帯”. 毎日新聞. 2016年10月22日閲覧。
  4. ^ a b 伊調馨選手に国民栄誉賞授与 安倍首相「5連覇を期待」”. 朝日新聞 (2016年10月20日). 2016年10月22日閲覧。
  5. ^ 【特集】伊調姉妹の兄・寿行さんインタビュー”. 公益財団法人日本レスリング協会 (2009年8月18日). 2016年11月16日閲覧。
  6. ^ レスリング部(部員紹介)”. 綜合警備保障株式会社. 2016年11月15日閲覧。
  7. ^ 「第60回菊池寛賞」授賞式に伊調馨ら出席 高倉健、式欠席も喜びのコメント”(2012年12月7日). ORICON STYLE. 2016年10月8日閲覧。
  8. ^ <伊調馨>国民栄誉賞「うれしさより使命感」”(2016年9月24日). 河北新報. 2016年10月2日閲覧。
  9. ^ “<伊調馨>青森県民栄誉大賞を授与”. 河北新報. (2016年9月27日). http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201609/20160927_21001.html 2016年9月28日閲覧。 
  10. ^ 八戸市の紹介 市長の部屋 記者会見 平成28年8月19日”. 2016年9月28日閲覧。
  11. ^ “『ベストドレッサー賞』に菅田将暉、松下奈緒、『ジョジョ』荒木氏ら”. ORICON STYLE. (2016年12月1日). https://www.oricon.co.jp/news/2082236/full/ 2016年12月1日閲覧。 
  12. ^ 祝!伊調姉妹メダル獲得!! - 八戸市・2020年1月7日最終更新
  13. ^ 「第29回全国中学校柔道大会」近代柔道 ベースボールマガジン社、1998年10月号 83頁
  14. ^ レスリング女子の伊調馨が連覇、浜口は銅(2008/8/17)”. 時事ドットコム (2008年8月17日). 2021年2月4日閲覧。
  15. ^ 女子レスリング写真特集”. 時事ドットコム (2008年8月17日). 2022年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月23日閲覧。
  16. ^ 伊調姉妹が引退表明 サンケイスポーツ 2008年8月18日配信、19日閲覧
  17. ^ 伊調、日本女子初の3連覇/レスリング”. ニッカンスポーツ (2012年8月9日). 2012年8月10日閲覧。
  18. ^ 伊調、日本レスリング女子初の3連覇―偉人カレリンに次ぐ快挙”. ウォール・ストリート・ジャーナル日本版 (2012年8月9日). 2012年8月10日閲覧。
  19. ^ 【レスリング】伊調馨も9度目世界制覇”. スポーツ報知 (2014年9月11日).
  20. ^ 伊調馨、10度目V…レスリング世界選手権”. 読売新聞. 2015年9月11日。
  21. ^ レスリング:世界選手権 伊調圧倒、10度目V 女子58キロ級”. 毎日新聞 (2015年9月11日).
  22. ^ 伊調12度目の優勝、リオ五輪代表も正式決定”. nikkansports.com (2015年12月22日). 2015年12月22日閲覧。
  23. ^ レスリングでの「階級」とは?”. 【SPAIA】スパイア (2016年10月12日). 2020年11月15日閲覧。
  24. ^ 伊調、史上初の女子4連覇 レスリング58キロ級で金 日本経済新聞 2016年8月18日
  25. ^ 伊調敗れる!五輪女王対決で日本選手に17年ぶり、連勝70でストップ/レスリング サンケイスポーツ 2018年12月22日
  26. ^ 伊調馨が大逆転復活V、東京五輪へ「まだ伸びしろ」 日刊スポーツ 2018年12月23日
  27. ^ 伊調、腰高を狙われ…準決負け「今までは“幸せぼけ”だった」/レスリング サンケイスポーツ 2019年4月27日
  28. ^ 決勝で敗れた伊調馨「相手の圧力感じた」 プレーオフに向け覚悟「やるしかない」 デイリースポーツ 2019年6月16日
  29. ^ 伊調、川井梨とのプレーオフに敗戦…世界切符獲得ならず スポーツニッポン 2019年7月6日
  30. ^ 世界レスリング、川井梨ら五輪代表に 伊調は57キロ級出場ならず 日本経済新聞 2019年9月18日
  31. ^ 五輪メダル授与式でプレゼンターを務めた伊調馨の和服姿に「美しい着物姿」「とても素敵」の声”. スポーツニッポン. 2021年8月9日閲覧。
  32. ^ 日本国旗ベアラーは伊調馨、今井大湧、マセソン美季さんら6人 パラ開会式”. 日刊スポーツ. 2021年8月28日閲覧。
  33. ^ 吉田さん、小原さん、伊調が殿堂入り『産経新聞』2022年9月11日。
  34. ^ 【レスリング】オリンピック金メダリストの伊調馨、吉田沙保里氏、小原日登美氏が殿堂入り”. olympics.com. 2021年9月11日閲覧。
  35. ^ ZAKZAK「伊調馨、強すぎ~!前人未到V3…もはやライバルは自分だけ」”. (2012年8月9日). 2012年8月10日閲覧。
  36. ^ 伊調172連勝9度目金も「これが始まり」”. 日刊スポーツ (2014年9月12日).
  37. ^ 荻島弘一 (2015年12月23日). “伊調V 2年以上25戦失ポイントなし 強さ異次元”. 日刊スポーツ. 2016年10月8日閲覧。
  38. ^ “伊調13年ぶり黒星 出場189連勝でストップ”. スポニチ Sponichi Annex. (2016年1月30日). https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2016/01/30/kiji/K20160130011948720.html 
  39. ^ “伊調馨が女子初の五輪4連覇…残り数秒で逆転”. 読売新聞. (2016年8月18日). https://web.archive.org/web/20160818202503/http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2016/martialarts/wrestling/20160817-OYT1T50217.html 

関連項目

外部リンク