吉野彰

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
吉野 彰
よしの あきら
人物情報
生誕 (1948-01-30) 1948年1月30日(70歳)[1][2]
大阪府吹田市[3]
出身校 京都大学
学問
研究分野 電気化学二次電池
研究機関 旭化成
エイ・ティ・バッテリー
名城大学
学位 大阪大学 博士(工学)
称号 旭化成 名誉フェロー
主な業績 リチウムイオン電池の開発
学会 日本化学会電気化学会高分子学会Electrochemical Society英語版[4]
主な受賞歴 紫綬褒章チャールズ・スターク・ドレイパー賞日本国際賞
公式サイト
リチウムイオン電池の発明者・吉野 彰 理工学研究科教授
テンプレートを表示

吉野 彰(よしの あきら、1948年昭和23年)1月30日[1] - )は、電気化学を専門とする日本のエンジニア、研究者。大阪大学博士(工学)旭化成名誉フェロー携帯電話パソコンなどに用いられるリチウムイオン二次電池の発明者の一人。エイ・ティーバッテリー技術開発担当部長、旭化成 イオン二次電池事業推進室・室長、同 吉野研究室・室長、リチウムイオン電池材料評価研究センター・理事長、名城大学大学院理工学研究科・教授などを歴任。2004年紫綬褒章受章者。2014年チャールズ・スターク・ドレイパー賞、2018年日本国際賞受賞者。

略歴[編集]

(来歴)[1][5]

(受賞・栄典)[1][5]

リチウムイオン電池の開発[編集]

背景[編集]

1980年代、携帯電話ノートパソコンなどの携帯機器の開発により、高容量で小型軽量な二次電池(充電可能な電池)のニーズが高まったが、従来のニッケル水素電池などでは限界があり新型二次電池が切望されていた。

一方、負極に金属リチウムを用いたリチウム電池(一次電池)は商品化されていたが、金属リチウムを用いた二次電池には、充電時に反応性の高い金属リチウムが針状・樹枝状の結晶形態(デンドライト)で析出し、発火・爆発の危険があり、また、デンドライトの生成で表面積が増大したリチウムの副反応により、充電と放電を繰り返すと大きく劣化してしまう大きな課題があり、現在に至るも実用化されていない。

業績の内容[編集]

吉野は、2000年ノーベル化学賞を受賞した白川英樹が発見した電気を通すプラスチックポリアセチレンに注目し、1981年に有機溶媒を使った二次電池の負極に適していることを見いだした。さらに、正極には1980年ジョン・グッドイナフらが発見したリチウムと酸化コバルトの化合物であるコバルト酸リチウム (LiCoO2) などのリチウム遷移金属酸化物を用いて、1983年リチウムイオン二次電池の原型を創出した[13][14]

しかし、ポリアセチレンは真比重が低く電池容量が高くならないことと、電極材料として不安定である問題があった。そこで炭素材料を負極とし、リチウムを含有するLiCoO2を正極とする新しい二次電池であるリチウムイオン二次電池 (LIB) の基本概念を1985年に確立した[15]

吉野が次の点に着目したことによりLIBが誕生した。

  1. 正極にLiCoO2を用いると、
    1. 正極自体がリチウムを含有するため、負極に金属リチウムを用いる必要がないので安全であること
    2. 4V級の高い電位を持ち、そのため高容量が得られること
  2. 負極に炭素材料を用いると、
    1. 炭素材料がリチウムを吸蔵するため、金属リチウムが電池中に存在しないので本質的に安全であること
    2. リチウムの吸蔵量が多く高容量が得られること

また、特定の結晶構造を持つ炭素材料を見いだし[15]、実用的な炭素負極を実現した。

加えて、アルミ箔を正極集電体に用いる技術[16][17]、安全性を確保するための機能性セパレータ[18]などの本質的な電池の構成要素に関する技術を確立し、さらに安全素子技術[19]、保護回路・充放電技術、電極構造・電池構造等の技術を開発し、さらに安全でかつ、電圧が金属リチウム二次電池に近い電池の実用化を成功させ、現在のLIBの構成をほぼ完成させた。

1986年、LIBのプロトタイプが試験生産され、米国DOT(運輸省、Department of Transportation)の「金属リチウム電池とは異なる」との認定を受け、プリマーケッティングが開始された[20]

1991年、リチウムイオン二次電池 (LIB) は吉野の勤務する旭化成ソニーなどにより実用化された。

社会への貢献・影響[編集]

現在、リチウムイオン二次電池 (LIB) は携帯電話ノートパソコンデジタルカメラビデオ、携帯用音楽プレイヤーを始め幅広い電子・電気機器に搭載され、2010年にはLIB市場は1兆円規模に成長した[21]。小型で軽量なLIBが搭載されることで携帯用IT機器の利便性は大いに増大し、迅速で正確な情報伝達とそれにともなう安全性の向上・生産性の向上・生活の質的改善などに多大な貢献をしている。

また、LIBは、エコカーと呼ばれる自動車 (EV, HEV, P-HEV) などの交通機関の動力源として実用化が進んでおり、電力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置としても精力的に研究がなされている。

主な著作[編集]

学位論文[編集]

論文・解説[編集]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『リチウムイオン電池物語 ―日本の技術が世界でブレイク―』シーエムシー出版〈CMC books B727〉、2004年9月、ISBN 4882318342
  • 『リチウムイオン電池が未来を拓く ―発明者・吉野彰が語る開発秘話―』シーエムシー出版〈CMC books B1197〉、2016年10月、ISBN 9784781311821

共著[編集]

  • 『リチウム二次電池の技術革新と将来展望』エヌ・ティー・エス、2001年6月、ISBN 4900830836
  • 『大容量Liイオン電池の材料技術と市場展望 ―材料・セル設計・コスト・安全性・市場―』シーエムシー出版〈エレクトロニクスシリーズ〉、2012年8月、ISBN 9784781306278
  • 『リチウムイオン電池の開発』新経営研究会〈イノベーション日本の軌跡 FMTアーカイブ 5〉、2012年7月、NCID BB12712677[注釈 3]

監修[編集]

  • 『二次電池材料この10年と今後』シーエムシー出版、2003年5月、ISBN 4882313952
  • 『二次電池材料の開発』シーエムシー出版〈CMCテクニカルライブラリー 283〉、2008年3月、普及版、ISBN 9784882319726
  • 『リチウムイオン電池この15年と未来技術』シーエムシー出版、2008年12月、ISBN 9784781300689
    • 『リチウムイオン電池この15年と未来技術』シーエムシー出版〈CMCテクニカルライブラリー 524〉、普及版、2014年11月、ISBN 9784781309088

(以下は佐藤登との共同監修)

  • 『リチウムイオン電池の高安全技術と材料』シーエムシー出版、2009年2月、ISBN 9784781300702
    • 『リチウムイオン電池の高安全技術と材料』シーエムシー出版〈CMCテクニカルライブラリー 516〉、普及版、2014年9月、ISBN 9784781309002
  • 『リチウムイオン電池の高安全・評価技術の最前線』シーエムシー出版〈エレクトロニクスシリーズ〉、2014年8月、ISBN 9784781309002
  • 『車載用リチウムイオン電池の高安全・評価技術』シーエムシー出版〈エレクトロニクスシリーズ〉、2017年4月、ISBN 9784781312422

脚注[編集]

[ヘルプ]

注釈[編集]

  1. ^ ジョン・グッドイナフ (J. B. Goodenough)、ラシド・ヤザミ英語版 (Rachid Yazami) と共同授賞[9]
  2. ^ 大塚健司、中島孝之、小山章、中條聡との共著
  3. ^ 西美緒、堀江英明との共著、タイトルは『リチウムイオン電池の基本概念の確立、その実用化開発への夢と苦闘 . 盛田会長のビジョン、大賀社長の期待を担ってスタートしたソニーの独自技術 リチウムイオン、電池の商品化開発 . 世界初EV用高性能リチウムイオン電池システムの研究開発 : 自動車の革新を超えて』NCID BB12712677

出典[編集]

  1. ^ a b c d 歴代受賞者略歴 吉野 彰 博士”. 日本国際賞. 国際科学技術財団. 2018年5月19日閲覧。
  2. ^ リチウムイオン電池の産みの親 吉野彰プロフィール”. 研究開発. 旭化成. 2011年12月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月19日閲覧。
  3. ^ (Press Release)“経歴書(2013年12月末日現在)”. 旭化成 (2014年1月8日). 2018年5月19日閲覧。
  4. ^ プロフィル・略歴”. リチウムイオン電池の発明者・吉野 彰 理工学研究科 教授. 名城大学. 2018年5月19日閲覧。
  5. ^ a b 吉野 彰プロフィール”. 吉野彰インタビュー. AsahiKASEI. 2018年5月19日閲覧。
  6. ^ 吉野 2005.
  7. ^ MST 2011.
  8. ^ C&C 2011.
  9. ^ Download the IEEE Medal for Environmental and Safety Technologies recipients”. Awards > Medal. IEEE. 2018年5月19日閲覧。
  10. ^ 吉野彰氏、ロシアのノーベル賞・グローバルエネルギー賞受賞 西日本新聞Archived 2013年6月26日, at the Wayback Machine.
  11. ^ 加藤記念賞受賞者一覧”. 加藤科学振興財団. 2018年5月19日閲覧。
  12. ^ 中日文化賞 名城大学大学院理工学研究科教授 吉野彰氏”. 中日新聞社 2018年6月1日。『中日新聞』2018年5月3日朝刊 掲載記事。
  13. ^ 日本国特許第1823650号(出願日1983/12/13)
  14. ^ リチウムイオン電池産みの親 リチウムイオン電池とは?”. 研究開発. 旭化成. 2011年7月6日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年7月27日閲覧。
  15. ^ a b 日本特許第1989293号(優先日1985/5/10)
  16. ^ 日本特許第2128922号(出願日1984/5/28)
  17. ^ 大久保 聡 (2000年7月25日). “旭化成,Liイオン2次電池の特許権を積極行使へ,現行製品のほとんどが特許に抵触”. Tech-On、日経エレクトロニクス誌200年7月31日号p.25. 日経BP. 2012年3月22日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年7月7日閲覧。
  18. ^ 日本特許第2642206号「防爆型二次電池」(1989年12月28日出願、1997年5月2日登録、特許権者 - 旭化成エレクトロニクス株式会社)
  19. ^ 日本特許第3035677号「安全素子付き二次電池」(1991年9月13日出願、2000年2月25日登録、特許権者 - 旭化成イーマテリアルズ株式会社)
  20. ^ 芳尾真幸、小沢昭弥 編『リチウムイオン二次電 第2版』日刊工業新聞社、2000年1月、27、33頁。ISBN 978-4-526-04499-1
  21. ^ 狩集浩志、久米秀尚、窪田宏樹、Phil Keys (2010年1月8日). “Liイオン電池,新時代へ”. 日経エレクトロニクス2010年1月11日号. 2018年5月19日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

(インタビュー)

(講演動画)