コンテンツにスキップ

岩下志麻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
いわした しま
岩下 志麻
岩下 志麻
『映画情報』1965年4月号(国際情報社)より
本名 篠田 志麻(しのだ しま)[1]
旧姓:岩下
生年月日 (1941-01-03) 1941年1月3日(83歳)
出生地 日本の旗 日本 東京府東京市京橋区
(現在の東京都中央区[2]
血液型 A型
職業 女優
ジャンル 映画テレビドラマ舞台
活動期間 1958年 -
活動内容 1958年:デビュー
1962年:『秋刀魚の味
1967年:『智恵子抄
1969年:『心中天網島
1977年:『はなれ瞽女おりん
1978年:『鬼畜
1979年:『草燃える
1982年:『疑惑
1986年:『極道の妻たち
2004年紫綬褒章
2012年旭日小綬章
配偶者 篠田正浩1967年 - )
著名な家族 野々村潔(父)[3]
岩下亮(弟)
山岸しづ江(叔母)[3]
河原崎長一郎(いとこ)
河原崎次郎(いとこ)
河原崎建三(いとこ)
篠田桃紅(義理のいとこ)
事務所 グランパパプロダクション
公式サイト 所属事務所によるプロフィール
主な作品
映画
秋刀魚の味』(1962年)
春日和
内海の輪
嫉妬
はなれ瞽女おりん
鬼畜
疑惑
極道の妻たち
極道の妻たち 最後の戦い
新極道の妻たち
新極道の妻たち 覚悟しいや
新極道の妻たち 惚れたら地獄
極道の妻たち 赫い絆
極道の妻たち 危険な賭け
極道の妻たち 決着
テレビドラマ
バス通り裏』/『氷紋
草燃える』/『葵 徳川三代
本家のヨメ』/『トイレの神様
CM
日本メナード化粧品
受賞
日本アカデミー賞
最優秀主演女優賞
1978年はなれ瞽女おりん
ブルーリボン賞
その他の賞
キネマ旬報ベスト・テン
主演女優賞
1968年智恵子抄』『あかね雲』『女の一生
1970年心中天網島
女優演技賞
1978年はなれ瞽女おりん
毎日映画コンクール
女優主演賞
1968年智恵子抄』『あかね雲
1970年心中天網島
女優演技賞
1978年はなれ瞽女おりん
報知映画賞
主演女優賞
1977年はなれ瞽女おりん
日刊スポーツ映画大賞
主演女優賞
1993年新極道の妻たち 覚悟しいや
日本ジュエリーベストドレッサー賞
50代部門(1993年
60代以上部門(2007年
紫綬褒章2004年
旭日小綬章2012年
テンプレートを表示

岩下 志麻(いわした しま、1941年昭和16年〉1月3日[2][3] - )は、日本の女優東京府東京市京橋区(現在の東京都中央区銀座生まれ[3][4]。本名:篠田 志麻(しのだ しま)[1][3]

俳優・野々村潔と元新劇女優・山岸美代子の長女として生まれた[3][2]。4代目河原崎長十郎は義理の伯父に当たる。夫は映画監督の篠田正浩[3]。弟は元俳優の岩下亮。松竹の看板女優の一人として活躍した。

身長165cm、体重48kg、血液型A型[5]グランパパプロダクション所属。

来歴

[編集]
1965年

叔母の山岸しづ江前進座リーダー河原崎長十郎と結婚[3]した関係で、一家は吉祥寺の前進座住宅の近くで暮らす[6]武蔵野市立第三小学校武蔵野市立第三中学校を経て[4]東京都立武蔵高等学校から明星学園高等学校へ編入[3]。1962年に成城大学文芸学部を中退[3]

精神科医への道を志すも16歳から17歳の頃に小児リウマチを患い長期入院した[7]ことで断念[8]。気分転換にと[8]1958年NHKドラマ『バス通り裏』に十朱幸代の友人役として出演[3]。これが女優人生の始まりであり[8]、映画では2年後の1960年昭和35年)の『乾いた湖』(篠田正浩監督)[9][注釈 1]でデビューした。松竹には1960年から1976年(昭和51年)まで16年に渡って在籍し、その屋台骨を支えた。1962年(昭和37年)、小津安二郎の遺作となった映画『秋刀魚の味』のヒロインに抜擢された。小津は次回作『大根と人参』も岩下をヒロインに想定して構想を練っていた[10]。今でも海外に行った時には、小津について質問を受けることが大変多いと岩下は語っている[6]

1966年(昭和41年)3月3日木曜日)、映画監督篠田正浩と京都の大徳寺高桐院にて仏前結婚式を挙げる[3]。篠田の松竹退社後、2人で独立プロダクション「表現社」を立ち上げる[8]。『心中天網島』(1969年)は興行的にも成功をおさめ、『無頼漢』(1970年)、『沈黙 SILENCE』(1971年)などの作品を発表した表現社は軌道にのり、岩下は1973年に長女を出産[3]。女優、妻、母という3つの顔を持ったことで悩むことが多くなり、2年程は鬱々とした時期を過ごすが、1977年の『はなれ瞽女おりん』でカメラの宮川一夫や共演者の原田芳雄らに助けられながら、おりんという役を演じきったことで達成感を得て壁を破り、女優を続けていく覚悟を決めた[11]

40代に入ってからは映画『極道の妻たち』シリーズへの出演(この間制作された10作品中8作品で主演)[7]が有名だが[11]日本メナード化粧品のCMに長く出演していることも広く知られており、2000年平成12年)に28年という、専属タレント契約としては世界最長の記録が『ギネス・ワールド・レコーズ』に認定された[12]。しかし、山本海苔店と専属タレント契約を締結している山本陽子の契約年数が、42年と岩下を大きく上回ることが判明し、2010年にこちらがギネス記録として認定された[12]

1999年着物メーカーの京都丸紅よりブランド「きもの志麻」を発表し、着物デザイナーとしてデビュー[7]

2000年に発表された『キネマ旬報』の「20世紀の映画スター・女優編」で日本女優の10位、同号の「読者が選んだ20世紀の映画スター女優」でも第10位になった。

2004年(平成16年)、紫綬褒章を受章。

2005年(平成17年)、松竹の創業110周年祭の記念トークショーに登場し、「松竹では素晴らしい作品や監督に出会えて育てていただいたので思い入れがあります。女優王国で、男優さんより女優さんという感じで居心地は最高でした」と語った[要出典]

2012年(平成24年)、旭日小綬章を受章[13]

人物

[編集]

趣味は旅行(一人旅)や陶芸[1]プロ野球では阪神タイガースのファン[14]。ただし過去に王貞治のファンを公言しており、雑誌で何度か対談している[7]

役柄では激しい、気の強いキャラクターが多いが、これは長年の映画の撮影で監督やプロデューサーに𠮟咤激励を受けて必死に演じてきた結果そういうイメージが付いてきただけで、実像は“駆けずのお志麻”とあだ名される、おしとやかでのんびりしたタイプであり[2]、バラエティ出演の際は昔から天然ボケが激しい性格だと告白している。夫の隠し子を虐待死させる映画『鬼畜』では役にのめりこんでしまい、子供の正直さが顔に出てはいけないと顔合わせの段階から子役たちとは口も利かずに終始睨みつけ、一番年下の子を演じた石井旬に至っては監督の現場指示もあってご飯を喉に窒息寸前まで詰めさせるという演技ですっかり怯えられた。後年『鬼畜』がテレビ放送された際、視聴した知り合いの新聞記者の子供から電話口で「おばちゃんのバカヤロー!」と怒鳴られたという[15]

聞き書きでの回想『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』では、岩下は「他の人間になれることが、私の女優としての最大の喜びです」と語っている[7]

『極道の妻たち』シリーズで監督を務めた中島貞夫によると、「岩下は衣装へのこだわりが人一倍強く着物の知識も衣装さん顔負けだった」。岩下は、「極妻」では一日がかりで念入りに衣装合わせを行い「共演者スタッフの中で誰よりも一緒に作品を作っている感覚が強かった」と評されている[7]

屈伸運動やストレッチ体操、竹ふみ、太極拳を毎日行うなど健康には気をつけている。体重は20年間変化が無く、白髪染めも使用していないという[16]

霊感が強く、映画『悪霊島』に出演した際、製作者だった角川春樹に「背後に黒い悪魔が見える」と何度も言っていたという[17]

受賞・受章

[編集]
1962年
1965年
  • 五瓣の椿』で第15回ブルーリボン賞主演女優賞
1977年
1991年
1993年
2004年
2007年
  • 第18回日本ジュエリーベストドレッサー賞60代以上部門
2012年

出演作品

[編集]

映画

[編集]
秋刀魚の味』(1962年)
大根と人参』(1965年)
紀ノ川』(1966年)

テレビドラマ

[編集]

舞台

[編集]

CM

[編集]

レコード・CD

[編集]

シングル

[編集]

アルバム

[編集]

著書

[編集]
  • 『鏡の向こう側に』主婦と生活社、1990年11月。ISBN 4-391-11291-4 
  • 『岩下志麻のきもの語り』ブックマン社、2011年11月。ISBN 978-4-89308-747-8 写真集も兼ねる。
  • 『岩下志麻という人生 いつまでも輝く、妥協はしない』共同通信社、2012年3月。ISBN 978-4-7641-0644-4 立花珠樹との共著。
  • 『美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道』文藝春秋、2018年2月。ISBN 978-4-16-390778-9 春日太一との共著。

論文

[編集]

写真集

[編集]
  • 『時の彼方へ』(撮影:谷口征。大陸書房
  • 『岩下志麻』(撮影:谷口征。愛宕書房
  • 『芸術の奴隷になることに決めた』岩下志麻写真集(2020年)

ビデオ

[編集]
  • 岩下志麻 フィレンツェの光と影 (※岩下自身のイメージビデオ。30分。監督:井上昭。大陸書房)

関連書籍

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 映画初出演は松竹の木下惠介監督に見初められて出演が決まった[8]笛吹川』だが、撮影が長期化したため公開が後になった。そのため、『乾いた湖』の方が映画デビュー作とされている[3]

出典

[編集]
  1. ^ a b c 岩下 志麻”. グランパパプロダクション. 2016年5月11日閲覧。
  2. ^ a b c d 別冊宝島2551『日本の女優 100人』p.16.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n 岩下志麻”. KINENOTE. 2016年5月11日閲覧。
  4. ^ a b 『日本映画俳優全集・女優編』、キネマ旬報社、1980年、p.101-103
  5. ^ 岩下志麻”. 日本タレント名鑑. VIPタイムズ社. 2017年1月1日閲覧。
  6. ^ a b 週刊新潮」2011年10月12日号150-153頁。
  7. ^ a b c d e f 週刊現代2021年1月9日・16日号 シリーズ“女優という人生”岩下志麻・可憐に生きた「最後の銀幕スタア」p.17-24.
  8. ^ a b c d e f 岩下志麻(インタビュアー:植草信和)「岩下志麻が告白「自分の中の母性と女優の間でうつっぽくなった時期も…」(2/3ページ)」『AERA.dot』、2018年3月31日https://dot.asahi.com/wa/2018033000080.html?page=22018年4月4日閲覧 
  9. ^ “「報知の撮っておき」24歳の“姐御”岩下志麻”. スポーツ報知. (2017年2月2日). オリジナルの2017年4月28日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/F87iU 2017年4月28日閲覧。 
  10. ^ 千葉信夫、『小津安二郎と20世紀』、国書刊行会、p337
  11. ^ a b 岩下志麻(インタビュアー:植草信和)「岩下志麻が告白「自分の中の母性と女優の間でうつっぽくなった時期も…」(3/3ページ)」『AERA.dot』、2018年3月31日https://dot.asahi.com/articles/-/114157?page=32018年4月4日閲覧 
  12. ^ a b 山本陽子にギネス認定、山本海苔CM42年”. 日刊スポーツ (2010年1月16日). 2013年8月30日閲覧。
  13. ^ a b “岩下志麻に旭日小綬章「一筋にやってきたことへのご褒美」”. Sponichi Annex. (2012年4月29日). https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2012/04/29/kiji/K20120429003144180.html 2020年2月17日閲覧。 
  14. ^ 虎党・岩下志麻「優勝してシリーズに」 デイリースポーツ 2015年3月27日
  15. ^ 『松本清張映像作品サスペンスと感動の秘密』、桂千穂、メディアックス、2014年
  16. ^ 岩下志麻(インタビュー)「岩下志麻78歳「今も白髪染め要らず」欠かさぬ日課を本人明かす」『デイリー新潮』、2019年5月2日https://www.dailyshincho.jp/article/2019/05150557/?all=12019年6月28日閲覧 
  17. ^ 『最後の角川春樹、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P146』
  18. ^ 春日太一 (2018年3月27日). “母子相姦を自然に美しく演じる岩下、狂気の慈愛!――春日太一の木曜邦画劇場”. 文春オンライン. 文藝春秋. 2018年4月4日閲覧。
  19. ^ “岩下志麻、初監督作品を語る…夫の引退にホッ”. SANSPO.COM. (2003年5月22日). オリジナルの2003年8月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20030804030025/http://www.sanspo.com/geino/top/gt200305/gt2003052216.html 2017年4月16日閲覧。 
  20. ^ 放送ライブラリー 番組ID:000641
  21. ^ 花いちもんめ - テレビドラマデータベース
  22. ^ 放送ライブラリー 番組ID:001115
  23. ^ 冬の時刻表 - テレビドラマデータベース
  24. ^ * 番組エピソード 大河ドラマ『草燃える』-NHKアーカイブス
  25. ^ allcinema. “岩下志麻”. allcinema. 2024年4月21日閲覧。
  26. ^ “トイレの神様:ドラマ化決定 花菜役は愛菜ときい おばあちゃんは岩下志麻 紅白初出場の話題曲”. MANTANWEB. (2010年11月29日). https://mantan-web.jp/article/20101128dog00m200036000c.html 2019年11月4日閲覧。 
  27. ^ “超迫力!岩下志麻が中国人マフィア!!“マル暴”米倉涼子と初共演”. SANSPO.COM. (2014年6月23日). https://www.sanspo.com/article/20140623-PZL4LH7SAFJ67NGMTEFSU275QY/ 2014年10月17日閲覧。 
  28. ^ 失敗しない女医VS“極妻”!? 「ドクターX」で岩下志麻が医療ドラマ初挑戦!”. ザテレビジョン (2014年10月16日). 2014年10月17日閲覧。
  29. ^ 看護師界のドン(岩下志麻)、未知子(米倉涼子)と再会!相変わらずのカタブツぶりで露出の多い服装を指摘”. テレ朝POST. テレビ朝日 (2019年11月14日). 2019年12月5日閲覧。
  30. ^ おもな登場人物”. 鴨川食堂. NHK (2016年). 2020年4月3日閲覧。
  31. ^ a b c d 岩下志麻のCM出演情報”. ORICON STYLE. 2016年11月27日閲覧。
  32. ^ 【動画】満島ひかり、“先代UQUEEN”岩下志麻と火花バチバチ 松田龍平も困惑… UQ mobile「UQUEEN」新CM「先代登場」編 - MAiDiGiTV (マイデジTV)”. MANTANWEB (2022年12月27日). 2022年12月29日閲覧。
  33. ^ 石丸元章 『危ない平成史』 #02 絶望から始まり絶望で終わった平成の音楽産業・後編 Guest:sinner-yang a.k.a. 代沢五郎 from O.L.H.、HAGAZINE、2019年3月26日。

外部リンク

[編集]