方角地名

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方角地名(ほうがくちめい)は、地名を命名法・由来などをもとに分類した地名種類の一種である。地名表記の中に「」「西」「」「」「中央・中」などの方角を表す語が含まれるものを指す。

ただし方角を示す語が含まれていても、人名由来や別の語からの転化、単なる当て字など、地名の由来が方角とは無関係である場合には方角地名とは言わない(#方角文字を含む方角に由来しない地名も参照)。

概要[編集]

広義に捉えるならば、干支を方角に当てた表現の「巽」「乾」や、人から見た視覚的方向表現の漢字(上下左右・前後)などを含む地名も加えることができる(#京都市の行政区も参照)。

政令指定都市行政区を制定する際に方角地名を採用する場合も多く、東京都における特別区にも方角地名は存在する(#方角をそのまま使用している市区町村名も参照)。

また市町村合併の際に方角地名が付けられることも多く、合併後の行政区域を称する適切な地名がなく、かといって広域地名を付けるのは無理がある場合、既存の市町村との同名回避のために方角を頭に付ける場合、市町村を分割する際に、新しくできた区域にどの方角かを冠する場合などがある。

平成の大合併では、既存の地名の頭に方角を付けて合併後の名称とする場合があった(北○○市、東○○市など)。こうした合成地名に対しては、一部の地名研究家などから安易であるとの批判もある。[要出典]

以下に、方角地名の大まかな成り立ちを示す。

由来による分類[編集]

  • ある地域を分割する際に方角を冠した
例:彼杵郡西彼杵郡東彼杵郡桑田郡→旧北桑田郡・旧南桑田郡賀茂郡→旧加西郡加西市)・旧加東郡加東市)、興部村(現興部町)から西興部村が分村、浅井郡東浅井郡西浅井郡(西浅井郡はその後伊香郡に編入されるが、旧西浅井郡二村が合併時に新村名として西浅井を採用)
  • その地域に隣接する著名(または主要)な地名にあやかって方角を冠した
例:西東京市東大阪市北名古屋市、旧京北町住居表示実施に伴う町名変更〈北新宿、北上野など〉
  • その地域や周辺にある著名ななどの地形に方角を付した
例:川西市西脇市(川の西(西岸=脇)、つまり川西と同じ意味)、旧沼南町榛東村
  • ある地域の中でその地域がどの方角にあるかを付した
例:北九州市東村山市栗東市周南市玉東町南鳥島南丹市、各政令市にある北区等の行政区画南町など
  • 同一の地域名が他に既に存在し、混同を避けるために方角や地名を冠した
例:東松山市東久留米市東大和市北広島市西インド諸島など(また、海洋の名称の場合『大西洋』については南北に分けて表現・表記することもある)
  • その方角にある代表的な地域(街)であることを主張した
例:東京〈東の京〉、北京〈北の京〉、南京〈南の京〉
  • 方角を冠した地名から、文字の省略や漢字の変更を行った
例:喜多方市〈北方→喜多方〉、北本市〈北本宿→北本〉西荻南西荻北〈西荻窪→西荻南、西荻北〉

主な方角地名[編集]

自治体名[編集]

平成の大合併以前[編集]

平成の大合併以後[編集]

かつて存在した自治体[編集]

地方名[編集]

方角を冠して地域を区分した区名[編集]

その他の方角地名[編集]

方角をそのまま使用している市区町村名[編集]

政令指定都市の行政区名に多い。東京都区部(特別区)にも存在する。

かつて存在した市区町村名[編集]

京都市の行政区[編集]

京都市の行政区は北区、南区、西京区を除いて、方角地名は「上中下左右」などを冠する。上京・下京が歴史的に継承された名称であるが、中京(なかぎょう)は近代になって発生したものであり、左京・右京については、平安京の時に称されたものであるが、断絶がありその時に示されていた範囲とは同一ではない。ただし、「左京」が東、「右京」が西と、南面したときの左右に拠ることは、当時のとおりである。

なお、西京区は右京区から分離した地名である。また、北区周辺を洛北、南区周辺を洛南東山区周辺を洛東、右京区・西京区周辺を洛西と呼称することも多い。 

方角文字を含む方角に由来しない地名[編集]

日本国外の方角地名[編集]

方角を冠した国名[編集]

冷戦時代には1つの国が2つに分断されて方角を冠した国名になった例がいくつかあるが、これらは通称であり正式国名には方角を冠していない場合が多い。

(例:ドイツ民主共和国〈東ドイツ〉、ドイツ連邦共和国西ドイツ〉、ベトナム民主共和国〈北ベトナム〉、ベトナム国〈南ベトナム〉、イエメン・アラブ共和国〈北イエメン〉、イエメン人民民主共和国〈南イエメン〉)

方角を由来とする行政区域名[編集]

関連項目[編集]