ゴールデンカムイ

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ゴールデンカムイ
ジャンル 冒険バトル)、歴史ロマン)、狩猟グルメ[1]
アイヌ文化ストーリー漫画青年漫画
漫画
作者 野田サトル
出版社 集英社
掲載誌 週刊ヤングジャンプ
レーベル ヤングジャンプ・コミックス
発表号 2014年38号 - 連載中
巻数 既刊9巻(2016年11月時)
その他 アイヌ語監修:中川裕
テンプレート - ノート
ポータル 漫画

ゴールデンカムイ』は、野田サトルによる明治末期の北海道を舞台にした日本漫画作品。『週刊ヤングジャンプ』(集英社2014年38号より連載中。アイヌ語研究者の中川裕が作中のアイヌ語監修を務める。

あらすじ[編集]

かつて蝦夷(エゾ)と呼ばれた大地であり、一昔前に隆盛を誇った砂金採取も廃れ、時の政府主導により土地の開拓と炭鉱採掘で湧く明治末期の北海道が舞台である。

入植者から多大な排斥と迫害を受け、近代化の煽りで生活圏を脅かされていたアイヌ人達が道内各地域から極秘裏で集め秘匿していた大量の砂金を運ぶ途中、何者かの襲撃によって運搬役のアイヌ人7名全員が惨殺される。強奪された黄金は埋蔵され、禁錮刑となった襲撃犯は頑として在処を明かさず、ある手段で外部勢力と接触し、強奪した黄金を取り戻す計画を企てている。との情報が極一部の者達の間で囁かれていた。

埋蔵金の在処を示す手掛かりとなる暗号図を彫った刺青を持つ網走監獄囚人二十数名全員が脱獄し逃亡、潜伏した事を知った帝国陸軍、不穏分子、戦鬼とアイヌ人少女、無頼漢、無法者、そして北海道の地で甦った旧幕府軍の悪霊が野望と立志、欲望と血風逆巻く黄金争奪戦に参戦し激突する。

奸計と権謀術数、駆け引きと裏切りが交錯する中、一癖も二癖もある者達が埋蔵金の謎と在処を求めて跋扈するが、人間や文明を寄せ付けない北海道の広大で厳しい自然と太古からその地に住まう脅威の存在が捜索者らの行く手を阻む。

登場人物[編集]

主要キャラクター[編集]

杉元佐一(すぎもと さいち)
三十年式歩兵銃
三十年式銃剣
二十六年式拳銃
元・大日本帝国陸軍第一師団一等卒白襷隊隊員、不死身の杉元。好物は干し柿や塩をかけた野生動物の脳髄、苦手な物はイナゴの佃煮と熱々の揚げ物。
関東にある郷里の杉本家が結核に罹患し死亡したとの一報が届き帰郷、予防原則で無人の実家に火を放ち、予てから恋仲であった梅子に暫しの別れを告げ逐電、天涯孤独となる。その後、陸軍入隊。旅順攻囲戦では夜間奇襲に参加、続く二〇三高地でも奮戦し死地から生還。生来の卓越した武道の技量に加え、軍隊仕込みの格闘術、銃剣術にも秀で、白兵戦に於ける人外の戦闘力及び強運、軍医が見放す重篤な負傷でも翌日には治癒し戦場を駆ける驚異的な回復力から一目置かれ畏怖されるも気に入らない上官に瀕死の重症を負わせた為に武勲は無く、軍人恩給の資格も消滅。
後、満期除隊で復員。梅子の夫で戦死した寅次の遺言を受け、梅子が患った眼病の治療費用を手早く得るため独り北海道へ渡り砂金採りをしていたある日、アイヌ人埋蔵金の噂話を飲兵衛の男から聞き、当初は与太話と疑うも成り行きで証拠の一部を入手した事で確信し喜び勇んだのも束の間、慣れぬ土地で羆に襲われ突如現れたアイヌ人少女の機転と手助けで命拾いする。アシㇼパと名乗るアイヌ人少女が黄金に携わった父に降りかかったとされる惨劇の真実を探し求めている事を打ち明け利害が一致、北海道各地を巡る探索行が始まった。
戦場で負った夥しい傷跡が顔を含め全身に残っており、鶴見の部下に捕えられた際には顔の傷から身元を割り出された。除隊後も当時の帝国陸軍で制式採用されていた三十年式歩兵銃、二十六年式拳銃で武装している他、軍帽や弾薬盒、肥後守等の装備一式を携行。
普段は気さくで茶目っ気もある恥ずかしがり屋だが本人と旅の引率者であるアシㇼパに危害が及ぶ状況下では、生存本能と戦闘能力を最大限発揮し排除と殲滅を行う。名前の由来は作者の曾祖父から。
アシㇼパ
10代前半の緑が散った濃紺色の瞳を持った利発で天真爛漫なアイヌ人少女、幼名・エカシオトンプイ(意・祖父の尻の穴)和名・「小蝶辺明日子」(コチョウベアスコ)、好物は塩をかけた脳や杉元が持つ曲げわっぱに入ったオソマ(味噌)、苦手な物はヘビ。日本語とアイヌ語の二言語話者。作中ではアシリパのリはアイヌ語小書きリで表記されている。
「新年」「未来」を意味するアイヌ名に因み、土着信仰や慣例を重んじた上で古い因習に捕われず現実的かつ合理的で柔軟な思考も持ち併せ「新しい時代のアイヌの女」を自負。祖母が嘆き呆れる程、本来ならアイヌ娘が担うべき仕事や嗜みには寄り付かずに野山を駆けていた。
出生直後に母が病死。爾来、父の狩猟に共として連れられ幼少期を過ごす折、父親が殺害の被害に遭ったと知り、幼獣から傍らに従えていた雄のエゾオオカミ(レタㇻ)を友とし悲しみに暮れていた中、真実を突き止めるべく行動を起こし、山中で羆に狙われていた杉本を持ち前の知識と技術で救い一連の事件を杉本に打ち明け協力を仰ぎ相棒とする。弓矢の名手にして狩猟の腕も高く北海道の気候や動植物、アイヌの文化・風習・料理に精通し、その都度、同行者に教授。味噌やカレーなど粘性がある茶色い物体は全て大便(オソマ)と見做し嫌悪するも、美味が判明してから和人食の味に開化し舌鼓を打つ。大人に対して物怖じせず、無礼・背任・失態を働いた者に容赦無い制裁を加える反面、歳相応の幼さも見せる。
父の身に起きた事件に直接関与した人物が網走監獄に居ると知り、その地へ向かう。
主に北海道の自然とアイヌ文化を紹介する案内役。野田のブログによると小樽近辺にあったとされる村で生まれ育ったという設定で、携帯している小刀(メノコマキリ)は「ユーカラの里」(登別市)という施設で展示販売されていた商品を購入し作中に採用。
白石由竹(しらいし よしたけ)
強盗と度重なる脱獄で収監されていた刺青の囚人で坊主頭に長いもみあげの男、好物は酒・飴・白米、苦手な物は鹿の脳みそ。
少年時から素行不良で幼年監獄に収容されては脱走を繰り返し、成年になって樺戸集治監に収監されてからも前歴から看守達の間から札付きと警戒されていた。小細工と持ち前の関節を脱臼させる技を駆使した脱獄の才能と技術、逃亡の計画性に長けているが社会性に於いては思慮が浅い兵六玉。脱獄囚の身でありながら下心だけで官憲の前に自ら姿を晒すなど行動も思考も場当たり的な俗物の粗忽者。全国各地の監獄に服役しては脱獄を繰り返していた最中に「脱獄王」の渾名が付いた事に加えて服役期間も延びた為、日露戦争には従軍していない。実在の脱獄囚であった白鳥由栄がモデル[2]
小樽の森で杉元達に捕まり脱出を図るも追っ手の杉元共々真冬の川に落下、凍死間際の状況で隠し持っていた火を起こすための実包を提供することを条件に杉元から解放される。師団兵舎に杉元が監禁された際には金塊の分け前を貰うことを条件に杉元救出に協力し、行動を共にする。また、土方陣営に対しても、街で偶然鉢合わせた牛山と紆余曲折を経て接触し、密かに協力体制を結ぶ。しばしばアシㇼパらに役立たず扱いされるが、いざという時の潜入と脱出術に加え間諜役としての能力を発揮し暗躍する。
本作では主にギャグ・パートやコメディリリーフの扱い。欲深いが剽軽な性格、頻繁に粗相を起こし助平の典型的な与太郎として描かれる。
キロランケ
元・大日本帝国陸軍第七師団工兵部隊隊員、若い時分に友人であるアシㇼパの父と共にアムール川流域から移り住んだ。アシㇼパとは別の村に住んでおり、妻と二人の子がいる。好物は川魚、絶対に食べない物は馬肉。
小さい頃から馬に乗っていたため馬の体調や感情に通じており、どんな馬でも無下に扱うのは忍びないと思い入れも深く日露戦争出征時には馬の管理も任され、爆薬などの扱いにも明るい。アシㇼパにのっぺらぼうの正体がアシㇼパの父という情報を告げ、網走監獄へ向かう杉元らと行動を共にする。
苫小牧にて成り行きで八百長馬に騎乗するも、競走馬に対する扱いの酷さに業を煮やし指示順位を無視して勝利。参拾七圓の配当金を獲得するが、結果、八百長馬主の怒りを買う。

刺青を描いた男及び脱獄囚[編集]

のっぺら坊と呼ばれる男により、身体にアイヌの金塊の隠し場所に関する暗号図を彫られた囚人たち。暗号を入れた脱獄囚は24人いるとされ、現時点で12人の存在が確認されている[3]

のっぺら坊(通称)
網走監獄の「第弐拾四房」に収監されている死刑囚、顔面を含む頭部全体の皮膚が剥落・欠損した姿形の為「のっぺらぼう」と呼ばれる。アイヌが和人に抵抗する軍資金として、秘密裏に金塊を蓄えていたアイヌを殺害した強奪犯とされ、金塊を隠した後に、支笏湖で警察に捕まり網走監獄に収監。金塊の隠し場所を知ろうとした看守から片足の筋を断たれたが「脱獄に成功した者には金塊の半分をやる」と伝え同房になった囚人らの身体に入れ墨を彫った。しかし、描かれた入れ墨は分割された暗号になっており、皮を剥いで全て繋ぎ合わせて解読をする仕様になっているため、脱獄囚達は刺青人皮として最後には殺害される役回りであった。目的が一致している土方に対してのみ実際の埋蔵金は他囚人に語った千倍、二萬貫の黄金(75㌧、2015年時換算で約8千億円)を隠匿していると告げた。
土方歳三(ひじかた としぞう)
映画捜索者 (1956年作品)でm1892小銃を構えるジョン・ウェイン
元・新撰組副長であった旧幕府軍の志士、好物は細かく刻んだ漬物を乗せたお茶漬け。史実では明治2年(西暦1869年)の箱館戦争にて戦死しているが、本作では戦況の悪化した函館から秘密裏に落ち延び、長らく月形樺戸集治監に幽閉されていたという設定になっている。素性を隠し政治犯として収監されていた模範囚であったが、後に網走監獄に収監。欲が出た一部の若い屯田兵達が囚人24名の身柄を強引に移送した際、軍刀を奪取して囚人達を指揮し屯田兵を殲滅、脱獄を成功させてその正体を晒す。銀白色の長髪に顎髭をたくわえた70代の老人として描かれているが、その血気劣らぬ若々しさから人魚の肉を喰らい不老不死になったと噂される。
かつて志半ばで潰えた蝦夷共和国の構想を基に北海道を独立させるべく周到な計画を立て銀行を襲って活動資金を得ると共に手始めに第七師団との一戦を目論み、密かに杉元一行の動向を追いつつ行く先々で刺青人皮の情報と同志を募る。かつて所持していた愛刀・和泉守兼定を奪還した他、ウィンチェスター・モデル 1892で武装。新選組時代の渾名は「バラガキ」(茨のように乱暴なガキ)。
牛山辰馬(うしやま たつま)
かつて10年間無敗の柔道家として最強の座を独占し、不敗の牛山と呼ばれた屈強な大男。醜女の柔道師範の妻に欲情、姦通した事が露見し一門の制裁に遭うが、逆に師を殺害し門下生10人に重傷を負わせた咎で服役。好物は桃とビール。
現役時代は毎日10時間を超える鍛錬を欠かさず行い、稽古にすら及ばない網走監獄の死人が出るほど過酷と言われた刑務作業に退屈していた。定期的に性交を行わないと不安定になりヒトの姿をしている者なら腕力に任せて見境無く犯そうとする有り余る精力を持て余した色気違いという性情の持ち主。
脱獄後は行方をくらましていたが、潜伏先を掴んだ土方と一戦交え黄金の分け前目当てに手を組み、牛山の動きを探っていた同房仲間の白石を取り押さえ、土方と密約させることに成功。ヒトはおろか馬や羆でさえ足払いで投げ飛ばす強靭な肉体に加え、はんぺんを貼り付けたような四角いタコが額にあり、五寸釘も通さぬ硬さを持つ。
互いの素性を知らぬまま札幌にて杉元一行と遭遇、柔道耳を切掛に組み合った杉元の強さを気に入り会食に誘い、酒席でアシㇼパに紳士の陰茎の見定め方を講義して「チンポ先生」と慕われる。樺戸集治監近くのコタンでは偽アイヌを圧倒し、その膂力も持って羆さえ撃退、その強さを見たコタンの女達から秋波を送られた。
白石由竹
主要キャラクターの項の白石由竹を参照。
二瓶鉄造(にへい てつぞう)
多弁にして豪放磊落、単独で過去200頭超の羆を屠り、入山先の羆を全て仕留めると謳われ同業者界隈から「冬眠中の羆も魘される悪夢の熊撃ち」と名が通り、恐れられる初老の猟師、苦手なものは女。アイヌ犬のリュウを連れ、当時としては旧式の十八年式単発銃を持ち、「一発で決めねば殺される」との信念から予備弾を用いず羆を狩る。数年前、猟師を殺し獲物を横取りする輩3名に狙われ怒髪、2人を山中で撲殺し官憲に捕縛されていた残り1人の首を素手で折り殺害したため網走監獄に収監されるが山で命果て獣に喰われ、その身が排泄物と化すついの生き方を率先すべく刺青を入れて脱獄に加わる。金塊の在処には頓着無く、知力と体力を駆使して動物・人間問わず獲物と戦う興奮に深く固執しており、本人は羆より獲物に執着すると語っている。口癖は「勃起!!」だが、妻と15人の子供とは絶縁状態である。
山中、行き倒れていて救助した兵士(谷垣)から既に絶滅したと思われていたエゾオオカミの存在を知って猟師魂が猛り、最後の血脈に留めを刺し途絶えさせた猟師としての偉勲を立てるべく全身全霊を賭して獲物を追うが、勝利を確信した直後、背後から現れた雌のエゾオオカミに首を噛み切られ致命傷を負い未遂に終わるも充実した己の有様に満足しつつ絶命。刺青人皮となる
後藤(ごとう)
殺人犯、泥酔して妻子を刺殺した罪で服役。少量の砂金を採っては酒代に替えていた飲兵衛の男で、川で砂金採りに勤しむ杉元へ、酔いに任せて金塊や入れ墨について語った翌日、話した内容に恐怖を覚えたため杉元の口封じを試みるも反撃され殺害に失敗、山へ逃亡するが羆に捕食され、刺青人皮となる。
辺見和雄(へんみ かずお)
連続殺人犯、見た目は礼儀正しく愛想の良い男だが子供の頃に弟が巨大な猪に喰い殺される現場を目撃してしまい、必死の抵抗虚しく死にゆく弟の虚ろな目と姿に魅入り、それを思い出すたび欲情に近い殺人衝動に駆られ各地を放浪しながら犯行を重ね100人以上を殺害してきた快楽殺人鬼。
脱獄後は、鰊番屋で寝起きし漁に従事する「ヤン衆」(=季節労働者)として、潜伏しつつ治安組織に追跡されるよう刺殺体に痕跡を残すと同時に自身も抵抗の末に殺される体験を得ようとしていた。鰊漁出航時にの激突で海へ転落し溺水死しかけていた所を杉元達の乗る船に救助されたその際、出征経験のある杉元の優しさと強さに焦がれ殺害を決心。第七師団から杉元を匿おうと手引するが匿いきれないと見るや師団兵を殺害し銃撃を受け負傷。本性を知らぬまま傷ついた身柄を保護しようとする杉元を背後から狙う直前に正体が判明、杉元の反撃により致命傷を受ける。最期は突如シャチに攫われ、想像を超えた本懐を遂げる中シャチに嬲られ昇天、刺青人皮となる。
家永カノ・偽名(いえなが かの)
元・医者の老人男性、患者を殺害しては遺体を損壊し利用していた。好物は肉料理、苦手な物は海老。
身体の不調部と同じ部位の食材を経口摂取する事により回復が得られるという「同物同治」の確たる信念を持ち「最高の自分」に固執。脱獄後は「札幌世界ホテル」の所有者を消し、若く妖艶な外見の女将に変装してその座に収まり幾度もの改築を行い隠し通路や仕掛けを施す。欲する部位を持った宿泊客に目星を付けてはガスで眠らせ地下室に監禁して拷問の末殺害、解体を行っていた。
ホテルの支配人として切り盛り(と殺人)していたある日、同じ刺青を持つ脱獄一味の中年男性が男娼を伴い宿泊。後日、牛山と白石がホテルを訪れる。牛山の並外れた肉体を狙い、次に白石を監禁するも身元が割れ、ガスで昏睡したアシㇼパの瞳を狙った事に激高した杉本と酔いと性欲で猛り狂った牛山の大乱闘に巻き込まれる。収拾つかず観念した家永がホテルを焼失させる装置を作動させた事に加え、白石が誤って地下室に落としたキロランケの爆薬と合わさり大爆発が発生。寸でのところで牛山に救出され、刺青人皮の情報を牛山と白石に明かす。その後は牛山と共に土方の一団に合流している。
若山輝一郎 (わかやま きいちろう)
並居る商売敵を斬り伏せ伸し上がった苫小牧で八百長競馬を命じていたヤクザの親分で博徒。逆手に握った仕込み刀の一閃で両断する剣客。上半身に倶利伽羅紋々、暗号の刺青は下半身に彫った。
八百長の指示を無視して勝利した騎手(キロランケ)を追って空き家で一服していた所、3頭の羆に追われていた目当てのキロランケ含む杉本一行と遭遇、即興で家主に成りすますも若山の男娼買いに気分を害していた子分・仲沢の当て付けにより一瞬で企てが破綻。羆に包囲され撃退できるだけの装備を失った窮地の中、丁半博打で負けた若山が屋外に落ちている銃弾を回収。土饅頭となり餌にされかかるも機関銃を携え再登場。最期は羆に襲われた仲沢を助けるため深手を負いながら羆を討ち斃した末、仲沢と手を握り合いながら死亡、刺青人皮となる。
鈴川聖弘(すずかわ きよひろ)
詐欺師、変装の達人。アメリカ軍大佐になりすまし富裕層の女性に対する幾つもの結婚詐欺の咎で服役していた。脱獄後、政府の高官に扮して樺戸集治監を訪れ、内部から多くの囚人の脱獄の手引きをした。
樺戸集治監近くのアイヌのコタンを襲い男を全員殺害、女は脅して妻役としてコタンを乗っ取る。自身は「村長・レタンノ エカシ」を名乗り、他のアイヌに扮した囚人らと共に、訪れる旅人の寝込みを襲い殺害していた。熊岸には偽札作りを命じていた。アシㇼパの言葉を契機とした杉元らと偽アイヌとの乱戦で捕縛される。その後、白石奪還の協力を命じられ、網走監獄の典獄である犬童に扮し杉元と共に旭川の司令部に向かう。熊岸長庵と白石の交換を持ち掛け淀川を騙す寸前まで行くも、鶴見の命を受けた鯉登に見破られ銃撃された。
坂本慶一郎(さかもと けいいちろう)
稲妻強盗と呼ばれる強盗犯。健脚で一日に約200キロ走り続け逃げ切ったとされる。蝮のお銀と出会い夫婦になると、二人で銀行や郵便局を襲い世間の注目を集める。
モデルは明治期の強盗犯で「稲妻強盗」と呼ばれた坂本慶次郎と思われる。

大日本帝国陸軍第七師団[編集]

北海道を本拠とし旭川に本部を置く陸軍師団、別名「北鎮部隊」。かつて屯田兵と呼ばれた組織を前身とした部隊。戦争帰りの兵士が多く、瀕死の重傷であっても反撃を試みたり、不意な襲撃にもすぐに対応するなど個々の戦闘力も高い。

尾形百之助(おがた ひゃくのすけ)
上等兵。旅順攻略作戦の参謀長である元・第七師団長で、戦後に部下の半数が作戦で命を落としたことに対する周囲の揶揄と自責の念に駆られ自害した花沢幸次郎(はなざわ こうじろう)中将とその妾との間の子として誕生、お婆ちゃん子として育つ。好物はあんこう鍋、苦手な物はシイタケ。
300メートル以内であれば確実に頭部を撃ち抜く腕を持った狙撃手。小樽で杉元達を尾行し森で捕縛されていた脱獄犯を遠距離から射殺、格闘の間隙を縫って杉元が構える歩兵銃の遊底を抜き取り使用不可にするなど手練の兵士。一旦撤退を図った際、杉元が投擲した歩兵銃の直撃を受け川に転落、自力で川岸に這い上がってきた所を仲間に救助された。滑落の際、顎骨を割り衰弱甚だしい中、入院先で意識朦朧ながらも指文字で刺青を追う存在を仲間へ伝える。この時の負傷が元で左右下頬に縫合痕が残る。鶴見をして「敵に回すと非常に厄介」とまで評され、表情に乏しく飄々とし腹の中が探りにくく、その時々の状況に応じ独断で先んずる「コウモリ野郎」。入院中に姿を消し、二階堂(浩)と共にアシㇼパのコタンに入り谷垣の前に現れる。自分達が計画している造反を谷垣が鶴見に密告すると疑い、口封じを試みるも山に潜伏した谷垣の囮により反撃を受け、これにより造反が露呈し直後に現れた鶴見の部隊を次々に狙撃し逃亡する。
茨戸(現・札幌市北区)の宿場町に現れ土方らと対峙、その抗争に乗じ先手を取って刺青人皮を入手、土方と取引し共闘を結ぶ。江渡貝剥製所では前山を室外から射殺した後、内部で偽の人皮の欠片を目撃、鶴見の目的を悟りつつ江渡貝を追跡する。
鶴見(つるみ)
Borchardt Semi-Automatic Pistol
中尉、情報将校。元は裕福な生まれでピアノ演奏も習得。好物は和菓子、苦手な物は酒。
日露戦争にて二〇三高地を攻略、続く奉天会戦で砲弾の破片の直撃を受け、頭蓋骨の前面と前頭葉の一部を吹き飛ばされ額当を装着、感情が亢ぶると何らかの体液が額から漏れ出る体質になった。そのためか奇矯で突飛な言動が目立つようになる。
旅順攻囲戦で多大な犠牲を払い勝利したにも関わらず戦利の薄い結果に終わり、更に花沢中将の自刃を落ち度とされ、第七師団が冷遇されたことによる軍や政府への失望が刺青人皮を探す動機になっており第七師団を掌握してアイヌ埋蔵金を軍資金に最新の武器を仕入れ、北海道に軍事政権を打ち立て、戦友や戦死者遺族の窮状を救うという計画を立ち上げている。軍服の下に33人殺害犯の刺青人皮を身に纏う。装備はボーチャードピストル
二階堂浩平・洋平(にかいどう こうへい・ようへい)
一等卒の双子の兄弟、静岡出身。娼館街で刺青の情報を探っていた杉元を襲撃し、兵舎内に拘禁した杉元を拷問しようとするも反撃され再度杉元の殺害を狙った際に浩平が見張り役、洋平が刺殺を受け持つが枷を解いた杉本に銃剣を抜き取られ声を挙げる間も無く返り討ちにされる、洋平の死体は杉元によって内臓を抜き取られ師団兵舎脱出の欺瞞に利用される。
谷垣追跡に尾形と同行。谷垣が仕掛けた囮に気を取られた隙に背後から忍び寄っていた羆の襲撃に遭い、尾形の援護で助かるも左耳を消失。直後に反乱分子の動向を追っていた隊に捕縛され造反の疑いで右耳を削がれる拷問を受け、鶴見の取り引きに応じ反乱計画の仲間を明かし元の所属に戻る。鶴見により削がれた耳は常に携帯し、その耳を洋平に見立てて話しかけるという奇癖が生じており、度々鶴見の癇に障っている。
玉井・野間・岡田(たまい・のだ・おかだ)
尾形らと共に鶴見に対して反乱計画の同志である野間や岡田と共に同班の谷垣を説得して造反に組み入れる手筈であったが、不審者追跡で捕捉した杉元から尾形が重傷を負った関与を尋問をしていたところ巣穴から飛び出し乱入してきた羆により3名共死亡。以降、所属師団では谷垣含む4名全員が消息不明扱いとなる。尾形は玉井伍長の班が行方不明となった原因を谷垣が返り討ちにしたものと誤解した。
和田(わだ)
大尉。度が過ぎる鶴見の独断専行を糾弾、処刑を命じるも鶴見の息がかかった部下により銃殺、遺体はその場で埋められ隠滅。
淀川輝前(よどがわ てるちか)
聯隊長中佐。日露戦争の二〇三高地で鶴見の献策を握りつぶし無謀な突撃を敢行、多くの犠牲を出したことを黙殺したため、負い目がある部下・鶴見の協力者となる。旭川の司令部で網走監獄の典獄である犬童と看守に扮した鈴川・杉元の訪問を受け、取引を持ちかけられる。
月島(つきしま)
軍曹、鶴見の部下、好物はえごねり。鶴見とともに武器商人トーマスとの交渉や夕張での盗掘犯の調査を行った。鶴見が江渡貝剥製所を訪問した際は監視を担った。鶴見が小樽に戻った後は前山とともに江渡貝の護衛として剥製所に詰め刺青人皮の製作を見届ける。尾形による剥製所襲撃の際には、銭湯に向かうも財布を忘れたため、剥製所に戻ったおりに異変に気づき尾形と交戦。その後、トロッコを用いて逃亡していた江渡貝を助け出し坑道に逃げ込んだ。ガス爆発や坑内火災の中脱出に成功し、鶴見に偽の人皮の入った鞄を渡して江渡貝の伝言を伝えた。新任少尉である鯉登の補佐を担っているが、彼は憧れである鶴見を前にすると一々自分を中継して会話をするため、心中で面倒くさいと感じている。
鯉登(こいと)
少尉、士官学校卒、鹿児島県出身で褐色肌、自顕流の使い手。鶴見に憧れており彼のブロマイド(写真)を胸ポケットに忍ばせている。興奮すると早口の薩摩弁になる。
白石と熊岸の交換のために旭川に来たという犬童を偽物と気づき銃撃、気球隊の試作機を強奪し逃走を図る杉元や白石を追跡し同機に飛び乗る。自顕流による猛襲で杉元を追い込むが、アシㇼパの矢や命綱を体に巻き付けた上での白石の飛び蹴りを受け森に落下した。その後、報告のため鶴見と面会し小樽での囚人狩りへの随行を命じられる。

アイヌ[編集]

フチ(アシㇼパの祖母・親族呼称)
口の周囲に刺青を入れたアイヌ女性と小熊
アイヌの老女。日本語は話せず、孫達の通訳を介して和人と会話する。アシㇼパのことを自分の宝と思っている反面、アイヌの女としての嗜みを身につけようとせず、狩猟などに精を出している様を心配もしており、杉元にアシㇼパを嫁に迎えてもらいたいと語っているが、杉元には伝わっていない。
尾形は襲撃の際に「ばあちゃん子の俺に殺させるのか?」とコタン内での襲撃を回避させたり、谷垣は最初は「婆さん」と言っていたが、生活を共にしていく内に「おばあちゃん」と呼んで慕うようになり、村から出立の際に涙するなど、年長者としての情愛と人徳がある。アシㇼパにとっては面倒を見てくれる唯一残った直系の家族。
オソマ(幼名)
アシㇼパの従妹でマカナックルの娘。かつてのアシㇼパと同じように病魔が子供に近づかない様に汚い名前で呼ぶアイヌ独特の風習に沿い「糞」という意味の幼名をつけられている。谷垣が尾形らに狙われた際は、アシㇼパが猟犬リュウを安心させるために置いていた二瓶の単発銃を谷垣に託し、窮地を救う。
谷垣に懐いて常に付き添う。谷垣が旅立つ際には、テクンペ(手甲)を作り手渡した。
アチャ(アシㇼパの実父・親族呼称)
極東ロシアからの渡来人で小樽周辺で出会ったアイヌ人女性から言葉と文化を学び、実娘を授かる。豊かな黒髭と顔面に縦横数本の裂傷痕が特徴。
マカナックル
アシㇼパの母方の叔父でオソマの父。鹿用の罠にかかりそうになった杉元を寸手で制止した。先祖のアイヌらが集めた砂金の存在を知っており、川からの恵みを尊んで川を汚さないようにしてきたアイヌの生き方から外れていたものであることから「呪われたもの」と評した。
インカㇻマッ
苫小牧勇払のコタンに現れ居ついた、良く当たると評判の謎の占い師の女性。名の意味は「見る女」。好物はウサギ肉、苦手な物は犬。アシㇼパの父を知っている。細面の美女で、アシㇼパからは「イカッカラ・チロンヌプ(キツネ女)」と呼ばれている。杉元に気がある素振りを見せたり、アシㇼパをやきもきさせる描写がある。
白石に苫小牧の競馬場に連れ出され、キロランケが参加したレース以外の馬券を占いで的中させている。アシㇼパのコタンへ赴く前、鶴見から谷垣を利用するよう助言を受けており、谷垣と共にアシㇼパを探す旅に出る。
チカパシ
疱瘡の流行により家族が亡くなった為、アシㇼパのコタンの老人達によって育てられた男の子。オソマと同様、病魔除けのため「陰茎を立てる(勃起)」という意味の名を付けられている。旅立った谷垣たちを追い掛け、旅に同行する。

主要人物及び脱獄囚の関係者[編集]

寅次(とらじ)
杉元の幼馴染である親友。妻の梅子の眼病を治すためアメリカへの渡航を考えていたが、日露戦争で杉元に梅子と息子を託し戦死する。
梅子(うめこ)
杉元の幼馴染で想い人。杉元家が結核で村八分になっても想いを曲げず、駆け落ちすることも辞さぬつもりでいたが、杉元の説得で寅次と結婚し一子授かるも目を患い、戦争未亡人となる。彼女の眼病を治す資金を手に入れるため、杉元は北海道に渡ることになる。
谷垣源次郎(たにがき げんじろう)
元・大日本帝国陸軍第七師団一等兵、秋田県阿仁(現・阿仁町)出身の元・マタギ、好物はきりたんぽ、苦手な物はシイタケ。
実妹・フミが嫁ぎ先だった焼失家屋跡から焼けた刺殺体で発見された。義兄・青山賢吉の犯行と断定し仇を取ろうと行方を追う中、賢吉が陸軍に入隊したという噂を聞き自身も入隊。戦闘中に賢吉を発見するが、妹殺害の真実を知り報復心の勢いだけで家族と村を見限って兵士となった今迄の行動が全くの無意味で利己的だった事を知り懊悩する。
玉井伍長の班にて不審者追跡の任に就き、不審者のアイヌ人少女(アシㇼパ)を単独で追跡・保護しようとした時、突如現れた雄のエゾオオカミ(レタㇻ)による牙の一撃を受け気絶し右足を骨折、行き倒れていた所を二瓶に救助されたのが縁でエゾオオカミ狩りに同行、二瓶と行動を共にする内に己の身の漉し方の選択に迫られ、軍帽を焚き火にくべる。
二瓶と杉元の交戦にてアシㇼパを人質に取り身柄を抱えての移動中、不注意から鹿用の狩猟罠による矢毒を受けるも、アシㇼパの応急処置により毒死から脱する。二瓶死亡後、アシㇼパの意向でコタンへ運ばれ治療と保護を受けていた療養の最中、懐柔に拗れた玉井らを排除した嫌疑で行方を追っていた尾形らと対峙、それを迎え撃つべく二瓶の猟銃を手に山中に身を潜めマタギ出の知恵と経験を活かし撃退、直後に現れた三島から鶴見が尾形らを泳がせていたことを知る。
尾形ら撃退後はアイヌ衣装アットゥシを羽織りアシㇼパの祖母・フチの世話を受け静養生活を送る。傷が癒えた頃にアイヌの女占い師がコタンを訪問。祈祷で大事な孫娘に振りかかるであろう禍事を案じて寝込んでしまったフチを安心させる為、自分の命の使い道を悟り世話になった恩返しに孫娘を無事送り届ける約束を告げて出立。
永倉新八(ながくら しんぱち)
文久3年から慶応4年まで新撰組に所属していた老人。好物はウナギの蒲焼。家主の亡くなった親戚の家屋や資金、ロシア商人から試供品として入手したウィンチェスターライフルM1892モシンナガンM1891モーゼルC96を土方へ提供し、以後行動を共にする。普段は落ち着いた好々爺だが、新撰組時代の血の気の多さと最強と言われた剣術の技量、必殺の魔剣と謳われた奥義「龍飛剣」は未だ健在であり、複数に囲まれても一切の反撃を許さず切り捨てることができる一流の剣豪。新選組時代の渾名は「ガムシン(我武者羅な新八)」。

動物[編集]

レタㇻ
エゾオオカミの剥製、北海道大学所蔵
白銀の毛並みを持つ雄のエゾオオカミ、アイヌ語で「白」の意。幼獣の頃に熊に襲われている所をアシㇼパに保護され育てられる。家族同様の扱いでアシㇼパに付き従っていたが成獣となり狼本来の本能が勝りアシㇼパから巣立ち、番いのメスのエゾオオカミとの間に4匹の仔を儲ける。
アシㇼパの元から離れ、森に消えた後も主従関係そのままに火急の事態に馳せ参じ、その身を呈して主を護る。
19世紀後半には明治政府の方針によりエゾオオカミは害獣指定され、道内全土で徹底的な駆除が行われており、本編当時には既に絶滅していたと考えられていることから、作中では「最後のオオカミ」として二瓶と谷垣から狙われたこともある。
リュウ
二瓶が猟犬として連れていたアイヌ犬。優秀な猟犬だが間の抜けた描写も多い。二瓶の死後はアシㇼパが引き取り、杉元らと同行する。
フリ
出現するとその大きさから太陽が遮られ婦女子が攫われるという、伝説上の巨鳥。積丹半島等北海道各地にフリの伝説がある。劇中、それらしき鳥がアシㇼパの体を持ち上げた。フリカムイも参照。

各編登場人物[編集]

日泥保(ひどろ たもつ)
茨戸で賭場を開帳していた小規模な鰊場の親方で婿養子。一番子分であった久寿田馬吉との抗争の最中、妻子共に欺いていた事を知った事で、こまざらいで妻を滅多打ちにし新平に銃を向けるも尾形により射殺。
日泥新平(ひどろ しんぺい)
日泥保の子。当初は悪ぶっていたが実際は意気地の無い小心者。抗争勃発に怖気づき、愛する者のために駆けまわり身の丈にあった未来図を描く。抗争終結後、新天地で一からやり直すため千代子と共に茨戸を後にする。
久寿田馬吉(くすだ うまきち)
元は日泥保一番の子分であったが、日泥が賭場を新平に譲ったことに激怒し、近所に新たな賭場を開き日泥一家と対立する。抗争の際、子飼いの警官隊と共に永倉によって斬り伏せられた。
日泥の妻
日泥一味を取り仕切る女将で人としての情を持ち合わせていない業突く張りの守銭奴。放火された番屋から刺青人皮を運び出そうとする場で、夫・保に真実を暴露、裏切りを知った夫によりこまざらいで滅多打ちにされる。
千代子(ちよこ)
日泥保の妾。保の子では無く、その息子・新平の子を身籠り身柄を取り引きに利用されかけ匿われる。日泥・馬吉一味の抗争終結後、新天地で一からやり直す新平と共に茨戸を後にした。
山本(やまもと)
「山本理髪店」店主。業務の傍ら町の情勢を教える一市民であったが土方の強要により抗争の取り引きの片棒を担ぐハメになるも無事生き残る。
江尻又助(えじり またすけ)
茨戸分署署長、馬吉から賄賂を貰っているため一味に肩入れしている悪徳警官。日泥・馬吉一味の抗争の際に起きた混乱の最中、刺青人皮を横から掠め取ろうとするが土方により射殺。
エディー・ダン
来日25年になるアメリカ人牧場経営者。希少な物品の蒐集が趣味。不心得者から買い取ったアイヌ伝来の花嫁衣装を買い戻しに来たアシㇼパらに元の買値の倍になる売値を提示して一触即発となるが、毒餌で狼を徹底排除したにも関わらず、未だ牧場経営を脅かす羆の出没に頭を痛め、化物退治を条件に取り引きに応じる。馬の売買の客であった若山が訪れた際にフォード・Tモデルの試作品とマキシム機関銃を貸し出し、杉元らが羆を退治したことで約束通り花嫁衣裳を引き渡すと共に、夕張にヤクザの刺青とは違った刺青が描かれている人皮の存在を伝える。
仲沢達弥(なかざわ たつや)
若山の子分で凄腕の壺振り。指示順位に背いて勝利した騎手を追っていた若山に同行し一服していた空き家にて杉元らと遭遇、即興で家主に成りすますも、若山が男娼を買った事に憤慨し、若山の企みを当て付けで破綻させる。羆の襲撃から逃れ、杉元らと共にフォード・Tモデルに乗り込んで空き家を脱出するも走行中の車から落下した若山の仕込み杖を取ろうとした際に車外に転落、羆の餌食になる仲沢を救出せんと立ち向かった若山共に致命傷を受け手を握り合いながら死亡する。
江渡貝弥作(えどがい やさく)
「江渡貝剥製所」代表、奈良県出身。剥製作りに適した環境を求め北海道に移住した。好物は素麺、苦手な物はイチジク
歪んだ母からの支配を受け、母には剥製制作を一度も褒められたことはなく、理解を示した父を母の命令で殺害させられ、また、そんな父親に似てきたとの理由で去勢される。母が心臓発作により死亡後も母の剥製からの声という形で呪縛を受けていた。動物の剥製のほかに、人間の剥製や人皮や人体部位を素材にした服やオブジェや道具を製作している。また、自身の制作品を認めてくれた鶴見のことを慕うようになっている。
珍しい刺青をした炭鉱夫の死体が盗まれた関係で鶴見の訪問を受けた際、彼から自身の制作品を褒められたことで母の声に反抗する。浩平の行動を契機に鶴見から諭され母の剥製に銃弾を浴びせ、その支配から解放された後、精巧に作られた偽の刺青人皮作製の協力を依頼され、試行錯誤しながらその製作に入った。デリカシーの無い月島や前山の行動に気を削がれながらも、6枚分の刺青人皮の偽物を完成させる。尾形の襲撃を受けた際は、偽の人皮6枚と本物2枚を持ち出し剥製所を脱出、月島の乗るトロッコに拾われ坑道に逃げ込むも、発破をきっかけとしたガス爆発・坑内火災による落盤で足を潰されたため、偽の人皮の入った鞄と鶴見への伝言を月島に託して死亡した。
青山賢吉(あおやま けんきち)
谷垣より1歳年長の男。谷垣の妹を娶り山奥の小屋で慎ましく暮らしていたが妻が疱瘡に罹患し、感染者を出す前に自身を殺し離村してくれるよう頼まれる。当初、彼女を見捨てず無理心中するつもりであった賢吉だったがフミはそれを許さず、賢吉にその後の命の使い道を探すよう諭した。賢吉はフミの望み通り、彼女を刺殺し小屋に火を付け谷垣家に何も伝えず村から離れた。
東京へ向かった後は第一師団に入隊し、日露戦争に従軍。二〇三高地での戦闘の際、塹壕から飛び出し、爆弾を体に括り付け突撃してきたロシア兵を引き倒すも、爆発に巻き込まれ致命傷を負う。目は潰れ鼓膜も破れるなか、自身の傍に来た人間(谷垣)に、妻の殺害に至る経緯及び妻の遺族にこの話を伝えてくれるよう懇願する。最期はクルミ入りのカネ餅を口に入れられたことで、自身の話を聞いていたのが谷垣であることを悟り、幾ばく安堵した表情を浮かべて息を引き取った。
熊岸長庵(くまぎし ちょうあん)
偽札犯で贋作師。芸術品の贋作や偽札を製造したかどで樺戸集治監に収監されていた男性、女性の美醜に若干の乖離がある。土方たちは熊岸に偽の刺青人皮を判別させる計画を立てていた。外役の最中に脱獄を企てたため射殺されたことになっているが実際は樺戸近くのコタンに居住している。アイヌの正体に気付いた杉元らの乱戦の最中、偽アイヌの放った毒矢に当たり死亡した。死ぬ間際、剥製屋(江渡貝)について自分と同じく、本物を超えるためのこだわりがあるはずということを伝えた。
犬童四朗助(いぬどう しろすけ)
樺戸集治監典獄(監獄長)。下戸。薩摩弁を修得している。実兄を箱館戦争で亡くしたため、樺戸に収監された土方に恨みを持っており秘密裏に幽閉。全てを奪った彼の瞳から光が失われた時処刑しようと企んでいた。自分が網走監獄に転属する際も土方を網走に移送した。
大島又輔(おおしま またすけ)
樺戸集治監4代典獄。樺戸に来た永倉と家永に熊岸が脱獄しようとして射殺されたことを告げた。実際は熊岸は鈴川の手引きで脱獄に成功しており、処分を免れるためにこのことを隠している。
有坂成蔵(ありさか なりぞう)
陸軍中将。本作における三十年式歩兵銃有坂銃)・二十八珊米榴弾砲の開発者。長年の兵器開発の影響で聴力を悪くしている。そのためか大声でガミガミ話す癖がある。
鶴見の許を訪れた際、右足を失った二階堂に、急造製作した仕込銃付き義足を贈った。
青原(あおはら)
千鶴子の透視を利用して儲けようとしている男。
三船千鶴子(みふね ちずこ)
超能力者。青原の許を脱していた。インカㇻマッに「東に向かえば追っている男に殺される」と忠告する。
蝮のお銀(まむし の おぎん)
千枚通しを使い旅人を幾人も殺害して来た女盗賊。右肩から腹部にかけて蝮の刺青を施している。出会った坂本慶次郎と夫婦になり銀行や郵便局を襲撃する。

料理[編集]

「グルメ漫画」と銘打ち、作中で北海道に縁ある食材や料理(主にアイヌ料理)が登場。調理や食事が描かれ各キャラクターが多様な表情を見せる。以下、紹介・列挙する。作中にて淡水魚や狩猟で獲った獣肉などの生食場面があるが、あくまで物語当時の食生活を描いている創作物でありウィルス性肝炎の感染や寄生虫、食中毒等の危険の留意が必要である。

チタタㇷ゚
アイヌ食で「我々が 刻む もの」の意。狩猟で仕留めたエゾリスやエゾウサギ、ヤマシギ等の小動物の皮を剥ぎ刃物で叩いて細かく刻んだ料理。刻むときに「チタタㇷ゚、チタタㇷ゚」と言いながら調理するのが慣わしである。本来は生食だがアシㇼパ同行者の和人の舌に合わせ団子肉にして、プクサキナプクサオシロイシメジエゾマツタケといったキノコを入れたオハウ(汁物)にしている。杉元曰く「肉のつみれ汁」。
キナオハウ
「野菜が沢山入った汁物」の意。杉元がアシㇼパのコタンでフチから振る舞われた。昆布と素焼きしたカジカ出汁を取り、大根人参・ジャガイモ・ホウレンソウ等を煮込んだ根菜の汁鍋。
カワウソのオハウ
毒罠で仕留めたカワウソ(エサマン)をぶつ切り肉にしてプクサで臭みを除き、牛蒡や大根等根菜類を入れたオハウ、食後の物忘れに注意。頭の丸ごと煮が最も美味。
にしん蕎麦
小樽で杉元が食した蕎麦。ツユは濃い目。
串団子
小樽の花園公園(現・小樽公園)名物の串団子。
桜鍋
東京で流行中の白石推薦すきやき風馬肉料理。強奪して屠殺した軍馬の薄切り肉とキャベツ・牛蒡を鍋に入れ、砂糖、醤油、酒、味噌で味を付け、加熱で桜色になった頃合いの馬肉を溶き卵に絡めて食す。なお、アシㇼパはこの時味噌の美味しさに気づくこととなる。
ニヘイゴハン
獲れたて新鮮、羆の心臓焼き血の腸詰煮。滋養強壮の効果が高く食すと精力が付く。
ユㇰのチタタㇷ゚
鹿の気管(セウリ)部分を刻んだつみれ肉料理。その他、肺と肝臓、脳髄は生食。塩を振った背肉部分の炙り肉。
ユㇰオハウ
プクサキナやプクサを入れた鹿肉のオハウ。
ルイペ
「とけた 食べ物」の意、立木に吊るした半冷凍の鮭の切り身。
オオワシの丸ごと煮
鋭い鉤爪に注意。
ニシン漬
白米身欠きニシン、キャベツ、大根、人参を入れ米麹で発酵させた保存食。杉元達を引き留めるため辺見が提供した。
子持ち昆布の串揚げ
海上で拾った子持ち昆布の揚げ物。
鯱の竜田揚げ
浜に乗り上げた鯱(レプンカムイ)の脂肪を鍋で煎って油を出し、赤身部分を酒と醤油で下味をつけて片栗粉をまぶし、油で加熱調理した揚げ物
イトウ刺し身と塩焼き
川で獲ったイトウの刺し身。鯱の竜田揚げの際に余った醤油を用いる。杉元は川のトロ、白石は鮭よりも上品な味と評した。
エゾシカ肉のライスカレーとラガービール
洋食店・水風亭メニュー、冷製札幌ビールと共に。
松前漬け
数の子に細かく刻んだスルメイカコンブを醤油で味付けした北海道の郷土料理。
お茶漬け
一膳飯屋にて白米に茶をかけた料理。細かく刻んだ沢庵をのせるのが土方の好みの食べ方。
アザラシ肉の塩茹で
浜辺のアザラシを撲殺して調理したもの。魚と牛肉の中間の味で臭みはない。
プクサの味噌付け
柔らかい新芽そのままを採って食す春の食材、辛いが味噌を付けて食すと絶品。プクサは病気や傷の治癒にも効果がある。
フキの若葉
生で食べられる春の食材。アイヌの子供らがおやつとして食べることもある。食べると口の周りが真っ黒になる。
イチャニウのオハウ
切り身にしたサクラマス(イチャニウ)、葉を落とし焼いて皮を剥いた蕗の薹の茎を入れた鍋に、フキやプクサを加えて塩で味付けしたオハウ。アシㇼパは春の汁物の中では最も美味しいと評した。
カネ餅
阿仁マタギの携行食。水を加えた米粉に味噌か塩を混ぜ込み、それを葉に包み、蒸し焼きにしたもの。凍りにくく保存がきく。谷垣は隠し味としてクルミを混ぜている。
カワヤツメうな重
小川で獲ったカワヤツメ(ウクリペ)を背開きにして串を通した身を炭火で炙り、醤油や酒、砂糖で作ったタレをかけた蒲焼。採取したワサビを薬味に添えた。ウナギよりやや固めの歯ごたえのある身が特徴。
なんこ鍋
空知地方の郷土料理である馬の腸を味噌で煮込んだもつ煮。江渡貝剥製所にて土方一派と杉元らを執り成すため家永が振る舞った。
クトゥマ(筒焼き)
オオウバユリ(トゥレㇷ゚)の鱗茎から作った澱粉をヨブスマソウの茎の中に入れ蒸し焼きにした団子。牛山曰く「葛切りみたい」。ニジマスの筋子(チポㇿ)や味噌を付けても良い。オオウバユリの鱗茎はそのまま焼いて食べるだけでも美味な模様。
豆菓子
煎り大豆に砂糖を衣掛けした菓子。

制作背景[編集]

作者の曽祖父が日露戦争に出兵した屯田兵であったことから、かねてより関連する作品を描きたいという希望を抱いていたところ、前作の『スピナマラダ!』連載終了後に担当編集者から「北海道を舞台にした猟師の作品」をと持ちかけられ、始めは日露戦争帰りの主人公にした「狩猟マンガ」として構想された[4]。しかし狩猟だけでは、ネタ切れが早いと思われたため、北海道の実際の歴史の中から作者が興味を惹かれた「羆害」、「土方歳三」、「脱獄王」、「埋蔵金伝説」、「アイヌ」といった様々な題材を拾い上げて組み入れていき、本作が練り上げられていくことになった[4]。特にアイヌに関しては、これまでのマンガで取り上げられることが少なかったため、読者にとって新鮮であろうと考え、また取材に協力してくれたアイヌの人々から「可哀想なアイヌではなく、強いアイヌ」を描くことを期待されたこともあり、迫害や差別といった暗い背景ではなく、「明るく、おもしろいアイヌ」を描いていけば、読者に受け入れられていくと確信していたという[4]。料理に関する要素が強いことに関しては、作品構想の始めのテーマが狩猟であったこともあり、獲物を生活に活かしていく中で、料理描写は必然と考えられたためとしている[4]

評価[編集]

アイヌ文化を丁寧に描いているとして平取町アイヌ文化情報センターでも人気になっており、アイヌ民族博物館の職員は「文献や資料をよく調べている。文様も細かく描写されており、見応えがある」と評価している[5]

書誌情報[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 公式が「冒険(バトル)」と「歴史(ロマン)」と「狩猟(グルメ)」と銘打つ。
  2. ^ a b 「ゴールデンカムイ」特集 野田サトル×町山智浩対談”. コミックナタリー. 2015年12月18日閲覧。
  3. ^ 下記の囚人の他に尾形に射殺された囚人、33人を殺害した津山と呼ばれる囚人、茨戸で刺青のみ取引きされていた囚人がいる
  4. ^ a b c d 『ゴールデンカムイ』野田サトルインタビュー ウケないわけない! おもしろさ全部のせの超自信作!”. このマンガがすごい!web/宝島社. 2016年4月1日閲覧。
  5. ^ マンガ大賞作「ゴールデンカムイ」 忠実描写、アイヌ民族も注目 北海道新聞 2016年4月4日
  6. ^ 編集者が選ぶコミックナタリー大賞、今年度の1位は九井諒子「ダンジョン飯」”. コミックナタリー (2015年10月1日). 2015年10月1日閲覧。
  7. ^ マンガ大賞2016は野田サトルの「ゴールデンカムイ」に決定”. コミックナタリー. 2016年3月29日閲覧。

書誌出典[編集]

外部リンク[編集]