ゴールデンカムイ

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ゴールデンカムイ
ジャンル 冒険バトル)、歴史ロマン)、狩猟グルメ[1]
アイヌ文化ストーリー漫画青年漫画
漫画
作者 野田サトル
出版社 集英社
掲載誌 週刊ヤングジャンプ
レーベル ヤングジャンプ・コミックス
発表号 2014年38号 - 連載中
巻数 既刊9巻(2016年11月時)
その他 アイヌ語監修:アイヌ語研究者・中川裕
テンプレート - ノート
ポータル 漫画

ゴールデンカムイ』は、野田サトル(作画)による明治末期の北海道を舞台にした日本の漫画作品。

あらすじ[編集]

日露戦争(明治37年)に従軍した元陸軍兵・杉元佐一は、戦死した親友・寅次の「妻の梅子の眼病を治してやりたい」という願いを叶えるため、一攫千金を夢見て北海道の地を踏み砂金を採っていた。ある日杉元は、アイヌが秘蔵していた八万円(現代の価値にして約8億円)相当の金塊の噂を耳にする。アイヌから金塊を奪った男・のっぺらぼうは、収監された網走刑務所の獄中で、同房の囚人たちの体に全員合わせてひとつとなる入れ墨を彫り、金塊の隠し場所の暗号にしたという。その後その囚人たちが脱獄したという話を聞きつけた杉元は、金塊探しを決意する。

探索行についた杉元は、ヒグマに襲われた窮地をアイヌの少女・アシㇼパに救われる。アシㇼパの狩人としての技量と知識に感服し、さらにアシㇼパの父が金塊を奪われて殺されたことを知った杉元は、自身は親友の願いを叶えるだけの金を手に入れる代わりに、残りの金塊をアイヌの手に戻しアシㇼパの父の仇を討つことを条件に、アシㇼパに金塊探しへの協力を求め、行動を共にすることになる。

入れ墨の手がかりを求めて向かった小樽で、杉元達は入れ墨持ちの囚人の一人を捕らえるが、同じく金塊を狙う陸軍第七師団尾形百之助によって囚人を射殺され、尾形と戦う。さらに次に捕らえた入れ墨の囚人・白石由竹から、脱獄囚の中に死んだはずの土方歳三であるという噂の老人がいたと聞かされる。その土方歳三もまた、かつての盟友・永倉新八と合流し、元囚人にして不敗の柔道家・牛山辰馬を仲間に加えて、自らの理想を叶えるために金塊を追い求めていた。

杉元は第七師団の谷垣源次郎らの追跡を受けるが、アシㇼパの友である白いエゾオオカミレタラの加勢で振り切り、アシㇼパのコタン(アイヌの村)に逗留する。アシㇼパのコタンでの平和な境遇を知った杉元はこれ以上危険に巻き込めないとして彼女を残して去るが、小樽の街で一人聞き込みをしていたところ第七師団の鶴見らに捕縛され尋問を受ける。絶体絶命の杉元だったが駆けつけたアシㇼパと白石の協力で辛くも危地から脱出し、改めてアシㇼパと白石と共に金塊獲得を目指すことになる。

登場人物[編集]

主要キャラクター[編集]

杉元佐一(すぎもと さいち)
元・大日本帝国陸軍第一師団一等卒 特別支援隊隊員で、関東出身。猫舌。
自分以外の杉元家の家族が結核に罹患し死亡したため、無人となった実家に火を放ち、予てから恋仲であった梅子に暫しの別れを告げ逐電、天涯孤独となる。その後、陸軍入隊。旅順攻囲戦では夜間奇襲に参加、続く二〇三高地でも奮戦し死地から生還。卓越した戦闘力及び強運、軍医が見放す重篤な負傷でも翌日には治癒し戦場を駆ける驚異的な回復力から不死身の杉元の異名で一目置かれ、戦場で負った夥しい傷跡が顔を含め全身に残っている。気に入らない上官に瀕死の重症を負わせたために、軍人恩給の資格が消滅した。満期除隊で復員。眼病を患った梅子の夫で、共に戦い戦死した寅次の遺言を受け、治療費用を手早く得るため独り北海道へ渡り砂金採りをしていたある日、アイヌ埋蔵金の噂話を飲兵衛の男から聞き、当初は与太話と疑うも成り行きで証拠の一部を見たことで事実と確信したが、羆に襲われたところを突如現れたアイヌの少女・アシㇼパの機転と手助けで命拾いする。アシㇼパから黄金に携わった父に降りかかった惨事のことを聞いたことで、共に力を合わせ北海道各地を巡る探索行が始まった。梅子に思いを馳せつつ、追尾を振り切り命を狙う者共を捻じ伏せ斃し、旅の道中にて珍味・美味の馳走に預かり堪能する。
除隊後も当時の帝国陸軍で制式採用されていた三十年式歩兵銃二十六年式拳銃で武装している他、軍帽や弾薬盒、肥後守等の装備一式を携行。
普段は気さくで茶目っ気もある恥ずかしがり屋。自分や恩人であるアシㇼパに危害が及ぶ状況下では、生存本能と戦闘能力を最大限発揮し排除と殲滅を行う。作者の曾祖父が名前の由来である。
アシㇼパ
10代前半の利発で天真爛漫なアイヌ人少女。主に北海道の自然とアイヌ文化を紹介する案内役となっている。幼名は「祖父の尻の穴」意味のエカシオトンプイ、戸籍上の和名小蝶辺明日子(こちょうべ あすこ)という。日本語とアイヌ語の二言語話者。作中ではアシリパのリはアイヌ語小書きリで表記されている。緑が散った濃紺色の瞳を持った美少女だが、頻繁に変顔をする。
「新年」「未来」を意味するアイヌ名に因み、アイヌの信仰や慣例を重んじた上で古い因習に捕われず現実的かつ合理的で柔軟な思考も持ち併せ「新しい時代のアイヌの女」を自負している。本来ならアイヌ娘が担うべき仕事や嗜みをせずに野山を駆けていた。
出生直後に母が病死し、父の狩猟に共として連れられ幼少期を過ごす。山中で羆に狙われていた杉本を持ち前の知識と技術で救い、アイヌの隠し金塊にまつわる父を殺害された事件を打ち明けたところ協力を要請され行動をともにすることになる。弓矢の名手にして狩猟の腕も高く北海道の気候や動植物、アイヌの文化・風習・料理に精通し、その都度、同行者に教授している。大人に対して物怖じせず、年長の和人らに野生動物の脳髄生食を気前良く振る舞い世話を焼いているが、無礼・背任・失態を働いた者に容赦無い制裁を加える反面、歳相応の幼さも見せる。、杉元が携帯していた味噌やカレーなど粘性がある茶色い物体は全て大便(オソマ)と見做して嫌悪していたが、美味が判明してから和食の味に舌鼓を打つようになった。
金塊探しのための脱獄囚探索中に、殺害されたはずの父が金塊強奪犯の「のっぺら坊」であると聞き、真実を知るために網走監獄へ向かうことを決意する。危険と窮地を潜り抜け、黄金を巡って取り巻く奸謀に翻弄されつつ助け合い、健気な身ながら旅の牽引者として狩猟に勤しみ仲間たちの馳走を拵える。
野田のブログによると小樽近辺にあったとされる村で生まれ育ったという設定で、携帯している小刀(メノコマキリ)は「ユーカラの里」(登別市)という施設で展示販売されていた商品を購入し作中に採用している。
白石由竹(しらいし よしたけ)
強盗と度重なる脱獄で収監されていた刺青の囚人で坊主頭に長いもみあげの男。杉元とアシリパに同行することになった。
少年時から素行不良で幼年監獄に収容されては脱走を繰り返し、成年になって樺戸集治監に収監されてからも前歴から看守達の間から札付きと警戒されていた。小細工と関節を脱臼させる技を駆使した脱獄の才能と技術、逃亡の計画性に長けているが、社会性に於いては思慮が浅く、脱獄囚の身でありながら下心だけで官憲の前に自ら姿を晒すなど、行動も思考も場当たり的であるが、一目置かれている側面もある。全国各地の監獄に服役しては脱獄を繰り返していた最中に「脱獄王」の渾名が付いた事に加えて服役期間も延び、生活の大半を獄中で過ごす。実在の脱獄囚であった白鳥由栄がモデル[2]
小樽の森で杉元達に捕まり逃亡を図るも追っ手の杉元共々真冬の川に落下、火を熾す手段が無い中、凍死間際の状況で隠し持っていた実包を提供することを条件に杉元から解放される。師団兵舎に杉元が監禁された際には金塊の分け前を貰うことを条件に杉元救出に協力し、行動を共にする。また、土方陣営に対しても、街で偶然鉢合わせた牛山と紆余曲折を経て接触し、密かに協力体制を結ぶ。しばしばアシㇼパらに役立たず扱いされるが、いざという時の潜入技と脱出術に加え間諜役としての能力を発揮し暗躍する。
作中では主にギャグ・パートやコメディリリーフの扱いで、欲深いが剽軽な性格、頻繁に粗相を起こし助平の典型的な与太郎として描かれる。
キロランケ
元・大日本帝国陸軍第七師団工兵部隊隊員で、若い時分に友人であるアシㇼパの父と共にロシアのアムール川流域から移り住み、小樽から遠く離れた別のコタンに居住し、妻と2人の子がいる。
子供の頃から馬に慣れ親しみ馬の体調や感情に通じており、どんな馬でも無下に扱うのは忍びないと思い入れも深く、日露戦争出征時には軍馬の管理を一任、爆薬などの扱いにも明

るい。

のっぺら坊の正体はアシㇼパの父であると明かし、網走監獄へ向かう杉元らと行動を共にする。

土方歳三と仲間たち[編集]

土方歳三(ひじかた としぞう)
元・新撰組副長であった旧幕府軍の志士”鬼の副長”、好物・細かく刻んだ漬物を乗せたお茶漬け。史実では明治2年1869年)の箱館戦争にて戦死しているが、本作では戦況の悪化した函館から秘密裏に落ち延び、素性を隠し政治犯の模範囚として長らく月形樺戸集治監に幽閉されていたという設定になっている。後に網走監獄に収監された。欲が出た一部の若い屯田兵達が囚人24名の身柄を強引に移送した際、軍刀を奪取して囚人達を指揮し兵らを殲滅、脱獄を成功させてその正体を晒す。銀白色の長髪に顎髭をたくわえた70代の老人として描かれているが、血気劣らぬ若々しい様子から人魚の肉を喰らい不老不死になったと噂されるほどである。
かつて志半ばで潰えた蝦夷共和国の構想を踏襲するが如く、のっぺら坊と一致する何らかの目的に向けて周到な計画を企て銀行を襲撃し活動資金を得ると共に手始めに第七師団撃砕を目論み、密かに杉元一行の動向を追いつつ行く先々で刺青人皮の情報と同志を募る。銀行強盗で愛刀・和泉守兼定を奪還した他、ウィンチェスター・モデル 1892で武装している。
永倉新八(ながくら しんぱち)
新撰組に所属していた「新選組最強剣士」で、渾名はガムシン(我武者羅な新八)。警察官僚・月形潔の招きで、明治15年から4年間、樺戸集治監の剣術師範を務め、看守に剣術を指導した関係で、同監に訪問した際、かつて袂を分かった志士・土方と鉢合わせ、虜囚で収監されていた知る。土方脱獄後は、家主の亡くなった親戚の家屋や資金、ロシア商人から試供品として入手した銃火器を土方へ提供し、同志として共に行動している。普段は落ち着いた好々爺だが、新撰組時代の血の気の多さと最強と言われた撃剣の技量、奥義「龍飛剣」は健在で、老境になって尚、抜刀するや昔の血が滾り、複数人に囲まれようと一切の反撃を許さず、瞬時に斬り捨てる一流の剣豪。
牛山辰馬 (うしやま たつま)
かつて10年間無敗の柔道家として最強の座を独占した屈強な大男”不敗の牛山”。柔道師範の妻に欲情し、姦通した事が露見し一門の制裁に遭うが、逆に師を殺害し門下生10人に重傷を負わせた咎で服役。
現役時代は毎日10時間を超える鍛錬を欠かさず行い、網走監獄の死人が出るほど過酷と言われた刑務作業に対しても稽古に及ばないと退屈していた。馬や羆ですら足払いで投げ飛ばす強靭な肉体に加え、はんぺんを貼り付けたような四角いタコが額にあり、五寸釘も通さぬ硬さを持つ。定期的に性交しないと人事不省に陥りヒトの姿をしている者なら、力に任せて見境無く犯そうとするほどの凄まじい精力の持ち主でもある。
脱獄後に潜伏先を掴んだ土方と一戦交えて黄金の分け前目当てに手を組み、周辺を探っていた同房仲間の白石を取り押さえ、土方と密約させることに成功する。互いの素性を知らず札幌にて杉元一行と遭遇、柔道耳を切掛に組み合った杉元の強さを気に入り会食に誘い、酒席でアシㇼパに紳士の陰茎の見定め方を講義して「チンポ先生」と慕われる。樺戸集治監近くのコタンでは偽アイヌを圧倒し、その膂力も持って羆さえ撃退、その強さを見たコタンの女達から秋波を送られた。
家永カノ (いえなが かの)
元・医者の老人男性で、患者を殺害しては遺体を利用していた罪で収監されていた刺青の脱獄囚。「家永カノ」は偽名である。
身体の不調部と同じ部位の食材を食べることにより回復が得られるという「同物同治」に確たる信念を持ち、「最高の自分」に固執し、脱獄後は「札幌世界ホテル」の所有者を消し、若く妖艶な外見の女将に身をやつし、隠し通路や仕掛けを施す。欲する部位を持った宿泊客に目星を付けてはガスで眠らせ地下室に監禁して拷問の末殺害、「同物同治」の餌食としていた。
ある日、牛山がホテルを訪れ、間を置かずに白石らが来客したところを、牛山の強靭さを狙い、刺青を巡って騒動になるのを懸念して白石を監禁するも身元が割れて手投げ弾で反撃され、瞳に惹かれてアシㇼパを狙った事に激高した杉元と、酔いと性欲で我を失った牛山の大乱闘に巻き込まれる。収拾つかず観念した家永がホテルを焼失させる装置を作動させた事に加え、白石が誤って地下室に落としたキロランケの爆薬と合わさり大爆発してしまい、寸でのところで牛山に救出され、同じ刺青脱獄一味の中年男性が男娼を伴い宿泊していた情報を明かす。その後は牛山と共に土方の一団に合流する。
尾形百之助
大日本帝国陸軍第七師団の項の尾形百之助を参照。

大日本帝国陸軍第七師団[編集]

北海道を本拠とし旭川に本部を置く陸軍師団、別名「北鎮部隊」。かつて屯田兵と呼ばれた組織を前身とした部隊。戦争帰りの兵士が多く、瀕死の重傷であっても反撃を試みたり、不意な襲撃にもすぐに対応するなど個々の戦闘力も高い。

鶴見(つるみ)
階級は中尉で、情報将校。元は裕福な育ちでピアノ演奏も習得している。
日露戦争にて二〇三高地を吶喊攻略、続く奉天会戦で砲弾の破片の直撃を受け、頭蓋骨前面と前頭葉の一部を吹き飛ばされ額当を装着、感情が亢ぶると何らかの体液が額から漏れ出る体質になった。そのためか、奇矯で突飛、残忍な言動が目立つようになったと自分では語っている。
旅順攻囲戦で多大な犠牲を払い勝利したにも関わらず戦利の薄い結果に終わったため、謀略と策謀を用いて第七師団の結束を強め掌握し、アイヌ埋蔵金を軍資金に最新の武器を仕入れ、北海道に軍事政権を興して戦友や戦死者遺族の窮状を救うという計画を立ち上げたため、刺青人皮を追う。装備はボーチャードピストル
軍服の下に「33人殺害犯」の刺青人皮製の肌着を身に纏い、常に情報を収集して師団内の造反者を炙り出し、贋物刺青人皮を用いて黄金を追う他の存在に揺さぶりをかける。
尾形百之助(おがた ひゃくのすけ)
上等兵。日露戦争終結後に命を絶った花沢中将の妾の子であり、お婆ちゃん子として育つ。300メートル以内であれば確実に頭部を撃ち抜く腕を持った狙撃手で、格闘の間隙を縫って歩兵銃の遊底を抜き取り無力化させるなど手練の兵士。鶴見をして「敵に回すと非常に厄介」とまで評され、表情に乏しく飄々とし腹の中が探りにくく、その時々の状況に応じ、独断で先んずる「コウモリ野郎」。
師団に無断で単独行動していた先にて杉本の一撃で昏倒し川へ転落、腕を折られ滑落の際に顎骨を割り死ぬ寸前の所を仲間に救助され、手酷い負傷を被り衰弱甚だしい中、入院先で意識朦朧ながらも刺青を追う存在を仲間へ伝える。この時の負傷が元で左右下頬に縫合痕が残る。
入院中に襲撃犯(杉元)を捜索していた同じ造反一派であった伍長の班が謎の失踪。病院から抜け出し、部下の二階堂浩平と共に、行き着いた先のアイヌ村にて谷垣を発見する。造反計画を所属師団に密告されると疑い口封じを試みるも谷垣の反撃を受け、これにより造反が露呈。直後に現れた鶴見の部隊を排除し逃亡する。
逃走後、茨戸(現・札幌市北区)の宿場町に現れ土方らと対峙、その抗争に乗じて刺青人皮を先手を取って入手し土方と取引、共闘を組む。夕張において鶴見の部下を奇襲、その目的を把握しつつ追跡するも一歩及ばず結果、杉元一行の旅の同行者となる。
谷垣源次郎(たにがき げんじろう)
大日本帝国陸軍第七師団一等兵で、秋田県阿仁(現・阿仁町)出身の元・マタギの青年。
実妹・フミが嫁ぎ先だった家屋もろとも焼けた刺殺体で発見された。義兄・青山賢吉の犯行と断定し行方を追う中、賢吉が陸軍に入隊したという噂を聞き自身も入隊。戦闘中に賢吉を発見するも真実を知って報復心の勢いだけで家族と村を見限って兵士となった今迄の行動が全くの無意味で利己的だった事を知り懊悩する。
玉井伍長の班にて尾形加害犯捜査の任に就き、不審者のアイヌ人少女(アシㇼパ)を単独で追跡・保護しようとした時、突如現れた白銀の雄狼(レタㇻ)による牙の一振りで右足を砕かれ失神、行き倒れていた所を二瓶に手当されたのが縁で白狼狩りに同行、行動を共にする内に己の身の漉し方の選択に迫られ、軍帽を焚き火にくべ、二瓶と同行する。
二瓶と杉元の交戦にてアシㇼパの身柄を抱えての移動中、不注意から狩猟罠による矢毒を受けるも、アシㇼパの応急処置により毒死から脱する。二瓶死亡後、アシㇼパの意向でコタンへ運ばれ治療と保護を受けていた療養の最中、懐柔に拗れた玉井らを排除した嫌疑で捜索していた尾形らと対峙、二瓶の猟銃を手にマタギ出の知恵と経験を活かし撃退、直後に現れた師団兵から鶴見が尾形らを泳がせていたことを知る。
尾形ら撃退後はアイヌの普段着を羽織りアシㇼパの祖母・フチの世話を受け静養生活を送る。傷が癒えた頃にコタンを訪問したインカㇻマッの占いで、大事な孫娘に振りかかるであろう禍事を案じて寝込んでしまったフチを安心させるため、自分の命の使い道を悟り、世話になった恩返しに孫娘を無事送り届ける約束を告げて出立する。
二階堂浩平・洋平(にかいどう こうへい・ようへい)
一等卒の双子の兄弟、静岡出身。娼館街で刺青の情報を探っていた杉元を連行、兵舎内に拘禁した杉元を拷問の末殺害しようと狙った際に浩平が見張り役、洋平が刺殺を受け持つが白石により既に枷を解いていた杉本に声を挙げる間も無く返り討ちにされ、洋平の死体は杉元によって臓物を抜き取られ、兵舎脱柵の欺瞞に利用される。
洋平の死後、浩平は谷垣追跡に尾形に同行。谷垣が仕掛けた囮に気を取られ、羆の爪が頭部を直撃、尾形の援護で助かるも左耳を消失する。直後に反乱分子の動向を追っていた鶴見の隊に捕縛され造反の疑いで右耳を削がれる拷問を受けた末に取り引きに応じて造反仲間を明かし元の所属に戻り、削がれた耳は常に携帯し、その耳を洋平に見立てて会話するという奇癖が生じており、度々鶴見の癇に障っている。贋物刺青人皮の証拠隠滅時、土方の一刀により右足を失う。
月島(つきしま)
軍曹。常に鶴見の指示に従い随行する忠実な部下。贋物刺青人皮制作を委託した剥製所に詰める任務に就くが場を離れた隙に襲撃され尾形と交戦。襲撃の最中に持ちだされた贋物刺青人皮を死守・確保すべく追跡の手から逃れる為に炭鉱内へ逃げ込み炭鉱爆発に巻き込まれる混乱の中、辛うじて確保し炭鉱から脱出、鶴見に極秘の伝言を伝える。新任少尉の補佐を担うも鶴見を前にすると一々会話の中継役にさせられ心中面倒くさいと感じている。団員の中では比較的温厚で常識人なため、単行本では「第七師団の良心」と紹介されている。
鯉登(こいと)
少尉、士官学校卒、鹿児島県出身で褐色肌、自顕流の使い手。鶴見に憧れており彼のブロマイドを胸ポケットに忍ばせている。興奮すると早口の薩摩弁になる。
白石と熊岸の交換のために旭川に来たという犬童を偽物と気づき銃撃、気球隊の試作機を強奪し逃走を図る杉元や白石を追跡し同機に飛び乗る。自顕流による猛襲で杉元を追い込むが、アシㇼパの矢や命綱を体に巻き付けた上での白石の飛び蹴りを受け森に落下した。その後、報告のため鶴見と面会し小樽での囚人狩りへの随行を命じられる。
淀川輝前(よどがわ てるちか)
連隊中佐。二〇三高地で鶴見の献策を無視して無謀な突撃を敢行し、多くの犠牲を出したことを黙殺したため、負い目がある部下・鶴見の協力者となる。旭川の司令部で網走監獄の典獄である犬童と看守に扮した鈴川・杉元の訪問を受け、取引を持ちかけられる。
玉井・野間・岡田(たまい・のだ・おかだ)
尾形らと共に鶴見に対して反乱計画の同志である野間や岡田と共に同班の谷垣を説得して造反に組み入れる手筈であったが、尾形加害犯捜査にて山中で捕捉した杉元から尾形が重傷を負った関与を尋問中、乱入してきた羆により3名共死亡。爾後、師団に帰営せず谷垣含む班4名全員が失踪扱いとなる。尾形は玉井伍長の班が行方不明となった原因を谷垣が返り討ちにしたものと誤解した。

刺青を彫った男及び脱獄囚[編集]

のっぺら坊と呼ばれる男により、身体にアイヌの金塊の隠し場所に関する暗号図を彫られた囚人たち。暗号を入れた脱獄囚は24人いるとされ、現時点で12人の存在が確認されている[3]

のっぺら坊(通称)
網走監獄の「第弐拾四房」に収監されている死刑囚で、頭部全体を含む皮膚と顔面の耳や鼻が剥脱・欠損した姿形の為「のっぺらぼう」と呼ばれる。アイヌが和人に抵抗する軍資金として、秘密裏に金塊を蓄えていたアイヌを殺害した強奪犯とされ、金塊を隠した後に、支笏湖で警察に捕まり網走監獄に収監。金塊の隠し場所を知ろうとした看守から片足の筋を断たれたが「脱獄に成功した者には金塊の半分をやる」と伝え同房になった囚人らの身体に入れ墨を彫った。しかし、描かれた入れ墨は分割された暗号になっており、皮を剥いで全て繋ぎ合わせて解読をする仕様になっているため、脱獄囚達は刺青人皮として最後には殺害される役回りであった。目的が一致している土方に対してのみ実際の埋蔵金は他囚人に語った千倍、2万貫の黄金(75トン、2015年時換算で約8千億円)を隠匿していると告げた。
後藤(ごとう)
殺人犯、泥酔して妻子を刺殺した罪で服役。酒代稼ぎに少量の砂金を採っていた飲兵衛の男で、砂金が採れずに不貞腐れていた杉元へ、酔いに任せてアイヌの金塊に纏わる噂を語った翌日、話した内容に怖気づき杉元の口封じを試みるも失敗、山へ逃亡するが羆に捕食され、刺青人皮となる。
白石由竹
主要キャラクターの項の白石由竹を参照。
土方歳三
土方歳三と仲間たちの項の土方歳三を参照。
二瓶鉄造(にへい てつぞう)
多弁にして豪放磊落、単独で過去200頭超の羆を屠り、入山先の羆を全て仕留めると謳われ同業者界隈から「冬眠中の羆も魘される悪夢の熊撃ち」と名が通り、恐れられる初老の猟師で、「女は怖い」と語る。アイヌ犬のリュウを連れ、当時としては旧式の十八年式単発銃を持ち、「一発で決めねば殺される」との信念から予備弾を用いず羆を狩る。数年前、猟師を銃殺し獲物を横取りしては金を稼いでいた輩3名に物陰から狙われ怒り、殺害したため網走監獄に収監されるが狩りの果てに山で命尽き、その身が獣に喰われ排泄物と化す終の生き方を率先すべく刺青を入れて脱獄に加わる。金塊の在処には頓着無く、知力と体力を駆使して動物・人間問わず獲物を狩る興奮に執着する。口癖は「勃起!!」。妻と15人の子供がいるが、絶縁状態である。
山中、行き倒れていた谷垣を救助した際、既に絶滅したと思われていたエゾオオカミの存在を知って猟師魂が猛り、最後の血脈に留めを刺し途絶えさせた猟師としての偉勲を立てるべく全てを賭して獲物を追うが、勝利を確信した直後、背後から現れた雌のエゾオオカミに首を噛み切られ致命傷を負い未遂に終わるも充実した己の有様に満足しつつ絶命。杉元の手により、刺青人皮となる。
牛山辰馬
土方歳三と仲間たちの項の牛山辰馬を参照。
辺見和雄(へんみ かずお)
腰の低く、一見あたりが柔らかいが、連続殺人犯の男。子供の頃に弟が巨大な猪に襲われて喰い殺される現場を目撃してしまい、必死の抵抗も虚しく死にゆく弟の虚ろな目と姿に魅入られ、それを思い出す度に欲情に近い殺人衝動に駆られ各地を放浪しながら犯行を重ねて100人以上を殺害してきた快楽殺人鬼。
脱獄後は、鰊番屋で寝起きし漁に従事する季節労働者である「ヤン衆」として、潜伏しつつ治安組織から追跡されるよう刺殺体に痕跡を残すと同時に自身も抵抗の末に殺される体験を得ようと欲していた。鰊漁出航時にクジラの激突で溺死寸前を救助されたその際、出征経験のある杉元の優しさと強さに焦がれ殺害を決意する。第七師団から杉元を匿おうと手引するが、限界と見るや師団兵を殺害し銃撃を受け負傷してしまい、本性を知らぬまま傷ついた身柄を保護しようとする杉元を背後から狙う直前に同房だった白石が気づいて正体が判明、杉元の反撃により致命傷を受ける。最期は突如シャチに攫われ、想像を超えた本懐を遂げる煌きの中でシャチに嬲られ昇天し、遺体は杉元に回収され、刺青人皮となる。
家永カノ
土方歳三と仲間たちの項の家永カノを参照。
若山輝一郎 (わかやま きいちろう)
並居る商売敵を斬り伏せ伸し上がった苫小牧で八百長競馬を命じていたヤクザの親分で博徒で、逆手に握った仕込み刀の一閃で両断するほどの剣客でもある。上半身には倶利伽羅紋々があるため、他の脱獄囚と違い、暗号の刺青は下半身に彫られている。
大枚注ぎ込んだ八百長の指示を無視して勝利した騎手のキロランケを追って空き家で一服していたところ、羆に追われていたキロランケ含む杉本一行と遭遇、即興で家主に成りすますも若山の男娼買いに気分を害していた子分・仲沢の当て付けにより企てが破綻してしまう。3頭の赤毛羆に包囲され撃退可能な装備を失った窮地の中、杉元らとの丁半博打で負けた若山が屋外に落ちている銃弾を回収したが、土饅頭となり餌にされかかるも機関銃を携え再登場し、最期は羆に襲われた仲沢を助けるため深手を負いながらも羆を討ち斃した末、仲沢と手を握り合いながら死亡し、杉元の手で刺青人皮となる。
鈴川聖弘(すずかわ きよひろ)
詐欺師で、変装の達人。アメリカ軍大佐になりすまし、富裕層の女性に対する幾つもの結婚詐欺の咎で服役していた。脱獄後、政府の高官に扮して樺戸集治監を訪れ、内部から多くの囚人の脱獄の手引きをした。
樺戸集治監近くのアイヌのコタンを襲い男を全員殺害、女は脅して妻役としてコタンを乗っ取る。自身は「村長・レタンノ エカシ」を名乗り、他のアイヌに扮した囚人らと共に、訪れる旅人の寝込みを襲い殺害しており、熊岸には偽札作りを命じていたが、杉元らと偽アイヌとの乱戦で捕縛される。その後、白石奪還の協力を命じられ、網走監獄の典獄である犬童に扮し杉元と共に旭川の司令部に向かう。熊岸長庵と白石の交換を持ち掛け淀川を騙す寸前まで行くも、鶴見の命を受けた鯉登に見破られ銃撃された。
坂本慶一郎(さかもと けいいちろう)
稲妻強盗と呼ばれる強盗犯。健脚で一日に約200キロ走り続け逃げ切ったとされる。蝮のお銀と出会い夫婦になると、二人で銀行や郵便局を襲い世間の注目を集める。

アイヌ[編集]

フチ(アシㇼパの祖母・親族呼称)
アシㇼパの母方の祖母でアイヌの老女、口の周囲に彫った刺青も大きく村一番の実力者。アイヌ語話者で、日本語が判らないため、孫達の通訳を介して和人と会話する。孫娘を自分の宝と思っている反面、アイヌの女としての嗜みを身につけようとせず、狩猟に精を出している様を嘆いて心配し、呆れている。
孫娘が初めて客人を連れて来た事を喜び、快く和人を迎え入れ、矢毒で息も絶え絶えの兵士を手厚く看病するなど甲斐甲斐しい性格。アイヌ人としての伝統と因習を重んじているため、大事な孫娘に凶事が振りかかるという占いを信じ込み、床に伏してしまう。その孫娘を無事に連れて帰ってくると約束を告げた谷垣に涙し、カムイの加護を捧げ見送った。
オソマ(幼名)
アシㇼパの従妹で父のマカナックル似の少女。アイヌ独特の風習に沿い、病魔除けの幼名として「糞」(オソマ)と命名された。和人の耳に興味津々で日がな一日遊戯に明け暮れ、谷垣に懐き常に付き添い、幼い身ながら窮地に助力、谷垣出立時には自作のテクンペ(手甲)を手渡し涙ぐみながら見送った。
アチャ(アシㇼパの実父・親族呼称)
極東ロシアからの渡来人で小樽周辺で出会ったアイヌ人女性から言葉と文化を学び、実娘を授かる。豊かな黒髭と顔面に縦横数本の裂傷痕が特徴。
マカナックル
アシㇼパの母方の叔父でオソマの父。先祖のアイヌらが集めた砂金の存在を知っており、川からの恵みを尊んで川を汚さないようにしてきたアイヌの生き方から外れていたものであることから「呪われたもの」と評した。
インカㇻマッ
苫小牧勇払のコタンに現れ居ついた、良く当たると評判の謎の占い師の女性。名の意味は「見る女」。アシㇼパの父を知っている。細面の美女で、アシㇼパからは「イカッカラ・チロンヌプ(キツネ女)」と呼ばれている。杉元に気がある素振りを見せたり、アシㇼパをやきもきさせる描写がある。
白石に苫小牧の競馬場に連れ出され、キロランケが参加したレース以外の馬券を占いで的中させている。アシㇼパのコタンへ赴く前、鶴見から谷垣を利用するよう助言を受けており、谷垣と共にアシㇼパを探す旅に出る。
チカパシ
疱瘡の流行により家族が亡くなったため、アシㇼパのコタンの老人たちによって育てられた少年。名前は「陰茎(チカプ)を立てる(アシ)=勃起」という意味で、亡くなる前の親から正式な名として付けられた。狩りに興味を持って谷垣を慕い、旅立った谷垣たちを追い掛け同行する。

主要キャラクターの関係者・親族[編集]

寅次(とらじ)
杉元佐一の幼馴染で親友。負けん気は強かったが、杉元には何をやっても尽く勝てなかった。しかし、自身の方が梅子をより幸せに出来ると想いを打ち明けて結婚し子を儲けたものの、目を患い視力を失つつある妻となった梅子の眼病を治すためにアメリカへの渡航を考えていたが、日露戦争で杉元に梅子と息子を託し戦死する。
梅子(うめこ)
杉元の幼馴染で想い人で、自身も杉元に想いを寄せていた。杉元家に結核罹患者が出ようと、駆け落ちも辞さぬつもりでいたが、杉元の説得で寅次と結婚し一子授かる。しかし、目を患った上に寅次に先立たれ、戦争未亡人となる。清楚な佇まいながら気丈な性格。
青山賢吉(あおやま けんきち)
谷垣家の娘・フミを娶り山奥の小屋で慎ましく暮らしていたが妻が疱瘡に罹患してしまい、発症した事を村の者達に知られる前に、自身を殺してから離村するよう妻に乞われ、さらに命の使い道を探すよう諭され、苦渋の決断の末、フミに手を掛けた後に、住まいに火を点け独りで村から離れる。
村から出た後、関東第一師団に入隊し、日露戦争に出征。二〇三高地での戦闘中、近距離で爆発の直撃を受けて目は潰れ鼓膜も破れる中、傍に居た者に妻殺害に至る経緯及び郷の遺族に真実を伝えてくれるよう懇願し、今際の際にクルミ入りのカネ餅を口に入れられたことで、話を告げていた相手がマタギ仲間の義弟・源次郎であった事を察し、安堵した表情を浮かべて戦死した。

動物[編集]

レタㇻ
白銀の毛並みを持つ雄のエゾオオカミ、”ホㇿケウカムイ”。幼獣の頃に熊に襲われている所をアシㇼパが保護、アイヌ語で「白」の意を持つ名をつけ育てられ、家族同様の扱いでアシㇼパに付き従っていたが、成獣になると本能が勝り、アシㇼパの下から巣立ち、番いのメスのエゾオオカミとの間に4匹の仔を儲ける。
アシㇼパの元から離れ、森に消えた後も主従関係そのままに火急の事態に馳せ参じ、その身を呈して主を護る。
19世紀後半には明治政府の方針によりエゾオオカミは害獣指定され、道内全土で徹底的な駆除が行われており、本編当時には記録的な大雪害による餌不足も相まって既に絶滅していたと考えられていることから、作中では「最後のオオカミ」として二瓶と谷垣から狙われたこともある。
リュウ
アイヌ人に育てられ二瓶が猟犬として連れていたアイヌ犬。主の二瓶死後は遺品の猟銃と共にアシㇼパが引き取り、村に保護される。

各編登場人物[編集]

日泥保(ひどろ たもつ)
茨戸で賭場を開帳していた小規模な鰊場の親方で婿養子。一番子分であった久寿田との抗争の最中、妻に自分が実は子供のできない身体であることを明かされ、息子の出自について謀られていたことを知って逆上、こまざらいで妻を滅多打ちにし息子に銃を向けるも尾形により射殺。
日泥新平(ひどろ しんぺい)
日泥保の子だが、血のつながりはなかったことが抗争の最中に判明する。当初は悪ぶっていたが実際は意気地の無い小心者。抗争勃発に怖気づき、愛する者のために駆けまわり身の丈にあった未来図を描く。抗争終結後、新天地で一からやり直すため千代子と共に茨戸を後にする。
久寿田馬吉(くすだ うまきち)
元は日泥保一番の子分であったが賭場を息子の新平に譲ってしまった事に激怒し、近所に新たな賭場を開き対立する。抗争の際、永倉の手により子飼いの警官隊共々斬り伏せられた。
日泥の妻
日泥一味を取り仕切る女将で人の情を持ち合わせていない業突く張りの守銭奴。放火された番屋から刺青人皮を運び出そうとする場で、夫の保に真実を暴露、逆上した夫によりこまざらいで滅多打ちにされ殺される。
千代子(ちよこ)
日泥保の妾であるが、保の息子である新平の子を身籠っており、身柄を取り引きに利用されかけ匿われる。日泥・馬吉一味の抗争終結後、新天地で一からやり直すため、新平と共に茨戸を後にした。
山本(やまもと)
「山本理髪店」店主。業務の傍ら町の情勢を教える一市民であったが永倉の強要により抗争の取り引きの片棒を担ぐハメになるも無事生き残る。
エディー・ダン
来日25年になるアメリカ人牧場経営者で、希少な物品の蒐集が趣味。不心得者から買い取ったアイヌ伝来の花嫁衣装を買い戻しに来たアシㇼパらに、元の買値の倍になる売値を提示して一触即発となるが、牧場経営を脅かす赤毛羆の出没に頭を痛め、その駆除を条件に取り引きに応じる。杉元らが羆を退治したことで約束の品物を引き渡すと共に、和彫りとは違った刺青の存在が夕張にあることを伝える。
仲沢達弥(なかざわ たつや)
若山の子分で男色の相手でもある凄腕の壺振り。親分・若山に同行し一服していた空き家にて杉元らと遭遇、即興で家主に成りすますも、若山が男娼を買った事に憤慨し、若山の企みを当て付けで破綻させる。羆の襲撃から逃れ、杉元らと共男色あいてのにフォード・Tモデルに乗り込んで空き家を脱出するも、走行中の車から落下した若山の仕込み杖を取ろうとした際に車外に転落し、羆の餌食になる寸前の仲沢を「姫」と呼んで救出せんと立ち向かった若山共に致命傷を受け手を握り合いながら死亡する。
江渡貝弥作(えどがい やさく)
「江渡貝剥製所」代表の青年。奈良県出身で、剥製作りに適した環境を求め夕張に移住した。
作品を褒められた事無く母の歪んだ愛情を受けて育ち、唯一の理解者だった父を母が殺し、その父に似てきたとして母に去勢されている。心臓発作による母死亡後もその歪んだ愛情が人格の一部を占め、母の剥製を作成し、生きているという妄想で精神の均衡を保ってていた。動物の剥製制作の他、炭鉱事故で土葬された遺体を使った人肉剥製や人体部位を素材にした被服やガジェットを多数製作している。
第七師団から墓荒しの容疑を受け白を切るも、亡母の剥製が鶴見に見つかり、所業がばれてしまったが、鶴見が軍服の下の刺青人皮を纏う姿を見て心開き、作品を褒められ才能を讃えられてから、鶴見を激しく慕うようになる。鶴見に諭され亡き母の支配から解放された後、偽の刺青人皮作製の協力を依頼され、試行錯誤しながら製作に入り6枚分の刺青人皮の偽物を完成させるが、動向を探っていた尾形の襲撃を受け、完成品を鶴見に届けるべく逃走し、炭鉱に逃げ込むも、発破をきっかけとしたガス爆発による落盤で身動きが取れなくなり、依頼品と鶴見への伝言を月島に託し炭鉱内で死亡する。
熊岸長庵(くまぎし ちょうあん)
偽札犯で贋作師。元は画家だったが絵画だけでは稼げず高級絵画の贋作や紙幣偽造などの無期徒刑で樺戸集治監に収監されていたが集団脱走計画に加わり逃亡、他の脱獄囚らが乗っ取ったアイヌ村で偽札製造を任されていた。村の異常に気づいた杉元らの乱戦の最中、脱獄仲間が誤って放った毒矢に当たり苦しみ悶える中、剥製屋の江渡貝について自分と同じく、贋品には現物を超えたいが為の拘りがあるはずということを伝え息を引き取った。女性の美醜に関する感受性に、一般の感覚と乖離がある。
犬童四朗助(いぬどう しろすけ)
樺戸集治監典獄(監獄長)、下戸。薩摩弁を修得している。実兄を箱館戦争で亡くしたため、樺戸に収監された土方に恨みを持っており秘密裏に幽閉する。全てを奪った彼の瞳から光が失われた時に処刑しようと企んでいた。自分が網走監獄に転属する際も土方を網走に移送した。
大島又輔(おおしま またすけ)
樺戸集治監4代典獄。樺戸に来た永倉と家永に熊岸が脱獄しようとして射殺されたことを告げた。実際は熊岸は鈴川の手引きで脱獄に成功しており、処分を免れるためにこのことを隠している。
有坂成蔵(ありさか なりぞう)
陸軍中将。本作における三十年式歩兵銃有坂銃)・二十八珊米榴弾砲の開発者。長年の兵器開発の影響で聴力を悪くしており、大声でガミガミ話す癖がある。
鶴見の許を訪れた際、右足を失った二階堂に、急造製作した仕込銃付き義足を贈った。
青原(あおはら)
千鶴子の透視を利用して儲けようとしている男。
三船千鶴子(みふね ちずこ)
超能力者。青原の許を脱していた。インカㇻマッに「東に向かえば追っている男に殺される」と忠告する。
蝮のお銀(まむし の おぎん)
千枚通しを使い旅人を幾人も殺害して来た女盗賊。右肩から腹部にかけて蝮の刺青を施している。出会った坂本慶次郎と夫婦になり銀行や郵便局を襲撃する。

料理[編集]

「グルメ漫画」を掲げ、作中で北海道に縁ある食材や料理(主にアイヌ料理)が登場。調理や食事が描かれ各キャラクターが多様な表情を見せる。以下、紹介・列挙する。
※作中にて淡水魚や狩猟で獲った獣肉などの生食場面があるが、あくまで物語当時の食生活を描いている創作物であり、実際にはウィルス性肝炎の感染や寄生虫、食中毒等の危険を留意することが必要である。

チタタㇷ゚
アイヌ食で「我々が 刻む もの」の意。狩猟で仕留めたエゾリスやエゾウサギ、ヤマシギ等の小動物の皮を剥ぎ刃物で叩いて細かく刻んだ、たたき肉料理。刻むときに「チタタㇷ゚、チタタㇷ゚」と言いながら調理するのが慣わしである。本来は生食だがアシㇼパ同行者の和人の舌に合わせ団子肉にして、プクサキナプクサオシロイシメジエゾマツタケといったキノコを入れたオハウ(汁物)にしている。杉元曰く「肉のつみれ汁」。
キナオハウとカジカの塩焼き
「野菜が沢山入った汁物」の意。昆布と素焼きしたエゾハナカジカで出汁を取り、大根人参・ジャガイモ・ホウレンソウ等を煮込んだ根菜の汁鍋。囲炉裏で焼いた脂の乗った塩焼きと。
カワウソのオハウ
毒罠で仕留めたカワウソ(エサマン)をぶつ切り肉にしてプクサで臭みを除き、牛蒡や大根等根菜類を入れたオハウ。
にしん蕎麦
身欠きにしんの甘露煮を載せた蕎麦、関東と同じ濃い目のツユ。
串団子
小樽の花園公園(現・小樽公園)名物の花園だんご。唾液腺も弾ける美味しさ。
桜鍋
東京で流行中の白石推薦すきやき風馬肉料理。強奪して屠殺した軍馬の薄切り肉とキャベツ・牛蒡を鍋に入れ、砂糖、醤油、酒、味噌で味を付け、加熱で桜色になった頃合いの馬肉を溶き卵に絡めて食す。
ニヘイゴハン
獲れたて新鮮、羆の心臓焼き血の腸詰煮。滋養強壮の効果が高く食すと精力が付くと二瓶は語っている。
ユㇰのチタタㇷ゚
鹿の気管(セウリ)部分を刻んだつみれ肉料理。その他、肺と肝臓、脳髄は生食。塩を振った背肉部分の炙り肉。
ユㇰオハウ
プクサキナやプクサを入れた鹿肉のオハウ。
ルイペ
「とけた 食べ物」の意、立木に吊るした半冷凍の鮭の切り身。
オオワシの丸ごと煮
鋭い鉤爪に注意。
ニシン漬
白米身欠きニシン、キャベツ、大根、人参を入れ米麹で発酵させた保存食。
鯱の竜田揚げ子持ち昆布の串揚げ
浜に乗り上げた鯱(レプンカムイ)の脂肪を鍋で煎って油を出し、赤身肉を酒と醤油で下味をつけて片栗粉をまぶし、油で加熱調理した揚げ物、火傷に注意。
イトウ刺し身と塩焼き
川で獲ったイトウの刺し身。鯱の竜田揚げの際に余った醤油を用いる。杉元は川のトロ、白石は鮭よりも上品な味と評した。
エゾシカ肉のライスカレーとラガービール
洋食店・水風亭メニュー、冷製札幌ビールと共に。
松前漬けとお茶漬け
一膳飯屋の一品、数の子に細かく刻んだスルメイカコンブを醤油で味付けした松前藩発祥の御当地料理。飯に細かく刻んだ沢庵を乗せた茶漬けと共に。
アザラシ肉の塩茹で
浜辺のアザラシを撲殺して調理、魚と牛肉の中間の味で臭みはない。
イチャニウのオハウ
切り身にしたサクラマス(イチャニウ)、葉を落とし焼いて皮を剥いた蕗の薹の茎を入れた鍋に、フキやプクサを加えて塩で味付けした春の汁物の中では最も美味しいオハウ。
カネ餅
阿仁マタギの携行食。水を加えた米粉に味噌か塩を混ぜ込んで葉に包み、蒸し焼きにしたもの。凍りにくく保存がきく。谷垣は隠し味としてクルミを混ぜている。
カワヤツメうな重
小川で獲ったカワヤツメ(ウクリペ)を背開きにして串を通した身を炭火で炙り、醤油や酒、砂糖で作ったタレをかけた蒲焼。飯盒で炊いた熱々の飯にのせ、薬味に採取したワサビを。ウナギよりやや固めの歯ごたえのある身が特徴。
なんこ鍋
空知地方の郷土料理である馬の腸を味噌で煮込んだもつ煮。江渡貝剥製所にて土方一派と杉元らを執り成すため家永が振る舞った。
クトゥマ(筒焼き)
オオウバユリ(トゥレㇷ゚)の鱗茎から作った澱粉をヨブスマソウの茎の中に入れ蒸し焼きにした団子。牛山曰く「葛切りみたい」。ニジマスの筋子(チポㇿ)や味噌を付けても良い。オオウバユリの鱗茎はそのまま焼いて食べるだけでも美味な模様。
豆菓子
煎り大豆に砂糖を衣掛けした菓子。

制作背景[編集]

作者の曽祖父が日露戦争に出兵した屯田兵であったことから、かねてより関連する作品を描きたいという希望を抱いていたところ、前作の『スピナマラダ!』連載終了後に担当編集者から「北海道を舞台にした猟師の作品」をと持ちかけられ、始めは日露戦争帰りの主人公にした「狩猟マンガ」として構想された[4]が、狩猟だけでは、ネタ切れが早いと思われたため、道史の中から作者が興味を惹かれた「熊害ゆうがい」、「土方歳三」、「脱獄王」、「埋蔵金伝説」、「アイヌ」といった様々な題材を拾い上げて組み入れていき、本作が練り上げられていくことになった[4]。特にアイヌに関しては、これまでのマンガで取り上げられることが少なかったため、読者にとって新鮮であろうと考え、また取材に協力してくれたアイヌの人々から「可哀想なアイヌではなく、強いアイヌ」を描くことを期待されたこともあり、迫害や差別といった暗い背景ではなく、「明るく、おもしろいアイヌ」を描いていけば、読者に受け入れられていくと確信していたという[4]。料理に関する要素が強いことに関しては、作品構想の始めのテーマが狩猟であったこともあり、獲物を生活に活かしていく中で、料理描写は必然と考えられたためとしている[4]

評価[編集]

アイヌ文化を丁寧に描いているとして平取町アイヌ文化情報センターでも人気になっており、アイヌ民族博物館の職員は「文献や資料をよく調べている。文様も細かく描写されており、見応えがある」と評価している[5]

書誌情報[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 公式が「冒険(バトル)」と「歴史(ロマン)」と「狩猟(グルメ)」と銘打つ。
  2. ^ a b 「ゴールデンカムイ」特集 野田サトル×町山智浩対談”. コミックナタリー. 2015年12月18日閲覧。
  3. ^ 下記の囚人の他に尾形に射殺された囚人、33人を殺害した津山と呼ばれる囚人、茨戸で刺青のみ取引きされていた囚人がいる
  4. ^ a b c d 『ゴールデンカムイ』野田サトルインタビュー ウケないわけない! おもしろさ全部のせの超自信作!”. このマンガがすごい!web/宝島社. 2016年4月1日閲覧。
  5. ^ マンガ大賞作「ゴールデンカムイ」 忠実描写、アイヌ民族も注目 北海道新聞 2016年4月4日
  6. ^ 編集者が選ぶコミックナタリー大賞、今年度の1位は九井諒子「ダンジョン飯」”. コミックナタリー (2015年10月1日). 2015年10月1日閲覧。
  7. ^ マンガ大賞2016は野田サトルの「ゴールデンカムイ」に決定”. コミックナタリー. 2016年3月29日閲覧。

書誌出典[編集]

外部リンク[編集]