ハングル

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ハングル
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ハングルによる「百科事典」表記
類型: 表音文字素性文字
言語: 朝鮮語
発明者: 世宗
時期: 1446年-現在
Unicode範囲: U+1100-U+11FF(ハングル字母)
U+3130-U+318F(ハングル互換字母)
U+AC00-U+D7AF(ハングル音節)
ISO 15924 コード: Hang
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ハングル
チョソングル(チャ) / ウリグル(北)
各種表記
ハングル 한글
조선글(자)
우리글
漢字 韓㐎、朝鮮文字、諺文
発音
チョソ(チャ)
ウリグ
2000年式


MR式
Hangeul
Joseongeul(ja)
Urigeul
Han'gŭl
Chosŏn'gŭl(cha)
Urigŭl
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ハングル: 한글)は、朝鮮語を表記するための表音文字である。1446年李氏朝鮮第4代国王の世宗が「訓民正音」(: 훈민정음Hunmin Jeong-eum、略称:正音)の名で公布した。 意味は「偉大なる(ハン)・文字(グル)」である[1][注釈 1]

呼称[編集]

現在、大韓民国では「ハングル」、朝鮮民主主義人民共和国では「チョソングル(チャ)」(조선글(자)、朝鮮文字の意)[1]もしくは「ウリグル」(우리글、我々の文字の意)と呼ぶ。

ハングル制定時の正式名称は「訓民正音」であったが、当初から諺の文字という意味で「諺文」(언문、オンムン)と呼んだ[1][3]。また、知識のない平民たち、女や子供が使う卑しい文字として「アムクル(女文字)」、「アヘグル(아해글、子供文字の意)」とも卑下されてきたといわれるが[3]、解例本に「諺」が通常語彙としてあるように必ずしも卑称ではないとする見解もある[1]

諺文という卑下した名前をきらって[4]「ハングル」の語が使われるようになったのは1900年代である[5]周時経は1913年に朝鮮語の研究会の名前を「ハングルモ」としている[6]。朝鮮語のローマ字表記の1つであるM-R式を考案したマッキューンライシャワーは、1939年当時に朝鮮語学会が「ハングル」、朝鮮語学研究会が「チョンウム(正音)」の語を使っていると述べている[7](なお、この論文ではハングルのハンを「一」と解釈して、Unified System と翻訳している)。

ラテン語表記では「Hangul」と表記されることが多いが、近年は2000年式に準拠した「Hangeul」という表記も使われている。

中国では「諺文(簡体字谚文 拼音: yànwén 注音: ㄧㄢˋㄨㄣˊ)」また「韓文」「朝鮮文字」と呼ぶ。

日本は古くから「諺文(げんぶん[8]、オンモン)」また「朝鮮文字」と呼んでいたが、現在では「ハングル」という呼称が一般的である。

歴史[編集]

ハングルの創製[編集]

朝鮮半島では15世紀半ばまで、自民族の言語である朝鮮語を表記する固有の文字を持たず、知識層は漢字を使用していた。口訣(こうけつ・くけつ)・吏読(りとう)など漢字を借りた表記法により断片的・暗示的に示されてきた。

李氏朝鮮第4代王の世宗は、朝鮮固有の文字の創製を積極的に推し進めた。しかし、その事業は当初から事大主義的な保守派の反発を受けた。世宗が設立した諮問機関の集賢殿副提学だった崔萬理は1444年に上疏文で、「昔から中国の諸地は風土が異なっても方言に基づいて文字を作った例はない。ただモンゴル西夏女真日本チベットのみが文字を持つが、これらはみな夷狄(野蛮人・未開人)のなすことであり、言うに足るものではない」と反対した。 しかし世宗はこのような反対を押し切り、鄭麟趾など集賢殿内の新進の学者に命じて1446年に訓民正音の名でハングルを頒布した。「民を訓(おし)える正しい音」の意である。

1543年、王命[9]によって刊行された『列女伝』のハングル翻訳版

1504年燕山君の暴政を誹謗するハングルの張り紙が各地で発見され、燕山君はハングルの教育や学習を禁止し、ハングルの書籍を焼却、ハングルを使用する者を弾圧した[10]。世宗時代に設置されていた正音庁は中宗年間の1507年に閉鎖されたが、ハングルの使用は禁止されることなく、民衆の書記手段として広まることになる。1490年に軍官の羅臣傑(1461年~1524年)が妻の孟氏に送るハングル手紙は現存最古のハングル手紙であり[11]、1998年に慶尚北道安東で発掘された李応台(1556年~1586年)の墓で亡くなった夫の死を悼む妻からのハングル手紙が発見された。この手紙は『ウォンの父へ・・・丙戌(1586年)6月』と始まる長文の手紙で、ハングルで書かれている。 また17世紀に宋奎濂が自分の下男のキチュック(己丑の意)に書いた書簡などが残っている。

一方、ハングルは支配層でもよく使われ、王室をはじめ王・王妃の勅令や臣民への伝言、王・王妃と公主のハングル手紙・王族同士にハングルの手紙も残っている[12]。 また、宮廷や両班階級におけるハングルの使用もあり、国王の記したハングル書簡としては宣祖の『御筆諺簡』(1603年)筆写文献が現存している。 両班では李珥権好文金尚容ら両班の文化人が時調(詩歌)を詠む際にも、ハングルが利用された。文定王后仁穆王后などの諺文勅令や 明聖王后が都落ちする儒学者の宋時烈を引き止めるハングル手紙、1839年に憲宗の祖母・純元王后によるキリスト教禁止令である『斥邪綸音』をハングルで書いて公布した。

孝宗と三女・淑明公主のハングル手紙のやり取り。左側は淑明公主が父の孝宗に、右側は娘への返事
正祖が8歳の時に叔母・閔氏(洪楽仁の妻)に書いたハングル手紙

ハングルでの出版[編集]

ハングルはまず、発案者である世宗のもと国家的な出版事業において活用された。ハングルの創製直後1447年には王朝を讃える頌歌『竜飛御天歌』、仏を讃える頌歌『月印千江之曲』、釈迦の一代記である『釈譜詳節』が相次いで刊行され、次いで1448年には韻書『東国正韻』を刊行した。その後も国家によるハングル文献の刊行は続き、諺解書(中国書籍の翻訳書)を中心にその分野は仏典・儒教関連書・実用書など多岐にわたる。刊行された書籍は各地で覆刻され版を重ねることが少なくなかった。世祖の書簡『上院寺御牒』(1464年)もハングルである。

  1. 仏典:李朝初期には刊経都監が設置(1461年)され仏典翻訳が盛んに行われた。その後、国家によって仏教が弾圧されはじめたにもかかわらず、『楞厳経諺解』(1461年)、『法華経諺解』(1463年)、『金剛経諺解』(1464年)、『般若心経諺解』(1464年)、『円覚経諺解』(1465年)など、15世紀中頃に多くの仏典が刊行された。
  2. 儒教関連書:李氏朝鮮が儒教を国教としたことにより、儒教関連書は李朝を通して盛んに刊行された。四書五経などの翻訳本として『翻訳小学』(1517年)、『大学諺解』(1590年)、『周易諺解』(1606年)、『詩経諺解』(1613年)などがあり後世に重刊本も刊行された。また『三綱行実図諺解』(1481年)は儒教の民衆教化書として各種の版本が李朝後期まで何度も重刊されている。
  3. 実用書:『救急方諺解』(1466年)、『救急簡易方』(1489年)、『牛馬羊猪染疫治療方』(1541年)、『分門瘟疫易解方』(1542年)などの医書・家畜防疫書がたびたび刊行されている。また、通訳官養成所である司訳院からは日本語学習書『伊路波』(1492年)、中国語学習書『翻訳老乞大』(16世紀)、満州語学習書『清語老乞大』(1704年)、モンゴル語学習書『蒙語老乞大』(1741年)などハングルで音を示した外国語学習書が刊行された。
  4. 文学作品:ハングル創製初期以降にも『杜詩諺解』(1481年)などの翻訳漢詩集が刊行されている。ハングル使用が国家レベルで禁止された中宗以降にも、金絿(1488年-1534年)の「花田別曲」、李賢輔の「漁夫歌」、李滉の「陶山十二曲」の詩歌、許筠の小説『洪吉童伝』、また日記文学『癸丑日記』『春香伝』『沈清伝』などパンソリを起源とする小説がハングルによる書籍として刊行された。

近代開化期におけるハングル[編集]

開化期になると民族意識の高揚とともにハングルが広く用いられるようになる。開化派井上角五郎の協力により、朝鮮初の近代新聞(官報)である『漢城周報』(1886年創刊)が発行され、これには漢文のほかにハングルのみによる朝鮮文が採用された。それまで公的な文書においてハングルが正式に用いられることがなかった朝鮮において、政府の関与した文書にハングルで記された朝鮮文が採用された意義は大きい。

また、『漢城周報』では漢文的要素の強い朝鮮文である「国漢文」と呼ばれる新たな文体も同時に創作・採用された。国漢文の創作・採用に当たっては日本の漢文書き下し文の文体を参考にしたと見られるが、そのような経緯には福澤諭吉門下の井上角五郎の助力があったと見られる[13]。しかしながら、国漢文は漢文の素養を必要とする文体であったため、一般に広く流布するには至らなかった。

1896年に創刊された『独立新聞』はハングルと英文による新聞であった。これは分かち書きを初めて導入した点でも注目される。公文書のハングル使用は、甲午改革の一環として1894年11月に公布された勅令1号公文式において、公文に国文(ハングル)を使用することを定めたことに始まる。

1906年に周時経が『大韓国語文法』を、1908年に『国語文典音学』を出版した。また崔光玉の『大韓文典』と兪吉濬の『大韓文典』(崔光玉の『大韓文典』と同名)、1909年に金熙祥の『初等国語語典』、周時経の『国語文法』などが出版された。 「ハングル」という呼称が文献上に初めて現れるのは大日本帝国による韓国併合以降の1912年のことであり、周時経に始まる[14][15]韓国併合時代の朝鮮総督府は「諺文」(おんもん)と呼び、1912年に普通学校用諺文綴字法[16]を制定し、1921年には周時経の弟子らが朝鮮語研究会を結成し、総督府と協力して1930年には正書法諺文綴字法を制定した[17]。1933年、朝鮮語綴字法統一案が出され、これが韓国でのハングル正書法(1988年)のもととなった。北朝鮮では1954年に朝鮮語綴字法、1987年に朝鮮語規範集が出された。

創製原理[編集]

ハングルの創製の原理を記した『訓民正音解例本』ではハングルの母音と子音を陰陽五行に基づいて創っていると記されている。 また同書の序文では「賢い者は朝の間に、愚かな者だとしても十日なら十分に学んで習うことができる」と記されている。

母音[編集]

陰陽の原理に基づいて創られた。

  • 基本母音は ‘・、ㅡ、ㅣ ’で、 ‘・’ は陽にあたる「天」を‘ㅡ'は陰にあたる「地」を、‘ㅣ'は陰と陽の中間にあたる「人間(人)」 の形から模っている。
  • 天地人は檀君思想から由来したもので宇宙や万物を構成する主要な要所の「天(・)」と「地(ㅡ)」と「人(ㅣ)」を意味する。
  • 『訓民正音解例本』によると ‘ㅏ、ㅑ、 ㅗ、 ㅛ’ は ‘・(下の意)’ 系列の母音である。
  • ‘・’の属性は陽であり、陽の特性は上に上昇、外への拡張であるので上と外に点(・)を打つ。
  • ‘ㅓ、ㅕ、ㅜ、ㅠ’は‘ㅡ’系列の母音で音の属性に沿って下降と収縮を意味するので中と下に点(・)を打つ。

子音[編集]

五行に基づいて創られた。

  • 『訓民正音解例本』では方位と発音器官を結びつけ、該当の発音器官から音がするのを方位と結び付けている。方位は季節と結ばれ、結局音は季節と結ばれる。
  • 「春夏秋冬の変化」のとおりに子音は牙音(ㄱ、春)・舌背音(ㄴ、夏)・唇音(ㅁ、晩夏)・歯音(ㅅ、秋)・咽喉音(ㅇ、冬)の順に配列する。
  • 『訓民正音解例本』で基本子音をㄱ、ㄴ、ㅁ、ㅅ、ㅇ、ㄹの順に配列するのは五行の原理である。
子音と五行の関係
属性 季節 方位 音声 五音
牙音(ㄱ、ㅋ、ㄲ)
夏  舌背音(ㄴ、ㄷ、ㅌ、ㄸ)
季夏 中・無定 唇音(ㅁ、ㅂ、ㅍ、ㅃ)
西 歯音(ㅅ、ㅆ、ㅈ、ㅊ、ㅉ)
水  咽喉音(ㅇ、ㅎ)

字母と文字構成[編集]

ハングルの字母

ハングルは表音文字である。ひとつひとつの文字が音節を表す文字体系だが、子音と母音の字母(자모チャモ)を組み合わせて文字を構成する。このような文字体系を素性文字と呼ぶ研究者もいる。

子音字母は基本字母が14個、合成字母が5個の計19個、母音字母は基本字母が10個、合成字母が11個の計21個であり、合成字母を含めた字母の総数は40個である。それぞれの字母は以下の通りである。

なお、1446年訓民正音創製当時と現在とでは文字の構成要素も変化している(古ハングル)。創製当時には中期朝鮮語の音韻を表す子音字母( [z], [ŋ], [ʔ]) 、母音字母( [ʌ])があったが、現代では用いられない。

子音字母[編集]

字母 発音 ローマ字[18] 名称(韓国) 名称(北朝鮮)



k/ɡ g 기역 giyeok 기윽 gieuk geu
n n 니은 nieun neu
t/d d 디귿 digeut 디읃 dieut deu
r/l r/l 리을 rieul reu
m m 미음 mieum meu
p/b b 비읍 bieup beu
s/ɕ s 시옷 siot 시읏 sieut seu
(ŋ) (ng) 이응 ieung eung
ʨ/ʥ j 지읒 jieut jeu
[ʨʰ] ch 치읓 chieut cheu
[kʰ] k 키읔 kieuk keu
[tʰ] t 티읕 tieut teu
[pʰ] p 피읖 pieup peu
h/ɦ h 히읗 hieut heu



[kʼ] kk 쌍기역 ssanggiyeok 된기윽 doen-gieuk kkeu
[tʼ] tt 쌍디귿 ssangdigeut 된디읃 doendieut tteu
[pʼ] pp 쌍비읍 ssangbieup 된비읍 doenbieup ppeu
[sʼ/ɕʼ] ss 쌍시옷 ssangsiot 된시읏 doensieut sseu
[ʨʼ] jj 쌍지읒 ssangjieut 된지읒 doenjieut jjeu

字母「」は音節頭の位置にあるときには子音がないことを表し、音節末にあるときには鼻音[ŋ]を表す。

母音字母[編集]

字母 発音 ローマ字[18] 名称



a a a
[ja] ya ya
ɔ eo eo
[jɔ] yeo yeo
o o o
[jo] yo yo
u u u
[ju] yu yu
ɯ eu eu
i i i



ɛ ae ae
[jɛ] yae yae
e e e
[je] ye ye
[wa] wa wa
[wɛ] wae wae
ø/we oe oe
[wɔ] wo wo
[we] we we
[y/wi] wi wi
[ɯi] ui ui

合成字母の配列順序は韓国の順序に従う。

字母の組合せ[編集]

字母(チャモ)を2つ以上組み合わせて1文字を成す。1文字の構成は子音字母 + 母音字母あるいは子音字母 + 母音字母 + 子音字母のどちらかである。音節頭の子音字母を初声、母音字母を中声、音節末に来る子音字母を終声またはパッチム받침。「支えるもの」の意)と呼ぶ。

初声と中声の組み合わせ方には3つのタイプがある。

ga 中声が「」のときは、初声を左に、中声を右に配置する。
go 中声が「」のときは、初声を上に、中声を下に配置する。
中2
中1
gwa 中声が「」のときは、初声を左上に、中声を下から右にかけて配置する。

終声があるときは、これらの下に終声を置く。

中2
中1

gan

gon

gwan

なお、終声として用いることのできる子音字母は、 dd, bb,ㅉ jjを除いた16個である。また、朝鮮語の形態音素表記のために、終声では2つの子音字母を左右に組み合わせることがある。正書法で認められている組み合わせは、 gs, nj, nh, lg, lm, lb, ls, lt, lp, lh, bsの11種類である。

音価 終声字 複合終声字
, ,
, , , , , ,    
, (),
, , , , ()  
,  
 
   


ハングルの由来をめぐる諸説 [編集]

ハングルの由来をめぐって諸説があるが、1446年9月上旬に発刊した『訓民正音解例本』にはハングルを創製した理由と陰陽の原理に基づいて子音と母音を造ったと明らかにしている。今更ハングルの字形の由来に関する直接的な論争はないが漢字パスパ文字の起源説がある。

漢字の影響[編集]

ハングルの音体系は子音字母が三十六字母に対応するように作られているなど、中国音韻学に則っており、『訓民正音』にはハングルの字形について「象形而字倣古篆」、宋・鄭樵の『六書略』の「起一成文図」を起源とする説もある[19]。字母の字形などについては、『訓民正音』の「制字原理」に書かれていることが全てか、更に原形となるものがあるのかについて議論がある[要出典]

パスパ文字の影響[編集]

パスパ文字とハングルの比較

ハングルはパスパ文字を基礎にしたと言う主張もある[20]。パスパ文字は1269年にフビライ・ハンがラマ僧のパスパ(八思巴)に命じて作らせたもので、モンゴルから支配された高麗時代以降、李氏朝鮮の時代の知識人もこのパスパ文字を習得していた[20]コロンビア大学名誉教授ガリ・レッドヤード英語版は、「古篆」は当時「蒙古篆字」の名で知られていたパスパ文字を指すとしている[21][注釈 2]

南北朝鮮における表記の違い[編集]

南北朝鮮では、字母の扱いや、辞書における見出し語の配列などが異なる。韓国はソウル方言に、北朝鮮は平壌方言に依拠しているため、発音も若干異なる[注釈 3]

ローマ字表記[編集]

文化観光部2000年式マッキューン=ライシャワー式、北朝鮮1992年式などがある。

文字コード[編集]

完成型と組合型[編集]

字母を組み合わせて作られる文字の理論上の組み合わせは11,172文字だが、実際に使用されるのはその半分以下である(1987年に韓国の国家標準となったコンピュータ用の文字セット(KS完成型、KS C 5601-1987)には日常の99%が表記できる範囲として2,350字しか含まれなかった)。なお、1994-1995年ごろまでは11,172文字全部を表現できる文字セット(組合型、johab)が圧倒的に多く使われていたが、Windows 95でKS完成型を拡張した文字セット(拡張完成型、UHC (Unified Hangul Code))を採用し、後のWindowsにも使用されたため、現在は組合型文字セットはほとんど使われていない。なお、Windows NT系ではUnicode 2.0(KS C 5700、現:KS X 1005-1)以降をサポートしている。

Unicode[編集]

ハングルのキーボード

Unicode にはハングルを符号化するための文字が数種類あり、標準的に使用されるものは、ハングル字母 (U+1100-11FF) とハングル音節文字 (U+AC00-D7A3) である。ハングル字母はハングルを構成する字母で、これらを合成する事により15世紀から現代までのハングル音節文字を作成できる。U+1100-115F は初声子音、U+1160-11A2 は中声母音、U+11A8-11F9 は終声子音が定義されている。ハングル音節文字は、2 つの字母からなる音節 399 文字、3 つの字母からなる音節 10,773 文字の合計 11,172 文字で構成されている。この他にハングル互換字母 (U+3130-318F) があるが、KS完成型(KS C 5601-1987、現:KS X 1001:1998)との互換性のために存在する。

Unicode では、Unicode 1.1 以前と Unicode 2.0 以降ではハングルを定義する領域が異なっており互換性がない。Unicode 1.1 までは U+3400-4DFF にハングルが定義されていたが、Unicode 2.0 制定時に、新しく U+AC00-D7AF にハングルが定義され旧領域は破棄された。その際、韓国の要求により KS C 5601-1992 の組合型文字セットに基づく現代ハングル音節文字 11,172文字 が網羅されている。なお Unicode 2.0 で破棄された領域は、Unicode 3.0 制定時にCJK統合漢字拡張 A 集合として U+3400-4DBF に定義され、Unicode 4.0 制定時に易経記号集合として U+4DC0-4DFF に定義されている。

その他[編集]

ハングルに関する誤解[編集]

ハングルは世界中の言語を表記できる文字であると誤解されることがあるが、朝鮮語には英語のfやzなどの音がないため、ハングルでこれらを原音通りに表記するのは不可能である。ハングルで外来語を表記する際、これらの音は近似音に置き換えられ、例としてfは(p)、zは(j)となる。

また、ハングルがユネスコ記憶遺産に登録されていると報じられることがあるが、ユネスコ記憶遺産に登録されているのは「ハングル」ではなく「訓民正音解例本」である。

インドネシア少数民族チアチア語へのハングル導入[編集]

2009年にはハングル世界化プロジェクトによってインドネシアの少数民族チアチア族チアチア語の文字表記にハングルを導入した[22]。韓国の「訓民正音学会」が中心となって、チアチア語のハングル表記をすすめた[1]

チアチア語にはアルファベットやアラビア文字では表せない音があるが、ハングルなら表記が可能であるかもしれないと採用された[23]。チアチア語は「固有の文字を持たず、固有語を失う危機にあった」ため、韓国の団体が提案し、2009年7月、バウバウ市にてハングル普及覚書を交わした[1]。しかし、これらの表記法はチアチア語の音韻を反映するものではなく、朝鮮語の事情にあわせて作成されたものであり、趙義成は「アジアの一半島とその周辺でしか用いない文字をあえて採用する必要はない」として、世界的に汎用性のあるラテン文字でチアチア語を表記した方がはるかに合理的で効率的であるとした[1]

バウバウ市はインドネシア政府と相談せずに導入を決定しており[1]、インドネシア政府もハングルを公式文字として採用していないと発表している[24]世界日報も、実際には現地に韓国教師は派遣されていない上、ハングルがチアチア族の公式文字に採択されたという事実もないとしている[25]

2011年10月、このプロジェクトが頓挫していると報じられた[26]黒田勝弘はこれらの情報は実際には現地の学生がハングルを学習する程度の話であったのであり、同市が公式文字を採択したという韓国マスコミの報道は、ハングルの優秀性を示す「ハングル愛国主義」のために誇張された虚報だったとした[27]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「ハン」を「大韓帝国」の「韓(ハン)」とする説もある[2]
  2. ^ レッドヤードによれば、『訓民正音』での基本的な子音字母は(k) (n) (m) (s) (ʔ)であるが、ㅇ系を除く字母で基礎になっているものは(k) (t) (l) (p) (ts)であり、これらはパスパ文字のꡂ(k) ꡊ(t) ꡙ(l) ꡎ(p) ꡛ(s)に由来し、チベット文字のག(ga) ད(da) ལ(la) བ(ba) ས(sa)に由来するとしている。チベット文字はブラーフミー系文字の一つで、その起源はフェニキア文字とされるため(さらに遡ればヒエログリフにたどり着く)、ハングルはフェニキア文字から派生したギリシア文字ラテン文字とも同系統とされる。ㄱ ㄷ ㄹ ㅂはおそらくギリシア文字のΓ Δ Λ Β、ラテン文字のC/G D L Bと同系統であろうとしている(ㅈについては、チベット文字とラテン文字とで同系統の文字を抽出するのが困難)。また、ゼロ子音を表すㅇについては、ハングルにおいて独自に発明された字母だとしている。なお、フェニキア文字にはハングルのㅇに似た機能を持つ文字としてアレフ(𐤀)やアイン(𐤏)があり、それぞれラテン文字のAOの由来となっている。しかし、フェニキア文字がインドに伝わりブラーフミー文字となった段階でこれらに相当する文字は消失しており、ハングルのㅇは独自に再発明されたことになる。ただし、古ハングルで唇軽音を表した に現れるㅇはパスパ文字にならったもの(音価はw)としている。以上よりハングルの子音字母は、ブラーフミー系文字(究極的にはヒエログリフ)に由来するㄱ ㄷ ㄹ ㅂ ㅈと独自に開発されたㅇの計六つの字母を基本とし、中国音韻学に基づいて他の字母をそれらの変形により派生させたものとなる。母音字母については、朝鮮語の音韻にあわせて独自に作られたものとしている。
  3. ^ 例:有声歯茎破擦音は一律平音の「/j/」で表記し、有声歯茎硬口蓋破擦音は「」の後に「/i/」か点が2つある母音字 /y/ で表記する。日本語で言うなら北朝鮮ではザとジャを区別するが韓国では区別しないということである。無声歯茎破擦音は激音の「/c/」で表記し、無声歯茎硬口蓋破擦音は「」の後に「/i/」か点が2つある母音字 /y/ で表記する。日本語で言うなら北朝鮮ではツとチュを区別するが韓国では区別しないということである。

出典[編集]

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  1. ^ a b c d e f g h 東京外国語大学・趙義成「チアチア語のハングル表記体系について」学術論文集28、2011.朝鮮奨学会
  2. ^ 野間秀樹『ハングルの誕生:音から文字を創る』平凡社新書、2010年、22頁
  3. ^ a b 大宅京平「南のハングル教育、北の漢字教育」こた朝鮮難民救援基金NEWS,May 2013,No.82.
  4. ^ 河野六郎 「朝鮮の漢文」『河野六郎著作集』3、1980年、416頁。
  5. ^ 姜信沆 (2003) p.5
  6. ^ 李善英「植民地朝鮮における言語政策とナショナリズム - 朝鮮総督府の朝鮮教育令と朝鮮語学会事件を中心に -」、『立命館国際研究』第25巻第2号、2012年、 508頁。
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  11. ^ http://news.donga.com/3/all/20150420/70806327/1
  12. ^ 朝鮮王室のハングル手紙 http://hangeul.naver.com/hangeul2
  13. ^ 稲葉継雄 (1987) 「井上角五朗と『漢城旬報』『漢城周報』 : ハングル採用問題を中心に」,『文藝言語研究』言語篇,筑波大学文藝・言語学系
  14. ^ 1981年12月11日付 中央日報
  15. ^ 1927年にはハングル社から雑誌『ハングル』が刊行された
  16. ^ 大澤宏紀「朝鮮総督府による朝鮮語教育」教育史・比較教育論考, 19: 1-15、北海道大学、2009
  17. ^ 植民地下朝鮮における言語支配の構造三ツ井崇 2002年3月13日一橋大学博士論文
  18. ^ a b ローマ字は2000年大韓民国文化観光部告示第2000-8号「国語のローマ字表記法국어의 로마자 표기법)」による。
  19. ^ 姜信沆『ハングルの成立と歴史』 (大修館)
  20. ^ a b 「訓民正音、モンゴル‘パスパ文字’の影響受けた」…高麗大教授
  21. ^ Ledyard, Gari K. (1998、1997)
  22. ^ インドネシアの少数民族、ハングルを公式文字に採択 聯合ニュース 2009/08/06。東亜日報2009/8/12
  23. ^ 「インドネシア 文字持たぬ少数民族 ハングル採用」読売新聞2009年10月17日
  24. ^ インドネシア政府、ハングルを公式文字として採用せず コリアンタイムズ 2010/10/07
  25. ^ 찌아찌아족 한글 도입 2년… 그동안 어떤 일이 - 세상을 보는 눈, 글로벌 미디어 - 세계일보 - - 世界日報(朝鮮語)
  26. ^ チアチア族へのハングル教育がピンチに 朝鮮日報日本語版 2011/10/10
  27. ^ 産経新聞, ソウルからヨボセヨ 「ハングル輸出」は虚報

参考文献[編集]

  • 小倉進平増訂 朝鮮語学史』 刀江書院、1940年
  • 野間秀樹『ハングルの誕生:音から文字を創る』平凡社新書、2010年
  • 金東昭 『韓国語変遷史』 栗田英二訳、明石書店、2003年ISBN 4750317144
  • 姜信沆 『ハングルの成立と歴史』 大修館書店1993年ISBN 4469211796
  • 趙義成「チアチア語のハングル表記体系について」学術論文集28、2011.朝鮮奨学会
  • Ledyard, Gari K. (1998). The Korean Language Reform of 1446. Seoul: Shingu munhwasa.
  • Ledyard, Gari K. (1997). "The International Linguistic Background of the Correct Sounds for the Instruction of the People". In Young-Key Kim-Renaud, ed. The Korean Alphabet: Its History and Structure. Honolulu: University of Hawai'i Press.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]