ジャウィ文字

From Wikipedia
Jump to navigation Jump to search
ジャウィ文字
類型: アブジャド
言語: マレー語
アチェ語
バンジャル語
ミナンカバウ語
タウスグ語
東南アジアの他のいくつかの言語
時期: 14世紀頃-現在
親の文字体系:
アラビア文字
  • ジャウィ文字
Unicode範囲: アラビア文字ブロックにほぼ含まれる
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。

ジャウィ文字マレー語: Tulisan Jawi توليسن جاوي)とは、マレー語を始めとするマレー・ポリネシア語派言語を表記する為にアラビア文字を改良して創られた文字である。

概要[edit]

東南アジア島嶼部(マレー半島スンダ列島、及びフィリピン諸島南部から成る地域)にイスラームが普及した14世紀頃から使用され始め、島嶼部全域がヨーロッパ諸国植民地となった20世紀初頭[注 1]まで広く使用されていた。使われ始めた正確な時期は不明だが、現存する最古のジャウィ文字は、マレーシアトレンガヌ州で見つかった1303年記載と推定される碑文の文書である。(本ページの画像参照。)

ヨーロッパ諸国による植民地時代にラテン文字が普及したことから、マレーシアシンガポールインドネシア及びフィリピンの各国は、公用語であるマレー語インドネシア語またはフィリピン語の一般的な言語表記にローマ字を採用している。その為、これらの国々では宗教的・文化的な場面を除いてジャウィ文字が使われる機会は大きく減っている。しかし、ブルネイでは今でもマレー語を表記する公式な文字の一つとされている他、マレーシアでも公共の場(標識等)で表記をよく見かけることができる(本ページの画像参照)。これらの地域では今でもジャウィ文字で発行される新聞書籍が少なからずあり、学校でもその教授がされる等、ジャウィ文字復権に向けた動きが続けられている。

今日でもジャウィ文字が頻繁に使用されているのは、ブルネイとマレーシア国内で伝統に保守的なトレンガヌ州クランタン州ケダ州プルリス州及びジョホール州である。また、これら地域からの影響で、フィリピンモロの多いスールー州マラウィ市、インドネシアでマレー系インドネシア人英語版の多いリアウ州リアウ諸島州アチェ人英語版の多いアチェ、そしてタイジャウィ語話者(マレー人)の多い深南部でも少なからず使われている[1][2]

文字一覧[edit]

アラビア語にない音(p g c v ng ny)を表すための文字が追加されている[注 2]

符号位置 単独字 頭字 中字 尾字 呼び名 呼び名 (KBBI[3])
U+0627 ا     alif alif
U+0628 ب ba ba
U+062A ت ta ta
U+062B ث [注 3] tsa sa
U+062C ج jim jim
U+062D ح [注 3] hha ha
U+0686 چ [注 4] ca (記載なし)
U+062E خ [注 3] kha kha
U+062F د     dal dal
U+0630 ذ [注 3]     dzal zal
U+0631 ر     ra ra
U+0632 ز     zai zai
U+0633 س sin sin
U+0634 ش syin syin
U+0635 ص [注 3] shad sad
U+0636 ض [注 3] ﺿ dhad dad
U+0637 ط [注 3] tho ta
U+0638 ظ [注 3] zho za
U+0639 ع [注 3] ain ʿain
U+063A غ [注 3] ghain goin
U+06A0 ڠ [注 5] ڠـ ـڠـ ـڠ nga nga
U+0641 ف fa fa
U+06A4 ڤ [注 5] pa pa
U+0642 ق [注 3] qaf (kaf besar) gaf
U+0643 ك kaf (kaf kecil) kaf
U+0762
U+06AC
ݢ
ڬ
[注 5] ڬـ ـڬـ ـݢ
ـڬ
ga ga
U+0644 ل lam lam
U+0645 م mim mim
U+0646 ن nun nun
U+06BD ڽ [注 5] ـڽ nya nya
U+0648 و     wau wau
U+06CF ۏ [注 5]     ـۏ va (記載なし)
U+0647 ه ha ha
U+064A ي ya  
U+06CC ی   ya
  • ジャウィ文字と、ローマ字との顕著な違いの一つに母音の表記が挙げられる。ローマ字では一般に母音のeと曖昧母音eを表記し分けないため、マレーシア語に不慣れな者は、eをエと発音するものなのか、曖昧なウのように発音するものなのかで迷うこととなる。しかしジャウィ文字ではeをي、曖昧母音eは無表記とするため、両者をスペル上で迷う事はない。ただし、ジャウィ文字では母音iもeも双方يで表記し、曖昧母音eも閉音節も双方無表記とするため、やはりジャウィ文字に不慣れな者は発音上で迷うことになる。つまり双方に通じていれば、いずれの表記でも発音上で迷うことは少なくなる。

画像[edit]

脚注[edit]

[ヘルプ]

注釈[edit]

  1. ^ ヨーロッパ諸国の植民地は、[[1565年]に設置されたスペイン領東インドが最初である。その後、植民地は3世紀半の時間をかけて徐々に東南アジア島嶼部全域へと広がり、1915年スールー王国消滅と共にジャウィ文字を公的に使う伝統的なイスラム教国も姿を消した。
  2. ^ Kaye (1996) p.761 には v の字がない
  3. ^ a b c d e f g h i j k アラビア語起源の外来語の表記にのみ用いる。
  4. ^ ペルシア文字からの借用。
  5. ^ a b c d e ジャウィ文字独自の文字。
  6. ^ この看板では、「نم فت」とジャウィ文字のみが二度記されている。
  7. ^ ブルネイの標語である「常に神の導きに従いなさい」という意味のアラビア語が書かれている。
  8. ^ この標識はラテン文字の綴りが間違っており、正しい表記は「JL. Ade Irma Suryani」となる。なお、アデ・イルマ・スルヤニとは、9月30日事件で殺害されたアブドゥル・ハリス・ナスティオンの次女の名前である。

出典[edit]

  1. ^ An overview of Jawi's origin in Brunei”. Brunei Times (2007年7月16日). 2013年11月27日閲覧。
  2. ^ (インドネシア語) [TULISAN ARAB MELAYU BAGIAN DARI KHAZANAH BUDAYA RIAU http://www.riaudailyphoto.com/2012/02/tulisan-arab-melayu-bagian-dari.html]
  3. ^ Kamus Besar Bahasa Indonesia(2001, 第3版), Departmen Pendidikan Nasional 編, p.1341. ISBN 979-407-182-X

参考文献[edit]

  • 東長靖 (2002). “アラビア文字による他国語表記とアラビア文字文化圏”. 上智アジア学 (20): pp.25-44. http://ci.nii.ac.jp/naid/110000469686. 
  • Kaye, Alan S (1996). “Adaptations of Arabic Script”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems. Oxford University Press. pp. 743-764. ISBN 0195079930. 

関連項目[edit]

外部リンク[edit]