西夏文字
西夏文字 | |
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類型: | 表語文字 |
言語: | タングート語 |
発明者: | 不明(野利仁栄?) |
時期: | 1036年-1500年頃 |
Unicode範囲: |
U+17000–U+187FF U+16FE0–U+16FFF |
ISO 15924 コード: | Tang |
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。 |

西夏文字(せいかもじ、英語: Tangut script)は、西夏王朝(1032年~1227年)初代皇帝李元昊の時代に制定された、タングート人の言語である西夏語を表記するための文字。
19世紀にフランスの東洋学者・ドゥベリア(Devéria, Gabriel)により、文字であることが判明する。長らく未解読であったが、20世紀に入り、 ロシアのニコライ・ネフスキーや日本の西田龍雄[1]によって、1960年代に解読がなされた。
漢字と、それを作った漢族を強く意識して作成されており、中国人を意味する「漢人」に当たる文字は「小偏に虫」という差別的な構成で表記される。
漢字検索、表記ソフトウェアの『今昔文字鏡』およびUnicodeに登録されており、文章等の電子化が可能となっている。
体系[編集]
6,000文字ほどの文字数を持ち[2]、冠や偏・旁等の組み合わせで表記するなど、漢字に似た構造を持つ。基本的に一字一音節である。
漢字とは異なり象形文字起源ではないため、700以上ある[3]各構成要素がどのような起源で作られたのかは未だに定かではなく、要素の表す意味が全て解明されている訳ではない。字全体での意味はわかっていても、なぜその要素を使用しているのか不明の文字も多い。
契丹文字の一部の字形と近い要素も存在するが、関連は明らかにされていない。
特徴[編集]
漢字の楷書と同じく、毛筆による筆記に適した、直線と曲げの多い筆画を用いている。毛筆で記す場合には、とめ、はらいなどの筆法も使用される。
最も画数の少ない西夏文字でも4画あり、画像に示した「人」の意味を持つものはその一つである。一方画数の最も多いものでも二十数画となっている。
単一の要素で成立している文字(前述のように象形文字ではなく、また指事文字でもない)は少なく、複数の要素の組み合わせで構成されている文字が大部分であり、その中でも六書で言うところの「会意」、即ち複数の要素の意味を合成している文字が多く、「形声」即ち意符を音符から成っている文字は比較的少ない。以下に示すのは会意の例である。
- 例)「鉄冠」に「細い」で「針」、「木冠」に「細い」で「とげ」、等。
また、(西夏人の思想で)近い概念の文字には近い字形が使用される。
- 例)「頭」の旁を「先」に置き換えて「始」、「頭」の偏を「顔」の偏と置き換えると「額」、等。
漢字を翻訳したのではなく、別の思想体系で造字されているため、部首のカテゴリや総数は漢字とは異なる。また、ある意味の字が漢字とは別の部首に属す場合も多い。
- 例)「鈴」は漢字では金偏だが、西夏文字では音偏。
また、漢字にはない意味を表す部首、例えば否定を表す偏や動詞化を表す冠などもある。否定を表す構成要素には2種類あり、それぞれ「不」の偏を加える「関係否定字」と、「無」の旁を加える「存在否定字」がある。
- 例1) 「小」に「不」の偏を加え「大」(関係否定字)。
- 例2) 「精気」に「無」の旁を加え「屍」(存在否定字)。
歴史[編集]
- 1036年(大慶元年)に公布されたとされる。皇帝が野利仁栄に命じて作らせたとされ、およそ6,000文字がほぼ一斉に公布されたと思われる。
- 1227年(宝義二年)に西夏王朝は滅亡するが、西夏文字はその後も一部で使用され続けた。最も新しい使用例としては、弘治十五年(1502年)の記年のある西夏文字が記された石幢がある。
電子化[編集]
漢字検索、表記ソフトウェアの『今昔文字鏡』が独自に日本語の漢字領域で使うためのフォントを作成、提供している。
2016年6月に決定のUnicode 9.0 において、追加多言語面の U+17000 - U+187EC(6125文字) に西夏文字が、U+18800 - U+18AF2 に西夏文字の要素が追加された[4]。Unicode 11.0 では西夏文字5文字が、Unicode 12.0 では西夏文字6文字が、Unicode 13.0 では西夏文字9文字がU+187ECより後ろのコードポイントに追加され、現在Unicodeに収録されている西夏文字の総数は6145文字となっている。
Unicodeの西夏文字が表示可能なフォントは下記のフォントがある。
- BabelStone Tangut Wenhai(西夏文字は一部のみ収録)
- Tangut Yinchuan(西夏文字は完全収録)
画像[編集]
脚注[編集]
関連項目[編集]
- シュトヘル - 伊藤悠による漫画作品。文字の力を信じ、西夏文字を後世に残そうとする少年を巡る戦いを描く。
- サンダーフォースVI - 家庭用ゲーム機PlayStation 2用のコンピューターゲーム。作品中で西夏文字が使用されている。ただし、装飾的なものであり西夏語を記述しているわけではない。同じくゲーム内で使われているモンゴル文字についても同様である。
- 敦煌 (小説) - 井上靖の歴史小説。西夏文字が重要なアイテムとして描かれている。
外部リンク[編集]
- インターネット西夏学会
- “西夏文资料” (中国語). 向柏霖. 2012年2月4日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2006年7月6日閲覧。 無保存が多い。