入江喜和

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入江 喜和
生誕 (1966-04-27) 1966年4月27日(53歳)[1]
日本の旗 東京都板橋区[1]
国籍 日本の旗 日本
職業 漫画家
活動期間 1989年 -
ジャンル 青年漫画女性漫画
代表作杯気分! 肴姫
のんちゃんのり弁
昭和の男
おかめ日和
たそがれたかこ
ゆりあ先生の赤い糸
受賞 アフタヌーン四季賞1989年冬・四季賞
このマンガがすごい!2015【オンナ編】第8位
このマンガがすごい!2018【オンナ編】第4位
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入江 喜和(いりえ きわ、1966年4月27日 - )は、日本漫画家東京都出身。血液型A型。夫は同じく漫画家の新井英樹

経歴[編集]

東京都板橋区で生まれる。11歳で千葉県銚子市に引っ越す[1]居酒屋を経営する家庭で育つ。母親が東京下町で生まれ育ち、入江自身も21歳から墨田区・江東区に住んでいる[2]

中学・高校時代、山岸凉子の絶大な影響があり、入江自身もブログで「山岸凉子先生の世紀の大傑作『日出処の天子』に中高生の頃 頭と心を打ち抜かれ(…)もう厩戸王子が好きで好きで好きで」と述懐し[3]、高校時代、マンガの上手なクラスメートに入江と厩戸王子が夫婦になるマンガをねだったほどで[4]、同作を数かぎりなく読み返し、いまだにセリフが頭に入っているという[5]

1988年より劇画村塾(小池一夫劇画村塾)に通い、マンガを描き始める[6]。デビュー前から秀でた才能があり、当時、「塾頭・小池一夫大先生が(…)「天才」とほめてくださった」と入江も書いている[7]

翌年、『月刊アフタヌーン』(講談社)の「四季賞1989年冬のコンテスト」で、「杯気分! 肴姫」が四季賞を受賞。

様々な登場人物を細かく描き分ける群像劇が中心で、舞台となる店や施設、街の取材を怠らず、設定は入江が暮らす東京の下町や山手線圏内であることが多いが、その際、実在する街角や、ライヴハウス、バーなどがリアルに丹念に描かれるのが特徴のひとつ。登場人物が勝手に動く方法で物語をつくっていく。例えば『たそがれたかこ』の9巻の場合は、「たかこさんが急に立ちあがって歌いだしたっていうのはうれしかったです。(…)「そうか、バンドやりたいのか、たかこさん!」と! 胸に迫るものがありました」と語っている[8]

他のマンガ家との交流に関しては「ほぼないんです……パーチーとか苦手なもんで」と語っている[4]。バレエ好き。

1991年から『モーニング』(講談社)、『コミックビーム』(エンターブレイン)に作品を発表。『のんちゃんのり弁』が1997年中部日本放送制作TBS系のドラマ30枠でTVドラマ化。翌年に続編もあり。2009年には映画化された。

2000年ごろから一時休筆した後、2004年5月、『週刊モーニング』誌で『昭和の男』連載にて復帰。本作への自身のコメントとして、「久々にモーニングの表紙を飾りご満悦だが、(…)打ち切りに。気に入ってるのに!」とある[1]通り、畳職人への丹念な取材や職場の描写、そしてバレエと、その後の入江作品のスタイルを予告する重要な作品である。

青年誌での評価は高く、『コミックビーム』編集長・奥村氏も「渋いです。(…)居酒屋の情景なんざ日本一!(…)現在も他誌で頑張ってるけど、また描いてくんねえかなあ」[9]と書いている。

その後、入江は、2006年より女性誌である講談社BE・LOVE』を主な執筆の場とし、より構成が複雑で長い作品を次々に発表していく。

2017年7月、『たそがれたかこ』完結記念 入江喜和トークライブが、東京・阿佐ヶ谷ロフトAで開催された。オリジナルグッズ(ナスティインコTシャツ、サイン本 etc..)や、登場人物・美馬修平の料理が食べられるという趣向の、特別レシピ・フードメニューも販売された。雲田はるこや、当時の担当編集者の愛あるトークで盛り上がった。劇画村塾時代のことなども話され、マンガで重要なのはキャラクターだと小池一夫の教えを入江が紹介し、その代表例として墨田区界隈の相撲部屋の群像劇、ちばてつやのたり松太郎』が挙げられ、副主人公の田中に関しても触れられた。また、「優しい男の人は誰にでも優しいんですよね」と語ったが、よくよく考えればその発言は『ゆりあ先生の赤い糸』の伊沢吾良のことを暗示していたかのようでもあったり、あるいは自作の中で、男女の営みのシーンを描く際、おっぱいを絵としてきちんと描くことを意識しているなど、意外な話が多数披露された[10]

2019年9~10月には、「新井英樹・入江喜和 画業30周年原画展」が、イオンモールkyoto、丸井錦糸町店、丸井有楽町店にて同時開催されている[11]。デビュー作「杯気分! 肴姫」の原画では、迸る線と淡い配色に、若き入江の野心が漲っている。その後、その時々の作品や題材に合わせ、絵のタッチや作風を変化させて来たことが入江の原画には細密な筆として残されており、もともと淡い配色がさらに淡くぼかされるようになっていくのに合わせ、迷いのないシャープで正確な線が主張しすぎないように工夫されていく様などがこの原画展で披露された。また、「ゆりあ先生」第1話の最初のカラーページは、舞台の刺繍教室を暗示するように、布や毛糸を使った切り貼りのゆりあ先生の姿であるが、この珍しい原画も展示された。展示のタイミングに合わせ、入江は同人誌「入江喜和 画業30周年記念 キワ本」を発売。「描きおろし漫画×今まで収録しきれなかったショートやイラスト」が多数掲載されており、あちこちに描いたスピンオフマンガが一冊にまとまった[12]

『BE・LOVE』時代以降の作品[編集]

デビューから青年誌を中心に作品を発表してきた入江は、2006年より30~40代女性が読者ターゲットの『BE・LOVE』に作品を掲載しはじめ、結果としてそれまで以上に息の長い作品に取り組むことになる。

おかめ日和』(2006年~)を『BE・LOVE』誌上にて、足かけ8年連載した。最終的に全17巻の大作となり、現在は電子書籍版で読める。2017年に主人公の夫・岳太郎がモラハラなのではないかと、最初の方だけ読んだ読者の間で話題となり、ネットで一時、侃々諤々の物議を醸したが、最後まで読んだ読者の感想は総じて感動的な夫婦愛の物語であるとされ、現在と過去が交錯する凝ったプロットに入江喜和の新境地をみせた。

たそがれたかこ』(2013年2017年)は、「このマンガがすごい!2018【オンナ編】」第4位[13]、「このマンガがすごい!2015【オンナ編】」第8位と、8位(4巻)→4位(10巻)と上昇した珍しい例。最終10巻と第1巻にはCD付き特装版があり、「クリープハイプ」の尾崎世界観が、同作のために書き下ろした完全オリジナル曲(「漫画」)を収録したことでも大きな話題となった[14]。最終話は例外的に2号連続で1話扱いとなり、そのタイトルは「風にふかれて」であり、クリープハイプの曲名からつけられた[8]。なお、同作の登場人物、谷在家光一は、尾崎世界観がモデルである[15]。ちなみに、一花が通う文化学院は実在し、「文化学院のことを描くまでは絶対にやめたくないと思った」と入江も語っている[8]。また、単行本未収録で8ページの番外編が存在し、公平とまきっぺ(妊娠8カ月)の同居4カ月のころの生活を中心に、その後のたかこ、碧海、修平、一花などの様子が見られるようになっている。さらに、特装版告知にまつわり、ブログでも「たかこ」のキャラクターたちが登場する「簡単マンガ」が公開された[16][17] [18] [19] [20]。2018年5月発売の「ダ・ヴィンチ」にもインタビューとともにスピンオフ版「うわがき たかこ」が掲載された。「水彩絵の具を小学生のような色塗りで」描いた2ページのカラー作品は、電子書籍版では風合いがボケているため大判の本誌で読む方が精彩さがよくわかる。中村イネや、美馬などが登場し、その後のたかこがあの時の思い出をうわがきしていく日常が読める[21]

東京BONごはん~おウチで作る名店の味~』(2014年~)を『おとなの週末』にて連載。この作品は、『たそがれたかこ』連載中の執筆となり、入江、初の平行連載となる。東京の名店の名物料理を数ページの食レポ形式のマンガで紹介し、家庭の普通の食材でつくれる関連したアレンジ料理を1~2品、登場人物・いさくのクッキングレシピという趣向で各話の最終ページに描いた。デビュー作から一貫して、調理をする場が舞台となったり、料理そのものも繊細なタッチで描いて来た入江が、普段、どのような料理を作っているかの手がかりともなり、イラスト付きレシピの細かい解説により、入江の料理への繊細なこだわりがかいま見える。また、単行本のところどころに街の細密なイラスト画が描かれている[22]

シダ&ナンシー』(2017年8月)は、1話読み切りの小品ながら、『たそがれたかこ』のまきっぺのような顔だちの美しい若い女性を主人公にした作品という点でも珍しく、32ページの作品で5回もの回想が入る凝った構成の、主要登場人物6人の群像劇。スナック「ナンシー」を営んでいた亡くなった母ミチコの、主人公による生前の記憶の追憶と、母の最後の同棲相手(愛人=ヒモ)・シダとの小さい心のわだかまりや思春期時代の複雑な愛情、交流などがきめ細かく描かれた傑作である[23]

また、『ゆりあ先生の赤い糸』を、2018年BE・LOVE』3月1日号より連載開始[24]。50歳のヒロインは刺繍教室の先生。子ども時代の家族(父、母、姉)とのエピソードから快調に新連載がスタートした[25]。出だしのジェットコースターのような意外すぎる怒濤の展開[26]。その後、状況が次第に明らかになり、箭内くんと夫の微妙な心の綾、そして、主人公ゆりあの揺れる心が綿密に描かれたあと、予想もつかない新キャラが登場する……。本作により入江は、自作の物語作法をさらに進めたと言えよう。これまで培った、独特なリアルな人物造形の物語に加え、珍しくミスリードや展開のための前フリを置くなどのプロットの立て方をしており、入江の物語作家としての大きな意欲がうかがえる[21]。入江自身は、本作品の解説として「とっつきにくい話と思うかもしれませんが、難しく考えないでください。基本、少女マンガです。愛とか恋とかそういうヤツです。そんなマンガが大好きです」としている(第4巻 カバー見返し)。また、本作品の3つのキーワード、ダンナに愛人、BL、バレエは、3人の担当編集者のリクエストを組み合わせたものである様子が、「実録! ゆりあ先生の赤い糸は、こんなカンジで作られた! 」にて読むことができる。コミックスは第4巻まで発売された[27]。第1巻(1~6話)帯キャッチ「50歳の平凡な女の数奇な人生」。第2巻(7~14話)裏表紙キャッチ「ぼくも介護に参加します」。第3巻(15~22話)裏表紙キャッチ「ゴロさんを信じてあげてください」。第4巻(23~27話)帯キャッチ「先生の心にひろがる男気平野に咲いた乙女心の花、一輪--」。

作品・著作リスト[編集]

  • 杯気分! 肴姫(1991年 - 1993年、講談社モーニングKC、全7巻)
    • 杯気分! 肴姫(2010年、エンターブレイン刊ビームコミックス新装版、全3巻)
  • のんちゃんのり弁(1995年 - 1998年、講談社モーニングKC、全4巻)
    • のんちゃんのり弁 新装版(2009年、講談社モーニングKCDX、上・下巻)
  • ちゃらっぽこ幽霊(『コミックビーム』1999年4月号 - 5月号掲載、前後編、2008年エンターブレイン刊ビームコミックス『ビーム短編傑作選 奥村編集長セレクション マンゴー編』に収録)
  • ざしき(『コミックビーム』1999年8月号掲載。「ちゃらっぽこ幽霊」の続編)
  • あこがれ(『コミックビーム』2000年1月号掲載)
  • 昭和の男(2004年 - 2005年、講談社モーニングKC、全2巻)
  • おかめ日和(2006年 - 2013年、講談社『BE・LOVE』連載、講談社 BE・LOVE KCDX、全17巻)
  • あこがれの山岸凉子先生にお会いしました (2013年、講談社『BE・LOVE』6号 2ページ小品)(山岸凉子『言霊』 収録 KCデラックス BE LOVE)
  • たそがれたかこ(2013年 - 2017年、講談社『BE・LOVE』、全10巻)
  • 今日もウチで呑んでます (2013年 、日本文芸社 別冊漫画ゴラク 酒楽 2013年9月第1号 - 2014年1月 第2号 連載)(おつまみレシピのあるエッセイマンガ)(「東京BONごはん~おウチで作る名店の味~」収録)
  • なんやかんやで四半世紀 画業25周年記念プレゼント小冊子(2014年、講談社 非売品 『たそがれたかこ』1・2巻購読者へのキャンペーン景品 12ページ小冊子 入江の様々な登場人物が入り乱れるファンブック)
  • 東京BONごはん~おウチで作る名店の味~ 日本文芸社(ニチブンコミックス)全1巻 (初出タイトル「こまどり夫婦の東京BONごはん」 講談社 『おとなの週末』2014年4月~2015年7月)
  • たそがれたかこ 番外編 公平くん男道(2017年8月、講談社『BE・LOVE』15号、8ページ小品 最終話の後日談で碧海も少し登場。公平の父・雄造の顔が見られる)(「キワ本」に収録)
  • シダ&ナンシー (2017年、講談社 『モーニング』41号 1話読み切り。電子書籍で講読可)
  • たそがれたかこ 特別描き下ろし うわがき たかこ(2018年5月、KADOKAWA『ダ・ヴィンチ』6月号、2ページカラー作品)(「キワ本」に収録)
  • ゆりあ先生の赤い糸(2018年 - 、講談社『BE・LOVE』連載中、講談社 BE・LOVEコミックス 第1巻(2018年7月13日)、第2巻(10月12日)、第3巻(2019年3月13日)、第4巻(2019年9月13日))
  • 爛漫、キャンディーズ(2019年、ブログ・キワ者便りにて掲載)(「おかめ日和」のちーちゃん・「ゆりあ先生の赤い糸」のみーちゃん、「たそがれたかこ」の公平くんとまきっぺの赤ちゃんが、将来出会ったら?という4コマ漫画)(「キワ本」に収録)
  • キワ本 入江喜和 画業30周年記念(2019年9月15日、作者自身よる同人誌、64ページ、内容は描きおろし漫画、雑誌やwebに描いたスピンオフマンガ、自筆年表など)
  • 実録! ゆりあ先生の赤い糸は、こんなカンジで作られた! (2019年、キワ本収録、8ページ、3人の担当編集者のリクエストを合体させて発想されたという創作秘話)

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d 入江喜和『入江喜和 画業30周年記念 キワ本』2019年9月15日発行、58頁
  2. ^ 入江喜和『なんやかんやで四半世紀』2014年
  3. ^ キワ者便り 2016年10月08日 必見!山岸凉子展「光」
  4. ^ a b あこがれの山岸凉子先生にお会いしました (2013年 6号、講談社『BE・LOVE』)(山岸凉子言霊』 収録 KCデラックス BE LOVE)
  5. ^ このマンガがすごい!WEB 入江喜和『たそがれたかこ』【後編】 人生のどん底でスタートした漫画家人生
  6. ^ キワ者便り 2019年04月19日 ありがとうございました
  7. ^ エンターブレイン刊ビームコミックス新装版 『杯気分! 肴姫』 三杯目(第3巻) あとがき
  8. ^ a b c このマンガがすごい!WEB【インタビュー】 『たそがれたかこ』入江喜和先生が、連載丸4年をふりかえる! 物語のラストに関わる重要なシーンとは? そして、尾崎世界観とのコラボ曲の制作秘話も!?
  9. ^ エンターブレイン『ビーム短編傑作選 奥村編集長セレクション マンゴー編』2008年 6頁
  10. ^ コミックナタリー 入江喜和「たそがれたかこ」完結記念トークライブ開催!ゲストに雲田はるこ
  11. ^ 2019年09月1日 新井英樹・入江喜和 画業30周年原画展のお知らせ
  12. ^ キワ者便り 2019年09月18日 キワ本
  13. ^ よみコミ!・このマンガがすごい!2018【オンナ編】 ランキングベスト50
  14. ^ 音楽ナタリー 尾崎世界観書き下ろし新曲付き、マンガ「たそがれたかこ」最終巻発売
  15. ^ 講談社 入江喜和×尾崎世界観 スペシャル対談
  16. ^ キワ者便り たかこ簡単マンガ1 「弾き語り」2017-07-01
  17. ^ キワ者便り たかこ簡単マンガ2 「この歌の良さがいつかきっと君にも…」2017-07-03
  18. ^ キワ者便り 簡単マンガ 番外編 「みなちゃまごめんなさい」2017-07-08
  19. ^ キワ者便り たかこ簡単マンガ3 「待ちに待ったぜ!!のCDを買った時のアレ」2017-07-15
  20. ^ キワ者便り 「発売決定」2017-07-20
  21. ^ a b キワ者便り 「「たかこ」スピンオフカラー」2018年5月1日
  22. ^ 『東京BONごはん ~おウチで作る名店の味~』 入江喜和 【日刊マンガガイド】
  23. ^ キワ者便り 2017年09月07日 シダ&ナンシー
  24. ^ コミックナタリー 「たそがれたかこ」の入江喜和、50歳のヒロイン描く新作「ゆりあ先生の赤い糸」
  25. ^ キワ者便り 2017年02月24日 刺繍教室
  26. ^ BE LOVE編集部◇講談社 ツイート 『ゆりあ先生の赤い糸』第三話告知
  27. ^ キワ者便り 2019年09月12日 明日出ます

外部リンク[編集]