大雪山
| 大雪山 ヌタプカウシュペ | |
|---|---|
|
西方の美瑛町から大雪山の山影 | |
| 標高 | 旭岳:2,290.93[1][2] m |
| 所在地 |
|
| 位置 | 北緯43度39分48.9秒 東経142度51分14.9秒 / 北緯43.663583度 東経142.854139度座標: 北緯43度39分48.9秒 東経142度51分14.9秒 / 北緯43.663583度 東経142.854139度 |
| 山系 | 石狩山地 |
| 種類 | 複成火山 |
大雪山(たいせつざん、だいせつざん)は、北海道の中央にある旭岳などの山々からなる巨大な山塊の名称[3]。大雪山系とも呼ばれ、一帯は大雪山国立公園に指定されている[4]。
深田久弥による日本百名山には「大雪山」として、西麓の勇駒別温泉(現旭岳温泉)から旭岳、北鎮岳、永山岳などを経て愛山渓温泉へ、翌日に愛山渓温泉から御鉢平を周遊し黒岳から層雲峡温泉に至る山行紀が掲載されている[5]。
概説
[編集]北海道中央に位置する標高2,000 m級の峰々を中心に構成される[3]。一つの山ではないことを明確にするため、「大雪山系」という呼称もしばしば使われる[6]。
最高峰の旭岳を中心とする大雪火山群と南方に広がる台地のエリアは「表大雪」と呼ばれている[7] [8]。「大雪山」は本来この「表大雪」と呼ばれている御鉢平カルデラを中心としたエリアを指す呼称であり、「大雪山系」がそのように使われることもある。先住民アイヌは「ヌタップカウシペ、ヌタプカウシュペ nutap-ka-us-pe」(川がめぐる上の山)もしくは十勝岳連峰(主峰 十勝岳)と合わせて「オプタテシケ op-ta-tes-ke」と呼んでいた[9]。
大雪山は旭岳を中心とする山々(表大雪)のほか、周囲にニセイカウシュッペ山等の北大雪、ニペソツ山等の東大雪、十勝岳連峰の山群があり巨大な山系を形成している[3]。ただし、環境省の資料などではニセイカウシュッペ山などは表大雪エリアの一部として扱われている[7]。
旭岳などを含む峰々(表大雪)とその周囲の北大雪、東大雪、十勝岳連峰を包含する大雪山国立公園は、面積約23万 haという広大さで、日本最大の国立公園である[3]。
江戸時代後期以降、大雪山に近づいた和人には間宮林蔵、松浦武四郎、松田市太郎らがいる[3]。松田市太郎は1857年3月から4月にかけてアイヌの人たちの案内により石狩川の水源調査を行い、忠別岳などに登頂したほか層雲峡温泉を発見した[3]。明治に入り、1872年には高畑利宣が層雲峡を探検して流星の滝や銀河の滝を発見している[3]。1874年(明治7年)にはアメリカ人鉱山学者でお雇い外国人のベンジャミン・スミス・ライマンが、石狩川から十勝方面へ調査を行った[3]。
一方、大雪山系では、一部の山名や沢のアイヌ語呼称を除けば、大正時代半ばまで地名が確定していなかった。旭川に教諭として赴任し、大雪山系で地質や植生を調べ歩いた小泉秀雄が1918年(大正7年)8月、日本山岳会機関誌『山岳』所載の「北海道中央高地の地学的研究」で、北海道庁作成の20万分の1地図に詳細な地名を記した地図をつけた。古くからのアイヌ語地名が存在する場所はそれを採用し、新たな命名はそれ以外とすることを原則とした。後者の例は、北辺の守りを担う北海道駐屯の第7師団から「北鎮岳」と名付けたほか、北方探検に従事した間宮林蔵、松浦武四郎、松田市太郎の苗字から採った山々もある。小泉は、1926年(大正15年/昭和元年)刊行の同地についての初の本格的ガイドブック『大雪山 登山法及登山案内』添付地図で一部を修正し、地名選定作業を終えた[6]。
アイヌを除けば、大雪山系一帯を網羅的に踏破したのは小泉が初めてとみられる。地名がついたことで全国的に知られるようになり、大町桂月「層雲峡より大雪山へ」(『中央公論』1923年8月号掲載)[10]、大島亮吉『石狩岳より石狩川に沿うて』といった紀行文に登場してさらに知名度を高めた。1924年(大正13年)には実業家の荒井初一が「大雪山調査会」を設立し、自然の調査や保護、観光開発に取り組んだ[6]。小泉秀雄や大町桂月の大雪山行きは、旭川で植木業を営みながら大雪山系に分け入っていた成田嘉助が案内・同道していた[10]。
大町桂月ら4人は1921年(大正10年)8月22日に塩谷温泉(現在の層雲峡温泉)から入って、同25日に松山温泉(現在の天人峡温泉)へ至る縦走を達成した。この折の紀行文が上記の「層雲峡より大雪山へ」であり、「富士山に登って、山岳の高さを語れ。大雪山に登って、山岳の大さを語れ。」[11]と大雪山系の奥深さを世に知らしめた。これに刺激されて、北海道庁職員らによる北海道山岳会が1923年(大正12年)、層雲峡から黒岳を経て旭岳石室へ至る登山道と山小屋を整備し、天人峡からの既存登山道とつながった[10]。
なお、北海道史の研究家であった河野常吉が1927年8月、『北海タイムス』(現在の『北海道新聞』)で旭岳を山系の総称とすべきだとする記事を載せ、小泉が同年11月に反論を掲載する一幕があったが、大雪山が定着した[6]。
国の特別天然記念物(天然保護区域)および国指定大雪山鳥獣保護区(大規模生息地、面積35,534 ha)に指定されている。
地域区分
[編集]表大雪
[編集]
狭義の大雪山は、旭岳連峰すなわち以下の山などから成る石狩川と忠別川の上流部に挟まれた山塊を指す。
- 旭岳(2,291 m) - 北海道の最高峰
- 北鎮岳(2,244 m)
- 白雲岳(2,230 m)
- 後旭岳(2,216 m)
- 熊ヶ岳(2,210 m)
- 比布岳(2,197 m) - 比布町からは36 kmも離れており町域外の山である。
- 安足間岳(2,194 m) - 安足間川支流のポンアンタロマ川の源頭である。
- 間宮岳(2,185 m) - 間宮林蔵が山名の由来。
- 荒井岳(2,183 m) - 荒井初一が山名の由来。
- 北海岳(2,149 m) - 東川町で一番東にある山で、白雲岳とのコルは美瑛町・東川町・上川町の3境界となっている。
- 鋸岳(2,142 m) - 北鎮岳のすぐ北に連なる。登山道は南側斜面を通るため山頂に通じる道はない。
- 松田岳(2,136 m) - 松田市太郎が山名の由来。
- 凌雲岳(2,125 m) - 「雲を凌いで高くそびえる」ことに由来する。現在の北海道旭川永嶺高等学校の旧校名の由来でもある。
- 愛別岳(2,113 m)
- 中岳(2,113 m) - 北鎮岳と間宮岳の間に位置する山で、東側斜面には山名を冠した中岳温泉がある。
- 赤岳(2,078 m)
- 当麻岳(2,076 m) - 当麻町からは30 kmも離れており町域外の山である。
- 烏帽子岳(2,072 m) - 白雲岳から五色岳を経て連なり、烏帽子という山名のように巨岩が集まり飛び出たような山容をしている。登山道はない。
- 東岳(2,067 m) - 山名の通り小泉岳の東に連なる。
- 永山岳(2,046 m) - 永山武四郎が山名の由来。
- 五色岳(2,038 m) - 白雲岳から北に伸びる尾根上に連なる山で、表大雪にも同名の山がある。登山道はないが山頂標識がある。
- 緑岳(2,019 m、別名 松浦岳) - 松浦岳という山名は松浦武四郎が由来。
- 黒岳(1,984 m) - 5合目に大雪山層雲峡・黒岳ロープウェイ黒岳駅、レストハウス、大雪山黒岳資料館
- 中条岳(1,978 m) - 永山岳の北肩の小山で、僅か250 mほどしか離れていない。
- 大塚(1,950 m) - 安足間岳から南側に伸びる尾根上の小山。登山道はない。
- 小塚(1,877 m) - 安足間岳から南側に伸びる尾根上の小山。登山道はない。
- 桂月岳(1,938 m) - 大町桂月が山名の由来。
- 上川岳(1,884 m) - 凌雲岳の北に連なる。登山道はなく凌雲岳とは険しい岩稜で繋がっているため通行には注意が必要。
- 小旭岳(1,654 m)
- シバ山(1,483 m)- 緑岳から南東に伸びる尾根上に位置する山で、山名の由来は不明。登山道は存在しないが山頂標識が設置されている。
- 天幕山(1,165 m) - 鋸岳から北に伸びる尾根上の台地に位置する小山。登山道はない。
「表大雪」と呼ぶ場合には、白雲岳からトムラウシ山へ続く山々も含む[7]。
- トムラウシ山(2,141 m)
- 前トムラウシ山(1,649 m)
- 忠別岳(1,963 m)
- 凡忠別岳(1,821 m) - 別名「ポン忠別岳」[12]。
- 化雲岳(1,954 m)
- 小化雲岳(1,924 m) - 別名「ポン化雲岳」[12]。
- 五色岳(1,898 m) - この山で十勝岳連峰方向と東大雪の山々へと分岐する。
- 平ヶ岳(1,752 m) - 北側は大雪火山群と表大雪の境界でありまた最低コルである。山名のように山頂付近はかなり緩やかで平坦に近い山体になっている。
- 扇沼山(1,615 m) - 扇沼という沼は存在せず、南西側斜面にある硫黄沼が山名の由来とされる。
- シビナイ岳(1,566 m) - 上川町を流れるシビナイ川に由来。アイヌ語で「鮭ののぼる川」、「トクサの生えている川」、「甚だしく細い川」など諸説ある[13]。
- 中尾山(1,474 m) - 中尾沢に由来する。
- 六ッ沼山(1,314 m) - 山名の通り周囲には複数の沼が存在する。
- 丸山(1,237 m) - 別名「美瑛丸山」。登山道は存在しないが山頂標識が設置されている。
- 上忠別山(1,122 m) - 「忠別」を含むが忠別岳・凡忠別岳からは遠く離れている。
お鉢平の底部には、「有毒温泉」と呼ばれる温泉が湧いており、温泉とともに、強力な毒性を持つ硫化水素ガスが噴出しているため、立ち入り禁止となっている。お鉢平の北側の稜線から少し下った所、登山道に沿った渓谷の脇にも高温の湯が湧いている。ここは入湯可能で、中岳温泉と呼ばれて訪れる人が増えている。
北大雪
[編集]石狩川を挟んで北にあるニセイカウシュッペ山などの山々を北大雪と呼ぶ[3]。ただし、環境省の資料などではニセイカウシュッペ山や平山は表大雪エリアの一部として扱われている[7]。
- ニセイカウシュッペ山(1,883 m)
- 武利岳(1,876 m)
- 軍艦山(1,830 m) - 別名「アンギラス」。
- 比麻奈山(1,811 m)
- 比麻良山(1,796 m)
- 屏風岳(1,792 m)
- 平山(1,771 m)
- ニセイチャロマップ岳(1,760 m)
- 武華山(1,758 m)
- 文三岳(1,755 m)
- 支湧別岳(1,688 m)
- 有明山(1,635 m)
- 丸山(1,618 m)
- 無類岩山(1,613 m)
- 天狗岳(1,553 m)
- 雲霧山(1,500 m) - 主稜線上の1595 mの無名峰から北西方向に伸びる尾根上に位置する。
- チトカニウシ山(1,445 m)
- 朝陽山(1,370 m)
- 小天狗(1,313 m)
- 芦ノ台(1,306 m)
- 三笠山(1,291 m)
- 北見富士(1,291 m)
- 樹海峰(1,232 m) - 武華山から西に伸びる尾根の先端部に位置し、山麓は大雪湖となっている。
- 岩山(1,121 m) - 名前の通り山頂部が岩体となっている。
- 残月峰(1,091 m)
- 和刈別(1,033 m)
- 奔然別(1,005 m)
- 双雲内(905 m)
- 緑山(865 m) - 雲霧山から北に伸びる尾根上に位置する。
東大雪
[編集]やや南東にあるニペソツ山などを含む山群を東大雪と呼ぶ[3]。昔は、「裏大雪」とも呼ばれていた。東大雪エリアは十勝川流域にあり、この山域に含まれる石狩連峰の山々は表大雪エリアの山々とは異なり多くは非火山性の山々である[7]。
- ニペソツ山(2,013 m)
- 石狩岳(1,967 m)
- 音更山(1,932 m)
- 小石狩岳(1,924 m)
- ニペの耳(1,895 m)
- 川上岳(1,894 m)
- 前天狗(1,888 m)
- 天狗岳(1,868 m)
- ウペペサンケ山(1,848 m)
- 糠平富士(1,835 m)
- ポン音更山(1,790 m)
- ユニ石狩岳(1,756 m)
- 丸山(1,692 m)
- 小天狗岳(1,681 m)
- 東丸山(1,666 m)
- 西クマネシリ岳(1,635 m)
- ピリベツ岳(1,602 m)
- クマネシリ岳(1,586 m)
- 温泉岳(1,578 m)
- 南クマネシリ岳(1,560 m)
- 三国山(1,541 m)
- 上勝北(1,390 m)
- 上然別山(1,370 m)
- 下勝北(1,352 m)
- 湯仁二又(1,342 m)
- ポントムラ山(1,336 m)
- 喜登牛山(1,312 m)
- ピシカチナイ山(1,310 m)
- 屏風山(1,291 m)
- 北石狩岳(1,286 m)
- 然別山(1,264 m)
- 北稜岳(1,256 m)
- ポントムラウシ山(1,247 m)
- 椎常呂山(1,231 m)
- 東三国山(1,230 m)
- 江屯武華山(1,219 m)
- タウシュベツ山(1,185 m)
- 軍艦山(1,181 m)
- ニセイ山(1,180 m)
- ホロカ山(1,161 m)
- 二股山(1,155 m)
- 下然別山(1,093 m)
- えぼし山(1,057 m)
- 勢多山(996 m)
- 天宝山(919 m)
- 女夫山(859 m)
- 小坂山(827 m)
- 丸山(660 m)
- 藻岩山(635 m)
- 丸山(574 m)
- 沙間樹庵(569 m)
- 安村山(522 m)
- 植坂山(476 m)
- 宮島山(414 m)
- 作太郎山(385 m)
然別火山群
[編集]十勝岳連峰
[編集]十勝岳連峰も大雪山の巨大な山系に含められることがある[3]。
- 十勝岳(2,077 m)
- 美瑛岳(2,052 m)
- オプタテシケ山(2,013 m)
- 平ヶ岳(2,008 m)
- 鋸岳(1,980 m)
- 上ホロカメットク山(1,920 m)
- 富良野岳(1,912 m)
- 上富良野岳(1,893 m)
- 美瑛富士(1,888 m)
- 三峰山(1,866 m)
- ベベツ岳(1,860 m)
- 境山(1,837 m)
- 石垣山(1,822 m)
- 三段山(1,748 m)
- 前十勝(1,736 m)
- ツリガネ山(1,708 m)
- 下ホロカメットク山(1,668 m)
- 美真岳(1,668 m)
- コスマヌプリ(1,626 m)
- 前富良野岳(1,625 m)
- 大麓山(1,459 m)
- トウヤウスベ山(1,400 m)
- 旭岳(1,335 m)
- 三股山(1,213 m)
- トノカリシベツ山(1,151 m)
- チカベツ山(1,019 m)
- ニコロ山(1,019 m)
- 経歳鶴(931 m)
- 丸山(843 m)
- ペンケ山(797 m)
- 幾寅川上山(792 m)
- 筑紫岳(581 m)
- パンケ山(541 m)
- 旭岳(521 m)
米飯山地
[編集]大雪山系の山々から連なる山地であり、周囲と比べてかなり標高が低いものの広域では大雪山系の一部とされることがある。
- ピウケナイ山(1,248 m)
- 本安足山(1,143 m)
- 安足間山(979 m)
- 米飯山(920 m)
- 安足山(851 m)
- 真勲別(753 m) - 愛別岳から北に伸びる尾根上に位置する山で、二等三角点「真勲別」が設置されており山名は点名に由来するとされるが、その語源は不明。登山道は存在しない。
- 東山(690 m)
- 月見山(678 m)
- 江卸山(672 m)
- 別取山(636 m) - 読み方は「ぺいとるやま」もしくは「べつとらやま」。永山岳から中条岳を経て連なる尾根上に位置する山で、三等三角点「別取山」が設置されている。山名は西側を流れる石狩川支流ペイトル川に由来し、アイヌ語「pe-uturu(両川の間にある川)」が語源である[13]。登山道は存在しないが山頂標識が設置されている。
- 上米飯山(623 m)
- 米原山(575 m)
- 中岐登牛山(571 m)
- 上岐登牛山(548 m)
- 石垣山(525 m)
- 音子内山(483 m)
- 黒岩山(482 m)
- 岐登牛山(456 m)
- 奔当麻内山(456 m)
- 安足間山(448 m)
- 岩山(434 m)
- 屏風山(397 m)
- 椴山(362 m)
- 二又山(357 m)
- 伊香牛山(349 m)
- 愛別山(304 m)
- 牛別山(298 m)
- 月形山(286 m)
ギャラリー
[編集]- 北鎮岳
- 黒岳
- 緑岳
自然
[編集]

大雪山は高山植物の宝庫である。高緯度の北海道にあるため気象条件は日本アルプスの3,000 m級の山々とほぼ同じとされている[3]。大雪山はこの高度領域が非常に広く、また山々がなだらかに広がっているため、日本最大の高山帯を形成している。地理的にもカムチャツカ、シベリア、日本の本州からの合流点となっているほか、温帯・寒帯の狭間でもあり、小泉岳 - 緑岳の山岳永久凍土と呼ばれる永久凍土や多くの周氷河地形が残ることから高山植物の種類も豊富である。
その地理や気候風土から、日本国内では最も早く紅葉を見ることができ、9月からウラシマツツジやチングルマなどの紅葉を楽しむことができる[14]。また、例年9月中旬には初雪を観測する[14]。
大雪山系には、やや南にあるトムラウシ山、忠別岳なども含める。この付近にはアイヌ語で「カムイミンタル(kamuy-mintar)」といわれる場所がある。直訳すると「神々の庭」という意味で、ここでいう「神」とは「キムンカムイ(kimun-kamuy)」(山の神)、つまりヒグマのことであり、ヒグマが多数出現する場所である。
地史
[編集]大雪山系の土台となっている基盤岩は海抜1,000 mに達している。その上に更新世初期に多量の火砕流が噴出した後、現在の地形を形作る火山活動が始まった。まず流動性の高い厚い溶岩流が噴出し、南部の高根ヶ原や北西部の沼ノ平などの広い高原が形成された。
その後の噴火では流動性の少ない溶岩に移行し、北鎮岳、黒岳、白雲岳などの溶岩円頂丘ができた。3万年前に大雪山の中心部で大きな噴火があり、大量の火砕流が東側に流出して台地を形成した。この台地を石狩川が浸食してできたのが層雲峡で、両岸の柱状節理はこのときに堆積した溶結凝灰岩である。
約3万8千年前に御鉢平カルデラが形成された[15]。1万年前から西部で繰り返し噴火が起こり、成層火山の旭岳ができた。旭岳は約5,600年前に山体の一部が崩壊する噴火が起こって、現在見られる山容となった。旭岳は現在も盛んな噴気活動を行っている(写真参照)。最新の水蒸気噴火は約250年前以降である[15]。
読みについて
[編集]大雪山の名を初めて著した書物は、1899年(明治32年)発行の『日本名勝地誌』とされる[16][17]。この書では、「たいせつざん」と振り仮名があった。命名者は小説家の松原二十三階堂(岩五郎)とされる。1912年(明治45年)発行の『帝國地名辭典』には、同じ読みで掲載されている[18]。
国土地理院では「たいせつざん」の呼び名を採用しており[19]、5万分の1地形図の名称は「大雪山(たいせつざん)」となっている。旭川市から網走市へと至る国道39号の通称は大雪国道(たいせつこくどう)であり、同市内にある公共施設の名称は旭川大雪アリーナ(あさひかわたいせつアリーナ)や旭川市大雪クリスタルホール(あさひかわしたいせつクリスタルホール)である。また、上川町の層雲峡温泉には「ホテル大雪(たいせつ)」という名称の大型温泉ホテルがある[3]。札幌駅・旭川駅 - 網走駅間を結ぶ国鉄(JR北海道)の急行列車・特急列車の愛称も「大雪(たいせつ)」となっている。
一方で、1934年(昭和9年)に指定された大雪山国立公園の読みは「だいせつざんこくりつこうえん」とされている[3]。大雪山固有の動植物の和名も「ダイセツ」を付けるものがほとんどであり、主なものにダイセツトリカブト、ダイセツタカネヒカゲ、ダイセツオサムシ、ダイセツタカネフキバッタなどの例があげられる。東亜国内航空では、所有するYS-11の機体ごとに日本各地の地名がニックネームとして使用しており、うち JA8759 が「だいせつ」の名を冠していた。現地の案内板のローマ字表記も「Daisetsu」と「Taisetsu」が入り交じっている。
脚注
[編集]- ↑ 三角点「瓊多窟(ぬたっく)」気象庁 / 2020年10月28日閲覧
- ↑ “基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2014年7月15日閲覧。 “基準点コード TR16542369801”
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 太田英順「地質で語る百名山 第5回 大雪山」『GSJ 地質ニュース』Vol.4 No.6 産業技術総合研究所地質調査総合センター(2015年)2021年8月14日閲覧
- ↑ 大雪山国立公園(環境省)2021年3月2日閲覧
- ↑ 深田久弥『日本百名山』朝日新聞社、1982年。ISBN 4-02-260871-4。
- 1 2 3 4 【時を訪ねて 1918】地名の決定(大雪山系)一枚の地図に落とし込む『北海道新聞』日曜朝刊別刷り2020年10月11日1-2面
- 1 2 3 4 5 大雪山国立公園(環境省)2021年2月19日閲覧
- ↑ “大雪山(旭岳) 神々が遊ぶほど美しい「北海道の屋根」”. ヤマレコ. 2022年9月19日閲覧。
- ↑ 山崎晴雄、久保純子『日本列島100万年史 大地に刻まれた壮大な物語』講談社ブルーバックス、2017年、57頁。ISBN 978-4-06-502000-5。
- 1 2 3 『北海道新聞』土曜朝刊サタデーどうしん21-22面「名言生んだ大雪山の旅100年」「四方に広がる絶景ルート」「旅を支えた案内人 成田嘉助」
- ↑ 「大さ」は原文ママ
- 1 2 日本歴史地名大系,世界大百科事典内言及. “忠別岳(ちゆうべつだけ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. DIGITALIO. 2026年5月10日閲覧。
- 1 2 『上川町史』上川町、1966年。
- 1 2 日本一早い紅葉(上川町)『朝日新聞』2017年9月6日(2018年9月8日閲覧)
- 1 2 大雪山(気象庁)2017年4月閲覧
- ↑ 松原岩五郎『日本名勝地誌 第9編 北海道之部』(4版)博文館、1903年、104頁。
- ↑ 小泉秀雄「北海道中央高地の地学的研究」『山岳』第12年2・3合併号、日本山岳会、1918年、205-452頁。
- ↑ 太田爲三郎編『帝國地名辭典 下巻』(三省堂、1912年)896頁
- ↑ 日本の主な山岳標高
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 大雪山 - 地理院地図(国土地理院)
- 大雪山 - 地質で語る百名山(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
- 大雪山 - 北海道の活火山(気象庁)
- 大雪山 - 日本活火山総覧(気象庁)
- 大雪山の火山観測データ - 気象庁
- 大雪火山群 - 日本の火山(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)
- 大雪火山群、トムラウシ火山と高層湿原群 - 日本の地形千景プラス(地形・地質情報ポータルサイト)
- 大雪山系旭岳周辺湿原群、大雪山系トムラウシ山周辺湿原群 - 重要湿地(環境省)
- 大雪山鳥獣保護区 区域図 - 国指定鳥獣保護区(環境省 北海道地方環境事務所)
- 大雪山 - 重要野鳥生息地(日本野鳥の会)
- 大雪山 - 文化遺産オンライン(文化庁)
- 大雪山森林生態系保護地域 - 北海道森林管理局
- 大雪山 - 山と渓谷オンライン
- 大雪山系・旭岳・トムラウシ - YAMAP
- NHK特集 大雪山・花紀行〜「神々の庭」の短い夏〜 - NHKアーカイブス
