三省堂

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三省堂
2006年7月、提供者(Nmaeda)が撮影.jpg
三省堂本社ビル
正式名称 株式会社 三省堂
英文名称 Sanseido Co.,Ltd.
前身 三省堂書店
現況 継続中
種類 株式会社
出版者記号 385
取次コード 2774
設立日 1915年(大正4年)
(創業:1881年
代表者 代表取締役社長 北口克彦
本社郵便番号 101-8371
本社所在地 東京都千代田区三崎町2-22-14
資本金 7,000万円
従業員数 170名
主要子会社 三省堂印刷株式会社
株式会社三省堂流通センター
株式会社三省堂出版サービス
ネット販売 三省堂 Web Shop
主要出版物 大辞林
コンサイス人名事典
電子書籍 三省堂 Web Dictionary
得意ジャンル 辞書、事典
外部リンク http://www.sanseido-publ.co.jp/
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株式会社三省堂(さんせいどう)は、日本出版社である。辞典事典六法教科書などの出版で知られる。

本社はJR水道橋駅神田川に挟まれたエリアにある。この場所は、かつて自社印刷工場の倉庫として使われていた場所であった。

沿革[編集]

1881年明治14年)、旧旗本の一族である亀井忠一により古書店三省堂書店として創業され、出版事業には1884年(明治17年)に進出。

当初より、辞書、事典、教科書、地図(現在は事実上撤退)などの出版や、教材の販売など、教育学術分野を事業の中心とした。当時、辞書出版の分野でライバルとも言えた冨山房は大型で専門家向けの辞書が多かったが、三省堂はどちらかと言えば小型でも実用的な辞書に力を入れ、そのために1889年(明治22年)には自社印刷工場を開設し、後に専用活字も制作した。

1915年大正4年)に、個人経営だった三省堂書店の出版・製造部門が「株式会社三省堂」として独立、法人化する[1]。その後、1974年昭和49年)の辞書定価シール貼り事件から、出版業界最大の負債50億円を抱え倒産、これを機会に、創業者一族が三省堂の経営から離れ、直接の資本関係もなくなった。三省堂書店は現在でも、創業者一族の経営である。

製造部門は1981年(昭和56年)、三省堂印刷として独立、法人化された。三省堂印刷は、八王子市の本社工場で組版・印刷・製本の一貫製造をおこなっている。これは、分業体制の確立した印刷・製本業界で、特に上製本のラインではめずらしい。また、三省堂は戦前から社外の印刷物を受注しているが、戦後になってから受注するようになった日本聖書協会(プロテスタント・カトリック系)の聖書は、大半を三省堂印刷で印刷、製本するまでになった。

近年は、辞典・事典・六法・教科書・参考書・一般書などを出版。特に、『廣辭林』や、明解・コンサイス・クラウンなどを冠する辞書では、一時代を築いたと言えるほど代表的な辞書となっている。国語英語検定教科書でも知られるが、現在はかつてのような高い採択率ではなくなっている。

出版物の特徴[編集]

国語辞典[編集]

国語辞典として国内最大の販売数量を誇る『新明解国語辞典』は、語釈や用例がユニークかつストレートなことで有名で根強いファンがいる。これは編集主幹の山田忠雄がほとんど独力で編纂しており、彼の思想が色濃く表れている。

ただし、前身の『明解国語辞典』は見坊豪紀が編者であり、この段階では山田は協力者であった。その後、見坊は『三省堂国語辞典』の編者に、山田が「新明解国語辞典」の主幹にそれぞれなった。どちらも『明解国語辞典』を元にしているが、改訂が進むにつれて性格の違いがはっきり判るようになった。『新明解国語辞典』は、重要な語であれば古くとも残し、必要であれば語釈を長くするのも躊躇しない。それに対して、『三省堂国語辞典』はいわばアグレッシブであり、積極的に新語を入れ、語釈は本質を突いた簡潔な表現とする。

一冊ものとしては大型の国語辞典(中型国語辞典)として、『広辞苑』と市場を争う『大辞林』は、徹底した現代語中心主義で支持を得ている。現代語・カタカナ語が豊富なこと(「ローリング-ストーンズ」という項目もある)はもちろん、語釈の記述も原則的に現代語を先に、古語を後に記述している。 しかし、古典方言などは『広辞苑』が優勢である。

現在ではすっかり影が薄くなってしまった中型国語辞典に金沢庄三郎(現在の編者は三省堂編修所)の『広辞林』がある。しかし、戦前に発行された『廣辭林』は、全国のほとんどの中学生が使っていたというほどヒットした国語辞典で、現在でも古書店で簡単に入手できるほどである。金沢は日本語朝鮮語の比較研究をおこない、『日韓両国語同系論』などを発表したため、朝鮮半島併合の推進者に度々利用されることとなった。(当時の国名は「大韓帝国」であった。)

作家の三島由紀夫は少年時代からずっと『廣辭林』を愛用し、ボロボロになるまで使っていた。新しい『広辞苑』には愛着がなく、『廣辭林』が一番使いよいと述べていた[2]

英和辞典[編集]

明治・大正・昭和と長期に渡って小型英和辞典の代表として親しまれた『コンサイス英和辞典』は、店頭ではあまり見かけなくなった。これは、机上で常用する辞典としては『グランドコンサイス』のような中辞典クラスが、逆に携帯用であれば小型の『デイリーコンサイス』が好まれるようになり、『コンサイス』が中途半端となったためと思われる。つまり、多くの中高生・大学生が複数の辞書を持ち、それを使い分けることが容易な価格になったのである。実際、物価上昇を考えると、辞書は明らかに安価となった。余談だが、敗戦直後、巻きタバコの巻紙の代用品として民間で多用された。

比較的大型の英和辞典としては、以前は『カレッジクラウン英和辞典』や『新明解英和中辞典』があった。どちらも評判は悪くなかったが、長らく改訂されず、そのまま在庫切れとなった。その間、研究社の『リーダーズ英和辞典』がヒットするなど、読者の大型志向が明らかになり、再度、大型の英和辞典が投入された。『グランドコンサイス英和辞典』(編者は三省堂編修所)である。

最近では『ウィズダム英和辞典』が三省堂独自のコーパスを構築したうえで編纂され2003年平成15年)に発売されたが、2006年(平成18年)秋に改訂、ウェブと同時に使うことのできるデュアル・ディクショナリーとして発表され、同じブランド名をもつ『ウィズダム和英辞典』も刊行された。2007年(平成19年)4月から、デュアル・ディクショナリーからウィズダム英和・和英の用例をコーパスとする「用例コーパス」が無料公開されている。

百科辞典[編集]

現在では、百科事典の版元として平凡社学習研究社が著名だが、日本独自の百科辞典は大隈重信が編纂し、三省堂から刊行された『日本百科大辞典』(全10巻、1908年~1919年)が最初だった。(当時、「事典」という言葉はまだなかった) 優れた百科辞典の刊行は、その国の文化のバロメーターと言われるほど重要なことであったため、それを祝う発刊披露園遊会が開かれた。この園遊会には、渋沢栄一など、政財界からも多くの出席があった。なお、出版費用があまりに多額であったため、資金不足から三省堂は倒産してしまうが、支援者に恵まれて再建、全10巻の刊行を果たした。

また、1937年昭和12年)に刊行された『婦人家庭百科辞典』も、戦前の代表的百科のひとつだ。現在、筑摩書房より文庫として復刻されている。

教科書[編集]

  • 文部科学省検定済み教科書の発行者番号は15。
  • 高等学校向け検定教科書を4教科(国語、英語、地歴、公民)発行している。
    • 2015年度高校教科書採択冊数は1,489,256冊で発行38社中第7位であった。
    • 特に英語に強みを持ち、「CROWN」「Vista」などが高いシェアを得ている。
  • 中学校向け検定教科書を3教科(英語、国語、書写)発行している。
    • 2016年度中学校教科書採択冊数は1,321,988冊で発行19社中第10位(シェア4.1%)であった。
    • 「NEW CROWN」で知られる英語は856,468冊で発行6社中第3位(シェア24.2%)であった。
  • 小学校向け検定教科書を1教科(国語)発行している。
    • 2015年度小学校国語教科書採択冊数は114,366冊で発行5社中第5位(シェア0.8%)であった。
    • 検定教科書ではないが、小学校外国語活動用のテキストも発行している。

不祥事[編集]

  • 2015年には小学生向けの国語教科書にて使用された挿絵が、3本腕に見える絵になるというミスが発覚した[3]
  • 2009年に同社が小学校国語教科書に新規参入するのをきっかけに始まった「編集会議」で、外部閲覧が禁止されている検定途中の教科書を公立中学校の校長らに閲覧させていた。これは検定中の教科書を教員らに事前に見せて金品を渡していたものである。会議は過去7回開催され、のべ26都道府県の校長ら53人が参加し、一人5万円の謝礼金の他、交通費、宿泊費、懇親会費なども同社が負担していたことが判明した。文部科学省は再発防止を求める指導文書を同社に手渡した[4]。同様の事例が東京書籍数研出版啓林館教育出版光村図書出版育鵬社等でも見られ、教科書業界全体で不適切な営業行為が発覚した。

主な出版物[編集]

国語辞典・古語辞典・漢和辞典[編集]

  • 大辞林、広辞林、ハイブリッド新辞林、小辞林、新明解国語辞典三省堂国語辞典、例解新国語辞典、現代新国語辞典、デイリーコンサイス国語辞典、ジェム国語辞典、辞海、音訓両引き国漢辞典
  • 全訳読解古語辞典、全訳基本古語辞典、三省堂 詳説古語辞典、新明解古語辞典、例解古語辞典
  • 漢辞海、五十音引き漢和辞典、例解新漢和辞典、新明解漢和辞典、三省堂新漢和中辞典
  • 新明解日本語アクセント辞典、現代国語表記辞典、コンサイスカタカナ語辞典
  • 新明解百科語辞典、新明解四字熟語辞典、新明解故事ことわざ辞典、都道府県別全国方言辞典、中国名言名句辞典新版
時代別国語大辞典(上代編、室町時代編一、二、三、四、五)

外国語辞典[編集]

  • グランドコンサイス英和辞典、グランドセンチュリー英和辞典、ウィズダム英和辞典、新グローバル英和辞典、新クラウン英和辞典、デイリーコンサイス英和辞典、エクシード英和辞典、デイリーニューフォニックス英和辞典、初級クラウン英和辞典、カタカナで引ける英和辞典、ジェム英和・和英辞典、カレッジクラウン英和辞典、最新明解英和辞典、新明解英和中辞典
  • クラウン独和辞典、新コンサイス独和辞典、クラウン仏和辞典、デイリーコンサイス仏和・和仏辞典
  • クラウン中日辞典、デイリーコンサイス中日辞典、例解新日韓辞典、例解新韓日辞典
  • クラウン西和辞典、コンサイス露和辞典
  • 現代英文法辞典、英語語義語源辞典、英語文体論辞典、固有名詞英語発音辞典、ドゥーデン図解英和辞典
  • 言語学大辞典(全六巻、別巻一)、日本列島の言語、ヨーロッパの言語

事典[編集]

  • コンサイス日本人名事典、コンサイス外国人名事典、コンサイス日本地名事典、コンサイス外国地名事典、コンサイス鳥名事典、コンサイス日本山名辞典、コンサイス外国山名辞典、日本山名事典
  • 江戸東京学事典、、聖書思想事典、西洋絵画作品名辞典、クラシック音楽作品名辞典

六法[編集]

  • 模範六法、模範小六法、デイリー六法、教育六法、知的財産権六法
  • 新判例コンメンタール

一般書[編集]

  • コンサイス20世紀思想辞典、魯迅事典、朝鮮の歴史、楽しいネーミング百科、東京おもひで草
  • 虚子編 新歳時記、季寄せ、ホトトギス新歳時記
  • フェルミ熱力学、物理小事典、化学小事典、三省堂世界星座早見、家づくりその前に
  • 抗がん剤の副作用がわかる本、世界のエッセンシャルドラッグ、ようこそダウン症の赤ちゃん、ぼくの手,おちゃわんタイプや、龍平の現在
  • うめ版 新明解国語辞典×梅佳代
  • 1960年代には三省堂新書、1980年代までは三省堂選書という叢書のレーベルもあった。

電子出版[編集]

  • スーパー大辞林・コンサイスカタカナ語辞典、グランドコンサイス英和辞典・グランドコンサイス和英辞典、クラウン独和辞典・新コンサイス和独辞典、クラウン仏和辞典・コンサイス和仏辞典
  • 三省堂 辞典館、新グローバル&ニューセンチュリー英和・和英辞典、
  • 大辞林&デイリー英和・和英、辞林21、三省堂 新辞書パック11、クラウン独和辞典、クラウン仏和辞典
  • 聖書思想事典、萱野茂のアイヌ語辞典、ホトトギス電子新歳時記、e康熙字典 日本語版

関連会社[編集]

印刷・製本
三省堂出版物の倉庫、ならびに発送業務

三省堂書店との関係[編集]

三省堂は三省堂書店の出版・印刷部門が1915年大正4年)に独立したもの[1]。現在は直接の資本関係はない。

だが、以前は共同で設立した三省堂企画があり、主に贈答品、記念品といった用途に三省堂の辞典に名入れしたものや、オリジナルの辞典・事典を制作していた。(現在は解散し、事業は三省堂が引き取った)

また、三省堂書店の出版子会社である創英社三省堂印刷に印刷・製本を発注することがあるほか、健保の三省堂健康保険組合[5]を共同で運用していた。

脚注[編集]

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  1. ^ a b 三省堂書店 | 会社情報 : 三省堂書店の歩み
  2. ^ 三島由紀夫『座右の辞書』(風景 1961年1月号に掲載)。『決定版 三島由紀夫全集第31巻・評論6』(新潮社、2003年)に所収。
  3. ^ 三省堂、教科書1万冊回収 下書きを消し忘れ:日本経済新聞
  4. ^ “三省堂、検定中の教科書見せ謝礼金 校長らに1人5万円”. 朝日新聞デジタル. (2015年10月30日). http://www.asahi.com/articles/ASHBY6JV8HBYUTIL04J.html 2015年10月30日閲覧。 
  5. ^ 現在は出版健保(出版健康保険組合)。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]