カルデラ

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アメリカ合衆国アラスカ州にあるアニアクチャク山英語版カルデラ。直径は約10km。
日本阿蘇カルデラ(カルデラ壁の一部)。南北25km、東西18km

カルデラ英語: caldera)とは、火山の活動によってできた大きな凹地のこと。「[1]」「[2]」という意味のスペイン語に由来し、カルデラが初めて研究されたカナリア諸島での現地名による。

本来は単に地形的な凹みを指す言葉であり、比較的大きな火山火口や火山地域の盆地状の地形一般についてもカルデラを称するなど定義は明瞭でない。しかし、概ね欧米などでは1マイル以上、日本では2km程度以上になると、凹みの成因は単純に噴火だけでは説明できないため、火口と区別してカルデラと称しているようである。また地上に明瞭なカルデラ地形をとどめていない場合でも、調査によって現在は侵食や埋没しているが過去にカルデラであったと認められるものはカルデラと呼ぶ。

カルデラの成因[編集]

陥没カルデラ[編集]

大規模な噴火で、火山灰火砕流軽石溶岩などの、いわゆる「火山噴出物」が大量に噴出したり、マグマが地下を移動して空洞化した地下のマグマ溜まりに、落ち込む形で地表が陥没した(続いて崖崩れによりさらに拡大した)もの。カルデラの多くがこのタイプである。

爆発カルデラ[編集]

馬蹄形爆発カルデラの中央火口丘(妙高山)と外輪山(三田原山)の空撮(航空写真リンク)

陥没カルデラよりも小規模な噴火や水蒸気爆発が引き金となって火口付近の山頂部が崩壊し、O形またはU型の凹地ができたもの(「U型」のものは「馬蹄形カルデラ」と呼ぶ場合もある)。1888年磐梯山噴火山体崩壊によるカルデラが代表例である。1980年に崩壊の様子が、アメリカセント・ヘレンズ山噴火で連続写真に撮影され、詳細が明らかになった。

侵食カルデラ[編集]

元は普通の火山体であったが、侵食により火口が大きく広がったもの。伊豆湯河原カルデラは古い火山が侵食されてできた侵食カルデラの代表例である。侵食カルデラは火山活動と直接の関係はなく、気候や火山体を構成する岩石の脆さなど様々な条件が揃わないと形成されないため、数は少ない。

カルデラに関連する地形[編集]

カルデラ湖の沼沢湖
アメリカ合衆国オレゴン州クレーターレイク(カルデラ湖)。直径は8 - 9.6km。
小型カルデラ湖の榛名湖と中央火口丘の榛名富士
千島列島温禰古丹島(おんねこたんとう)にある幽仙湖と黒石山。

カルデラ盆地[編集]

カルデラは地形的な凹地であるから、当然、盆地であるが、他の成因の盆地と区別する場合などは特に「カルデラ盆地」と呼ぶ場合もある。

カルデラ湖[編集]

カルデラ湖 (caldera lake) は、カルデラ全体または一部に雨水が貯まりになったもの。箱根山芦ノ湖十和田湖などカルデラ湖は多数ある。ほとんどのカルデラ(海中を除く)は一度は湖になっており、現在、カルデラ湖でないものは流出する河川ができて排水されたものである。

外輪山[編集]

外輪山 (somma) は、カルデラの縁にあたる尾根の部分。成層火山の山頂付近が陥没または崩壊してできたカルデラの場合、外輪山は元の成層火山の噴出物からなる(例:榛名カルデラ)。もともと火山のなかった場所に陥没カルデラができた場合、外輪山は古い地層からなる(例:屈斜路カルデラ)か、または、カルデラができた時の噴出物からなる(例:阿蘇カルデラ)。

中央火口丘[編集]

中央火口丘 (central cone) は、カルデラ内に新たに形成された小規模な火山。阿蘇中岳箱根駒ヶ岳などが代表例。但し、カルデラができた後の火山活動はカルデラ内部で起きるとは限らず、カルデラの縁やすぐ外側に火山ができる場合も多い。例えば有珠山洞爺カルデラの外側にできた火山である。

陥没カルデラを形成する噴火[編集]

21世紀初頭において、「カルデラ盆地」や「カルデラ湖」は、1回 - 数回の噴火で現在の陥没地形が形成されたと考えられている。すなわち、1回の噴火の噴出物量が非常に多い巨大噴火であったと推定される。歴史上、1815年インドネシアタンボラ火山の噴火で噴出物が100km3にまで達したが、この大きさは日本の赤城山の全部の体積に相当する。

日本では、紀元前3,000年頃まで陥没カルデラを形成する巨大カルデラ噴火が度々発生していたが、それ以後はカルデラを形成するような噴火は発生していない。しかし、同一カルデラからの大規模噴火は、その間に数万年 - 数十万年の期間があるために、将来も発生しないという保証はない。

古い解説書などには、「カルデラは成層火山の山頂が噴火で陥没してできる」などと書かれている場合があるが、その後の研究によりカルデラのできる場所は成層火山の山頂とは限らず、もともと何も無かった場所で巨大噴火が起こってカルデラができる場合もあることがわかってきた。箱根カルデラ富士山のような巨大な成層火山の山頂にできたと考えられていたが、20世紀末以降の研究では「巨大な成層火山」の存在は否定されつつある。十和田湖洞爺湖屈斜路湖などではカルデラの周囲は古い地層からなっており、成層火山はなかったと考えられている。また、阿蘇山の外輪山は、ほとんどが阿蘇カルデラそのものの噴出物からなり、やはり、巨大成層火山はなかったと考えられる。

陥没カルデラのできかたと内部構造[編集]

「陥没カルデラの生成モデル」。クレーターレイクカルデラの場合。

陥没カルデラのでき方、内部構造は大きく2種類あると考えられている。一つはあまり内部が破砕せずにピストン状に落ち込むピストンシリンダー型で、もう一つは破砕が進みじょうご型の凹地を形成するじょうご型である。さらにそれぞれがいくつかに分類されている。 このうちバイアス型カルデラと濁川型カルデラはボーリングなどによって内部構造が比較的よくわかっているが、その他の個々のカルデラについてはまだよくわかっていないことが多い。玄武岩質火山によく見られるキラウエア型カルデラは形成過程が何回か観察されている。

多くのカルデラでは、内部を密度の小さな破砕された岩石や火砕物が埋めているため、周りより重力が小さいことが多い(低重力異常型)。一方、キラウエア型カルデラでは凹所を厚い玄武岩質溶岩流が埋め、火砕物が少ないため周りより重力が大きい(高重力異常型)。

ピストンシリンダー型[編集]

バイアス型[編集]

地下の巨大なマグマ溜まりから地表に向かって環状の割目ができ、そこからマグマが大量に噴出し巨大噴火となる。噴火と並行して、空洞になったマグマ溜まりに地面が陥没し大規模な円筒形の凹地ができる。アメリカバイアスカルデラ英語版を代表とする。日本にはこのタイプのカルデラ地形はないが、過去にそうであったと推定できる環状の割目やその内部を埋める噴出物は各地で見つかっている(こういった「元・バイアス型カルデラ」を「コールドロン」という)。

キラウエア型[編集]

主に玄武岩質で流動性の高いマグマが、真上に噴火はせずマグマ溜まりから側方に移動して、空洞となったマグマ溜まりに地面が陥没し円筒形の凹地ができる。ハワイキラウエアカルデラを代表とする。日本では伊豆大島三宅島などが、このタイプと考えられている。

じょうご型[編集]

ピストンシリンダー型より小さく、環状割目ではなく1個から数個の火口から噴火し、周辺の岩石は破砕されてマグマ溜まり跡の空洞に落ち込みじょうご型の凹地を形成する(これはすぐに土砂で埋まって平坦な盆地となる)。以前は「クラカトア型」や「クレーターレイク型」などと呼ばれていたが、代表とされるクラカトアカルデラおよびクレーターレイクカルデラが、じょうご型ではないらしいことが判明したため、現在では「じょうご型」と呼ぶ。日本のカルデラの多くはこのタイプと考えられていたが、最近の研究では、じょうご型でないモデルもいくつか提案されている。

濁川型[編集]

形はじょうご型であるがカルデラとしては最も小さい部類で、直径3km程度。形成過程は不明である。内部に落ち込んだ岩石にあまり大きいものはなく、カルデラと火口の中間的なものとも考えられる。北海道濁川カルデラを代表とする。

日本のカルデラの分布が伊豆半島から伊豆諸島を除いて南北に偏っているのはプレートの配置と関係があると考えられている。100万年以上前には、本州中央部にもカルデラがあったことが分かっている(穂高岳など)。

主なカルデラ[編集]

日本[編集]

アメリカ[編集]

アジア[編集]

  • クラカタウインドネシア) - 535年1883年に噴火した。535年の噴火は世界中の気象に影響を与えたといわれ、1883年は死者36,000人。
  • タンボラカルデラ(インドネシア) - 1815年に噴火した。記録にある噴火としては最大規模である(死者92,000人)。
  • トバ湖カルデラ(インドネシア) - 約7万年前に巨大噴火を起こした。過去2,500万年で最大級。それに伴う気象変動で人類の祖先は絶滅しかけたとも言われる(「トバ・カタストロフ」)。

ヨーロッパ[編集]

オセアニア[編集]

アフリカ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ スペイン語でのcalderaの意味を、大辞林大辞泉は「釜」、広辞苑は「大釜」と解説している。
  2. ^ 白水社「スペイン語ミニ辞典」ではcalderaは「大鍋」「ボイラー」と和訳されているが、「やかん」を指す場合もある。因みに、calderoは「小鍋」と和訳されている。

関連項目[編集]