チーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
チーター
チーター
チーター Acinonyx jubatus
保全状況評価[1][2][3]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 VU.svgワシントン条約附属書I
地質時代
前期更新世 - 現代
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
: ネコ科 Felidae
亜科 : ネコ亜科 Felinae
: チーター属
Acinonyx Brookes 1828[4]
: チーター A. jubatus
学名
Acinonyx jubatus (Schreber, 1775)[3][4][5]
シノニム

Felis jubatus Schreber, 1775[4]
Acinonyx guttatus ngorongorensis Hilzheimer, 1913[4]
Acinonyx rex Pocock, 1927[4]

和名
チーター[6][7][8]
英名
Cheetah[4][9]

分布域

チーター (Acinonyx jubatus)は、食肉目ネコ科チーター属に分類される食肉類。現生種では本種のみでチーター属を構成する。

古い和名は狩猟豹(しゅりょうひょう)という[10]

分布[編集]

熱帯雨林地方を除くアフリカ大陸イラン [11][12]

古くはサハラ砂漠と熱帯雨林域を除くアフリカ大陸全域、パレスチナからアラビア半島・インド・タジキスタンにかけて分布していた[4][9]

形態[編集]

頭胴長(体長)110 - 150センチメートル[7]。尾長60 - 90センチメートル[7]。肩高67 - 94センチメートル[9]体重35 - 72キログラム[7][8]。体型は細い[6][5]。頸部から背にかけて体毛が伸長する[5]。種小名jubatusは「鬣がある」の意で、幼獣の鬣も含めこの伸長した体毛に由来する[4][5]。毛衣は淡黄色で硬く、黒い斑点が点在する[5][9]。和名や英名は「胴体に斑点がある」という意のサンスクリット語であるchitrakaに由来する[5]。眼の内角から口にかけて黒い筋模様が入る[6][8]。尾には黒い帯模様が入り、先端の毛衣は白い[5][8]

頭部は小型[6][8]。耳介は小型で、やや扁平[6]虹彩は黄褐色で、瞳孔は丸い[5]。犬歯および歯根は小型だが、これにより鼻腔が広くなり呼吸量を増加させると共に獲物に噛みつきながら呼吸がしやすくなっている[6]。四肢は細長く、爪はさやに引っ込めることができない[5][6][8]。これにより爪がスパイクの役割をして速く走ることに適している[6]。属名Acinonyxは「動かせない爪」の意だと考えられている[4]

出産直後の幼獣は体長30センチメートル[6]。体重240 - 300グラム[8]。飼育下では平均463グラム[4]。生後3か月以内の幼獣は頸部から背にかけて青灰色の鬣状の体毛で被われ[6]、捕食者から発見されにくくなる効果があると考えられている[9]

ジンバブエ(旧ローデシア)には斑点が繋がり、帯状になる突然変異個体(キングチーター)がいる[5][6][9]。この変異は劣性遺伝[5][7]。Christopher B.Kaelinらによる研究で、これはイエネコにおけるタビー模様をもたらす変異と同じ遺伝子の変異がもたらすものであることであることが判明した[13]

分類[編集]

ネコ科の他種と比べると遺伝的多様性に乏しく、ミトコンドリアDNAの分子系統解析から後期更新世の約10,000年前に一度絶滅寸前まで生息数が激減し、近親交配が進んだためと推定されている[3]。同時期に同属の化石種Acinonyx intermediusAcinonyx pardinensisも絶滅したと推定されている[4]。タンザニア北部で前期更新世の地層から本種の化石が発見されている[4]

キングチーターはチーター属の独立種A. rexとして記載されたこともあるが、突然変異個体のためシノニムとされる[6]

アフリカチーターA. j. jubatusとアジアチーターA. j. venaticusの2亜種のみを認める説もある[6]。以下の分類はKrausman & Morales, (2005)およびIUCN(2008)に従う[3][4]

Acinonyx jubatus jubatus (Schreber, 1775)
アフリカ大陸南部[3]
Acinonyx jubatus fearsoni (Smith, 1834)[3]
アフリカ大陸東部[3]
Acinonyx jubatus hecki Hilzheimer, 1913[3][4]
アルジェリアニジェールブルキナファソベナン[3]。ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、コートジボワール、シエラレオネでは絶滅し、セネガル、モロッコでも絶滅していると考えられている[3]。模式産地はセネガル[3][4]
Acinonyx jubatus soemmeringii (Fitzinger, 1855)[3][4]
アフリカ大陸北東部[3]
Acinonyx jubatus venaticus (Griffith, 1821)[3][4][5] アジアチーター[6] Asiatic cheetah
イラン。以前はインド南西部から中央アジアにかけて分布していた[3]。模式産地は不明だが、アフリカ大陸北部の個体群を本亜種に含める説もある[3]

5亜種に分けるものもある[12]。アジアチーターは、かつて南西アジアから中央アジアのカスピ海周辺、さらにインドまで分布した。インドで1950年代に、他地域でも20世紀に相次いで姿を消し、イランに数十が残るだけと推定されている[14]

生態[編集]

草原や半砂漠・藪地などに生息する[8]。地表棲だが、樹上に登ることもある[9]昼行性[5][6][7]。単独で生活するが、母親とその幼獣・血縁関係のある個体(兄弟など)では小規模な群れを形成することがある[9]。オスは縄張りを形成し、群れを形成している場合は共同で縄張りを防衛する[6]。行動圏は50 - 130平方キロメートルの報告例がある[9]

獲物を追跡するときは2秒で時速72キロメートルに達することもある[8]。1965年にケニアで行われた測定では201.2メートル(220ヤード)を約7秒で走行するのが記録され、これは秒速29メートル(時速約104キロメートル)に相当する[3][4][15]。一方でナミビアのHarnas野生動物保護区で野生復帰中の2個体にデータロガーを用いて37日にわたり計測を行ったところGPS・加速度・動画から最高時速13.6 - 60.7キロメートル(平均最高時速30.5±10.9キロメートル)という報告例もあり、捕食時間も長いことからこれらは大型肉食獣が少なく見通しの悪い低木林での適応とする説もある[16]近年[いつ?]行われた計測では平均時速は59キロメートルである[17][18]。疾走できるのは平均170メートル[6][7]。最大500メートル[4][7]

食性は動物食で、主にインパラ・ガゼル類などの小型から中型有蹄類、大型有蹄類の幼獣などを食べ、ノウサギ類や鳥類を捕食することもある[4][7]。動物の死骸は食べない[4][8]。家畜を襲うこともありナミビアの調査では食性の10 - 15 %がヒツジ・ヤギ、3 - 5 %がウシの幼獣だったとする報告例もある[8]。蟻塚の上や低木の樹上などから獲物を探すが、丈の長い草が茂みがある環境では茂みの中で獲物を待ち伏せる[8]。獲物に100 - 300メートルまで接近してから狩りを行うが、距離が200メートル以上だと狩りの成功率は低下する[4]。獲物を発見すると近距離まで忍び寄ってから、全力で疾走しながら獲物を追跡し引き倒した後に喉に5 - 10分間噛みついて窒息死させる[6][8]。狩りの成功率は半分程度[6]。倒した獲物は他の動物に邪魔されないように、茂みの中などへ運んでから食べる[6][8]。頭部や顎の力が弱く、獲物の骨などは噛み砕くことができないため残す[5][7]。成獣は2 - 5日に1度獲物にありつければ十分だが、子育て中のメスは毎日狩りに成功する必要がある[4][9]。水は4日に1回、ときには10日に1回だけ飲むこともある[6]。幼獣の捕食者はヒョウブチハイエナライオンなどが挙げられ、ライオンは成獣も殺すこともあるが逃げきれることが多い[9]

繁殖形態は胎生。発情したメスは木や茂み、岩などに放尿し、その臭いをかぎ付いた優位のオスは鳴き声をあげながらメスを追跡する[6]。メスがオスを受け入れると互いに鳴き交わし、1 - 2日間に数回交尾を行う[6][8]。妊娠期間は90 - 95日[4][5][7][9]。野生下では1回に6頭までの幼獣を産む[4][9]。主に2 - 4頭の幼獣を産む[5]飼育下では最大8頭の出産例がある[4][9]。幼獣は生後2 - 14日で開眼し、生後16日で歩行できるようになる[8]。授乳期間は3 - 6か月[4]。生後15 - 17か月で狩りができるようになる[8]。ブチハイエナやライオンなどの捕食による幼獣の死亡率が73 %、その他の要因も含めた幼獣の死亡率が95 %と成獣になる確率は低い[8]。生後14 - 16か月で性成熟する[5]。平均寿命は12 - 14年[8]

人間との関係[編集]

毛皮が利用されることもある[6]。古代アッシリアエジプトシュメール、インドのムガル帝国、ヨーロッパなどでは、飼い馴らした個体を狩猟に用いることもあった[4][7][9]アクバル1世は在位期間に約9,000頭の個体を飼育したとされる[7]

ジンバブエやナミビアなどのアフリカ大陸南部では家畜を襲う害獣とみなされ駆除されることもある[8][9]

開発による獲物の減少などにより生息数は減少している[8]。1975年のワシントン条約発効時から、ワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]。一方で生体標本およびハンティングトロフィーとして毎年ジンバブエ50・ナミビア150・ボツワナ5の輸出割当がある[2]。1970 - 1980年代における生息数は15,000頭と推定されている[8]

A. j. hecki
モロッコの例では1950年代までは普通に見られたが1960 - 1970年代に激減し、1992 - 1993年にかけて殺害された以降は報告がなく絶滅したと考えられている[3]
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[3]
Status iucn3.1 CR.svg
A. j. venaticus アジアチーター
アジアでは20世紀に開発による生息地の破壊およびそれに伴う獲物の減少、狩猟に用いるための乱獲などによりイランを除いて絶滅した[3]。亜種アジアチーターA. j. venaticusの2007年における生息数は60 - 100頭と推定されている[3]
CRITICALLY ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[3]
Status iucn3.1 CR.svg

1966年に動物園で繁殖した幼獣の生育に成功した[7]。日本では1977年に九州自然動物公園アフリカンサファリで初めて飼育下繁殖に成功している[5]。日本ではアキノニュクス・ユバトゥス(チーター)として特定動物に指定されている[19]

画像[編集]

出典[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ Appendices I, II and III<https://cites.org/eng> (Retrived 08/09/2018)
  2. ^ a b c UNEP (2018). Acinonyx jubatus. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (Retrived 08/09/2018)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Durant, S., Marker, L., Purchase, N., Belbachir, F., Hunter, L., Packer, C., Breitenmoser-Wursten, C., Sogbohossou, E. & Bauer, H. 2008. Acinonyx jubatus. The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T219A13034574. http://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T219A13034574.en . Downloaded on 08 September 2018.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab Paul R. Krausman & Susana M. Morales, "Acinonyx jubatus," Mammalian Species, No. 771, American Society of Mammalogists, 2005, Pages 1-6.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 成島悦雄 「ネコ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、150-171頁。
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x George W. Frame 「チーター」「セレンゲティのチーター 生息環境の利用におけるオスとメスの差」今泉忠明訳『動物大百科 1 食肉類』今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編、平凡社1986年、48-51頁。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n 成島悦雄「地上でいちばん速い動物 チーター」『週刊朝日百科 動物たちの地球 哺乳類II 1 トラ・ライオン・ヤマネコほか』第9巻 49号、朝日新聞社、1992年、8-9頁。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 小原秀雄 「チーター」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社2000年、12-13、150-151頁。
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Lehnert, E. 2013. "Acinonyx jubatus" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed September 17, 2015 at http://animaldiversity.org/accounts/Acinonyx_jubatus/
  10. ^ 『原色動物大圖鑑』第1巻、北隆館、第14版1988年、初版1957年、150頁。
  11. ^ 『改訂版 新世界絶滅危機動物図鑑』第1巻(ネコ・クジラ・ウマなど)、学研、2012年、19頁。
  12. ^ a b IUCN Red List "Acinonyx jubatus"、2013年9月閲覧。
  13. ^ http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3709578/
  14. ^ IUCN Red List Acinonyx jubatus ssp. venaticus、2013年9月閲覧。
  15. ^ Sharp, N.C.C. (1997年). “Timed running speed of a cheetah (Acinonyx jubatus)”. Journal of Zoology 241 (3): 493-494. doi:10.1111/j.1469-7998.1997.tb04840.x. 
  16. ^ 渡辺伸一、J. de Villiers、J. van der Merwe、佐藤克文「速く走らないチーター:ナミビアHarnas野生動物保護区におけるチーターのハンティング行動」『霊長類研究 Supplement110』第29巻、日本霊長類学会、2013年、D3-1頁。
  17. ^ 『ダーウィンが来た』2012年1月1日放送分[出典無効]
  18. ^ http://www.d-laboweb.jp/event/report/130627.html
  19. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2018年9月8日に利用)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

チーターの100メートル走記録の紹介。2012年に行われたシンシナティ動物園での計測によると、最高タイムは5秒95で、最高時速は98キロメートルを記録。