コンテンツにスキップ

ヤツメウナギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤツメウナギ目
数種のヤツメウナギ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 無顎口上綱 Agnatha
階級なし : 円口類 Cyclostomata
: ヤツメウナギ綱 Petromyzonti
: ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes
英名
lamprey
下位分類群

ヤツメウナギ(八目鰻、lamprey)は、無顎口上綱ヤツメウナギ綱ヤツメウナギ目に属す動物の一般名、ないし総称であり、河川を中心に世界中に分布している。

円口類はいわゆる「生きた化石」であり、ヤツメウナギとヌタウナギだけが現生している。

形状が一見似ているウナギとは根本的に異なる動物で、さらに「狭義の魚類[1]からも外れており、脊椎動物としても非常に原始的である。

生物学的特徴

[編集]

概要

[編集]
スナヤツメLethenteron reissneriの成体。

顎口類の姉妹群である円口類に属し、一般には数少ない現生の無顎類の一群である。

ヤツメウナギは全ての種が細長く、体の断面が楕円形といった言わば「ウナギ型」の外見であるため、一般にはしばしばウナギと混同されがちで、和名にもそれが如実に表れている。ただし、顎口類に属するウナギ類とは無縁と考えても良い動物であり、生物学的特徴も食味もウナギとは全くかけ離れた動物である。

一般的な意味で""と見なされるが、その特徴も広くイメージされる「魚類」とは大きく異なる。現生のほとんどの"魚"がヒトと同じ顎口類に属すのに対し、ヤツメウナギは別の系統である円口類に属している。「顎を欠く」「対鰭を持たない」「骨格が未発達である」など、顎口類から見ると「原始的」とも呼べる特徴を多く残しているため、進化研究でたびたび重要視されてきた。

ヒトを含め、現在の脊椎動物の大多数は発達した顎や骨格などを備えているが、化石記録に基づいた古生物学的研究によれば、ヒトの祖先はもともとこうした特徴を持っていなかった[2]。こうした祖先的な脊椎動物は、特に「顎をもたない」といった特徴を踏まえて無顎類と呼ばれている。

円口類の中で現在も生存しているのはヤツメウナギ類とヌタウナギ類のみである。また、無顎類の大多数は古生代ですでに絶滅しており、この中で現在も生存しているのもヤツメウナギ類とヌタウナギ類のみである[3][4]

生態

[編集]
スナヤツメLethenteron reissneriのアンモシーテス幼生。

ヤツメウナギの現生種は淡水を中心とした世界中の寒冷水域に生息し、熱帯域には少ない。日本国内では、カワヤツメLethenteron japonicumスナヤツメL. reissneriシベリアヤツメL. kessleriミツバヤツメLampetra tridentataの4種が棲息するとされ、このうちカワヤツメと一部のスナヤツメは食用になる。

ヤツメウナギの体の両側には7対の鰓孔があり、それが一見のようにみえることから、本来の眼とあわせて「八目」と呼ばれる。ドイツ語でも、7つの鰓孔、本来の眼、鼻孔が並ぶことから、ヤツメウナギには9つの眼があると考え、「9つの眼」を意味するノインアウゲン Neunaugenと呼んでいる。

のない体は細長く「ウナギ型」。種によって体長13 - 100cmと幅がある。繁殖は淡水河川で行い、3mm程度の黄色い卵を、種によって数百 - 数万個も産卵する。ひと月ほどで孵化すると、まずアンモシーテス (Ammocoetes) と呼ばれる幼生期を数年間過ごし、その後成体へと変態する。アンモシーテスとは、もともと新属として設けられた名称だったが、これがヤツメウナギの幼生と判明すると、その名称がそのまま幼生の呼称となった。アンモシーテス幼生の基本的な概形は成体に似るが、口は吸盤状でなく漏斗のようで、泥底に潜って水中から有機物を濾しとって食べている。またが未発達であり、外からはほとんど確認することができない。

変態後の生態は、種によって降海型と陸封型に大別される。カワヤツメなどは前者で、変態した若魚は2 - 3年は海を回遊し、繁殖期になると再び河川を溯上する。スナヤツメなどは後者であり、秋に変態したのち、翌年春から初夏の繁殖期までの、生涯の残りの期間を淡水で過ごす。変態後は消化管も貧弱で餌を採らない種が多いが、アリナレスナヤツメのように河川内で寄生生活を送るものもいる。生活型に関わらず、全種が産卵後に死亡する。

ちなみに、スタミナはないものの瞬発的な遊泳力が強いため、水槽で飼育するとよく飛び出すことがある。

解剖学的特徴

[編集]

ヤツメウナギの外見上最も特徴的なのは、顎がなく代わりに吸盤状の口をもつ点と、7対の円い鰓孔が開口する点である。また、この他にも独特の解剖学的特徴を持ち、そのいくつかは脊椎動物の進化上「祖先的」とも見なされる。

ヤツメウナギの骨格図。太い中軸は脊索。画像左側(頭側)に、鰓骨格が籠状の構造をつくる。
  • は、明確な正中鰭(背鰭尾鰭)があるが、対鰭胸鰭腹鰭)を全く欠く。このため静止すると、姿勢を保持できず横倒しになる。岩やガラス面に口の吸盤で吸い付いて姿勢を保つ。
  • 骨格は全て軟骨で、現生の他の脊椎動物に比較して非常に貧弱である。
    • 頭蓋は、硬骨魚類等で置換骨性の神経頭蓋の外側を覆って様々な構造を成す一切の膜骨性の皮骨を欠く上、その形態も一般にイメージされる"頭蓋骨"からはかなり独特なものに見える。このためヤツメウナギの頭蓋と顎口類の頭蓋とを並べて単純に比較することは難しい。ちなみに個体発生では、顎口類が共有する神経堤細胞由来の梁軟骨が全く発生しないとされる。
    • 脊椎骨はわずかに存在するが、顎口類で椎骨を構成する主要な構造である椎体を欠き、代わりに支持器官として太い脊索を一生保持している。ヤツメウナギにある脊椎骨成分は脊索の背側に連続して並ぶ神経弓のみである(対してヌタウナギ類では逆に脊索の腹側の一部に痕跡的な血管弓のみが生じる)。
    • こうした軟らかい骨格であるため、骨格標本などによる形態の観察がたいへん難しい。また多くの脊椎動物で軟骨細胞外マトリクスの主成分を成す硫酸コンドロイチンなどの硫酸基に結合して青く染色するアルシアンブルーなどによる透明骨格標本では、うまく軟骨を染色することができないとことが報告されている[5]。そもそもヤツメウナギの軟骨は、軟骨細胞外マトリクスとしてlamprinと呼ばれるエラスチン様の独特なタンパク質を多分に含み、他の多くの脊椎動物とは軟骨の成分自体が大きく異なる[6]。なお、上述の様にコンドロイチン硫酸などに反応するアルシアンブルーの代わりに、エラスチンに反応するレゾルシンフクシンによる染色が有効であると報告されている[7]
アンモシーテス幼生の頭部を水平断にし、背側を見た図。Gaskell (1908)より。
  • がない。ヤツメウナギの成体の口は吸盤状をしており、強い吸引機能がある。これで河底の石などに吸いついて、姿勢を保持することができる。またカワヤツメなど、一部の種ではこうした吸盤状の口で他の魚類などに取り付き、ヤスリ状の角質歯で傷を付けて体液を吸う。一見するとその様は大きなヒルが取り付いているようにも見える。
  • は表皮が角質化(角化)したものである[8]。つまりヒトなどが顎にもつ歯とは異なり、むしろや毛に近いが、これらのように連続的に角化するのでなく、周期的に角化し、一つの歯が脱落すると次の歯が出てくる形になる[8]
  • 鰓孔が体の両側に7対開口する。
  • 外鼻孔は、1対開口する顎口類とは異なり、単一のみで、頭頂に開口する。鼻管は盲嚢状。
  • 内耳には半規管2つだけがあり、これも三半規管がある顎口類とは異なる[9]

以上のように、現在の顎口類には全く見られなくなった特徴が多くある。つまりこうした顎や対鰭、鼻孔などは、少なくとも顎口類がヤツメウナギなど円口類と分岐した後に独自に獲得したものだと考えられる。しかし、成体ではが大きく、よく発達したレンズ外眼筋も備えているなど、顎口類と共通した特徴も数多くあり、よってこうした形質は脊椎動物の最も初期の段階で既に獲得されていたものと考えられる。脊椎骨成分に関しては、ヤツメウナギで脊索背側の神経弓のみが、ヌタウナギで脊索腹側の痕跡的血管弓のみが認められるため、これらの共通祖先で既に脊索背腹両側に神経弓と血管弓を有する顎口類と同様の脊椎骨を有していたのに対し、両者の分岐後にヤツメウナギの系統では血管弓が、ヌタウナギの系統では神経弓が退化して失われ、さらに現生のヌタウナギの系統では残された血管弓すら殆ど失われて痕跡化したとする仮説が提案されている。

免疫科学

[編集]

ヤツメウナギおよびヌタウナギは軟骨魚類以上の脊椎動物には存在する血液中の免疫グロブリンが存在していない。このことから、抗体機能の解明にヒントになり得ると見られている。

古生物学

[編集]

ヤツメウナギ類は、顎を獲得していない段階で分岐した数少ない現生脊椎動物である。そのため、ケファラスピスガレアスピスのような絶滅動物の復元にも重要な役割を果たす。

また、後期デボン紀プリスコミゾン英語版 (Priscomyzon riniensis)[10]、前期石炭紀ハルディスティエラ (Hardistiella montanensis)[11]、後期石炭紀マヨミゾン (Mayomyzon pieckoensis)[12]などの化石は、ヤツメウナギ類のものと推測されている。

その他

[編集]

無顎類・円口類を魚類と呼ぶかどうかについては意見が分かれることがある。魚類の範囲をのあるものに限定するならば魚類には含まれないが、顎の有無は魚類かどうかの判別にかかわらないとする主張では魚類に含まれるといった議論ではある。今日では一般的には、広義の魚類とみなされる。

2013年2月、この仲間の一種、ウミヤツメ(Petromyzon marinus)のゲノムの解読が報告された[13]

系統的位置

[編集]

以下に脊索動物内での系統関係の概略を示す。

ただし、特に"無顎類"や祖先的顎口類の絶滅群(コノドント、甲皮類、翼甲類など)に関しては、系統関係について現在も論争が続いており、下に示した例はその中の一説にすぎない。

脊索動物 
 頭索動物
 
尾索動物 
 脊椎動物 
 円口類 

 ヌタウナギ類 

 ヤツメウナギ類 

 

 コノドント

 翼甲類

 甲皮類

 顎口類 

 板皮類

 軟骨魚類サメエイ

 真口類 

 棘魚類

 硬骨魚類 
 条鰭類 

 分岐鰭類 ポリプテルスアミメウナギ

 

 軟質類 チョウザメ

 新鰭類 ウナギなど、いわゆる魚のなかまの大部分はここに含まれる)

 肉鰭類 

人間との関係

[編集]

食文化

[編集]
カワヤツメの串焼き(蒲焼き)。ヤツメウナギの肉は鰻のそれと異なり、硬くて弾力に富むため、一口大に切られて供されることが多い。

現代の日本で全国的に流通する食材ではないが、洋の東西を問わず様々な文化圏に普通に登場する。また滋養強壮や夜盲症(鳥目)の薬としても古くから用いられてきた。実際に脂肪に富み、ビタミンAの一種であるレチノールを8200μg/100g以上含むなど、栄養価は高い[14]

日本

[編集]

日本国内の場合、食用とされるのはほとんど日本産カワヤツメである。約50-60cm。背側は黒青色で腹側は淡色。春に川を遡上し、5-6月に産卵する。日本海側では島根県以北、太平洋側では茨城県以北に分布している。北海道新潟県山形県秋田県などの日本海に注ぐ河川で多く獲れる。産地である北海道江別市では、2001年までは毎年ヤツメウナギ祭りが開催されていた[15]

主に初春の寒い時に川で獲れる。東北、北海道などの東日本・日本海側が本場。肉が固くてモツのような弾力と歯応えがあり、牛脂と魚油とヤツメの匂いが混じった独特の風味を持つ。最近は漁獲量が減り、大きさも一般に小さくなってきている。現在でも産地以外では鮮魚としてカワヤツメを得ることはほとんど不可能で、乾物冷凍品ということになる。

産地のひとつである秋田県では、カワヤツメをぶつ切りにして醤油出汁の濃い目のツユですき焼き風に煮込むかやきの味覚となっている。関東では蒲焼きを売り物にする料理店もある。また、縁日屋台でもカワヤツメの蒲焼きが売られることがある。肝は特に栄養分が多いため、これを軟骨と共にミンチにして「肝焼き」として供することもある。ただし、クセが強いので好き嫌いは普通の蒲焼以上にはっきりとする。乾物は丸ごと白焼きにしたものを油が漏れ出さないように切り分け、佃煮風に甘辛く煮て食べる。2012年現在での都心では、台東区浅草で八ッ目鰻専門店、巣鴨でヤツメウナギを扱う飲食店が営業を続けている。このほかに季節限定でヤツメウナギ料理を出すウナギ料理店、珍味やスタミナ料理として出す居酒屋なども存在する。

近年は環境の変化から国産のカワヤツメが入手困難になりつつある。このため、2015年からアメリカ合衆国アラスカ州産のヤツメウナギも輸入されている[16]

一般的にはその風味や食感が馴染まれず漁獲地域も限られることから、薬品サプリメントの原料となることが多い。乾燥品を粉砕して飲用したり、身や肝から魚油を抽出してカプセルドロップの形にして服用する。現在でも伝統薬・八ッ目鰻のキモの油などに代表される医薬品が夜盲症・疲れ目の適応として販売されている。日本では食や薬品の原料となるのはカワヤツメであるが、終戦直後の頃にはスナヤツメも魚油の原料として用いられたこともある。[要出典]

ヨーロッパ

[編集]
ヤツメウナギのボルドー風
ヤツメウナギのリゾット(ポルトガル)

ヨーロッパではローマ帝国の頃から食されており、時代によって高級食材となったり、貧しい人々の食料となったりした。

食感や風味が肉類や内臓類に近いこともあって、現在でもフランスポルトガルスペインなどではパイシチューリゾットの材料として盛んに用いられている。フランスにはヤツメウナギの赤ワイン煮込みである「ヤツメウナギのボルドー風」と呼ばれる料理がある。これはボルドー地方の名物料理であり、現地では缶詰瓶詰にされたものも売られている。カワヤツメばかりでなく、ヨーロッパスナヤツメやウミヤツメも用いられる。ボルドー風煮込みやリゾットでは、ジビエにおける「血のソース」のように、風味づけに血液を活用することも多い。日本と同様に、旬は冬 - 初春とされており、季節限定の味覚として供するレストランビストロも多い。ロシアでもザクースカなどとして供される。ドイツでは食材としては海に近い北部のほか、淡水種が獲れる内陸部でも利用されていた。

ビタミンAを大量に含むことから、度を超えて摂取すると健康を害しうる。イギリスには、イングランドヘンリー1世がヤツメウナギ料理の食べ過ぎで死亡したといわれる伝説[17]がある。

ポルトガルには「ヤツメウナギの卵」(lampreia de ovos)というケーキが存在しており、クリスマスに家庭で作られる。これは、ヤツメウナギが貴重品であった時代(現在も高級食材であるが)に、庶民がヤツメウナギを模した菓子を作ったことに起源があるといわれる。

文化史

[編集]

東洋

[編集]
  • 現代の日本語での漢字表記は「八目鰻」「八つ目鰻」などだが、江戸時代1712年に成立した和漢三才図会本草綱目では「」と表記されている。この字は現在の日本では、ハモに充てられている。現在の中国では「鱧」は主にライギョを指す。また1666年訓蒙図彙では「」(今日の日本では一般にウツボを指すが本来はタウナギを指した字)や「鱔魚」(現代ではタウナギ)の字を充てられている。
  • 和漢三才図会によれば、「頭に七つの斑點があり、北斗の象をなす」「夜は首を仰け北に向かって禮拝する」とある。ただし、このような生態が近年観察された例は知られておらず、真偽は定かでない。
  • 産地である北海道江別市では、市のマンホールなどにヤツメウナギの意匠が見られる。

西洋

[編集]

生態系への影響

[編集]
サケ科魚類に寄生したヤツメウナギ
詳細は「ウミヤツメ」を参照

北米大陸五大湖は、かつては外洋とつながる河川セントローレンス川1本のみだったが、19世紀初頭から始まったいくつかの運河建設によってハドソン川など他の複数の河川とつながった。

その結果として大型種のウミヤツメが大量に流入し、各湖の魚類に寄生したために漁業資源として重要なサケ科をはじめとした多くの魚類が激減するという深刻な被害をもたらした。そのため、1991年から年間約26,000匹のオスを捕らえて不妊化処理を施し、川に戻すという事業が行なわれている[19]

分類

[編集]

ヤツメウナギ類をヤツメウナギ綱 Petromyzontiに分類する説[20]、絶滅群である欠甲類骨甲類とともに頭甲綱 Cephalaspidomorphi に分類する説がある[21]

ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes は2016時点で現生のもので3科10属40種を含む[22]。ただし、この分類も一例であり、しばしば変更される。

たとえば、日本産カワヤツメは2005年頃までLampetra japonicaとされていたが、のちにLethenteron japonicumと属が変わった。2012年現在では、Lethenteron camtschaticumシノニムともされている[23]

スナヤツメLethenteron reissneriとされていたが、遺伝学的研究により日本産のスナヤツメには遺伝的に区別可能な北方型と南方型が存在することや、これらの2型がロシア産のLe. reissneriとは別種であることが明らかになっている[24]

2024年、水産研究・教育機構水産大学校酒井治己名誉教授、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科の岩田明久名誉教授、京都大学大学院理学研究科の渡辺勝敏教授、および北海道教育大学国際地域学科の後藤晃元教授の研究グループは、日本産カワヤツメ属のヤツメウナギ類について遺伝学的・形態学的再検討を行い、2種の新種Lethenteron satoi ウチワスナヤツメ(新標準和名)とLethenteron hattai ミナミスナヤツメ(新標準和名)を報告し、Lethenteron mitsukurii キタスナヤツメ(新標準和名)、 Lethenteron reissneri シベリアヤツメ、Lethenteron camtschaticum カワヤツメと合わせて計5種が存在することを発表した[25]

なお、ミトコンドリアDNAによるスナヤツメ類3種のクレードには従来のカワヤツメ属のほかにアリナレスナヤツメ(Eudontomyzon属)、ミツバヤツメ(Entosphenus属)、ヨーロッパカワヤツメ(Lampetra属)なども含まれる結果が得られており、ミナミスナヤツメはこれらの外群に位置する[26]。従来のアリナレスナヤツメ属は多系統とされ、アリナレスナヤツメをカワヤツメ属に帰属し、残るヨーロッパ産のEudontomyzon属全種をLampetra属に含める説もある[27][28][29]

フクロヤツメ科とミナミヤツメ科は南半球に分布し、それぞれヤツメウナギ科の亜科とすることもある[30]

ウミヤツメ Petromyzon marinus。大西洋岸に生息する大型種。特に五大湖周辺では駆除の対象(「#人間との関係」に詳述)。
スナヤツメLethenteron reissneri。中国北部や朝鮮半島、九州以北の日本中の河川に広く分布する小型種。成体は何も食べず寄生も行わない。
フクロヤツメGeotria australis。オセアニア・南米に生息。

現生種の分類はFishBase (2025) による[31]。日本産の和名については本村 (2026) に従う[32]

脚注

[編集]
  1. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. 魚類とは”. コトバンク. 2022年1月31日閲覧。 “硬骨魚類(狭義の魚類で魚の大部分を占める)”
  2. DNAの大事件! 生命進化の謎
  3. Kardong, K. (2008). Vertebrates: Comparative anatomy, function, evolution,(5th ed.). (pp.84-87). Boston: McGraw-Hill
  4. Kuraku, Shigehiro, Ota, Kinya G., & Kuratani, Shigeru, S. Blair (2009b). “Jawless fishes (Cyclostomata)”. In S.B. Hedges & S. Kumar. Timetree of Life. oxford University Press. pp. 317–319. ISBN 978-0-19-953503-3
  5. 河村功一, & 細谷和海. (1991). 改良二重染色法による魚類透明骨格標本の作製. 養殖研究所研究報告, 20, 11-18.
  6. Hall, B. K. (1999). The neural crest in development and evolution. Springer Science & Business Media.
  7. Yao, T., Ohtani, K., & Wada, H. (2008). Whole-mount observation of pharyngeal and trabecular cartilage development in lampreys. Zoological science, 25(10), 976-981.
  8. 1 2 小澤幸重「第2章 エナメル質以前 3 ヤツメウナギ」『エナメル質比較組織ノート』(第1版第1刷)わかば出版東京都文京区、2006年4月25日、13頁。ISBN 4-89824-032-1 NCID BA77166677
  9. Janvier, Philippe.(1996) Early Vertebrates. Oxford University Press
  10. Gess RW, Coates MI, Rubidge BS. (October 2006). “A lamprey from the Devonian period of South Africa”. Nature 443: 981-984. doi:10.1038/nature05150.
  11. Janvier P, Lund R. (1983). Hardistiella montanensis N. gen. et sp. (Petromyzontida) from the Lower Carboniferous of Montana, with Remarks on the Affinities of the Lampreys”. Journal of Vertebrate Paleontology 2: 407-413. doi:10.1080/02724634.1983.10011943.
  12. Bardack D, Zangerl R. (December 1968). “First fossil lamprey: a record from the Pennsylvanian of Illinois.”. Science 162: 1265-1267. doi:10.1126/science.162.3859.1265.
  13. Smith JJ, Kuraku S, Holt C, Sauka-Spengler T, Jiang N, et al., (February 2013). “Sequencing of the sea lamprey (Petromyzon marinus) genome provides insights into vertebrate evolution”. Nature Genetics. doi:10.1038/ng.2568.
  14. 五訂増補日本食品標準成分表
  15. ヤツメウナギ - 江別市ナビ
  16. ユーコン川の生態系と環境を考えてみた 2017年10月31日閲覧
  17. 『アングル人の歴史(Historia Anglorum)』,12世紀,ヘンリー・オブ・ハンティングドン
  18. 1 2 荒俣宏『世界大博物図鑑 2 魚類』平凡社 ISBN 4-582-51822-2 p179 "ウツボ"の項参照。
  19. Research to Support Sterile-male-release and Genetic Alteration Techniques for Sea Lamprey Control
  20. 木村清志 著「ヤツメウナギ綱」、木村清志、笹木大地 編『美し国の魚たち 三重県の魚類図鑑』木村清志、2025年、18頁。doi:10.69223/0002001485
  21. 中坊徹次「無顎口上綱」、中坊徹次 編・監修『小学館の図鑑Z 日本魚類館』小学館、2018年、1-9頁。
  22. 『Fishes of the World Fifth Edition』 pp.23-26
  23. Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2011). "Lethenteron japonicum" in FishBase. 2 2011 version. "synonim"のページを参照
  24. 山崎裕治・後藤晃「ヤツメウナギ類における系統分類と種分化研究の現状と課題」『魚類学雑誌』第47 巻 1号、日本魚類学会、2000年、1-28頁。
  25. 新種ウチワスナヤツメとミナミスナヤツメを報告 ―日本産カワヤツメ属は2新種を含む5種に―”. 水産研究・教育機構. 2025年3月1日閲覧。
  26. Harumi Sakai, Akihisa Iwata, Katsutoshi Watanabe & Akira Goto (2024). Taxonomic re-examination of Japanese brook lampreys of the genus Lethenteron with descriptions of two new species, Lethenteron satoi sp. nov. and Lethenteron hattai sp. nov., and re-description of Lethenteron mitsukurii. Ichthyological Research 72, 289–319. https://doi.org/10.1007/s10228-024-00997-7.
  27. Carim, K. J., G. Auringer, M. F. Docker, C. B. Renaud, B. J. Clemens, M. R. Blanchard, C. Parker & M. K. Young 2024. Species diversity in the new lamprey genus Occidentis, formerly classified as western North American ‘Lampetra’. PLoS ONE 19 (12): e0313911: 1-21. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0313911.
  28. Lily C. Hughes, Devin D. Bloom, Kyle R. Piller, Nicholas Lang & Richard L. Mayden 2025. Phylogenomic resolution of lampreys reveals the recent evolution of an ancient vertebrate lineage. Proceedings of the Royal Society B: Biological sciences 292 (2038): 20242101. https://doi.org/10.1098/rspb.2024.2101.
  29. Kellie J. Carim, Claude B. Renaud, Michael K. Young & Margaret F. Docker 2025. Recognition of the lamprey genus Occidentis Carim et al., 2024 as distinct from Lampetra Bonnaterre, 1788. Zootaxa 5692(2): 393-399. https://doi.org/10.11646/zootaxa.5692.2.11.
  30. 1 2 3 4 5 K.E.バニスター「ヤツメウナギ類,メクラウナギ類」(岩田明久 訳)、K.E.バニスター 編『動物大百科 13 魚類 サメ・ウナギ・タラ・アユ・スズキ・タイほか』岩井保 監修、平凡社、1987年、20-25頁。
  31. Petromyzontiformes. Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2025. FishBase. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version (11/2025). 2026年1月14日閲覧。
  32. 本村浩之.2026.日本産魚類全種目録.これまでに記録された日本産魚類全種の現在の標準和名と学名.Online ver. 36.https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/staff/motomura/jaf.html (2026年1月6日). 2026年1月13日閲覧。
  33. 荒俣宏『普及版 世界大博物図鑑 2 魚類』平凡社、2021年(原著1989年)、15, 17-22頁。
  34. 1 2 松原喜代松 著『魚類の形態と検索』第1巻, 石崎書店, 1955年. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1374705 (参照 2026-01-13)

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]
  • 殺ヤツメ剤 - ヤツメウナギ類の魚類への寄生を防ぐ薬剤。