乙嫁語り

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
乙嫁語り
ジャンル 時代漫画
漫画
作者 森薫
出版社 企画・制作:エンターブレイン
発行:株式会社KADOKAWA
掲載誌 Fellows!ハルタ
レーベル ビームコミックス
発表期間 volume1(2008年10月14日) - 連載中
巻数 既刊7巻
テンプレート - ノート

乙嫁語り』(おとよめがたり、The Bride's Stories)は、森薫による日本漫画作品であり長編第2作目の作品である。エンターブレイン発行の隔月誌『Fellows!』volume1(2008年10月発売)より連載を開始し、同誌が年10回刊『ハルタ』へと誌名変更された2013年現在も基本的に毎号連載中。同誌の看板作品となっている[1]。『Fellows!(Q)』(エンターブレイン)全3号にも番外編が掲載されている[1]

19世紀後半の中央アジアカスピ海周辺の地域を舞台に、「乙嫁」をキーワードに、厳しい自然の中に生きる人々の生活と文化、時に人間の愚行を織り交ぜた物語を緻密で丁寧な画で描く[2]。乙嫁とは、「弟の嫁」「年少の嫁」を意味する古語である[3]。出版元であるエンターブレインのサイトでは乙嫁を「美しいお嫁さん」の意であると記している[4]

あらすじ[編集]

19世紀後半の中央アジア。街に定住するエイホン家のもとに、北方の移牧民(半定住・半遊牧民)ハルガル家から20歳の花嫁、アミルが嫁いできた。花婿カルルクはまだ12歳。それでも二人は互いを大切にし、少しずつ夫婦の絆を深めていく。

ハルガル一族らの住む北方は、ロシアの侵攻(南下政策)で緊張状態にあった。アミルの叔父たちは、すでに嫁に出したアミルを連れ戻し、有力部族のヌマジに嫁がせようと考え、アミルの兄アゼルと従兄弟たちをエイホン家に向かわせた。非常識な要求に驚き、拒絶するエイホン家の人々を無視し、アゼルらは強引な行動に出るが、バルキルシュの一喝に追い払われる。

どうしてもアミルを連れ戻したい叔父たちは、アゼルらを叱責し、ついに自ら乗り込んでくる。事情を知らなかったアミルは危うくさらわれそうになったが、スミスの機転に救われ、街に逃げ込むことができた。

エイホン家はハルガル家との縁切りを宣言、ハルガル家は街に攻め入ってアミルを奪おうとするが、町ぐるみの抵抗にあう。混乱のなか、カルルクは短剣を抜き、夫として命がけで妻アミルを守りぬいた。争いは街の勝利に終わり、ハルガル家は捕虜を出し、処罰を与えられた。

実家を失ったアミルを周囲は心配するが、その悲しみの一方で、アミルはカルルクに対し、今までとは違う形の愛情を抱き始めていた。バルキルシュはその様子を、「嫁心づいた」と評した。

事態ももひとまず落ち着き、エイホン家の居候の英国人スミスは、親しんだ人々に別れを告げ、アンカラへの旅についた。

次に訪れたのはカラザの町。スミスはここで案内人と落ち合うはずだったが、見つけられず訪ね歩いた隙に、荷物ごと馬を盗まれてしまった。そこへ同じように馬を盗まれた美しい夫人、タラスが現れる。彼女は未亡人で、馬は亡き夫の大切な遺産だった。幸い、市の支配人の尽力により、二人の馬は取り戻され、タラスはスミスを家に招待する。

一緒に過ごすうちに、スミスとタラスはそれぞれに相手に惹かれるようになっていたが、スミスの存在を邪魔に思ったタラスの義叔父の密告により、スミスは諜報員の疑いをかけられ、拘留されてしまう。ようやく会えた案内人、アリの機転で釈放されたスミスは、タラスと互いの愛情を確認しあって婚約を取り交わすが、行き違いにより二人の恋は引き裂かれてしまった。スミスは傷心を抱えたまま、目的地へ向け旅立つ。

ムナクの村の近くまで来た時、寝不足だったスミスは乗っていたラクダから滑り、湖に転落してしまうが、様子を見ていた双子の姉妹、ライラとレイリに助けられる。道中の用心のため、医者を名乗っていたスミスは双子の家に案内され、彼女たちの祖父を治療したことがきっかけで名医として評判になり、翌日には近隣の人々が列をなす事態となってしまった。

結婚適齢期にあたっていたライラとレイリは、玉の輿を夢見て人騒がせな婿探しを繰り広るが、紆余曲折の末、幼馴染のサーム、サーミ兄弟と結婚することとなった。

一方、アリに出立を急かされていたスミスだったが、医者としての自分を頼って、遠くの村からも訪ねてくる人々を見て、この村を立ち去りかねていた。そこへ双子の結婚が決まり、スミスは結婚式への興味を口実に、式まで滞在を伸ばしたいとアリに頼み込む。披露宴で振る舞われる御馳走につられたアリは、喜んでそれを承諾する。

ライラとレイリは、式の支度や披露宴でもドタバタを見せるが、どうにか周囲の人たちの祝福を受けて無事に嫁いでいった。彼女たちの結婚式を見届けたのち、人々の暖かい心に見送られて、スミスたちも村を後にした。

そのころ、ヌマジの牧草地を追い出され、一族の存亡の危機を迎えつつあったハルガルの長、ベルクワトは、遠縁のバダン一族の協力を得て、エイホン家のある町を占領しようと画策する。しかしバダンは裏でロシアと通じており、共闘すると見せて、実はハルガルごと街を攻め落とし、支配するつもりだった。

突然仕掛けられた戦争に、街の人々は必死で立ち向かう。カルルクとアミルもまた、エイホン家の一人として弓を放ち、剣を抜いて戦っていた。そこへバダンが裏切りを実行、味方と信じた相手からの砲撃に、ハルガル一族はパニックに陥るが、事態を予測していたアゼルの指揮で脱出を試みる。さらにアゼルはバダンの族長を討ち取るが、混乱の中で街の人々に敵として襲われ、捕えられて処刑寸前となる。しかし、街の人々を傷つけず、守ろうとした彼の行動が認められ、土地の支配者の介入もあって命は救われた。一方、からくも脱出に成功したベルクワトだったが、自分の過ちを認めず、全てを呪う言葉を吐き、あとをつけていたバルキルシュに弓で射殺された。

ペルシャにやってきたスミス一行は、土地の富豪の客として歓待される。

富豪の妻アニスは、優しい夫と何不自由ない生活に恵まれながらも、友人と呼べる相手のいない寂しさを抱えていた。彼女の悩みを聞いたマーフは、「姉妹妻」を持つ事を勧め、相手探しに公衆浴場へでかけることを提案する。

初めて訪れた公衆浴場で、アニスは自分の遊び相手のペルシャ猫を連想させるような、美しい女性、シーリーンと出会う。意気投合した二人は友人となり、アニスは思い切って姉妹妻の申し込みをする。シーリーンも喜んで承諾し、公衆浴場で知り合った仲間たちの取り持ちで、契りの儀式が行われるが、そこへシーリーンの夫が倒れたという凶報が飛び込んでくる。あわてて家にかけ戻るシーリーンだが、夫はそのまま帰らぬ人となってしまった。

シーリーンの婚家に残されたのは、まだ幼い息子と、年老いた義父母。財産と呼べるものはほとんどなく、なけなしの結納金さえ葬儀代に消えてしまい、シーリーンは先行きの見えない不安を抱えて途方に暮れる。

アニスはようやく出来た親友の身の上を我がことのように案じ、援助を続ける一方である決意を固めていた。それは、シーリーンを夫の第二夫人として迎える事だった。シーリーンを説得し、アニスは涙ながらに夫に願いを乞う。その言葉に夫は驚きつつも理解を示し、喪が明け次第、シーリーンを第二夫人とし、その家族を引き取ると約束する。夫の優しさと愛情に、アニスは自分の幸せの大きさを知り、夫にあらためて感謝と尊敬の言葉を捧げた。

登場人物[編集]

エイホン家[編集]

アミル・ハルガル(第1の乙嫁)
カルルクの妻。物語開始時点では20歳。
作者曰く「が上手、姐さん女房、何でもさばける(鳥とか兎とか)、野生、天然、強い、でも乙女、でもお嬢様」(あとがきのおまけ漫画より)。
20歳という、この時代のこの地域では相当の「行き遅れ」となってからの嫁入りだったが、夫婦仲は良好。夫のカルルクに対しては、当初は年齢差もあってか被保護者的な対応をしていたが、彼の成長に伴い純粋に男性としての魅力を感じ始めている。普段はしっかり者だが、カルルクやエイホン家の誰かが床に臥せると、普段とは打って変わって異様なほどに動揺する。遊牧民であるハルガル家から嫁いできたため、街に定住しているエイホン家との習慣や文化の差異などから、時折周囲を戸惑わせる行動をとることもあるが、同じ遊牧民出身である義祖母のバルキルシュからもかわいがられており、彼女自身をめぐる争いの結果実家とは縁切りとなったが、エイホン家との絆は深まっている。
カルルク・エイホン
アミルの夫。物語開始時点では12歳。思いやり溢れる、穏やかな性格の少年。エイホン家の末子で跡継ぎ[5]
8歳という歳の差の為か、体調を崩した時などアミルから過保護な扱いを受けることがあるが、いざとなれば妻を護ろうと体を張る男気にも満ちている。
アクンベク
カルルクの父。どっしり落ち着いた雰囲気の、エイホン家の当主。
サニラ
カルルクの母。物静かな美女。
マハトベク
アクンベクの父で、カルルクの祖父。優しげで穏やかな雰囲気を持つ老人。
バルキルシュ
アクンベクの母で、カルルクの祖母。気迫に満ちた女傑。山羊を乗りこなし、馬が上がれないような崖を登れるほど扱いが上手い。
実家はハルガル家に連なる一族で、族長のベルクワトとも面識がある。アミル同様に弓を嫁入り道具として持ってきており、扱いにも長ける。
セイレケ
カルルクの姉。明るい性格だがそそっかしいところがある。子供を厳しくしつけようと心を砕いているが、怒ると時々やりすぎることがある。
ユスフ
セイレケの夫。カルルクの義兄。若いながらもしっかりした父親ぶり。
ティレケ
ユスフとセイレケの長女。カルルクの姪。しっかりもの。が大好き。
トルカン、チャルグ
ユスフとセイレケの息子。トルカンが長男でチャルグが次男。カルルクの甥。よくロステムをからかっている。
ロステム
ユスフとセイレケの三男。カルルクの甥。きちんと掃除をやったように誤魔化したつもりで手伝いをサボっては母親に叱られている。
メルタ
セイレケとカルルクの姉。

パリヤとその家族及び関係者[編集]

パリヤ
エイホン家の近所に住む、年頃の少女。嫁いできたアミルの、町で初めて出来た友人。
正義感が強く、物事をはっきり言う性格。しかし同じ年頃の少年に対しては人見知りして、ついそっけない態度や厳しい発言をとってしまい、後で自己嫌悪に落ち込むこともしばしば。
パンに細かな模様をつけて綺麗に仕上げるのが得意であり、センスがないわけでも不器用なわけでもないが、刺繍だけはいらいらしてしまい上手くできない。
トゴノシュ
パリヤの父。なかなか結婚相手が決まらない娘にやきもきしている。

ハルガル家及び関係者[編集]

アゼル
アミルの兄。寡黙で、生真面目。
一族の事情により、アミルを実家へ連れ帰るよう命令された。族長でもある父に逆らうことは無いが、本意ではないようで、最初にエイホン家に来た際にはあっさりと引き下がっている。また、バダン族と手を組むことにも反対であるが、やはり父には逆らえずにいた。
バダンの裏切りが判明した際には、ジョルクやバイマトたちを逃がしつつも、自身はバダン族の長オル=タムスを弓で射殺した。
ジョルク
アゼルやアミルの従兄弟。アゼルと行動を共にしている。飄々とした性格。アゼルと同く、一族の方針については疑問を持っている。性格ゆえか、仲間内では族長(アゼルの父)に対する不満も口にし、たしなめられる事もある。
バイマト
アゼルやアミルの従兄弟。アゼルと行動を共にしている。寡黙。同じく、バダンと手を組むことには反対している。
ベルクワト
アミルの父。ハルガル族長。ヌマジに一族の娘を嫁がせ、縁戚になることで牧草地を確保していたが、嫁がせた娘が次々に死んだことから、アミルを取り返し、ヌマジに嫁にやろうとするが失敗。その結果、ヌマジと縁が切れたことで広大な牧草地の使用権を失い、一族存亡の危機を迎えることとなり、その復讐と牧草地確保のため、エイホン家の住む町を襲撃すべくバダン族を手を組む。
しかし、バダン族の裏切りにより襲撃は失敗した上、ハルガル族の少ない人員を失い、自らも手負いとなる。かろうじて逃げ延び、全てを呪いつつ復讐を誓うが、ひそかに追ってきたバルキルシュに弓で射殺された。
オル=タムス
ハルガルと遠縁のバダンの長。ロシア製の武器を持っている。ロシアに寝返ったという噂もあり、それを耳にしていたアゼルらは警戒していたが、復讐心に捕らわれたベルクワトは耳をかさなかった。
所持する大砲で、エイホン家の住む町を攻撃。その後、ハルガル族と町の住民たちとが乱戦になったところへ両者まとめて銃撃する。
裏切りを知ったアゼルに弓で射殺される。

ヘンリー・スミスとその関係者[編集]

ヘンリー・スミス
本作の主人公で、彼の旅先で暮らす乙嫁たちの物語が展開されるという、狂言回しの役割を担っている。
イギリス人。物語当初ではエイホン家に居候していた。押しに弱くお人好しだが、とっさの機転でアミルたちの危機を救った事もある。紋章入りの金無垢の懐中時計を結納金がわりにぽんと出すなど、かなりの資産家の出。家督は長男である兄が継いでいるため、自身は気楽な身分と語っている。異国の風俗・習慣に興味があり、周囲に取材しては手帳に書き留めている。
2巻の最後でエイホン家を去り、当初の目的だったアンカラへと向かった。途中、カラザの町でタラスと出会い、恋心を抱くが風習に引き裂かれて別離を余儀なくされる。傷心を抱えながら訪れたムナクの村では、双子の祖父を治療したことがきっかけで、名医として評判になってしまう[6]。自分を医者として頼る人々を見捨てられず、結婚式への興味を口実に滞在を引き延ばし、双子の挙式を見届けて旅立った。次に訪れたペルシアでは友人に便宜を図って貰い、土地の富豪の客となった。
アリ
アンカラまでのスミスの案内人。口が達者で世渡り上手な青年。
自身の結婚のための結納金を稼ぐことを目的とし、高給であったスミスの案内役に就いた。旅のナビゲートのほか、通訳や交渉役も兼ね負う重宝な人物。

カラザの町の住人及び関係者[編集]

タラス(第2の乙嫁)
アンカラへ向かうスミスが、途中のカラザの町で出会った美女。
5人の夫に次々に先立たれ、姑と二人、町から外れた草原でひっそりと暮らしていた。町でスミスと出会い、それがきっかけで盗まれた亡夫の形見の馬、チュバルを取り戻せたことから、感謝の気持ちとしてスミスを客として招待した。
一緒に過ごすうち、スミスに惹かれるようになっていたが、彼を気遣って気持ちは告げず、チュバルを与えて旅立たせた。しかしスミスが義叔父の策略で捕えられたと聞き、救いに駆け付けたことで互いの気持ちが抑えきれなくなり、愛情を確認しあい、婚約する。しかし折悪く、義母と互いの行動が行き違いとなり、義叔父が義父となったことで、スミスとの仲は適わぬものとなってしまった[7]
タラスの義母(姑)
タラスの亡くなった5人の夫の母。自分の死後、一人残されるタラスの行く末を案じて、スミスに嫁がせようと策を凝らす。しかしスミスを気遣ったタラスが彼を旅立たせたため、自分が犠牲になることで彼女を守ろうと、亡夫の弟(後述のタラスの義叔父)との結婚を決意する。
タラスの義叔父
タラスの舅の弟。粗暴な性格。男やもめで家に女手がないため、タラスを息子の嫁にとって家政婦代わりにしようと目論んでいたが、そこへスミスがやってきたことで目算が狂い、厄介払いするためにスミスをスパイとして密告した。その後、結果的にタラスの義父となったため、父親としての権力を振るってタラスとスミスの婚約を破棄させた。

ムナクの村の住人及び関係者[編集]

ライラとレイリ(第3の乙嫁)
アラル海沿岸の村に暮らす、双子の姉妹。非常にエネルギッシュで騒がしい。素潜り漁をして家計を助けているが、家事は苦手。
年頃になり、やや妄想気味に玉の輿を夢見ていたが現実には勝てず、父親同士の話し合いの末、サマーンとファルサーミの兄弟(後述)と結婚することになる。しかし肝心の婚約の組み合わせについては、互いの両親ともに忘れていた。
ライラとレイリの父親
屈強な漁師。双子の激しすぎるいたずらには、問答無用で鉄拳制裁を下す。娘時代のミナーが嵐に流された時、彼女が乗っていた船ごと抱え上げて救出したという逸話の持ち主。
ミナー
ライラとレイリの母親。勝気でパワフルな美女。双子のしつけは、気迫で押し切る。
危難にあった自分を、力任せに救出した青年の男らしさに一目ぼれして恋い焦がれ、見かねた父親が相手先に相談に出向いたのが、夫との馴れ初めという情熱家。双子の婚約が決まってからは、家事嫌いの娘たちにスパルタ式の花嫁修業を施した。
ライラとレイリの祖父
年甲斐も無く元気だが、体がついて行かない様子。脱臼気味だった肩をスミスに治療してもらい、大はしゃぎしていた。
ライラとレイリの祖母
元気の有り余っている双子を、上手に手玉に取るおばあちゃん。その昔語りによると、若き日はなかなかの美少女だった上、恋愛上手でもあったようである。
サマーン(兄)とファルサーミ(弟)
通称サームとサーミ。双子の幼馴染で、喧嘩相手。父親同士の話し合いの末、ライラとレイリを妻に迎えることになる。
兄弟ともに現実的な性格で、双子との結婚もやや達観気味に受け入れた。しかし、それぞれなりに妻を気遣っている。
サマーンとファルサーミの父親
漁師。ライラとレイリの父親とは昔馴染みかつ、遠慮のない喧嘩もする仲。その家計は「海水よりしょっぺえ」らしい。青年時代、ある策略を仕掛けられて現在の妻と結婚することになった。

ペルシアの人々[編集]

アニス(第4の乙嫁)
ペルシアの富豪の妻で、ほっそりと優雅な柳腰の美女。ハサンという息子がいる。
優しく富裕な夫に愛され、跡継ぎ息子にも恵まれて何不自由ない暮らしを送っていたが、その一方で、夫以外には話し相手が飼い猫や、庭に遊びに来る鳥くらいしかいない、という孤独感に苛まれていた。
そのふさぎ込む姿をみかねたマーフに勧められ、出向いた風呂屋でシーリーンと出会い、彼女と姉妹妻[8]になりたいと願うようになる。
女性は家族以外の男性の前に姿を現さない、という土地の風習に従い、スミス一行と顔を合わせることはなかった。
シーリーン
貧しい染物屋の妻。絹のように美しい黒髪と紅玉のような唇を持つ、豊満な肢体の美女。ハサンよりも少し年長の息子がいる。
公衆浴場でアニスと知り合い、アニスからの姉妹妻の申し出を受けるが、儀式の最中に夫を失い、残された子どもと義父母を抱えて途方に暮れる。その後、アニスの勧めで、彼女の夫の第二夫人となった。
アニスの夫
優しく妻を気遣う、一途な男性。名前は明らかにされていない。身分などの詳細も明らかにされていないが、大きな邸宅を構える富豪であり、スミスを客人として歓待する。スミス一行の出立にあたっては、旅先の知人から便宜を受けられるよう取り計らった。
アニス一筋の男性だったが、その最愛の妻に懇願され、シーリーンを第二夫人とし、彼女の義父母ごと屋敷に迎えいれた。
マーフ
アニスの婚家に勤める女性。さばけた性格の持ち主で、アニスの悩みを聞いて姉妹妻を持つ事を勧め、出会いを求めるために公衆浴場へ行く事を提案した。
世話好きで世慣れており、場に不慣れなアニスにいろいろと助言を行い、シーリーンとの縁を取り持ったが、アニスをだしにして公衆浴場へ出かけようとするなど、ちゃっかりした一面もある。

作風・特徴[編集]

作画の特徴として、雅で絢爛豪華な衣装や布地、装飾品、工芸品などの、綿密な描き込みが挙げられる。精緻で流麗な絵の描写なども評価されている[2]。また、7巻では内容に合わせて絵柄を変えている。

マンガ大賞には2011年度、2013年度とノミネートされたが受賞はならず、3回目となる2014年度に大賞を受賞した。

書籍[編集]

単行本[編集]


外国語版[編集]

英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、インドネシア語、韓国語、中文、タイ語版が出版されている。(英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語の記載データは各国語版のAmazonより)

関連書籍[編集]

受賞歴[編集]

その他[編集]

乙嫁コンツェルト[編集]

ゲッサン』(小学館)連載作品の石井あゆみ作『信長協奏曲』とのコラボレーション企画[10]。『マチ★アソビ vol.7』にて開催された『Fellows!』『ファミ通コミッククリア』『ゲッサン』の合同サイン会が直接の契機となり[11]、両作品とも歴史に深く関わる作品であるという事で出版社の垣根を越えて企画された[10]

これに関連して『ゲッサン』2012年3月号には『Fellows!』連載作家25人による合作漫画『フェローズのできるまで』が掲載され、『乙嫁語り』は計4コマ参加している[12]

出典[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b 新人メインの兄弟誌Fellows!(Q)誕生!乙嫁&乱の番外編も”. ナタリー. ナターシャ (2011年11月15日). 2012年3月4日閲覧。
  2. ^ a b マンガ大賞2014受賞作・森薫『乙嫁語り』で描かれる濃密で美しい食卓の情景 - exciteニュース
  3. ^ 三省堂 大辞林 和名類聚抄より。乙嫁の意味・解説”. Weblio. 2015年2月13日閲覧。
  4. ^ 森薫の最新作! 『乙嫁語り』、ついに刊行スタート!”. エンターブレイン. 2015年2月16日閲覧。
  5. ^ 遊牧民社会では末子相続が一般的なため。
  6. ^ エイホン家滞在中に、居合わせた医師から「聞き出せるだけ聞き出した」知識も手伝ったようである。
  7. ^ 家長の権限が強いため。土地の者にとっては当然の風習であるため、カルルクやアリも「それはしかたがない」と納得していたが、西洋人であるスミスには納得しがたいものがあった。
  8. ^ コミックス後書きに拠れば、19世紀頃まであったイスラム文化圏の風習。子を持つ既婚女性同士が、生涯にわたる友情を誓いあい、その証に儀式として夫婦間の婚姻のように縁組を行う。死後には財産分与なども行い同じ墓に入るなど、実際にも家族のような扱いになるという。
  9. ^ 「乙嫁語り」7巻発売を記念して、吉田尚記のラジオ番組に森薫が生出演 - コミックナタリー
  10. ^ a b 「乙嫁×信長」合同フェアで主人公カップルが夢の共演”. ナタリー. ナターシャ (2012年1月30日). 2012年3月5日閲覧。
  11. ^ Twitter / fellowsmanga: 10月のサイン会では作家さんだけでなく、フェローズもゲッサン ...”. Fellows? (@fellowsmanga) - Twitter. エンターブレイン (2012年1月23日). 2013年4月20日閲覧。
  12. ^ ゲッサン「信長」カレンダー全サ&Fellows!作家25名襲来”. ナタリー. ナターシャ (2012年2月10日). 2012年3月5日閲覧。

外部リンク[編集]