ヒシ

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ヒシ
Trapa japonica community.JPG
水面を覆うヒシ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ類 Rosids
: フトモモ目 Myrtales
: ミソハギ科 Lythraceae
: ヒシ属 Trapa
: ヒシ T. japonica
学名
Trapa japonica
Flerow(1925)
和名
ヒシ

ヒシ(菱 、学名Trapa japonica)はミソハギ科(クロンキスト体系ではヒシ科)の一年草水草池沼に生え、葉が水面に浮く浮葉植物種子は食用にされる。

特徴[編集]

春、前年に水底に沈んだ種子から発芽し、をおろし茎が水中で長く伸びはじめ、水面に向かって伸びる[1]。よく枝分かれして、茎からは節ごとに水中根を出し(これは葉が変化したものともいわれる)、水面で葉を叢生する[1]

互生で、茎の先端に集まってつき、三角状の菱形で水面に放射状に広がり、一見すると輪生状に広がるように見える[1]。上部の葉縁に三角状のぎざぎざがある[1]。葉柄の中央部はふくらみがあって、内部がスポンジ状の浮きとなる[1]。その点でホテイアオイに似るが、水面から葉を持ち上げることはない。また、完全な浮き草ではなく、長い茎が池の底に続いている。

両性花で、夏から秋の7 - 10月にかけて、葉のわきから伸びた花柄が水面に顔を出して、花径約1cmの白い花が咲く[1]。萼(がく)、花弁、雄蕊は各4個で子房は半下位。

花が終わると、胚珠は2個あるが一方だけが発育し大きな種子となる。胚乳はなく、子葉の一方だけが大きくなってデンプンを蓄積し食用になる。果実を横から見ると、菱形で両端に逆向きの2本の鋭い刺(とげ。がくに由来)がある[1]。秋に熟した果実は水底に沈んで冬を越す。

菱形とはヒシにちなむ名だが[2]、葉によるのか実によるのか両説ありはっきりしない。

分布[編集]

平地のため池、沼などに多く、水面を埋め尽くす。日本では北海道本州四国九州の全国各地のほか、朝鮮半島中国台湾ロシアウスリー川沿岸地域などにも分布する[1]

近縁種[編集]

近縁種として日本にはオニビシヒメビシがある。ヒシの果実にあるとげが2本であるのに対し、ヒメビシとオニビシの果実には4本のとげがある。実用性は乏しいと思われるが、忍者が追手の追撃をかわすために撒くまきびし(撒菱)には、これらが用いられる。

利用[編集]

ヒシの実

食用[編集]

ヒシの種子にはでん粉 (Hizukuri et al.) が約52%程含まれており[3]、ゆでるか蒸して食べるとクリのような味がする。アイヌ民族はヒシの実を「ペカンペ」と呼び、湖畔のコタンの住民にとっては重要な食糧とされていた。北海道東部、釧路川流域の塘路湖沿岸では、住民がヒシの恵みに感謝する「ベカンベカムイノミ(菱の実祭り)」という収穫祭が行われていた。佐賀県神埼市では、地元産の菱を使って焼酎が作られている[4]

薬膳としては、健胃、強壮などの作用があるとされる。

兵法[編集]

オニビシヒメビシの実を乾燥させたものは撒菱として忍者が追手の足を止める小道具になる。竹筒に入れて携行し、逃走する際にばら撒くことで、実際に踏みつけなくても「この先にもあるかもしれない」ということで足を鈍らせる心理的効果がある。また、入れた竹筒を敵の顔面に振って打ち付けて直接武器として使うこともできる。さらには長時間潜伏する際の非常食ともなった。もっともこれらは万川集海などに記されたり、口伝で伝えられてきたもので、実際にそのように使用されたという記録はない。

薬効[編集]

局方タンニン酸と一致する成分が含まれ抗トリプシン英語版作用を示す[5]

西九州大学の研究でヒシの皮の抽出物には脂肪の吸収や血圧上昇を防ぐ作用があることが発見されている[6]

文学[編集]

万葉名はといい、万葉集の歌の中にも柿本人麻呂や、海女によって詠まれている[2]。どちらも、ヒシを摘んで袖を濡らしたときの情景が詠まれている[2]

脚注[編集]

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  1. ^ a b c d e f g h 内藤俊彦 1995.
  2. ^ a b c 山田孝彦 & 山津京子 2013.
  3. ^ 岩城啓子; 杉本温美 (2004-01-15). “トチの実およびヒシの実デンプンの二,三の性質について”. 日本家政学会誌 (日本家政学会) 55 (1): 13-19. ISSN 09135227. NAID 110003166959. 
  4. ^ 「神埼菱焼酎」 お披露目会で市長ら試飲 佐賀新聞、2014年5月13日(2015年7月29日閲覧)。
  5. ^ 古沢良雄、黒沢雄一郎・中馬一操「和漢薬用植物の抗トリプシン作用とその抗炎症作用」、『日本農芸化学会誌』第47巻第6号、日本農芸化学会、1973年、 359-365頁、 ISSN 0002-1407NAID 130001223201
  6. ^ ヒシの皮でメタボ予防 佐賀の大学が開発進める 共同通信、2016年2月20日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]