ゴボウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
ゴボウ
W gobou4031.jpg
ゴボウの葉
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
: キク目 Asterales
: キク科 Asteraceae
: ゴボウ属 Arctium
: ゴボウ A. lappa
学名
Arctium lappa L.[1]
和名
ゴボウ
英名
edible burdock
greater burdock
beggar's buttons

ゴボウ牛蒡または牛旁、悪実、: Burdock、学名: Arctium lappa L. )は、ユーラシア大陸原産のキク科ゴボウ属多年草である。大阪弁では「ごんぼ」と呼ぶ[2]

リンネの『植物の種英語版』(1753年) で記載された植物の一つである[3]

特徴[編集]

ヨーロッパヒマラヤ中国など、中国東北部からヨーロッパにかけて分布する二年生草本である[4][5]アジア[6]・ヨーロッパ[7]の原産と考えられており、日本へは平安時代に中国から薬草として伝わったとも言われる[8][7][9]。世界各地に自生しているが[6]日本では根を食用にするため、品種改良を行って様々な品種を栽培している。ただし、これは日本独特の習慣で、他の国々では食用にしておらず[4]、外国産植物の中で、日本で作物化された唯一の例とされている[5]

ゴボウは日本列島に自生はしておらず、平安時代に伝わったとされる説がある一方で、縄文時代の遺跡からは、炭化していない栽培種のゴボウの種子が出土する[10]など植物遺存体として確認されており、縄文時代に日本に伝わったとの説も唱えられている[5]。日本人が食すようになったのは平安時代から明治にかけてであり、根や葉を食用とする。茎の高さは1メートル (m) ほど、主根の長さは品種にもよるが50センチメートル (cm) - 1 mほどある。花期は6 - 7月。紫色のアザミに似た総苞にトゲのある花を咲かせる。

ゴボウは連作を嫌うため、同じ畑では2 - 3年後でないと作れない[11]

品種[編集]

大別すると長根種と短根種がある[5]。関東地方では耕土が深いため、滝野川ゴボウに代表される根が細くて長い長根種が主流で、関西地方では一般に耕土が浅いため、堀川ゴボウに代表される太くて短い短根種が主流である[4][5]。また根を食用とせず、葉ゴボウとして葉を食用にする根が肥大しない越前白茎種などがある[4]。栽培の主流となっているのは長根種の滝野川ゴボウとその改良種であり、収穫時には直径3 cm、長さは1 m前後に成長する。なお、中には「博多新ゴボウ」のように水田で栽培されるゴボウも存在する[12]

滝野川ゴボウ
江戸時代初期から東京・滝野川付近で栽培されるゴボウ[13][5]。長さ約1 m、直径2 - 3 cmで細長く、スが入りにくい[14][5]。江戸時代に現在の東京都北区で改良された長根種で、この種が多くの品種の元になっている[14]
堀川ゴボウ
京都府左京区・堀川付近で栽培されるゴボウ[13]京野菜のひとつで、一般のごぼうを一度掘り起こしてから、再び植え付けるという特殊な栽培方法で育てたもので、直径5 - 6 cmと太くて短く、数本に枝分かれして、表面はひび割れて内部に空洞ができるのが特徴[14][5]。筒切りした空洞部分に肉などを詰めた料理などに使われる[14]
大浦ゴボウ
千葉県匝瑳市大浦地区で栽培されるゴボウ[13]。大浦太ゴボウは、長さ60 - 100 cm、直径約10 cmと太く、断面内部に空洞ができたところに詰め物をした煮込み料理に使われる[14]成田山新勝寺献上用に契約栽培される[5]
梅田ゴボウ
埼玉県などでごく少量生産されている太い品種。根皮がゴツゴツした質感であるが、肉質は軟らかく香りがよい[5]
明治ごんぼう
岡山県井原市芳井町明治地区の特産[15]。高原地帯の粘土質の土壌で栽培される[15]。「明治ごんぼう」は地域団体商標(地域ブランド)に登録されている[15]
葉ゴボウ
根は短く、若い茎と葉を食べる品種[14]。密植して軟白栽培される[5]。代表的なものに福井県春江町の越前白茎や大阪八尾市の若ゴボウがあり、関東地方にはほとんど出回らない[5]。1月から4月ごろに出回り、油炒め、酢味噌和え、天ぷらなどにして食べられる[14]
キクゴボウ(菊牛蒡)とも呼ばれているキバナバラモンジン。

なお、同じキク科のオニアザミ(アザミ属)の根もゴボウの根に似ていることから、俗称で「山ゴボウ」[注釈 1]とよばれ、長野県、東北地方、北海道で生産され、漬物にして市販されている[14]。同キク科のキバナバラモンジン(フタナミソウ属)はキクゴボウ(西洋黒ゴボウ)という名前でヨーロッパで根菜として食されることがある。

利用[編集]

食用[編集]

ゴボウを日常の食材としているのは日本のみである[16]

日本では根を食用にし、ゴボウが持つ独特の香りや歯触りが好まれて、伝統野菜として親しまれている[6]。旬は初冬(11月 - 1月ころ)で、新ゴボウの旬は初夏(6 - 7月)となる[6]。春から初夏出回る「新ごぼう」は、冬のゴボウより一回り小さくて色が薄い茶色のゴボウで、食感は軟らかく、香りもよい[13]。根はまっすぐでひげ根が少なく、太さは均一で、握ったときにしっかりした弾力があるものが良品とされ、育ちすぎや鮮度が落ちていると断面の中心に空洞が入り、切ってみると中がスカスカな状態(いわゆるスが入るという)になっていることがある[6]

保存方法は、ゴボウを泥つきのまま乾燥しないように湿らせた新聞紙などで包んで、日の当たらない風通しのよいところで根元を下にして立てておくと日持ちする[13][9]。洗いゴボウや新ゴボウの場合では、乾燥しないようにラップなどで包んで、冷蔵庫に保存する[13]。切った生のゴボウを長期保存しておくとスが入りやすく、風味も落ちてしまうため、調理で使い切れなかったゴボウを旨味を保ちながら保存するときは、茹でて食用油で絡めて保存容器で冷蔵庫に入れておくと5 - 6日ほどは保存が利く[13]

調理法[編集]

日本のゴボウサラダ

ゴボウの香りや旨味は根皮の部分に多く含まれていて、調理の際は皮を剥かずに泥を洗い落とす程度にして使われる[6]。下ごしらえは、根を洗ったら、たわしや包丁の背で表面をこそげ落とす程度である[9][5]

ゴボウは空気に触れるとポリフェノールの酸化で黒っぽく変色するため、調理の際に切ったらすぐに水に浸けて灰汁(アク)が出るのを抑えるようにする[13][17]。ただし、長時間水に浸けると、かたくなってしまったり、旨味や香りも一緒に流れ出てしまうため、水にさらす時間は5分から10分程度にする[13][5]。たたきごぼうやゴボウサラダなど、白く仕上げたい料理で使うときは、アク抜きの水に少量の酢を加えたり、下ゆでの湯に酢を加えると白色に仕上がる[13]

料理は、きんぴらゴボウやたたきゴボウなどの煮物や[14]天ぷらかき揚げなどの揚げ物に使われるほか、細切りにした根を湯がいてサラダにもする[7]。独特の香りが、くせのある食材の旨味を引き立てるのに役立ち、柳川鍋八幡巻きには欠かせない食材とされる[5]

栄養素[編集]

ごぼう 根 生[18]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 272 kJ (65 kcal)
15.4 g
食物繊維 5.7 g
0.1 g
1.8 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
1 µg
チアミン (B1)
(4%)
0.05 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.04 mg
ナイアシン (B3)
(3%)
0.4 mg
パントテン酸 (B5)
(5%)
0.23 mg
ビタミンB6
(8%)
0.10 mg
葉酸 (B9)
(17%)
68 µg
ビタミンC
(4%)
3 mg
ビタミンE
(4%)
0.6 mg
ミネラル
ナトリウム
(1%)
18 mg
カリウム
(7%)
320 mg
カルシウム
(5%)
46 mg
マグネシウム
(15%)
54 mg
リン
(9%)
62 mg
鉄分
(5%)
0.7 mg
亜鉛
(8%)
0.8 mg
(11%)
0.21 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 81.7 g
水溶性食物繊維 2.3 g
不溶性食物繊維 3.4 g
ビオチン(B7 1.3 μg
硝酸イオン 0.1 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[19]。廃棄部位: 皮、葉柄基部及び先端
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

ゴボウは可食部となる生の根に含まれる水分の割合が約8割と野菜としては少なく、100グラムあたりの炭水化物が15.4グラム (g) とかなり多い野菜である[20]。次にたんぱく質1.8 gが多く、灰分0.9 g、脂質0.1 gと続く[20]。炭水化物は糖質食物繊維に分けることができる[20]

食物繊維が可食部100 g中に5.7 gと豊富で、ビタミン類は少ないがミネラル類をバランスよく含むのが特徴で、その他カリウムマグネシウム亜鉛などの微量ミネラルも多く含む[6][20]

ゴボウの皮にはポリフェノールであるクロロゲン酸が豊富に含まれている。クロロゲン酸は、ゴボウを水にさらしたときに出てくる茶褐色の成分であり、コーヒーにも含まれる。ゴボウを長く水にさらすとクロロゲン酸が失われので、「皮はむかない」「水にさらさず、すぐ調理する」「大きめにゴロンと切る」ことでクロロゲン酸をより多く摂取できる[21]クロロゲン酸は酸素と反応すると橙色に変色する[22]。また、こんにゃくの凝固剤として使われている水酸化カルシウムアルカリ性)と反応すると緑色に変色する[23]。酢水にさらして酸化酵素の働きを抑えたり[24]クロロゲン酸を取り除けば変色は防げるが、色の成分は無害であるため変色したものを食べても問題はない[25]

ゴボウは食物繊維のなかでも、特に水溶性食物繊維が豊富であり[18]イヌリンが水溶性食物繊維の主体を成している[26]イヌリンは、フルクトース果糖)の複合体であり、長期保存でフラクトオリゴ糖に変化し甘味が出る[27][28]

薬用[編集]

漢方と民間療法[編集]

伝統医学(TCM)で使われた長い歴史があり、根、果実、葉などのさまざまな部分を用いる[29]。果実は漢方では牛蒡子(ごぼうし)と呼ばれる生薬であり、日本薬局方にも収録されている[30]。解毒の作用があると考えられ、消風散、柴胡清肝湯、駆風解毒湯などの方剤に処方される[31]。これら漢方の適応症はすべて、長年の使用に基づくものである[32]

欧米ではゴボウ(burdock)のを薬用ハーブとして、ハーブティーなどに用いる[33]。ごぼう油と呼ばれるごぼう根油抽出物は、頭皮のトリートメントとしても使われる[33]

日本には薬草として中国から伝来した。薬草としては発汗利尿作用のある根を牛旁根(ごぼうこん)と称するほか、浮腫、咽頭痛、解毒に用いる種子牛旁子(ごぼうし)と称して用いる[7]民間療法では、乳腺炎に種をそのまま食べるか、煎じる使用法も知られる。ゴボウは熱をとる力が強い薬草で、熱性が強い風邪によいといわれている[7]湿疹おでき・腫れ物などの化膿性疾患に、牛蒡子1日量5 - 8グラムを600 ccの水で半量になるまで煎じた煎じ液(水性エキス)を、3回に分けて服用する用法が知られる[34]。風邪・のどの痛み・咳には、牛蒡子1日量2-3グラムを水400 ccで煎じて3回分服する[7]むくみには、牛蒡子を粉末にして、1日量で3 - 6グラムほどを3回分服する[34]。神経痛、リウマチ、関節炎には、火であぶって軟らかくした生葉を、患部に貼って冷湿布すると、痛みを和らげるのに役立つと言われている[34]。夏場に採集して日干し保存しておいた葉は、浴湯料やうがい薬に使うこともでき、浴湯料として使えば湿疹、かぶれに効果があるとし、乾燥葉を煎じた液で1日数回うがいすれば、口内炎扁桃炎・歯茎の腫れなどの炎症性疾患に効果があるといわれている[34]

医学的知見[編集]

ゴボウの人を対象にした信頼性の高い研究で[35][36]、疾病に有効であるという効果は確認されていない[37][38]

北米ではゴボウを成分の1つとしたハーブティー(Essiac)が癌に効くとして売られ問題になっている[39][40]米国食品医薬品局(FDA)は、根拠がない代替医療だとして企業に警告と消費者に注意喚起を行った[41][42]

ゴボウは、不溶性食物繊維セルロースヘミセルロースリグニンなど)を100g中に3.4gと、水溶性食物繊維イヌリンなど)を2.3g含む[43]。ゴボウの水溶性食物繊維の主体であるイヌリンは、「血糖値の急激な上昇を防ぐ」といわれているが[9]メタアナリシス(メタ分析)において効果は認められていない[44]。効果があるとする研究で用いられたイヌリンの量10g/日を2ヶ月摂取[45]は、ゴボウ約250g/日に相当し[46]、ごぼう1本の標準的なサイズは150gである[47]イヌリンの排便に関する研究は、影響ありとなしの両方が存在する[44]。排便回数は増加したが、膨満感、腹鳴、鼓腸の症状スコアは増加したという報告もある[48]。これら排便の研究に用いられたイヌリンの量は5–40g/日である[44]

食薬区分[編集]

食薬区分においては、牛蒡子は医薬品に該当する。ゴボウ根や葉は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質 (原材料)」(非医薬品)にあたり[49][37]、医薬品的な効能効果を表示することができない。ただしゴボウ根や葉のように『明らか食品(医薬品に該当しないことが明らかに認識される食品)』であれば効能を表示しても薬機法(旧薬事法)には違反しない[50]。しかし「癌が治る」「血糖値が下がる」「血液を浄化する」といった誇大な医薬品的効果効能表示(店頭や説明会における口頭での説明も含む)を行うと、景品表示法健康増進法の規制の対象となる[51][52] [53]

ゴボウから抽出したイヌリンクロロゲン酸を機能性関与成分としたゴボウ茶が、機能性表示食品として届けられている。機能性表示食品とは、国が審査は行わず、事業者が自らの責任において機能性の表示を行うもので、「お通じ(便量)を改善する機能があります」と表示している[54][55]。機能性の根拠には、ごぼう茶企業の資金提供を受け社員も研究者として参加した臨床試験1報を採用した[56][57][58]。この試験で用いられたイヌリンは100mg/日、クロロゲン酸は1mg/日と低用量である[58]

安全性[編集]

通常の食品として摂取する場合はおそらく安全であるが、サプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関しては、信頼できる十分な情報は見当たらない。特に妊婦・授乳婦、出血性疾患患者、糖尿病患者は自己判断でのサプリメントの摂取は控えること[37]

キク科植物に対しアレルギーを有している場合は、アレルギー反応を引き起こす可能性があるため注意が必要である[59]。 特に根オイルの使用により、接触皮膚炎を生じる可能性がある[60]

ゴボウが関連する言葉[編集]

ごぼう抜き
リレー走駅伝競走などで、後方からほかの選手を一気に抜き去ること、または、多数抜き去ることをごぼう抜きと言うことがある。『広辞苑』(第5版)には、「(牛蒡を土中から引き抜くように)一気に抜きあげること。」とある。なお、「ごぼう抜き」という言葉には、座り込みなどを行う人物を力ずくで排除するという用法もある。
ごんぼ(牛蒡)掘り
青森県の方言に「ごんぼほり」(牛蒡掘り)というのがある。ぐずぐず不平を言って譲らない、酔ってくだを巻く(時に居座る)、強情である、ふてくされる(特に子供)、といった態度(あるいはそのような態度の者)ぐらいの意。秋田県にも同様の言い回しがあり、秋田のローカルヒーローである「超神ネイガー」には「ゴンボホリー」という悪役が登場する。岩手県や宮城県にも同じ方言があり、東北からの入植者も多い北海道でも使われる。
太平洋でごぼうを洗う
男女の性交において、女性のの締め付けがゆるいと同時に、男性の陰茎が細いため、男女とも十分な満足感が得られないたとえ。
牛蒡剣
三十年式銃剣の俗称。
牛蒡積み
石垣の工法の1つ。奥行きのある直方体に近い石を短辺面が外側になるように積んでいく工法。名称の由来は石の積み方がゴボウの束を積み重ねたようだから。大洲城若松城彦根城松江城などのものが有名であるが、これらの城に限ったものではなく、戦国時代から近世の石垣で現在まで残っている石垣は、玉石積みを除いたほとんどが牛蒡積みである。

食文化の違いによる誤解[編集]

太平洋戦争中に英米人捕虜がゴボウを「木の根」だと思い、木の根を食べることを強要し虐待されたとして、戦後、日本人将兵が戦犯として裁かれたことがあった。

太平洋戦争時の捕虜虐待とゴボウ[編集]

ゴボウにまつわる食文化の違いがもたらした悲劇的な逸話として、「戦時中、外国人捕虜にゴボウを与えたところ、木の根を食べさせられたと誤解され、戦後にBC級戦犯として虐待の罪で処罰された」というものがある。1952年昭和27年)12月10日に行われた第15回国会参議院法務委員会法務省保護局長齋藤三郎が行った米国派遣報告では

裁判のときには相当国情が違い、日本の事情を知らない人が裁判をしたため不当と言えば不当と言える裁判があるのだ。一例としては、俘虜収容所の所員が、終戦真際食糧が非常に不足している。併しこれに対してできるだけいい食物を与えたいというのでごぼうを買つて来て食わした。その当時ごぼうというのは我々はとても食えなかつたのだ。我々はもう大豆を二日も三日も続けて食うというような時代で、ごぼうなんてものはなかなか貴重品であつた。そのごぼうを食わしたところが、それが乾パン代りに木の根を食わして虐待したというので、五年の刑を受けたという、こういう例もある

と述べている[61]。また、翌1953年(昭和28年)7月2日の参議院厚生委員会では日本社会党藤原道子が「ごぼうを食べさしたものを木の根を食べさせたのだということで二十五年の禁錮を受けておる」と発言している[62][注釈 2]。漫画 『はだしのゲン』でも「捕虜にヤマゴボウを食べさせて25年の重労働を課された」とあり、映画『私は貝になりたい』では「ゴボウを食べさせて5年の懲役を受けた」という話が出てくる。

新潟県直江津町(現上越市)にあった東京俘虜収容所第4分所の所長らが、終戦後、収容されていたオーストラリア人捕虜達から「木の根を食べさせられた」という告発を受け、うち所長を除く8名が横浜裁判で絞首刑となった(なお死刑判決の理由は捕虜を殴打したこと、体力の限界を超える労働を強制したこと、劣悪な衛生環境を放置したこと、といった虐待が理由でゴボウ食は直接の理由ではない)[要出典]直江津捕虜収容所事件[63])。また、長野県下伊那郡天龍村にあった東京俘虜収容所第12分所(満島捕虜収容所)に勤務していた警備員1名が無期懲役の判決となり、その裁判中にゴボウを食べさせたことが虐待として扱われた[64]相馬暁は1996年の著書の中で「アメリカ人捕虜にゴボウを食べさせたために、昭和21年に、横浜の戦犯裁判で捕虜収容所の関係者が、二人が死刑、三人が終身刑、二人が十後年以上の有期刑の判決を受けた」と述べている[65]。また、村山有が捕虜にゴボウを差し入れたことを理由に戦犯容疑者としてGHQに逮捕された[66]。このほか極東国際軍事裁判時の弁護団だった清瀬一郎は「ある捕虜収容所」のケースとして「牛蒡をオックス・テイル(牛の尾)、豆腐をロツン・ビーンズ(腐った豆)と誤訳したため、捕虜から不満が出た」と述べている[67]

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ 標準和名としての「ヤマゴボウ」はヤマゴボウ科ヤマゴボウ属の一種Phytolacca esculentaの和名である。
  2. ^ ただし、量刑が異なっているが、これは質問者の勘違いによるものなのか、それとも別に同様の事例に基づく複数の判決があり、そちらを指しての発言であるのか、までは判然としない。

出典[編集]

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Arctium lappa L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年6月30日閲覧。
  2. ^ 札埜和男『大阪弁「ほんまもん」講座』新潮社、2006年、p96
  3. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 816. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358837 
  4. ^ a b c d 田中孝治 1995, p. 178.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 講談社編 2013, p. 156.
  6. ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 182.
  7. ^ a b c d e f 貝津好孝 1995, p. 94.
  8. ^ ゴボウを食べるのは日本人だけ?:達人に訊け!”. 中日新聞Webl (2013年5月19日). 2020年11月20日閲覧。
  9. ^ a b c d 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 104.
  10. ^ 冨岡典子 & 巻末参考文献13.
  11. ^ 講談社編 2004, pp. 50–53.
  12. ^ トンネル被覆が不要で良食味な冬春どり若掘りゴボウ「サラサラごんぼ」
  13. ^ a b c d e f g h i j 主婦の友社編 2011, p. 183.
  14. ^ a b c d e f g h i 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 105.
  15. ^ a b c 「明治ごんぼう」収穫最盛期 井原・芳井 12月5日即売会 山陽新聞(2021年11月28日閲覧)
  16. ^ ゴボウ”. やまぐちの農林水産物需要拡大協議会 事務局. 2019年11月27日閲覧。
  17. ^ 第3章 調理室における衛生管理&調理技術マニュアル”. 文部科学省. 2020年6月5日閲覧。
  18. ^ a b 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  19. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  20. ^ a b c d 講談社編 2013, p. 157.
  21. ^ 「ゴボウの新常識、アク抜き最低限に、抗酸化成分を保つ」2005.11.26日本経済新聞
  22. ^ 切った断面がいつのまにか!変色していく野菜たちの秘密”. 東海コープ. 2021年8月3日閲覧。
  23. ^ 食品の変色”. コープおきなわ (2018年12月25日). 2021年8月3日閲覧。
  24. ^ 内藤初枝「水と食酢におけるごぼうの浸漬条件の検討」『栄養学雑誌』第53巻第5号、日本栄養改善学会、1995年、 321-326頁、 doi:10.5264/eiyogakuzashi.53.321ISSN 0021-5147NAID 1300036675552021年10月1日閲覧。
  25. ^ 調理中に変色した食品”. 宇都宮市衛生環境試験所 (2020年5月25日). 2021年8月3日閲覧。
  26. ^ 牛蒡ノ成分ト「ヂフテリー」毒素ノ関係、肥田 音市、片山、細菌學雜誌、Vol.1908 (1908) No.146
  27. ^ ガッテン! - 「ザ・食物繊維!ごぼうがコクだし調味料に早変わり」2017.6.21 NHK
  28. ^ 加藤陽治, 藤田美香, 浅利宇多子「貯蔵および加熱処理に伴うゴボウのイヌリンの変化」『弘前大学教育学部紀要』第69号、弘前大学教育学部、1993年3月、 131-135頁、 ISSN 04391713NAID 1100003221392021年10月1日閲覧。
  29. ^ Arctium lappa L”. Hong Kong Baptist University. 2021年7月31日閲覧。
  30. ^ 第十八改正日本薬局方 (PDF)”. 厚生労働省. 2021年7月18日閲覧。
  31. ^ 牛蒡子(ゴボウの種)”. イスクラ薬局. 2021年7月31日閲覧。
  32. ^ いまどきの漢方・これからの漢方”. 自治医科大学大学院医学研究科. 2021年8月3日閲覧。
  33. ^ a b Balch, Phyllis A. (2002-01-01) (英語). Prescription for Herbal Healing. Penguin. ISBN 9780895298690. https://books.google.com/books?id=ZuWcxtk0wRQC&q=Burdock+is+a+traditional+medicinal+herb+used+for+many+ailments.+Burdock+root+oil+extract%2C+also+called+Bur+oil%2C+is+used+in+Europe+as+a+scalp+treatment.&pg=PA38 
  34. ^ a b c d 田中孝治 1995, p. 179.
  35. ^ 信頼できる確かな情報とは”. 国立健康・栄養研究所. 2021年7月30日閲覧。
  36. ^ その情報は「確かな情報」ですか?”. 国立健康・栄養研究所. 2021年7月30日閲覧。
  37. ^ a b c ゴボウ - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所
  38. ^ Burdock”. Memorial Sloan Kettering Cancer Center. 2021年7月31日閲覧。
  39. ^ エイジアック/フローエッセンス(PDQ)”. 米国国立がん研究所(NCI)がん情報データベース (2020年3月12日). 2021年8月3日閲覧。
  40. ^ Essiac”. Memorial Sloan Kettering Cancer Center(MSK). 2021年8月3日閲覧。
  41. ^ FDA、癌が”治癒する”と偽った製品の販売を中止するよう個人と企業に対して警告”. 日本癌医療翻訳アソシエイツ(JAMT) (2018年6月17日). 2021年8月3日閲覧。
  42. ^ 米国FDAが抗がん効果を謳う違法製品に注意喚起”. 国立健康・栄養研究所 (2017年4月26日). 2021年8月3日閲覧。
  43. ^ 野菜類、日本食品標準成分表2015年版(七訂) (PDF)”. 文部科学省. 2021年8月2日閲覧。
  44. ^ a b c イヌリン - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所
  45. ^ Effects of high performance inulin supplementation on glycemic control and antioxidant status in women with type 2 diabetes”. PubMed. 2021年7月31日閲覧。
  46. ^ On the presence of inulin and oligofructose as natural ingredients in the western diet”. PubMed. 2021年8月2日閲覧。
  47. ^ ごぼう1本は何グラムか” (1993年3月30日). 2021年7月31日閲覧。
  48. ^ Gastrointestinal tolerance and utilization of agave inulin by healthy adults”. PubMed. 2021年7月31日閲覧。
  49. ^ 医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト (PDF)”. 厚生労働省. 2021年7月26日閲覧。
  50. ^ 「明らか食品」とは? (PDF)”. 北海道薬剤師会. 2021年7月25日閲覧。
  51. ^ 誇大表示の禁止”. 東京都福祉保健局. 2021年8月2日閲覧。
  52. ^ 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について (PDF)”. 消費者、 (2016年6月30日). 2021年7月23日閲覧。
  53. ^ 医薬品的な効能効果について”. 東京都健康福祉局. 2021年7月23日閲覧。
  54. ^ ごぼう茶ごぼうのおかげ、機能性表示食品の届出情報検索”. 消費者庁. 2021年7月30日閲覧。
  55. ^ ルイボスごぼう茶、機能性表示食品の届出情報検索”. 消費者庁 (2021年5月13日). 2021年7月31日閲覧。
  56. ^ ごぼう茶、UMIN-CTR 臨床試験登録情報の閲覧”. UMIN臨床試験登録システム (2017年4月17日). 2021年7月31日閲覧。
  57. ^ 便通改善用または肥満改善用であるごぼう茶、および、ごぼう茶葉”. astamuse. 2021年7月30日閲覧。
  58. ^ a b Efficacy of Burdock Tea in Healthy Japanese with a Tendency for Constipation (PDF)”. 診療と新薬 2017; 54: 986-993. 2021年7月31日閲覧。
  59. ^ 流行中の「ゴボウ茶」、副作用報告があるなんて! 日経メディカルオンライン 記事:2012年6月8日
  60. ^ Calapai, G; Miroddi, M; Minciullo, PL; Caputi, AP; Gangemi, S; Schmidt, RJ (July 2014). “Contact dermatitis as an adverse reaction to some topically used European herbal medicinal products - part 1: Achillea millefolium-Curcuma longa.”. Contact Dermatitis 71 (1): 1 - 12. doi:10.1111/cod.12222. PMID 24621152. 
  61. ^ 参議院会議録情報 第015回国会 法務委員会 第4号”. 2012年9月1日閲覧。
  62. ^ 参議院会議録情報 第016回国会 厚生委員会 第7号”. 2012年9月1日閲覧。
  63. ^ 上坂冬子『貝になった男 直江津捕虜収容所事件』1986年、文春文庫1989, p.136
  64. ^ 1996年11月10日朝日新聞連載記事『地球・食材の旅』。ただし、この警備員はまもなく釈放されたといい、実際に本人に取材を行ったがこの話については語ってくれなかった、と述べられている。
  65. ^ 1996年『野菜学入門』
  66. ^ 飯田正孝信濃毎日新聞記者による報告、松本高麗大学Asi-Pon第30号(1993年12月8日)[1]
  67. ^ 『秘録東京裁判』(中公文庫)

参考文献[編集]

  • 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、104 - 105頁。ISBN 978-4-415-30997-2
  • 貝津好孝『日本の薬草』小学館〈小学館のフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年7月20日、94頁。ISBN 4-09-208016-6
  • 講談社編 『旬の食材:秋・冬の野菜』 講談社、2004年。ISBN 4062701367 
  • 講談社編『からだにやさしい旬の食材 野菜の本』講談社、2013年5月13日、154 - 157頁。ISBN 978-4-06-218342-0
  • 主婦の友社編『野菜まるごと大図鑑』主婦の友社、2011年2月20日、182 - 185頁。ISBN 978-4-07-273608-1
  • 田中孝治『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』講談社〈ベストライフ〉、1995年2月15日、178 - 179頁。ISBN 4-06-195372-9
  • 冨岡典子『ごぼう』法政大学出版局〈ものと人間の文化史 170〉、2015年6月20日。ISBN 978-4-588-21701-2

関連項目[編集]

外部リンク[編集]