脚絆

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ボタン留め方式のレギンス型

脚絆(きゃはん)とは、の部分に巻くでできた被服ゲートルとも。

概要[編集]

活動時に脛を保護し、障害物にからまったりしないようズボンの裾を押さえ、また長時間の歩行時には下肢を締めつけてうっ血を防ぎ脚の疲労を軽減する等の目的がある。日本では江戸時代から広く使用され、現在でも裾を引っ掛けることに起因する事故を防いだり、足首や足の甲への受傷を防ぐ目的で着用を義務付けている職場があり、作業服などを扱う店で販売されている。

日本の伝統型脚絆[編集]

大津脚絆
上下に結び紐を付したタイプ。
江戸脚絆
上部に紐を、背部にコハゼを付したタイプ。
筒型脚絆
円筒形に縫い、上部に紐を付したタイプ。

西洋型脚絆[編集]

レギンス型。第二次大戦期のアメリカ陸軍
巻脚絆と半脚絆。第二次大戦期のドイツ陸軍山岳部隊とフィンランド陸軍。手前左2人のドイツ軍将校は巻脚絆を、中央のエデュアルト・ディートル山岳兵中将および最右のフィンランド軍将校は半脚絆を着用

レギンス(スパッツ型、短ゲートル)[編集]

いわゆるレギンス型とは面積のある一枚ものの布または軟革をバックルやボタンで固定するもの。足の甲を覆う形状のレギンスでは、靴の土踏まずに掛けるベルトを備える場合がある。世界の軍隊の装備としては第二次世界大戦頃までは後述の巻脚絆と共に双璧をなしていたが、戦後は編上げ式の半長靴の普及によってとって代わられたが、儀礼的な軍装品としては形を残している。民間においては、溶接業、製鉄業、機械工業などの職業分野で、足首と足の甲を保護するために多用されている。

脛全体ではなく、踝辺りのみを巻く小振りのレギンスは「短ゲートル(半脚絆)」などと言われる。また、硬革の脛当てである「革脚絆」は、主に乗馬長靴の代わりとして用いられた。

  • イギリス陸軍アメリカ陸軍アメリカ海兵隊 - 戦間期にレギンス型を採用した。イギリス式は足首だけを巻く短い形状であった。アメリカ式は膝下から足の甲までを覆うが、紐をフックに編み上げて固定する方式のため着脱に手間取る難点があった。
  • ドイツ国防軍武装親衛隊 - 第二次大戦中期以降の物資不足の時勢に、本来の長靴に代え、上記のイギリス式に類似した短ゲートルと編上靴を支給した。
  • 日本陸軍 - 建軍から日露戦争期頃まで、歩兵を中心とする徒歩本分たる兵科兵種)の将兵が膝下から足の甲までのレギンス型を用いていたが、のちに廃止され後述の巻脚絆となる。また、第二次大戦までは徒歩本分の将校が、長靴の代わりに革脚絆を用いる場合が多々あった(1940年の兵科区分廃止以降は徒歩本分者においても乗馬長靴が広く普及する)。
  • 日本海軍 - 陸戦装備時や、艦船勤務であっても儀式の軍装時は下士官はレギンス型を用いたが、のちに陸戦装備時は後述の巻脚絆が普及する。陸戦装備時の士官の一部は革脚絆を用いる場合があった。
  • 海上自衛隊航空自衛隊 - 警務職務に従事する警務官及び警務官補、甲武装(儀式用)、乙武装(非儀式用)で白い半脚絆を着用する定めがあるが、省略されることもある。

巻脚絆(巻きゲートル)[編集]

巻脚絆とは包帯状の細い布を巻いて脚絆を作るもの。19世紀末頃から使われ始める。世界の軍隊軍装品としては第一次世界大戦をピークに、第二次世界大戦頃まではレギンス型や長靴とともに各国の軍隊で広く用いられた。脚絆の一端には脚絆を最後に固定するための紐が取り付けられている。欠点としては、上手に巻くには慣れが必要で時間がかかり、高温多湿の環境下ではシラミなど害虫の温床になりやすい。第二次大戦後に編上げ式の半長靴が普及するにつれてとって代わられ、レギンス型と異なり儀礼的な軍装品としてはほぼ形を残していない。民間では第二次大戦頃までは軍隊と同様に広く普及していたが、現代ではほぼ廃れている。

  • 日本陸軍 - 日露戦争中に採用され、日露戦後に徒歩本分者の被服とされた。数種類の巻き方があり、いったん巻いた脚絆の上下(足首と膝下)を固定用の紐でさらに締め、紐がすねの前で交差する巻き方は「戦闘巻」と俗称された。
  • 日本海軍 - 陸戦装備としては1930年代に士官下士官兵共通の被服として採用され(陸戦隊被服)、艦船勤務の将兵であっても広く普及していた。
  • ソ連赤軍 - 第二次大戦初中期の物資不足の時勢に本来の長靴に代え、編上靴と巻脚絆を支給した。
  • ドイツ国防軍・武装親衛隊 - 山岳猟兵といった、特に脚に負担が掛かりやすい兵科ではそれを憂慮して長靴ではなく編上靴と巻脚絆を支給した[1]
  • 他にイタリア陸軍フランス陸軍中国国民革命軍等では引き続き第二次大戦まで、イギリス陸軍、アメリカ陸軍では戦間期まで使用されていた。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ドイツ帝国陸軍時代、第一次大戦後期にも物資不足並びに省力化の為に支給されていた。

関連項目[編集]