ストッキング (英語 : stockings )とは、英語の広義 では靴下 全般のことであるが、狭義 では次のような意味がある。
今日使われる主な意味は女性用の長い靴下であり[1] 、通常は半透明のナイロン 製またはシルク 製で、脚 にフィットしてガーター または大腿 上部の伸縮性のある部分(シリコン ストッパーなど)で支えられるもの[2] である。
古風な米国 英語 では男性用の長い靴下[2] を意味した。かつては男性が野球 やサッカー などでスパイクシューズ の下に着用する長い靴下を指す言葉として用いられることが多かった。今日では、男性用は女装 癖などの誤解をされないよう、基本的に"high socks"や"long socks"などと呼び分ける傾向がある。
"Christmas stockings"の短縮[2] を意味することもある。子供がクリスマス プレゼント をサンタクロース に入れてもらうために準備する長靴下の省略形の呼び方として使われる。
マナー としてのストッキング
戦後 の日本では西洋 式のドレスコード [3] を模範 とし、品位 ある社会人 としてスーツ を着用する場面において、成人 女性のストッキングは男性のネクタイ と同じでその着用がビジネスマナー [4] とされてきた[5] [6] 。近年、男性のノーネクタイ化と同様に女性の生脚 も少しずつ許容されるようになってきたが、それでもなお公式の式典 や大学生の就職活動 などの特別に改まった場面においては、女性のストッキング着用はその場のエチケットとされていることが多い[7] 。また、結婚式 [8] [9] や葬式 などの肌 の露出を極力抑えることが求められる神聖 な場においては[10] 、女性のストッキングの着用は今日でも必須 であり[11] [12] 、清楚 な淑女 の謙虚さを示すものとなる[13] [14] 。ストッキングの色は、結婚式の場合は白 もしくはベージュ 、葬式では黒 、その他のフォーマルウエア ではベージュ や肌色 のものが一般的であり、マナーとしてのストッキングは唐草模様 などの華美な柄物は避け、無地のシンプルなものが良い。
ファッション としてのストッキング
ストッキングのファッションスタイル が見映え する体型は、身長が高いことが有利であり[15] 、ほっそりした長い脚 を持つ女性はすべての布地 (織り方 )や模様および色が良く似合うが、むっちりした脚 の場合はシンプルな模様の暗い色のものが適している[16] 。収縮色である黒系のストッキングは、脚を実際よりも細く魅せる効果があるが、逆に膨張色である白系のストッキングは脚を太く見せてしまう傾向がある。
ストッキングの長所短所
長所
伸縮性の編地が脚をひきしめてくれることによる脚線美 。
脚の冷えの予防、防寒、日焼け 防止効果など。
短所
繊細な繊維でできているので「引っかけ」に弱く、伝線しやすく破れやすい。
吸湿性に欠ける素材ゆえに靴の中で蒸れやすい。ただし最近は夏でも蒸れにくく、夏に着用しても涼しく過ごせるよう、繊維に体温と反応して吸熱させる特殊な液体を染みこませ、冷却感を維持できるように工夫された製品も開発されている。
古代 ローマ時代 に「udo」と呼ばれる靴下があり、それが戦士の長ブーツに合わせ、長くなり、やがてストッキングになったとされる。当時「ブーツを履かずにストッキング姿の男は、女みたいだ」と言われたことから、すでに婦人ストッキングも存在していたとされる[17] 。
ナイロン 製ストッキングは1937年にウォーレス・カロザース によって発明され、1940年に発売された。極細のナイロンモノフィラメント繊維で生産され、爆発的に世界中に普及した。当時は筒状に編み立てる技術がなく、縫い目かがり(シーム)のある靴下として発売された。後年に開発される縫い目かがりのないストッキングを、「シームレス ストッキング」という。ナイロンとポリウレタン 糸で編まれたストッキングは画期的な新製品とされ、日本に上陸したのは1952年。当時は何も脚に着用していないように見えるのが好まれず、国内ではあまり売れなかったが、後年には足首部分で編地がたるみにくいシームレスの良さが徐々に広まり、普及した。
2000年代に入ってからはカジュアルファッションの流れから素足の「生足 ブーム」が起こり、秋冬でもそのような足元の女性が増加した。また、2000年代半ば頃から「レッグファッション」が流行 し、その相乗効果でタイツやストッキングの着用人口も増えたといわれる。しかし、これらの増加は通年しても1970年代から1990年代の勢いに及ばない。
16世紀 中頃の室町時代 の南蛮貿易 の品の中にメリヤスゴウズ(手編みストッキング)があった。江戸時代 になるとメリヤスタビと言われるようになった。1969年 (昭和34年 )には水戸光圀 の遺品の中から7足のストッキングが発見され、話題になった。明治時代 初期になるとメリヤス店(女利安屋)が誕生した。いわゆる「ストッキング専門店」である。1924年 (大正 13年)には人絹 ストッキングが登場した。戦後 、1949年 (昭和 24年)にはナイロン 系ストッキングも生まれ[18] 、女性の社会進出を比喩 する「戦後、強くなったのは女性と靴下(ストッキング)である」 というフレーズ が流行し[19] 、ストッキングは女性の社会的地位の向上と強さの象徴 となった[20] 。
ガーターストッキング / ノン‐ガーターストッキング
ガーターストッキングとは、ずり落ち防止のため、ガーターベルト を腰に着用しそこから下方に伸びたサスペンダーでストッキング上端を留めるもの。ストッキング部分の長さはサイハイソックス よりもやや長い程度である。ガーターストッキングは取り扱いが不便なので、シームレスのパンティストッキングが普及して以降はあまり使われておらず、現在では主にコスプレ用や、男性客を相手にした「夜の街」の従業員の業務用など。
後に、ずり落ちの少ないシームレスのパンティーストッキングが普及したことで「ガーターベルトは面倒」と、そのかわりにストッキングは一旦は廃れたが、ストッキングの上端部分のシリコン ゴム編み部分を強化し簡単に着用できるノン‐ガーターストッキングが出回るようになってからは、「ガーターベルトは不便だが、パンストは好まない」という人に好まれ、販売されている。
パンティストッキング
パンティストッキング (略称「パンスト」)は、パンティー部分とストッキング部分を一体にした形状のナイロン製靴下。文脈によってはストッキングとパンティストッキングは対比的に別物として扱われることもある。別の文脈ではストッキング類の下位分類としてパンティーストッキングが扱われることもある。ガーター ベルトが不要なこと、ずり落ちない優れた伸縮性から現在は「ストッキング製品類」の販売のほとんどを占めている。なお、補正用のインナーとしてズボン・スパッツ状(足の腿から下の部分がない)のものもある。
タイツ
タイツ とは、パンティストッキングとほぼ同じ形状であるが、両者の違いは材質と厚み(デニール [21] )である[22] [23] 。材質もナイロン だけでなく羊毛 や木綿 の織物 製ものも多く、主に防寒用として着用されるものである。
ショートストッキング
外観はハイソックス に準ずる。また、広義ではガーターストッキング・ノン‐ガーターストッキングもこれに含める場合がある。
エアーストッキング
スプレー で塗布する脚用化粧料のファンデーション 。
医療用ストッキング
脚部のむくみ の初期治療、静脈瘤 の管理、静脈血栓塞栓症 の予防などの目的で、特に圧力・伸縮性を強めた弾性を持ったストッキングが販売されている。
在宅で、あるいは医師の指導のもとで使用する。その他、特に身体拘束 を要する重症患者のリスク管理の目的に使われることもある。
和装ストッキング
和装の際、和服 の裾がまくれ上がっても足袋 上部の脚部が露出するのを防止する目的で着用する。
関連項目 [ 編集 ]
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外部リンク [ 編集 ]