ギョウジャニンニク
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ギョウジャニンニク(北海道穂別)
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| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Allium victorialis L. subsp. platyphyllum Hultén | |||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||||||||
| ギョウジャニンニク | |||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||
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ギョウジャニンニク(行者葫、学名:Allium victorialis subsp. platyphyllum)はネギ属の多年草。 北海道や近畿以北の亜高山地帯の針葉樹林、混合樹林帯の水湿地に群生しており、そのほとんどの繁殖地は国立公園などの自然保護区である。キトピロなどとも呼ばれる(後述)。ヨーロッパ産の基本亜種A. victorialis subsp. victorialisは、ヨーロッパの多くの高山に広く分布している(#生息亜高山地域参照)。
目次
概要[編集]
長さ20 - 30 cm[6]、幅3 - 10 cmの葉[6]で強いニンニク臭を放ち[6]、地下にラッキョウに似た鱗茎を持つ、葉は根生、扁平で下部は狭いさやとなる。初夏、花茎の頂端に、白色または淡紫色の小花を多数つける。種子のほかにも不定芽でも増殖する。生育速度が遅く播種から収穫までの生育期間が5年から7年と非常に長いことから、希少な山菜とされ、市場流通量は少なく高値で取引される傾向にある。
分布域[編集]
ギョウジャニンニク(A. v. subsp. platyphyllum、日本産の亜種)は、日本では北海道から奈良県[6]にかけて見られ、さらには千島列島や樺太、そしておおよそアムール川系流域にあたる極東ロシアや中国の多くの省にかけても広く分布し、朝鮮半島でも見られる。また、アリューシャン列島の最西端のアッツ島に原産するほか列島の別の島にも移植されたと考えられていて[4]、分布図にはかろうじて北米も含まれる。
ヨーロッパが原産のvictorialis亜種は、アルプス地方・ジュラ山脈系・カルパチア山脈系などヨーロッパの山地に広く分布し、さらにはロシア西部からコーカサス、カザフスタン、モンゴル、インド亜大陸にも生息地が広がっている[7][3]。
名称[編集]
ギョウジャニンニクという名前の由来は、山にこもる修験道の行者が食べたことからとも[6]、逆にこれを食べると滋養がつきすぎて修行にならないため、食べることを禁じられた[※ 1]からとも言われている。
キトビロ、ヤマビル(山蒜)またはヤマニンニクなどの別名がある。キトビロ(もしくはキトビル、キトピロ)がさらになまって、ヒトビロ、ヒトビルというような発音になることもある。また、北海道では、この植物を俗に「アイヌネギ」と呼ぶことがある。
アイヌ語における呼び名はキト (kito)、またはプクサ (pukusa) である。「キトピロ」をアイヌ語として紹介している文献・サイトもあるが、信頼できる文献で、キトピロを正式なアイヌ語として紹介している文献はない。(たとえば知里真志保『分類アイヌ語辞典植物編』などを参照。)知里真志保はkitoの語源が「祈祷蒜」としているが、kitoを含むアイヌ語地名が各地に見られ、pukusaを使用する地域でもkitoが出現する地名が見られることから、kitoの方がより古い語彙であると考えられる。よってキトビロのキトは日本語起源というよりも、アイヌ語起源である可能性が高い。ビロは、日本語の「ひる(蒜=ネギ・ニラ類を指す古語)」がなまったものと思われる。
古く「あららぎ」と呼ばれたとされるが、この言葉は一般的にはノビルを指すと解釈される。本種は本州では山深くにしか育たないため、往時の日本人にとっては、里に生えるノビルのほうがずっと親しみのある食材であったであろう。
ヨーロッパ種の名称については#まじない的な利用参照。
食利用[編集]
おおよそ、5月上旬から中旬頃の山菜として知られており、葉茎を主に食用として用いるが、しょうゆ漬けにして保存したり、生のままやおひたし、ギョウザ、卵焼きに混ぜるなどして食べる。茎の太さが1 cm程度でまだ葉の開かない状態のものが、味、香り共に濃く珍重される。特に軟白栽培した物が人気がある。
ニンニクよりもアリシンを豊富に含んでおり、抗菌作用やビタミンB1活性を持続させる効果があり、血小板凝集阻害活性のあるチオエーテル類も含むため、血圧の安定、視力の衰えを抑制する効果がある。成分を利用した健康食品も販売されている。ニンニクの成分に近いためか、食べたときの風味もニンニクに近く独特の臭いを持ち、極めて強い口臭を生じることがある。この匂いの発生は人間にかぎらず、乳牛が放牧中に食べることによって牛乳がにんにく臭くなる問題が発生することがある[8]。
アイヌの人々は春先に大量に採集し、乾燥保存して一年間料理の食材として利用していた。オハウ(汁物)の具としたり、ラタシケプ(和え物)に調理して食べる。
西洋でもラムソン(ワイルドガーリック又はベアラウフ・熊ネギ)と呼ばれる野生種の植物を食べる習慣があり、形や香りがよく似ていることから、これらをギョウジャニンニクとして紹介する場合がある。しかし、ラムソンの学名は Allium ursinum で、ギョウジャニンニクと同じくネギ属の植物だが別種である。
| 100 gあたりの栄養価 | |
|---|---|
| エネルギー | 142 kJ (34 kcal) |
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6.6 g | |
| 食物繊維 | 3.3 g |
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0.2 g | |
| 飽和脂肪酸 | (0.02) g |
| 一価不飽和 | (0.01) g |
| 多価不飽和 | (0.05) g |
|
3.5 g | |
| ビタミン | |
| ビタミンA相当量 |
(21%) 170 μg(19%) 2000 μg |
| チアミン (B1) |
(9%) 0.10 mg |
| リボフラビン (B2) |
(13%) 0.16 mg |
| ナイアシン (B3) |
(5%) 0.8 mg |
| パントテン酸 (B5) |
(8%) 0.39 mg |
| ビタミンB6 |
(12%) 0.15 mg |
| 葉酸 (B9) |
(21%) 85 μg |
| ビタミンC |
(71%) 59 mg |
| ビタミンE |
(3%) 0.4 mg |
| ビタミンK |
(305%) 320 μg |
| ミネラル | |
| ナトリウム |
(0%) 2 mg |
| カリウム |
(7%) 340 mg |
| カルシウム |
(3%) 29 mg |
| マグネシウム |
(6%) 22 mg |
| リン |
(4%) 30 mg |
| 鉄分 |
(11%) 1.4 mg |
| 亜鉛 |
(4%) 0.4 mg |
| 銅 |
(8%) 0.16 mg |
| 他の成分 | |
| 水分 | 88.8 g |
| 水溶性食物繊維 | 0.5 g |
| 不溶性食物繊維 | 2.8 g |
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ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[10]。別名: アイヌねぎ、ヒトビロ、やまびる。廃棄部位: 底盤部及び萌芽葉 | |
| %はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 | |
類似毒草の注意[編集]
バイケイソウ類、イヌサフラン、スズランなどの毒草と間違えやすい[11]。特にスズランとの区別に注意する必要がある。特有の臭いの有無で判別可能である。
栽培[編集]
1990年頃から北海道や日本海側の雪の多い地域で園芸栽培されている。ギョウジャニンニク栽培圃場に発生する病害[12]も報告されている。播種から収穫までは4年程度必要。
品種改良[編集]
宇都宮大学農学部藤重宣昭助(当時)らのグループにより、ギョウジャニンニクとニラを交配した「行者菜(ぎょうじゃな)」が開発された。外観はニラに近いが、ギョウジャニンニクから受け継いだ形質として、茎が太いのが特徴で、ニラ同様1年で収穫が可能。2008年から山形県長井市で販売が開始されている[13]。
まじない的な利用[編集]
アイヌの民間信仰では、その独特の臭気は魔物を祓う力があるとされ(天然痘などの)伝染病が流行した際は、村の入り口に掲げ、病魔の退散を願った[14]。西洋の吸血鬼がニンニクを忌み嫌う逸話と相通じるものがある。
昔のヨーロッパでも、本種は欧州の山岳地帯の人々によって薬用や呪物崇拝の物具(護符)として栽培されていた[15]。そもそもドイツ語で一名Siegwurz つまり「勝利の山野草」と呼ばれていて、護符として身につければ不浄な精霊の攻撃から身を守るとされており、例えばボヘミア地帯などでも信心されていた[16]。学名の A. victorialis は、この「勝利の山野草」という俗名にちなんだものである。
参考画像[編集]
脚注[編集]
- 文中注釈(※)
- 典拠
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium victorialis L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月9日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium victorialis L. subsp. platyphyllum Hultén”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月9日閲覧。
- ^ a b GRIN (2011年5月12日). “Allium victorialis L. information from NPGS/GRIN”. Taxonomy for Plants. National Germplasm Resources Laboratory, Beltsville, Maryland: USDA, ARS, National Genetic Resources Program. Month day, year閲覧。
- ^ a b Flora of North America
- ^ a b c d e 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “ギョウジャニンニク”. BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 2012年7月9日閲覧。
- ^ a b c d e Heibonsha (1969) [1968]. 世界百科事典 (Sekai hyakka jiten). 6. 大井次三郎による「ギョウジャニンニク」の項
- ^ Thompson, Harold Stuart (1912) (preview). Sub-alpine Plants: Or, Flowers of the Swiss Woods and Meadows. G. Routledge & Sons. p. 280.
- ^ 西村弘行 and ハニイ,ウィジャヤ and 渡部賢二 and 水谷純也 (1988年). “道産有用資源ギョウジャニンニクの有効利用に関する研究”. 北海道大学農学部牧場研究報告 (北海道大学農学部附属牧場) 13: 139-147.
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ “間違えやすい有毒植物”. 長野市. 2014年6月23日閲覧。
- ^ ギョウジャニンニクに発生した新病害、白色疫病とすすかび病(新称)農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波事務所
- ^ “東北農政局 山形地域からの便り(平成25年度)”. 2014年6月23日閲覧。
- ^ 佐々木利和 『アイヌ文化誌ノート』(google) 吉川弘文館、2001年、225頁。ISBN 978-4642055284。 "酒を得る前の樺太アイヌはお祈りのときに、ギョウジャニンニク(プクサ)..を用いたという。これは強烈な臭気を発するので、その臭気を嫌う伝染病などは近づかないので、流行り病があると村の入り口や家の軒に下げておくことがある。"
- ^ Rabinowitch, Haim D.; Currah, Lesley (2002) (preview). Allium Crop Science: Recent Advances. CABI. p. 26. ISBN 9-780-851-99510-6.
- ^ “Allium victorialis. Long-rooted garlic”. Curtis's botanical magazine 30: 1222-. (1809年).
参考文献[編集]
- ギョウジャニンニク - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所)
- 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:イヌサフラン 厚労省
関連項目[編集]
関連書籍[編集]
- 井芹靖彦 『ギョウジャニンニク-軟白栽培の実際、栄養価値と売り方』 農文協〈新特産シリーズ〉、2001年。ISBN 4540002848。
外部リンク[編集]
- 北海道大学附属図書館/ギョウジャニンニクの形態・発育特性及び栽培化に関する基礎的研究/著者:金澤俊成 北海道大学農学部邦文紀要 (1993) 18巻2号
- 北海道立衛生研究所/北国生活・それぞれの科学/No.4 山菜と毒草
- 北海道食材ものがたり 6 ギョウジャニンニク