応援上映

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応援上映(おうえんじょうえい)は、映画の上映中に観客が大声を出すことが認められた特別上映回。同様のものにチアリング上映[1][2]発声型上映[3]絶叫上映[4]声出し上映など。

映画上映中に観客の声援、コスプレアフレコなどが許される新しい映画鑑賞スタイルであり、映画館では静かに映画を鑑賞するという従来の概念を覆すものである[3][5]。盛り上がるシーンで歓声や声援を上げたり[5]ツッコミを入れたり[5]、劇中のセリフを唱和したり[6]サイリウムを持ち込んでコンサートのように楽しむことができる[7]

応援上映の醍醐味は「ファンが作品の興奮や感動を共有できる」ことであり[8]、会場が一体となる楽しさがネットや口コミで話題となり[3]、同じ映画に何度も通うファンが増えたという[4]。一方で上映中に声を出すという特性上、映画に集中したい人には不向きであり、ネタバレは避けられず、「リピーター向けの祭典」ともいえる[3]。また応援上映と知らずに入場してトラブルになった例や、観客の迷惑行為で応援上映が中止された例[注 1]が報告されており、映画館側の情報の周知や観客のマナーが必要とされる[4]

解説[編集]

日本[編集]

応援上映」という名称は、2016年のアニメ映画KING OF PRISM by PrettyRhythm』での盛り上がりがニュースで取り上げられたことで話題となった[10][11]。監督によると本作は応援上映を前提に制作されており[12]、セリフに一定の間が置かれたり、観客によるアフレコが可能な作品である[11][注 2]

立川シネマシティの企画担当である遠山武志によると、動画を見るだけならスマートフォンやパソコンでも可能であり、観客に映画館へ足を運んでもらうにはそれ以上の工夫が必要だという[14]。シネマシティでは2009年に映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』を、実際のライブと同じようにスタンディングと歓声を許可したライブスタイル上映として上映しており、遠山はこれからの映画館には総合的なエンターテインメントとしての企画力・演出力・知識・技術が必要になると述べた[14]。また遠山は同上映において、映像を見るだけの受動的な従来の観客から、映像に対してアクションを起こす能動的な観客へ、自然発生的に主導者が逆転する現象を興味深く捉えている(正確には、観客は映像そのものに影響を与えているのではなく、他の観客に影響を与えている。)[15]

プロダクション・アイジーの経営企画・広報グループの郡司幹雄は、映画鑑賞後に感想を熱く語り合う観客を見て、上映中にも堂々と声を出せるようにすればファンへのサービスになると考え2011年のアニメ映画『劇場版 戦国BASARA -The Last Party-』で絶叫ナイトを提案した[16]。背景には同様の上映会がファン有志で開催されて好評だったこと[注 3]がある[16]。同映画の配給会社である松竹の飯塚寿雄宣伝プロデューサーは、個々のキャラクターにファンが存在し戦闘シーンが大半を占める本作はライブ感覚で楽しむのにピッタリだと評した[16]。また2016年の実写映画HiGH&LOW THE MOVIE』では、公開後に松竹映画宣伝部に観客の盛り上がりが報告されたことから応援上映が実施されるようになった[8]。チームに分かれたキャラクター、テーマソングなどの音楽要素、リピーターの多さが、応援上映と相性が良いと判断されたことが理由である[6]

2010年代の日本は「参加型」・「体験型」のエンターテインメントにお金を払う流れに移行しているといわれる[3]。ニッセイ基礎研究所の准主任研究員である久我尚子によると、応援上映は他の応援者との「つながり」と、観るだけでなく「参加」し「体験」するという3つの要素が相乗効果を生むという[18]新宿バルト9の島田貴行は、従来から子供向けの声出し上映は行われてきた[注 4]が、観客「参加型」の鑑賞スタイルは幅広い作品で有効ではないかと考えた[19]。また松竹宣伝部は応援上映について、劇場で観る映画の価値が「体験型」に戻っているのかもしれないと語った[20]。松竹が手掛けるシネマ歌舞伎で実際の歌舞伎公演のように観客が屋号を叫ぶものや、2011年の『映画けいおん!』のライブスタイル上映にも繋がるという[20]

海外との関連[編集]

1975年のイギリスのホラーミュージカル映画『ロッキー・ホラー・ショー』では、観客がセリフを叫んだり紙吹雪を飛ばしたり、コスプレをするなどの鑑賞スタイルが定着しており、日本では「参加型映画の元祖」と称されることがある[21]

ミュージカル仕立ての作品が多いインド映画では、劇中曲に合わせて歌い踊ったり、紙吹雪や鳴り物を用いて、観客が映画に「参加」することがある。この上映スタイルはマサラ上映と呼ばれ、日本では『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1998年)[22]や『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015年)などで、一部の映画館に取り入れられた。[23]

映画に合わせて観客が一緒に歌うことができる上映は、海外ではシング・アロング英語: Sing-along)と呼ばれ、数多く実施されてきた。日本では2014年に『アナと雪の女王』で「みんなで歌おう♪歌詞付版」として導入された[24]。アメリカや韓国などで好評を博していたシング・アロングだが、ウォルト・ディズニー・ジャパンの廣村織香は当初、シャイな日本人には文化的に向いていないかもしれないと考えていた。[25]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 2016年、神奈川県のチネチッタで『ラブライブ!The School Idol Movie』(2015年)の応援上映が中止となった[9]
  2. ^ なお関連作である『劇場版プリパラ み〜んなあつまれ!プリズム☆ツアーズ』(2015年)や『劇場版 プリティーリズム・オールスターセレクション プリズムショー☆ベストテン』(2014年)においても、サイリウムの持ち込みや、声援、コスプレが可能なアイドルおうえん上映会が行われている[13]
  3. ^ 魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』(2010年)の絶叫上映会など[17]
  4. ^ 例として2005年にスタートした『プリキュアシリーズ』の劇場版作品では、2007年上映の『映画 Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』から来場した子供の観客にライトを配布し、それを使って応援してもらう上映スタイルを取っている[17]

出典[編集]

  1. ^ 「M@STERPIECE」の感動を45万人が共有!アニメ「アイドルマスター」の新たな展開”. Movie Walker (2014年4月11日). 2017年4月10日閲覧。
  2. ^ 中里キリ (2016年6月7日). “【レポート】『アイドルマスター SideM』、初の地上波特番発表も! 「THE IDOLM@STER SideM 1st STAGE ~ST@RTING!~」上映会初日舞台挨拶”. マイナビニュース. 2017年4月12日閲覧。
  3. ^ a b c d e 衣輪晋一 (2016年9月19日). “『シン・ゴジラ』で開催した「発声型上映」 固定観念を覆す“映画の楽しみ方””. ORICON NEWS. 2017年4月12日閲覧。
  4. ^ a b c 原田美紗@HEW (2016年6月22日). “あなたはアリ?声を出して映画を観る“応援上映”、増えるトラブル”. dmenu映画. 2017年4月12日閲覧。
  5. ^ a b c 増え続ける応援上映、そのマナーとは? (1)”. L maga.jp (2016年10月24日). 2017年4月12日閲覧。
  6. ^ a b 佐々木なつみ (2016年9月15日). “【レポート】ライブさながらの盛り上がりに大興奮!? 『HiGH&LOW THE MOVIE』応援上映 (1)”. マイナビニュース. 2017年4月12日閲覧。
  7. ^ 増え続ける応援上映、そのマナーとは? (2)”. L maga.jp (2016年10月24日). 2017年4月12日閲覧。
  8. ^ a b 映画の応援上映 初心者が楽しむためにはペンライトは必需品”. NEWSポストセブン (2016年11月7日). 2017年4月12日閲覧。
  9. ^ 『ラブライブ!』応援上映で迷惑行為 急きょ中止に”. シネマトゥデイ (2016年6月21日). 2017年4月12日閲覧。
  10. ^ キンプリ:異例のロングランで興収5億円、動員30万人突破 “応援上映”が話題に”. まんたんweb (2016年4月27日). 2017年4月12日閲覧。
  11. ^ a b キンプリ「応援上映」にOLたちがなぜ熱狂するのか (1)”. NEWSポストセブン (2016年6月18日). 2017年4月12日閲覧。
  12. ^ 劇場版『KING OF PRISM』監督、キャラ原案&デザイン……制作スタッフ陣のアツすぎる想い、みんなに届け!”. アニメイトタイムズ (2016年1月26日). 2017年4月12日閲覧。
  13. ^ プリパラ:“ライブ風上映会”が盛況 サイリウムやコールでアイドル応援”. まんたんweb (2015年3月28日). 2017年4月12日閲覧。
  14. ^ a b 遠山武志 (2016年5月21日). “映画館はライブを越える音楽体験を生み出せるか? “ライブスタイル上映”のリスクと革新性 (2)”. Real Sound. 2017年4月12日閲覧。
  15. ^ 遠山武志 (2016年5月21日). “映画館はライブを越える音楽体験を生み出せるか? “ライブスタイル上映”のリスクと革新性 (1)”. Real Sound. 2017年4月12日閲覧。
  16. ^ a b c 映画館で大騒ぎできる新サービス登場!映画版『戦国BASARA』の「絶叫ナイト」で劇場ホクホク (1)”. 日経トレンディネット (2011年8月9日). 2017年4月12日閲覧。
  17. ^ a b 鈴木学 (2017年6月25日). “映画館で愛を叫ぶ 「キンプリ」応援上映 大人気”. 東京新聞: 朝刊放送芸能面. http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2017062502000138.html 2017年6月29日閲覧。 
  18. ^ キンプリ「応援上映」にOLたちがなぜ熱狂するのか (2)”. NEWSポストセブン (2016年6月18日). 2017年4月12日閲覧。
  19. ^ 及川望 (2017年2月13日). “開業10周年、新宿バルト9“劇場ファン”を創出するユーザーファーストの視点”. ORICON NEWS. 2017年4月12日閲覧。
  20. ^ a b 佐々木なつみ (2016年9月15日). “【レポート】ライブさながらの盛り上がりに大興奮!? 『HiGH&LOW THE MOVIE』応援上映 (2)”. マイナビニュース. 2017年4月12日閲覧。
  21. ^ 参加型映画の元祖「ロッキー・ホラー・ショー」上映、映画館がパーティ会場に”. 映画ナタリー (2015年4月13日). 2017年4月12日閲覧。
  22. ^ 伊藤徳裕 (2014年5月2日). “「アナと雪の女王」だけじゃない! まだある“観客参加型”映画 (1)”. 産経ニュース. 2017年4月12日閲覧。
  23. ^ 『ガールズ&パンツァー』インド式 “マサラ上映”が大好評 「なぜ?」企画者に聞く (1)”. クランクイン (2016年3月9日). 2017年4月12日閲覧。
  24. ^ 歌える『アナと雪の女王』大好評 コスプレ・フリ真似も登場”. ORICON NEWS (2014年4月27日). 2017年4月12日閲覧。
  25. ^ “映画館で一緒に歌う”『アナと雪の女王』で本格解禁…客席参加型「シング・アロング」日本で根付くか (1)”. 産経WEST 関西の議論 (2014年4月19日). 2017年4月12日閲覧。
  26. ^ ガルパン劇場版まだまだネタ満載の生コメンタリーイベント開催!さまざまな裏話に観客も大爆笑【前編】”. NEWS LOUNGE (2016年5月8日). 2017年4月12日閲覧。
  27. ^ 席を立っても声を出してもOK「ぼくと魔法の言葉たち」で日本初「フレンドリー上映」”. 映画.com (2017年4月1日). 2017年4月12日閲覧。