沈黙の艦隊

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沈黙の艦隊』(ちんもくのかんたい)は、かわぐちかいじによる日本漫画作品。『モーニング』(講談社)にて、1988年から1996年まで連載。1990年に第14回講談社漫画賞一般部門を受賞。アニメラジオドラマ化もされている。

潜水艦戦を描いた戦記物に、核戦争や国際政治等の問題提起を絡ませ、各方面から注目を集めた。

作品解説[編集]

タイトルの「沈黙の艦隊」とは、「潜水艦戦力」を意味する英語の「Silent Service」の直訳による。

足掛け8年・全32巻という長期に渡って連載された物語だが、劇中で実際に経過した時間はわずか2ヶ月である。折しもその連載中にソ連崩壊冷戦終結など現実世界の世界情勢が劇的に変化しており、本作の設定やストーリーにも影響を及ぼしている。

本作の連載終了後に、番外編として『モーニング』にて連載されたスピンオフ作品『瑠璃の波風 沈黙の艦隊〜海江田四郎青春譜』がある。

また防衛庁の広報誌『セキュリタリアン』(財団法人防衛弘済会)では、官民の安全保障専門家が本作を分析する『「沈黙の艦隊」解体新書』が連載され、講談社によって1995年に単行本化された。

単行本[編集]

単行本はモーニングKC版が全32巻、モーニングデラックス版(愛蔵版)が全11巻、講談社漫画文庫版が全16巻。他にも、登場人物の背景やその後に触れた特別編が描かれた。

話数は「VOYAGE XX(XXは数字)」で表される。また、単行本のカバーを外した表紙・裏表紙には、その巻に収録された「やまと」航海の記録が記されている。

国会での質問[編集]

連載当初から話題にはなっていたが、一番注目されたのは湾岸戦争が勃発してPKOによる自衛隊派遣憲法9条問題などが話題となっていた時期であり、1990年5月29日衆議院内閣委員会では、山口那津男石川要三防衛庁長官に対し「防衛庁長官はこの作品はお読みになったことございますか」と質問している。


ストーリー[編集]

日本の近海で海難事故が発生した。千葉県犬吠埼沖で、海上自衛隊の潜水艦「やまなみ」がロシアの原子力潜水艦と衝突し沈没、「やまなみ」艦長の海江田四郎二等海佐以下全乗員76名の生存が絶望的という事故の報道は日本に衝撃を与える。しかし、海江田以下「やまなみ」乗員は生存していた。彼らは日米共謀により極秘に建造された原子力潜水艦シーバット」のメンバーに選ばれ、事故は彼らを日本初の原潜に乗務させるための偽装工作であった。

アメリカ海軍所属となった日本初の原潜「シーバット」は、海江田の指揮のもと高知県足摺岬沖での試験航海に臨む。しかしその途中、海江田は突如艦内で全乗員と反乱を起こし、音響魚雷で米海軍の監視から姿をくらまし逃亡。以降、海江田を国家元首とする独立戦闘国家「やまと」を名乗る。さらに出港時「シーバット」は核弾頭を積載した可能性が高い事が発覚。

アメリカ合衆国大統領ベネットは海江田を危険な核テロリストとして抹殺を図る。海江田は天才的な操艦術と原潜の優れた性能、核兵器(の脅威)を武器に日本やアメリカやロシア、国際連合に対抗してゆくこととなる。

主な登場人物[編集]

主人公および作品を通しての中心人物[編集]

海江田四郎
- 津嘉山正種
本作の主人公。
海上自衛隊ディーゼル潜水艦「やまなみ」艦長。初登場時の階級は二等海佐だが、「やまなみ」沈没事故の偽装工作により殉職とされ二階級特進、海上自衛隊での最終的な階級は海将補となる。
秘密裏に日本初の原子力潜水艦シーバット」艦長に任命されるが、処女航海で突如米原潜部隊に対し音響魚雷を放ち逃亡。その後、米第7艦隊の前に浮上し戦闘国家「やまと」の独立を宣言し自らの思想の表明と実現のために「やまと」を駆使する。
「海自始まって以来の英才」と呼ばれ、リムパック演習で米空母カールヴィンソン」を5回沈めた実績を持ち、その操艦能力は米海軍に「慎重」と評された。おおむね冷静沈着だが、必要に応じて大胆な策をとる事もある。また軍事のみならず政治、国際情勢についても深い理解と読みの鋭さを持つ。
非常に高いカリスマ性によって全乗員を統率し、既存の戦略技術に捕らわれない超人的な操艦能力で次々と米ソの攻撃を打ち破る。その操艦能力から、敵対する海軍に「海の悪魔」「モビーディック(白鯨)」などと呼ばれ恐れられた。
クラシック音楽を好み、なかでもモーツァルトの曲を流すシーンが多く出てくる。ちなみに、作中で最初に聴いていた曲は「交響曲第41番 (モーツァルト)」。(特番では、最初に聴いていたのは、同じくモーツァルトの交響曲40番)ニューヨーク沖海戦時には、ストラビンスキーの「春の祭典」を流した。
ニューヨーク上陸の際には共に行こうとする深町に対し「自分のいない「やまと」には深町の全てが必要」とやまとを託して国連に向かう。その後総会で演説中に狙撃され脳死状態に陥るが心肺停止には至らず、その心音は世界に発信された[1]
妻と一人の子供がおり、母は鎌倉在住。亡き父・海江田巌海将(VOYAGE239「原潜たる意味」では海将補となっている)は「海上自衛隊の立役者」と言われている。
自衛隊出身の日本人であるが、「シーバット」は米海軍所属の艦なので、海上自衛隊の制服の上に米海軍のキャップをかぶっている。
深町洋
声 - 大塚明夫
海上自衛隊のディーゼル潜水艦「たつなみ」艦長。階級は二等海佐。昇進に値する能力を持っているが、粗暴な言動が妨げになっている。
海江田とは防衛大学校の同期であり良き競争相手で、後に海江田が「自分に対抗しえる能力を持っている」「自分の予想を裏切ることがある」と認めた唯一の人物。海江田の思考をある程度予測できるらしく、「やまなみ」沈没事故時の海江田の行動に疑問を抱き、組織に内緒で真相究明のため独自に調査を進める。海江田と対峙する事も多かったが、最後には「あいつは友達」と発言した。
操艦技術も確かで、海江田と並びリムパック演習で米空母「カールビンソン」を5回撃沈した実績を持つ。その操艦は米海軍に「大胆」と評され「シーバット」艦長候補として海江田と共にその名が上がったことは、作中でディーゼル潜水艦「たつなみ」の潜行能力や潜行時間の制約を省みない運用による危険な状況を演出する上での伏線となっている。
作中で東京湾の原潜「やまと(シーバット)」護衛時に海自潜水艦初の実戦をおこない、圧倒的な艦の性能の劣勢を感じさせず(東京湾の平均水深は30mで、原潜の性能が最大限発揮できなかったことも大きい)米海軍ロス級原潜5隻中3隻(ハート・フォード、サンタフェなど)を戦闘不能に陥れた。
作中、立場(肩書き)を変えて複数回「やまと」に乗艦した唯一の人物。
竹上登志雄
声 - 阪脩
日本国内閣総理大臣
初登場時は日本民自党所属。最初の頃は「外交オンチ」「本命までの中継ぎ政権」「ボケガミ」などと国内外で酷評されていた。しかし、蔵相時代に米国代表と通訳なしで英国英語で会談していたことがある。そして、「沈黙の艦隊」事件をきっかけとして、首相としてふさわしい力を備えた政治家として成長する。
反対論が強い中で「やまと」と友好条約を結び、「やまと」に浮きドック「サザンクロス」を提供したり、国連決議で「やまと」独立が承認されるまでの間、陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊及び原潜「やまと」の指揮権を国連に委ねるといった大胆な外交策をとる。しかし、それがもとで与野党から批判を受け、総理権限により衆議院を解散して総選挙を行う。その際に日本民自党を離れて自らを党首とする新民自党を結成。総選挙後の首相指名選挙において再選された。
ニコラス・J・ベネット
声 - 上田敏也
アメリカ合衆国の第43代大統領
タカ派(ただし、「シーバット」反乱事件発生前の大統領選挙時には、軍縮を唱えていたと見られるシーンも存在する)でギリシア移民の子孫。「強いアメリカ」を体現する、アメリカの象徴的存在でもあり、「アメリカ大統領は当然、世界に君臨するキングだ」や「(アメリカは)50年後も最も責任のある国だ」という言葉を残す。
当初は「シーバット」の反乱で海江田を早く捕まえ、彼に協力しようとする日本に再占領計画をつきつけて事件の決着をつけたがっていたが、次第に海江田の行動分析に興味をもつようになり、物語が進むにつれて、自身の思いや考えと、大統領として下すべき結論に悩み葛藤する。国連総会では、ついに海江田と直接出会うことになる。海江田の影響を受け、「アメリカは国連の決定を尊重する」と世界に表明し、初めてアメリカ大統領として国連にイニシアチブを預けた。作者のかわぐちは沈黙の艦隊の中で一番好きなキャラクターとしてベネットをあげている。
第3艦隊の壊滅や多くの原潜が撃沈及び大破され、大西洋艦隊の艦が多数戦闘不能になるなど計22万トンの艦艇の損失や350名の死傷者を出している。そのため、副大統領や議会から批判され弾劾も予定されていた。一方、「やまと」と第3艦隊との戦いに際しては「第3艦隊が核で壊滅すれば、日本再占領は行いやすい」とも語っている。

日本政府関係者[編集]

海原大悟
声 - 渡部猛
防衛庁長官
莫大な資産と人脈を有し、「影の総理」と呼ばれる日本政界の黒幕。「シーバット」が逃亡した時は、米ソよりも早く「シーバット」を捕獲させ、日本政府が原子力潜水艦を練習艦として使いこなすことを命令する。やまとの独立国承認を認めず、あくまで日本政府の支配下に置こうとする。様々な形で日本の政界に暗躍するが、最後は息子の渉に引導を渡された。
海原渉
声 - 若本規夫
日本国の官房長官
海原大悟の実子。竹上派のサラブレッド。海原大悟の判断により、「シーバット」計画には不参加であった。天津とは昔からの仲である。やまと問題の処理においては、かなり強硬な姿勢でアメリカと交渉した。政界再編においては竹上の新民自党を結成に参加、外務大臣となる。
天津航一郎
声 - 村山明
日本国外務次官(外務事務次官)。
「やまと」事件において浮きドック「サザンクロス」の発注や、駐日米大使館ハワイ国連安保理で海原と共にアメリカとの交渉を行う。
「シーバット」を環太平洋共同体の布石としていた。外務事務次官になった経緯は影山誠治外務大臣のお声がかりとされる。
海渡一郎
日本民自党幹事長
民自党最大派閥に所属。「やまと」政策を巡って竹上と対立し、竹上の離党及び新民自党結成後、彼に代わって民自党を率いる。
「やまと」との同盟関係を破棄し、アメリカとの関係を修復すべきと主張する徹底した親米保守路線の全面協力策や、衆院選挙後に合従連衡のために金銭をばら撒いた。
竹上再選後は公民クラブなどを吸収合併し、巨大野党となった民自党を率いる。政治家としては「他人の尻拭いばかりしてたために民自党幹事長に就任した」と語っており、「やまと」の処理問題は自分の一世一代の尻拭いであると考えている。
河之内英樹
日本社民党副書記長。
海原とは同期。衆議院解散後、「世界社会主義」を掲げ総選挙に向けて公民クラブ・革産党ら各野党議員を集めて革新連合を結成し、日本独自の社会主義国家を目指す。
総選挙後は大滝の鏡水会との連合で比較第一党派を目指すが、首相指名選挙を目前に海渡の策略により、公民クラブなどの議員を切り崩され少数党派となる。
新民自党に取り込まれることをも良しとした大滝を「公約違反」と叱責し、仕方なく少数で革新連合を率い監視役として野党に徹しようとするも、逆に革新保守連立政権を目指す大滝に叱咤・説得され、指名選挙当日には自分に投票される筈だった票を自身の1票以外全て竹上に纏め上げ見事彼に再選を果たさせる。
その後は革新保守政権のため新民自党・鏡水会と連立。新民自党幹事長の大滝によって河之内の入閣構想が出た。
大滝淳
民自党の派閥である鏡水会の幹事。
後に鏡水会ごと民自党を離党し、政党化した「日本鏡水会」の党首に就任。選挙区は山口3区。
政軍分離・軍備永久放棄・常設国連軍創設を政策として主張。「やまと保険」を提唱し、北極海沖でACNテレビ・クルーと共に海江田と会見し、海江田から「やまと保険」の了承を得る。総選挙後は新民自党に合流し、幹事長に就任。さらに、国連の「沈黙の艦隊実行委員会」委員長に就任した。
影山誠治
声 - 仲木隆司
日本国外務大臣。
天津や海原とともにアメリカの補佐官ターナーとの日米交渉や、ハワイにおける日米首脳会談や東京における日本やまと首脳会談に同席した。
第2次竹上政権において組閣構想に参加していた。
曽根崎登
声 - 田中康郎
日本国防衛庁長官。
シーバット計画に関わった人物の一人で、「シーバット」完成式に参加する。
浜本啓介
声 - 広瀬正志
日本国運輸大臣
日本政府から親善大使として「やまと」に乗艦。海江田の考えを信じ、友好条約締結の準備に乗り出す。衆議院総選挙では竹上と同じく新民自党に入り、見事当選を果たす。選挙区は福岡3区。
倉池栄
日本国大蔵次官(大蔵事務次官)。
イギリスロンドンで大滝と共に「やまと保険」成立のためライズ保険会社との交渉を行う。
永江
公民クラブ幹事長。
社民党、革産党とともに革新連合の一翼を担っていたが、総選挙後民自党に大金を積まれ、河之内に工作を蹴るよう必死に説得されるも切り崩され、公民クラブは民自党への吸収合併を選ぶ。モデルは永末英一

原子力潜水艦「やまと」関係者[編集]

山中栄治
声 - 麦人
「やまと」副長。階級は三等海佐。「やまなみ」の副長でもあり10年間同乗している。
真面目で海江田からの信頼は篤く、操艦能力も深町が認めるほど優秀。
海江田の国連総会参加時は、代わりに「やまと」の指揮を執る。「やまと」沈没時においては「やまと」乗員の中で最後に脱出。脱出後は、ストリンガーの「タービュレント」に助けられた。海江田の負傷後は他の乗組員と共にストリンガーの指揮下に入った。
内海
声 - 稲葉実千葉一伸(VOYAGE3)
「やまと」航海長。階級は三等海佐。「やまなみ」の航海長でもあった。
溝口拓男
声 - 中博史
「やまと」ソナーマン。「やまなみ」のソナーマンでもあった。引眉が特徴。
南波が「自分の次に耳の良い」と認めるライバル同士。海江田が負傷した際には、山中から海江田を見舞うよう命じられニューヨークに上陸。海江田の呼吸音を聞き、「俺の艦長は生きてるんだ」と叫ぶ。

海上自衛隊関係者[編集]

赤垣三郎
声 - 秋元羊介
海上幕僚長。階級は海将。
シーバット計画に関わった人物の一人で、沖縄沖及び東京湾海戦で竹上と共に関わる。その後は天津と共に深町ら「たつなみ」クルーの「やまと」派遣をサポートする。
田所進
声 - 緒方賢一
第2潜水戦隊群司令。階級は海将補。
海江田・深町の防大時代の教官。深町らに「たつなみ」で「やまと」の追跡及び護衛を命じたり、「やまと」のニューヨーク入港の際にニューヨークへの派遣を命じる。
沼田徳治
声 - 加藤治
第2護衛艦隊司令。階級は一等海佐。
旗艦であるはるな型護衛艦はるな」にて自衛隊として初の実戦(沖縄沖及び東京湾海戦)を指揮する。海江田が「アメリカ海軍に対峙して自衛艦隊をフルに運用できる唯一の自衛官」と評するほどの有能な人物。
速水健次
声 - 飛田展男
「たつなみ」副長。階級は三等海佐。
理知的な性格で、深町の右腕として補佐している。深町と対照的に言葉遣いが丁寧語である。
「たつなみ」沈没後は国連特別調停員及びニューヨーク和平特使の一員としてニューヨークへ向かう。
渡瀬吾郎
声 - 塩屋翼
「たつなみ」航海長。階級は三等海佐。
「たつなみ」沈没後は国連特別調停員及びニューヨーク和平特使の一員としてニューヨークへ向かう。
南波栄一
声 - 中村大樹
「たつなみ」ソナーマン。階級は海曹長。海自一のソナーマンを自負している。
「やまなみ」沈没事故の謎を解くため、深町の命令でテープの解析を行う。
「たつなみ」沈没後は国連特別調停員及びニューヨーク和平特使の一員としてニューヨークへ向かう。

アメリカ海軍関係者[編集]

スタイガー
声 - 大塚周夫
アメリカ太平洋軍司令官。階級は大将。シーバット計画の首謀者。
「シーバット(やまと)」脱走に伴い、第3艦隊・第7艦隊を投入して拿捕及び撃沈を図る。
ボールドウィン
アメリカ大西洋艦隊司令。階級は少将
アラン・B・ランシング
声 - 小林清志
第3艦隊司令。階級は少将。
旗艦であるミッドウェイ級通常空母ミッドウェイ」で指揮を執る。沖縄沖海戦では、「やまと」を掩護する日本の海上自衛隊第2護衛艦隊を攻撃し、タイコンデロガ級イージス艦「ヴァリ・フォージ」のハープーンしらね型護衛艦くらま」を撃沈する。その後、あさぎり型護衛艦あさぎり」も損傷させたが、「やまと」のチャフ入りのハープーン・ミサイルで電子機器が狂わされた隙に魚雷攻撃を受けて「ミッドウェイ」を沈められたのを皮切りに、次々に艦艇を失う。
リチャード・ボイス
声 - 小村哲生
ニミッツ級原子力空母カール・ヴィンソン」の艦長で、第7艦隊司令も兼ねる。階級は大佐。感情的な性格の持ち主で、ランシングからは「ヒステリック・ボイス」と呼ばれているが、海江田の発言によると叩き上げの優秀な軍人らしい。
「カール・ヴィンソン」で指揮を執り、「シーバット」の拿捕又は撃沈を謀るが海江田の戦闘国家「やまと」独立宣言に翻弄される。
ジョン・アレキサンダー・ベイツ
声 - 堀内賢雄
シーウルフ級原子力潜水艦「アレキサンダー」艦長。階級は大佐。
米政界の名門ベイツ・ファミリーの養子となったベネズエラ生まれの孤児。自分を受け入れてくれたベイツ・ファミリーと義兄のノーマンに多大な感謝と信頼を寄せており、ノーマンを大統領におさめ、自らは統合参謀本部議長になる夢を描いていた。
オーロラ作戦ではノーマンと連携し、最新鋭艦の能力を駆使して「やまと」を追い込むが、氷塊下での激戦の末、部下の命を最優先にと考え、肉弾戦を回避し降伏する。その勇猛果敢な戦いぶりは、海江田をして「今まで遭遇した中で最強の艦」と言わしめた。
ノーマン・キング・ベイツ
声 - 田中秀幸
シーウルフ級原子力潜水艦「キング」艦長。階級は少将。
ベイツ・ファミリーの長男で、ジョンの義兄。ジョンとの連携プレイで「やまと」を追い詰める。
僚艦「アレキサンダー」の戦術によって格好の位置から「やまと」へ魚雷を発射するが、その動きを読んだ「やまと」の雷撃を受け戦死する。
次期大統領候補の一人と称されたほどの人物。
アレックス・P・ナガブチ
キティーホーク級通常空母ジョン・F・ケネディ」艦長。階級は大佐。
日系アメリカ人で軍人の父を持つ。ネルソンと比べて理知的で聡明。「自分が何者なのか分からなくなった時は仕えるもののために私心を捨てることができる日本の侍精神を思い出すこと」を父から教えられている。ローリング・サンダー作戦で「やまと」に挑むが、「やまと」が戦意を見せなかったため、攻撃を中止する。その後、対潜ヘリ攻撃隊で新たに攻撃を行うが、五ヶ国原潜の登場と「やまと」のニューヨーク港への強行突破を防ぐことはできなかった。
ケリー・J・ネルソン
ニミッツ級原子力空母エイブラハム・リンカーン」艦長。階級は大佐。
攻撃的で頭に血が上りやすい熱血漢でアメリカを象徴する人物の一人。ナイアガラ・フォールズ作戦などで襲いかかるも「やまと」には探信音による戦略で終始翻弄されていた。しかし、ニューヨーク沖海戦における最終判断は、責任者にふさわしい冷静な判断であった。
テレンス・B・カーバー
声 - 筈見純
第3艦隊所属のタイコンデロガ級イージス艦「ヴェラ・ガルフ」艦長。階級は大佐。
沖縄沖海戦で第3艦隊が大きな損害を受ける中、辛抱強く「やまと」の捜索を続け、発見後は「レイク・エリー」「ケープ・セント・ジョージ」と連携して戦闘を行う。海江田に「石の橋も渡らぬ艦長か?」と評されるほど非常に慎重な性格で、「やまと」への攻撃に通常より爆薬量を増した対潜魚雷を使う。魚雷の爆発で巻き上げられた土砂に埋まった「やまと」に、念を入れてとどめを刺そうとするが、その攻撃を脱出に利用されてしまう。また、アスロックを使ったオリジナル戦術で「やまと」を攻撃するも、予想を超えた「やまと」の攻撃に動きを封じられ、敗れる。大破した「ヴェラ・ガルフ」から脱出する描写がなく、生死不明。
デビット・ライアン
声 - 徳丸完
「シーバット(やまと)」オブザーバー。階級は大佐。
「やまと」独立宣言をはじめとする海江田の行動に反感を覚え拘束されるが、海江田達の思想や行動に一貫性とある種の正当性を感じ、米海軍人ながら「やまと」の理解者となる。
自走浮きドック「サザンクロス」沈没の際に「サザンクロス」クルーと共に陸上自衛隊のCH-47で脱出した。その後、ネイサン研究所長とともに、ホワイトハウスを訪れ、ベネットに海江田に対する意見を述べた。
ヘンドリック・ドール
声 - 稲葉実
アメリカ国防総省統合参謀本部議長
北極海海戦及びニューヨーク沖海戦時に作戦の指揮を執る[2]。後に彼も海江田の思想に興味を抱くようになる。モデルは湾岸戦争当時に統合参謀本部議長だったコリン・パウエルと、同じく陸軍大将中央軍司令官だったノーマン・シュワルツコフ[3]

アメリカ政府関係者[編集]

アンディ・リード
副大統領
海江田の超国家原潜艦隊や世界政府の創設に可能性があることを感じ、彼を支持したことで敵視していたベネットと対立する。
ハロルド・D・ベイカー
声 - 中多和宏
国務長官
ベネットの側近としてやまとに関する外交政策をとる。「大統領のマシーン」の一員として初めて紹介された際、名字が「ベイカー」でなく「ベイガー」になっているという誤記があった。
ジャック・ターナー
声 - 松本大
アメリカ大統領特別補佐官。
沖縄沖海戦時の海原らとの日米緊急首脳会談上では汗一つかかない態度を見せる。
眼鏡を着用していることから、海原から「おい、そこのメガネ」と呼ばれた。
リチャード・ローゼンバーグ
声 - 緒方賢一
アメリカ国連大使。元アメリカ合衆国連邦議会上院議員。
国連安保理にて日本側の「やまと」擁護を痛烈に批判する。
アンドリュー・ギル
ニューヨーク市長
海江田のニューヨーク入港の際に尚も攻撃を続けようとする政府及び軍に反旗を翻し、「やまと」との友好同盟締結のためマスコミを通じてアメリカからの市の独立国家化を宣言し、「やまと」擁護を市民に訴える。ナガブチとは旧友。
カール・シュルツ
アメリカ合衆国連邦議会下院議長。
ベネットが「沈黙の艦隊」支持に心変わりするのを察して、これを良しとしない意思を伝える。上下院をまとめて弾劾裁判を予定しようとした。

アメリカ・その他[編集]

リー・ゴールドウェル
軍需産業イースト・ウェスト・ダイナミックス社社長。
ニューヨーク沖海戦での海江田の行動に深い関心と敵対心を抱き、また軍事費を削減したベネットをも敵視する。「やまと」の国連参加では軍備永久放棄実現を恐れ、各国のマスコミやアメリカ政府への圧力を通じて反「やまと」キャンペーンを促して牽制を目論む。軍産複合体代表の一人。
アイザック・ネイサン
ネイサン研究所長で、ベネットの大学の先輩。ライアンと共にホワイトハウスを訪れ、ベネットに海江田の沈黙の艦隊「SSSS(Silent Security Service from the Sea)」構想という完全的核抑止力の素晴らしさを訴え、そして素晴らしいが故に「SSSSはアメリカによって設立されねばならない」と説き、海江田の排除を提案する。
マルス・ベネット
ベネットの息子。野球好きな少年でニューヨーク・ヤンキースのファンだが、「やまと」や海江田に興味を抱き、ベネットから東洋の話=海江田の思想を聞く。そして、ベネットに海江田と会うよう約束させた。
狙撃手(名称不詳)
カメラマンに扮して国連本部内に進入し、演説中の海江田を暗殺しようとしたスナイパー。テレビカメラに偽装したライフルを発砲直後に駆けつけた警備員二人に対し、隙を突いて一人を銃撃して重傷を負わせるが(生死は不明)、残る一人に射殺された。彼の行動が自発的な行動か依頼によるものかは一切不明だが、協力者または依頼者らしき人物が少なくとも一人存在し、過去にも別のターゲットが存在していたことが示唆されている。

イギリス海軍・政府関係者[編集]

クリス・ストリンガー
イギリス海軍トラファルガー級原潜「タービュレント」艦長。階級は大佐。
豪快で率直な人物。イギリス海軍屈指のエリート。各国原潜のなかで最初に「やまと」に理解を示し、リーダー的役割をになった。ニューヨークで「やまと」が沈没した際には「やまと」乗組員を全員救出した。
ジョセフ・ローリィ
イギリス首相
原潜「タービュレント」の「やまと」擁護による沈黙の艦隊結成を承認する。
ジュリアス・ロードン
イギリス大手保険会社ライズ社(モデルはロイズ保険組合)筆頭アンダーライター。
大滝の「やまと保険」に対し、世界中のインフレ発生を理由に反対するが大滝の保険内容と信念に賛同し、受け入れることに。
ゴッドフリー・ローレンス
ライズ保険委員会副会長。
ロードンが発表する大滝の「やまと保険」の内容について常設国連軍誕生とアメリカに代わって「やまと」の存続による加盟国間の新たなる安保体制の誕生に関心を示し、容認。ワシントン・サミット時は「やまと保険」を実行すべくローリィと同行する。

ロシア海軍関係者[編集]

ユーリ・アンドロポフ
ロシア海軍太平洋艦隊司令。
キエフ級航空巡洋艦ミンスク」で指揮を執り、米第3艦隊と共に「やまと」撃沈に出るも「ミンスク」に隠れながらの攻撃により次々と艦艇を失う。
アンドレイ・ロブコフ
ロシア海軍705型潜水艦(アルファ級原潜)「レッド・スコルピオン」艦長。階級は大佐。
貧しい農家の出身の叩き上げでまだ若いが、能力の極めて高い気鋭の軍人。その技量の高さは海江田が前任者のボロジンと比較して「2年前に日本海で遭遇した奴とは違う」と言わせるほど。党に絶対忠誠を誓っている。身長がとても高く、片手でボロジンの首をつかんでその体を持ち上げ、首をへし折り処刑するなど常人離れした怪力の持ち主。愛読書はトルストイ。
フローティング・アンテナを使った戦法で米原潜2艦を衝突させ大破させるも「やまと」には裏をかかれ、敗れる。
イワン・ボロジン
ロボコフの前任の「レッド・スコルピオン」艦長。階級は大佐。
突然「レッド・スコルピオン」の艦長を解任されたことを不満に思っていた。自分に比べて年若いロブコフと、彼を後任の艦長に任命した党を愚弄した結果、ロブコフによって処刑された。2年前に日本海にて、「やまなみ」艦長時代の海江田と対峙したことがある。
ミハイル・セルゲイビッチ
ロシア海軍シエラ級原潜艦長。政治将校で階級は大佐。
「やまと」が「レッド・スコルピオン」との戦いに勝利し、海江田に同盟締結を試みるが拒否され、止む無くロブコフに撃沈を命じる。

ロシア政府関係者[編集]

ミハイル・マレンコフ
声 - 秋元羊介
ロシア連邦共和国大統領。
ロシアの民主化運動の指導者で「やまと」の北極海通過に基づき、ベネットとのホットラインで話し合った結果、テレビを通じた共同声明で北極海に展開中の米(オハイオ級)ソ(タイフーン級)両戦略ミサイル原潜を一時撤退することを発表する。
ユーリ・ゴルシコフ
駐日ロシア大使。
ターナーとの極秘会談で彼から「レッド・スコルピオン」の米原潜攻撃を不問に付すのと同時に「やまと」撃沈の共同作戦を持ちかけられ、引き受ける。
ビクトル・ロザク
ロシア国防議長。
北極海の米ソ戦略ミサイル原潜一時撤退やワシントン・サミットでマレンコフと共に行動する。

フランス海軍・政府関係者[編集]

ジャン・ルオー・メルビル
フランス海軍リュビ級原潜「エムロード」艦長。
各国原潜が「やまと」に向かう中、ただ本艦だけは待機するよう命じた。
ピエール・モルガン
フランス大統領。皮肉屋で鼻炎持ちである。
シャルル・アリダ
フランス外相。
米ソのミサイル原潜撤退の共同声明で海原からフランスを中心とした核軍縮の実現を促され、「やまと」支持で日本の世論が一つに纏まることを条件に引き受ける。ワシントン・サミットではモルガンと同行する。

ドイツ・中国関係者[編集]

ルードヴィヒ・キージンガー
ドイツ連邦共和国大統領
サミットでは日本以外では唯一の非核保有国として出席した。このため、ニューヨーク沖への5ヶ国原潜接近の報がサミットの席にもたらされた際、何が起こったのか理解できなかった。
国連が第2次世界大戦期の連合国が母体になった組織という経緯から、国連が真に公平な国際機関とは考えておらず、各国首脳に対して国連の解体と、真に公平たる「新国連」の誕生の必要性を説いた。
張有為(チャンヨウウェイ)
中華人民共和国国家主席
サミットでは核保有国首脳として、東洋の文化からやまと問題についての見解を語る。
サミットに出席する一方で自国海軍の漢級攻撃型原潜をニューヨーク沖へ派遣する。

報道関係者[編集]

セシル・デミル
アメリカのテレビ局ACN社長。
ボブに海江田の真意を問うべく「やまと」乗艦を命じる。また、海江田の主張する核廃絶・世界政府構想などの可否を確かめるべく、全世界のマスメディアを提携して情報サミットを開催し、世界市民投票を実施する。
作中、マスコミとして型破りな行動を行ったので、モルガンからデミルとデビルをかけて、「情報の時代のデビル」と言われた。
モデルはCNN社長のテッド・ターナー
ボブ・マッケイ
ACNレポーター。
大滝と共に北極圏で、またニューヨークで「やまと」に二度接触する。「やまと」乗艦時に「やまと」国民となって他のクルーらと共に「やまと」を中心としたネットワーク網「情報国家 やまと」を創ろうとする。
モデルはジャーナリストのバーナード・ショー
ルーカス・フォス
ACNレポーター。愛称はルーク。
国連総会で狙撃された海江田への取材クルーのリーダーに選ばれ、マッケイとは別ルートで行動する。海江田の身柄が国連本部から病院に運ばれた後は、大滝を取材車に同乗させて海江田の運ばれたニューヨーク市内の病院へ向かい、マッケイや溝口たちと合流してから海江田の様子を報道する。
室岡
日本のテレビ局NHKプロデューサー。日本の衆議院議員総選挙の投票日を前に、これまでの「党首同士のお茶を濁した対話」の感のあるそれとは異なる、「党首同士のバトルロイヤル」をコンセプトにした党首討論番組を企画して自ら司会を担当をし、番組の最後に「大海原にいてゴムボードで救助を待っている時に10人いる中の一人が感染症になり、やがて全員に感染し死亡することが分かった時、このリーダーならどう行動をとるか」という内容を各参加者に順番を指名せず質問をした。
ウィンストン・サロー
イギリスの老舗王手テレビ局BBC会長。イギリス貴族の生まれで、デミルも一目置くヨーロッパ報道界の権威者。
デミルが試みる「情報のたれ流し」に対して、日本を除いたイギリスを含むサミット参加国各国政府が自国のマスコミに自粛を呼びかける中、デミルからの電話での申し出に対し、「すべてのマスコミが同じ方向を向けば、それはもうマスコミではない」と否定し、イギリス政府の判断に従う自らの決断を伝えた。
デミルや海江田を「やるべきこととやるべきでないことの内、やるべきことしか見えていない」と評している。

国際連合関係者[編集]

ジョージ・アダムス
国連事務総長。作中での任期は残り1年。
ニュージーランド出身の親日家。アメリカをはじめとする常任理事国の拒否権発動などで戦争や紛争への調停が上手くいかず、国際平和の実現が困難な国連の現状を打開しようと、海江田のやまと独立宣言及び国連加盟宣言をサポートする。また、竹上の自衛隊の国連に対する指揮権移譲を高く評価し、竹上の考えが日本の総意となることを望む旨の発言をした。
現在では老獪かつ時に独走的でありながら行動的な面も見られるが、大滝によるとそれは40代以降のことで、それ以前はむしろ理想主義者で情熱的な政治家であったとのこと。
リック・ソーンバーグ
国連事務次官。アダムスの片腕。
アメリカ出身だが、国連の一員という意識の持ち主。日本政府が深町たちをニューヨークへ派遣した当初は、「日本政府の独断」という判断からアダムスに認めるべきではないと言うが、アダムスの言葉を受け判断を変え、アメリカ海兵隊の攻撃ヘリ部隊を手玉にとって国連本部へ到着した深町たちの身柄引き渡しを要求された際は国連憲章を盾に拒否した。
タワンダ・モヨ
ジンバブエ国連大使。海江田が出席した国連総会の議長を務める。冷静に総会を進行し、海江田が狙撃された後にベネットが決議を翌日へ延期することを提案した際にはこれを受け入れ、最終的な決議を翌日へ持ち越した。
シャバール
ネパール国連大使。国連総会で登壇した海江田の発言に対し、ガンジーの非暴力不服従運動を引き合いに出して否定する。その言葉によって、国家を否定する海江田に対し、国家肯定派の国連大使たちによる反論が始まった。

沈黙の艦隊で提示された政治的概念[編集]

作中では、世界平和を達成するために、いくつかの政治的概念が提唱された。

政軍分離[編集]

海江田が東京に上陸し、日本と同盟を結んだ会談上で提唱された概念。政治と軍事を切り離し、軍事を超国家組織に集中しようとする考え。強制力として常設軍を持った超国家組織をつくり、そこで国家間の利害対立を調整し、何らかの不法行為があったときは制裁措置をとる。近代国家は、個人から武器を取り上げ、軍事力を政府に集中することにより国内を統治したが、それを国家と超国家組織に当てはめようとする考えである。当初ベネットは、政軍分離の考えは自分も持っていたが、その主導権はアメリカが持っていなければならないと考えていた。もし政軍分離が達成されたら、自衛隊も違憲ではなくなる。なぜならば、「国権の発動たる」という拘束から初めて解放されるからである。作中では、竹上総理が自衛隊の指揮権を国連に預けると突然表明したことで、その始まりとなる。

なお、海江田は日本と同盟を結ぼうと考えた理由について、日本は政治と宗教を分離した「政教分離」を実現した国家と語り、加えて政教分離が可能ならば、政軍分離もまた可能だと語っている。

やまと保険[編集]

大滝が提唱した概念。やまとが存在し続けることが他国の利益になるような政治的構造を作ることを目的とした保険。イギリス大手保険会社「ライズ」を携わり、日本政府がやまとに保険をかけ、理念に同意した各国政府が保険の引受人となり、国連が保険の受取人とする。軍産複合体のように、戦争が利益を生む構造ではなく、平和が利益を生む構造へシフトさせる。平和が経済的な利益となれば、軍事バランスとも条約とも無関係に平和関係が成立するという、新しい安全保障体制。大滝曰く「平和を金で買う」保険。国連の沈黙の艦隊実行委員長になった時に、世界市民一人一人に1ドルからの株主を募り、配当として世界の核兵器廃絶と軍備永久放棄を目指す株式会社を設立することを提唱する。

世界政府[編集]

常設軍を持った超国家組織としての世界政府。将来的に既存のすべての国家は解体され、世界政府の一県や一州となる。現在の国連をその母体とする。政軍分離を達成するために必ず存在しなくてはならない組織である。世界政府が作られたら世界から戦争はなくなる。なぜならば、それはもはや内乱や反乱に過ぎないからである。リー・ゴールドウェルはこの考えを詭弁だと笑ったが、ベネットはそれが政治の戦争に対する戦い方だと述べている。

沈黙の艦隊計画[編集]

別名SSSS(Silent Security Service from the Sea)。安全保障体制は強制力を持った世界政府を作れば確立することができるが、それだけでは核を廃絶することはできない。核兵器を持った世界の戦略原潜を国家から独立させ、すべての国に平等に核報復力を持たせる計画である。そうすれば地上戦力として核を所有する必要性はなくなり、小国も新たに核開発を始めることはなくなる。アイザック・ネイサンは、これを心理的核抑止と呼び、相互確証破壊のように過剰に核戦力を蓄積するのではなく、SSSSには核軍縮を推し進める効果があると指摘している。しかし、これはシビリアンコントロールに反するため、ベネットは拒否し、逆に核管理の経験が豊富なアメリカに核を集中するように提案している。やまとが当初独立宣言を行ったのも、核戦力を国家から解放、独立させるためである。

海江田はジョージ・アダムスからSSSSをアメリカに任せるのはどうかと尋ねられた際、アメリカを含む陸上の国家ではこれが不可能としている。その理由はもしある国が核兵器を使い、アメリカがこれに対して制裁の核を打ち込めば、今度はアメリカに報復の核が降り注ぐ。当然このような事態をアメリカ国民は許容せず、結果実際に核が使われてもアメリカが制裁を行うのは事実上不可能となってしまう。

また、海江田はSSSSを自分達が実施する大義名分として、「沈黙の艦隊とは、それ自体が核兵器を用いても、再報復する価値の無い存在」とも語っている。劇中ではアメリカが広島や長崎に核を投下した件について触れられ、ベネットが「やまと」に核ミサイルを発射させようとする狙いについて「これでアメリカは、世界唯一の実戦で核兵器を使った国家という汚名から解き放たれる」と言われており、沈黙の艦隊はこうした束縛の無い存在である根拠となっている。

全てに制約がなく、ありのままに公開されるマスコミ[編集]

パニックを引き起こさないように制限されるジャーナリズムは、一度も全てがありのままに公開されることはなかったとされる。しかし、戦争を生中継したり、首脳のやり取りがありのままに公開されるジャーナリズムこそ真のマスコミであるという考え方。

軍事的に不自然な点[編集]

軍事評論家の岡部いさくは雑誌『GON!』のなかで、「エンターテインメントではあるが」と前置きした上で、以下のような不自然な点を挙げている。

  • なぜか自衛隊がM16を持っている。
  • 少しでも船殻に傷がついたらまずいのに、海江田自ら「やまと」とナイフで刻んでいる。
  • 潜水艦はアップトリム90はできない(する戦術的意味がないから)。
  • 潜水艦は空は飛べない。作中で高度を読み上げているシーンがあるが、どうやって測っているのか不思議。
「やまと」の船体形状については、戦略原潜「デルタIII」級に似ているので高速が出せそうにない、という指摘が、防衛庁広報誌連載を単行本化したオフィシャル分析本『「沈黙の艦隊」解体新書』(講談社)にて既にされている。また、アップトリム90度の件は同書の座談会で現役海自潜水艦乗員が同じく指摘している。一方、潜水艦である「やまと」が水上にジャンプする描写は、荒唐無稽ではあるが、潜水艦の回避運動の将来像として研究の余地はあるとしている[4]

また、『沈黙の艦隊 解体新書』では「実際の米国海軍兵力は作中以上に強大であり、作中程度で米国艦隊が壊滅するようなことは現実的ではない」としている。

他に、作品初期に「音響魚雷」というものが登場する。通常は「音響による誘導魚雷」を意味するはずであるが、作中では「大音響を発する魚雷(効果として敵のソナーマンの耳を一時的に無力化できるらしい)」の意味で使われている。このような魚雷は実在しない。作品中盤からは「音響魚雷」という用語は登場しなくなった(本来の意味での「音響魚雷」は頻繁に登場する)。

アニメ[編集]

当初、TBS系列の2時間枠の特番としてテレビ放映する予定でヴェラ・ガルフとの戦いまでがサンライズ制作でアニメ化された。しかし、諸般の理由でテレビ放映は中止され、1995年12月18日にビデオでリリースされた。その後、1996年3月3日にTBS系列の深夜枠でテレビ放映された。1997年1998年にかけて続編のOVAが2本追加制作され、北極海海戦まで描かれている(VOYAGE2、VOYAGE3)。冷戦終結など国際情勢の変化に合わせて内容は一部変更されている。

スタッフ[編集]

主題歌[編集]

  • TV版主題歌
「夢の渚 〜The Silent Service〜」
作詞 - 来生えつこ / 作曲 - 来生たかお / 編曲 - 萩田光雄 / 歌 - 来生たかお
  • OVA版(VOYAGE2、VOYAGE3)主題歌
「夢の渚 〜The Silent Service〜」
作詞 - 来生えつこ / 作曲 - 来生たかお / 編曲 - 坂本洋 / 歌 - 笠原弘子

ラジオドラマ[編集]

ニッポン放送などで単発ながらラジオドラマ化されている。

脚注[編集]

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  1. ^ その後の生死については語られておらず、また『臓器の移植に関する法律』改正により、海江田の生死に関する解釈が、連載当時とは認識の変化が見られる可能性もある。
  2. ^ 実際の統合参謀本部議長には軍事作戦に対する指揮権は無く、実質的には文民である大統領や国防長官が握っており、軍人である統合参謀本部議長は彼らに助言するためのオブザーバーにすぎない。
  3. ^ コミック23巻あとがきより。
  4. ^ アメリカ映画『レッド・オクトーバーを追え!』では同様の方法で魚雷を回避している。回避したのは本作に登場するロサンゼルス級原子力潜水艦「ダラス」である。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]