寄生獣
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『寄生獣』(きせいじゅう)は、岩明均によるSF漫画作品。講談社・モーニングオープン増刊にF号(1988年)からH号(1989年)、月刊アフタヌーンに1990年1月号から1995年2月号にかけて連載された。
アフタヌーンKCより全10巻のコミックが発行され、累計部数は1000万部となった[1]。2003年には完全版全8巻がアフタヌーンKCDXで新しく発売されている。1993年第17回講談社漫画賞一般部門受賞、1996年第27回星雲賞コミック部門受賞。
目次 |
[編集] 概要
謎の寄生生物と共生することになった、平凡な高校生の数奇な運命を描く。
物語の発端となる異変は全世界で起こり、人間の頭に寄生して人間を食べる『寄生生物』側、最初は捕食されるがままであったが後に反撃に転ずる『人間』側、そしてその中間者として存在する『新一とミギー』側という三者の構図が成立するが、話の焦点は日本の一高校生である新一に置かれる。
[編集] 評価
早稲田大学教授・文芸評論家の加藤典洋は「文学を含め、戦後のベストテンに入る」としている。また「進路選択に迷ったとき、あるいは大学の授業がつまらないと感じたとき、異性にふられて悲しいときに読んでみることを薦める」としている[2]。
評論家・哲学者の鶴見俊輔はこの作品を「人生、2度目の衝撃でした」[1]、「生涯に読んだもっともおもしろい本のひとつ」と評しており、夕食後読み始めて全巻を読了したときには夜が明けていたという[3]。竹田青嗣も当作品を薦められた際に徹夜したが、その結果喀血し、結核の疑いで約一ヶ月病臥した。
心理学研究家の山竹伸二は書評”親殺しの文学”において「誰かが救うのではなく、自分自身で救う」という、外側からの救出ではない内側からの自己救出の物語として、村上春樹の『海辺のカフカ』と共に『寄生獣』を挙げている[4]。
[編集] あらすじ
ある日、空から多数の正体不明の生物が飛来してきた。その生物は人間の頭に寄生して全身を支配し、他の人間を捕食するという性質を持っていた。寄生後も見た目は人間そのものであった彼ら「パラサイト」は、高い学習能力から急速に知識や言葉を獲得し、人間社会に紛れ込んでいった。
平凡な高校生である泉新一はその日、眠り込んでいる間に一匹のパラサイトの襲撃を受ける。偶然ヘッドフォンをしていた幸運もあり、間一髪で脳の乗っ取りは免れたものの、パラサイトは新一の右腕に寄生してしまう。右手にちなんで「ミギー」と自ら名乗るパラサイトと人間の奇妙な共生生活の幕開けである。パラサイトによるものと思しき事件が頻発するにつれて、新一は真実を知る者としての責任を感じるようになる。しかし、新一と自らの安全の確保にしか興味の無いミギーは、どちらにも与する気はなかった。
パラサイトらにより世界中でミンチ殺人事件が頻発し、メディアが注目し始めた頃、彼が通う高校に教師としてパラサイト「田宮良子」が赴任してくる。彼女はパラサイトの仲間「A」と共に、新一を観察すべくやって来たことを話した上で、戦う事はお互いにとって有益でないと判断し、その場は引き下がった。しかし短絡な「A」は人間の脳が残っている新一を敵と判断し、後日学校を襲撃した。騒ぎの中「A」を倒した新一だったが、彼とミギーの在り方、そして「田宮良子」との遭遇がさらなる波乱を招くことになる。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。免責事項もお読みください。
[編集] 主要登場人物
[編集] 人間
- 泉 新一(いずみ しんいち)
- 本作の主人公。ひ弱で真面目、ごく平凡な高校生であったが、右手に宿ったパラサイト、「ミギー」により数奇な運命を辿ることになる。家族はフリーのルポライターの父・一之と、専業主婦の母・信子。変化(詳細は後述))後は髪型をオールバックにしていた(後に元の髪型に落ち着く)。
- ミギーとの共生は、パラサイトを探知する能力と同時に探知される役目も果たし、このためもあって彼は人間と寄生生物との中間者としてパラサイトに関する一連の事件に巻き込まれる羽目になる。また自身の安全のみを考えるミギーの意向に逆らうわけにもいかず、家族や親しい友人に己の境遇を明かすことのできないジレンマを抱え、物語の終盤までそれに苦しむ事になった。物語の中でミギーとの出会い、学友の虐殺など、数々の悲劇や救いの中で次第に命に対する価値観や死生観が変化し、人間として成長していく。
- 村野 里美(むらの さとみ)
- 新一の同級生で、ガールフレンド。性格は大人しく、控えめだが、物語が進み新一と付き合っていく中で徐々にたくましさを得た。正体を現した島田秀雄が目の前で多くの同級生達を惨殺したのを目の当たりにし、恐怖で身動きできなくなっているところを超人的な能力を身につけた新一に救出されている。ミギーが寄生したことによる新一の心理や行動の変化を敏感に察知し、[5]当初は彼の急な変貌を理解できず悩んだりもしたが、物語の最後まで彼を信じ続けた。新一の戦いが終わった一年後には、浪人した新一より一足先に大学生となっている。
- 加奈(かな)
- 新一の隣町に住む北高の女生徒、いわゆるスケバン。登場時には光夫と付き合っていたが、新一の目の中に人間以外のモノを感じ、徐々に新一に興味を抱くようになる。パラサイト同士が存在を確認できる「信号」を感知する特殊な能力を持っていたが、当人にその能力の自覚は無かった。新一に宿るミギーへの反応を、新一との「運命の赤い糸(恋愛感情)」と思い込むようになり、自分の想いを新一に伝えたい一心から、やがて微弱ながらパラサイトと同じ「信号」を発する事ができるようになってしまう。そのことについて説明するため彼女の住む町を訪れた新一には「家から出るな」と念を押されたが出歩いてしまい、信号を新一のものと思い込み他パラサイトの捕食現場に遭遇。その攻撃で致命傷を負い、一足違いで駆けつけた新一の腕の中で息を引き取る。
- 光夫(みつお)
- 「自称」加奈の彼氏。北高の生徒で体が大きく喧嘩も強い。新一たちの通う西高とよく喧嘩をしていた。はじめは新一を圧倒していたが(ミギーの比較によると当時の新一の戦闘力が10なら彼は18)、新一の変化後はまるで歯が立たなくなる。加奈が新一に心変わりしていくのに苛立ち、新一に嫉妬をぶつけていた。自分の知らないところで加奈が殺され、葬儀の席で号泣する。
- 宇田 守(うだ まもる)
- 伊豆のホテルの従業員。離婚を原因に飛び降り自殺を図ろうとしていたところにパラサイトの襲撃を受ける。驚いた拍子に崖から転落してしまったものの、寄生を試みたパラサイトが、水中における母体の生命維持に努めた為に命を繋ぐ。そのため辛うじて脳は寄生されず、鼻の下から胸(肺などの呼吸器系統)までが寄生された。母を乗っ取ったパラサイトを追って伊豆を訪れた新一と知り合い、その後も同じ境遇(脳を乗っ取られずにパラサイトと共存している寄生主)を分かち合える唯一の友人として連絡を取り合っている。涙もろく温和な性格で、自身のパラサイトには英語で「顎」という意味合いで「ジョー」と名づけている。生活環境の違いからか新一と違い、他のパラサイトとの遭遇経験がなかった。「泉信子」と初めて戦闘になる。
- 泉 信子(いずみ のぶこ)
- 新一の母。夫である泉一之曰く「お嬢様育ち」らしく、臆病で泣き虫な面もあるが、新一を思う気持ちだけは誰よりも強く、新一が小さいころ大やけどを負いそうになるところを庇い、自らが手にやけどを負ってしまう(この記憶のため新一はその後、特に反抗期もなく育った)。しかし家事は上手だったようで、ミギーは「君の母親の作る食事はいつも栄養のバランスが取れていた」と評価している。夫婦水入らずで伊豆に旅行した際、人間部分が拒絶反応を起こし別の肉体を求めていたパラサイトに一瞬で斬首され、首から下を乗っ取られる。
- パラサイト「信子」はその時に居合わせた一之を始末しようとするが一之は崖から転落。一之の死を確認するため泉家宅へ行き、新一と遭遇する。「母がパラサイトに寄生された」という現実を拒絶している新一の胸部を刺し貫き、瀕死の重傷を負わせる。ミギーによる急場の治療措置により新一は一命をとりとめるが、この事が新一達の心身面変化へのきっかけを作った。
- 母の仇をとろうと追ってきた新一と対決するが、最後はジョーの奇襲により倒され、信子の首無し死体は海に消えた。
- 泉 一之(いずみ かずゆき)
- 新一の父。フリーのルポライター。新一の右手がパラサイトであることには気付いていない。目の前で妻がパラサイトに乗っ取られ、自身も負傷させられる。自分の遭遇した事件について警察から事情聴取を受けた時、パラサイトの存在を世に知らしめることを望むが聞き入れられなかった。
- 平間(ひらま)
- パラサイト対策の特命捜査を指揮するベテラン刑事で初登場時の階級は警部補、物語の途中で警部に昇進する。
- 分不相応な事件に首を突っ込んだ挙句、家族をパラサイトに殺され落ち込んでいる倉森を諭し、パラサイトに関するレポートを書かせた。パラサイトは単なる猛獣ではないとし、実際に関わりをもった人間の生の声を聞いてみることを重要視したところからその手腕が見受けられる。また、射撃の腕前も中々立つようである。
- パラサイト関連事件によく遭遇する新一に対し「何かある」と感じており、倉森を殺害して誘拐された子供を奪い返した直後の田村玲子を尋問・射殺した後、東福山市役所でのパラサイト殲滅作戦(以下、市役所戦)における「外環(包囲部隊)」の指揮官となった際には、パラサイト駆除のため新一に助言を請い、またその現場に新一を呼び出した。作戦終了時に屋上から現れた後藤を銃撃するが全く通用せず、後藤と会話をしていた新一を見て何かあるという気持ちを更に強めた。そして新一に対し「本当に(特に後藤について)何も知らなかったのか、53人も死ななくて済んだのではないか」と問い詰めている[6]。
- 裕子(ゆうこ)
- 新一の通う高校の美術部員で、島田秀雄の同級生。兄は犯人の似顔絵描きをする警官で、パラサイト殺人に関する泉一之への事情聴取に同席していた。島田の無表情さに興味を抱いて観察している内に、島田がパラサイトである事を知ってしまう。その事実に戦慄し思い悩んだ末、島田に殺人をやめるよう説得を試みるが逆に襲い掛かられ、その時護身用に準備していた強酸のビンを投げつけた事が、結果的に高校大量殺戮事件の引き金となってしまう(他の事件の犠牲者と比較すると、パラサイトに対する観察及び対策としては無力な一個人の取れる限界ではあった)。
- 由井(ゆい)
- 島田秀雄の遺体を解剖した生物学者。警察機関の人間というよりは大学・民間の研究員だと思われる。
- 根っからの学者肌で、警察でのパラサイト対策会議においては持論を展開して脱線しそうになり公安の滝沢に止められる。
- パラサイト細胞を「考える筋肉」と形容し、パラサイトを見分ける方法を発見した。
- 広川 剛志(ひろかわ たけし)
- パラサイト一味のボス。地球を汚し他の生物を圧迫する「人間」を憎み、その思想に興味を持った田村玲子が仲間に引き入れた(ただし後藤のセリフのみで、作中で経緯の描写はされていない)。パラサイトの食事を安定供給(広川の目的としては人口抑制)するための組織を結成、その活動の一環として東福山市長選に出馬し当選を果たす。当選後は市長の立場を利用し、組織的にパラサイトの「食堂」の管理を行うことになる。パラサイトとしては飛び抜けた思想と「政治」という高度で複雑なシステムを扱う広川に対してミギーは驚嘆を隠せなかったが、その正体は実は寄生されていない普通の人間だった。市役所戦では「寄生獣」の自論を述べたのち、自衛隊によって射殺される。その口ぶりは完全にパラサイトの側に立った、人間を「他者」として糾弾するものであった。
- 倉森(くらもり)
- 興信所の調査員。シャーロック・ホームズに憧れてこの職を選んだ。妻ひとり子ひとりのさえない父親であったが、田村玲子に新一の調査を依頼されたことを元凶に、その運命を大きく狂わされる。新一たちにこれまでの事情を聞かされ、深入りしないよう警告されたが、逆に田村玲子にも興味を示して探りを入れたため、広川一味に危険視されて、自身は偶然難を逃れたが代わりに妻と娘を殺害される。その復讐を果たそうとして田村玲子の子供を誘拐し、公園の高台から下の道に投げ落とそうとするが、阻止しようとする田村玲子に殺された(実際に子供を殺すつもりがあったのかは不明である)。平間に(一部は伏せながらも)新一から得たパラサイト・広川一味の情報を提供し、これは後のパラサイト大量駆逐作戦へと繋がった(倉森レポート)。
- また、調査報告時の彼の慌てふためいた滑稽な動作が田村玲子に「笑い」の感情を芽生えさせた。母性本能を自覚させる契機となったのも倉森の復讐行動であった。
- 山岸(やまぎし)
- 陸上自衛隊二佐。市役所戦における「内環(掃討部隊)」の指揮官。パラサイト判別のために市役所中の人間を1階ホールに集めた際、指示に反して他階へ移動した広川市長以下パラサイト一味を駆逐すべく、一部隊を率いて追討する。部下の死を目の当たりにしたり、自らただの人間を射殺しても顔色一つ変えない人物。そしてほぼ全てのパラサイトを殲滅したが、最後に残った後藤ただ一匹に自分を含め追討部隊を全滅させられた。死の間際、武器の選択について新一の言を思い出し後悔する。
- 浦上(うらがみ)
- 人間を惨殺する事に快感を覚える殺人鬼。多数の犯行によって指名手配・逮捕されており、死刑判決を免れない身。
- 人間を使って「遊んだ」ため、パラサイトを見ただけで判別する事ができる(加奈のように信号を送受するような力ではないため、狙われてはいない)。パラサイトについては「結局自分と同じこと(虐殺)をやっているだけ」として特に興味を示していなかったが、その能力を見込まれ収監中の身ながら捜査活動(同じ能力の保有者の判別等)に利用される。しかし、市役所戦に駆り出された際に後藤の出現による混乱に乗じ、監視役を殺害して逃走する。
- その後、これ以上逃げきれないと観念し、里美を人質にとって「混ざっている」として興味を抱いていた新一と接触を図る。衝動を抑えて生きている現代の人間は異常であり、自分こそが(本能に沿って生きる)正しい人間の姿だと思っており、普通の人間とは違う新一に意見を求めた。しかし里美に「あんたこそ寄生獣以上のバケモン」と言われた事で標的を彼女に切り替えた時に、ナイフを里美の首に当てた光景を見た新一が瞬間的に攻撃に向かってきたため、ビルの屋上から彼女を突き落とそうとするが、最後は新一のパンチによる一撃で顎部を砕かれた。
- 美津代(みつよ)
- 田舎に住む老婆。街で水商売をしていたが、夫の要望で田舎に移り住み、夫の死後は一人暮らし。住んでいる村には新一が訪れる前後から産業廃棄物が不法投棄され、問題になっていた。後藤との戦いに敗れた上にミギーを失い負傷して逃亡中の新一を数日匿った。口は悪いが思いやりのある優しい性格で、半ば死に急ぐような態度の新一を懇々と諭した。彼女から借りた鉈を手に、新一は後藤との最後の戦いに臨み、その間は夫の遺影に新一の無事を祈っていた。返却されていた鉈を見て、新一の勝利と無事を知る。
[編集] パラサイト
- ミギー
- 新一の右腕にとりついたパラサイト(本来は鼻孔から新一の身体に侵入し、脳を奪おうとするが失敗。その後右腕から侵入を図るが結果的に失敗)。好奇心旺盛で読書家。宿主の身体から直接養分を摂取しているため独自に捕食活動を行う必要はないが、その分だけ新一が大食漢になっている。新一とは通常、言語により会話をするが、夢の中で数回及び最終回のラストシーンにて、「有線」と称する意識の疎通も行っている。
- 後に自己犠牲とも取れる行動を起こすが、寄生当初は他のパラサイトと同じく感情に乏しく、宿主と自分以外の生死には極めて冷淡かつ淡白で、人間を盾に取る作戦を立てる等、人間社会の常識に外れる思考から、新一との間には大きな乖離があった。共存関係にある新一に対しては食事や健康を気遣い、新一の置かれている状況や精神状態に応じて考えを変更するなど柔軟な思考も持ち、一時の感情や自己満足に流されて行動しようとする新一を諌める事もあった。そのやり取りの中で徐々に感情に近いものを理解するようになっていき、変化(詳細は後述)を経て、互いに信頼し合えるようになる。9巻のラスト、後藤との戦いに負け、死を予感した際には「きみの脳を奪わなかったお陰で、友だちとして色々な楽しい思い出を作れた」と回想するなど、この頃には新一に対して友情めいた感情を抱き、また最終話には人間を心に余裕(ヒマ)のある生物だと賞賛するなど価値観に変化が生じている。
- 宇田に「きれいな言葉遣いをしている」と評されるが、これについて新一は、図鑑など主に本で言語を学んだ結果ではないかと推察している。
- 右腕の主導権は基本的にミギーが持つが、その任意により「普通の右腕」として新一が動かすことも可能であり、この権利を「手動権」と称する。
- 後藤に吸収された際に、眠っている間も情報が頭を駆け抜け、一度に複数の思考ができるようになる。そして、持ち前の好奇心からその「別世界」へと旅立つ事を決意し、新一に一方的に別れを告げた上で無期限の「眠り」についた。だがその後、物語の最後で里美がビルから転落死しかけた時、新一に代わって彼女を救ったかのような描写があり、二人の繋がりが完全に切れた訳ではない事を示唆している。
- 田宮 良子(たみや りょうこ)→田村 玲子(たむら れいこ)
- パラサイトの中でも特に高い知能を持つ個体。それがために頭部を乗っ取った「田宮良子」の名前と社会的立場をそのまま受け継いで、新一達の通う高校の新任数学教師として現れた。「A」襲撃事件後に未婚の母であることが発覚した際、身分を捨てて姿をくらまし(同僚の教師達からそのことの追求を受けた為で人間の倫理観までは理解していなかった)、再登場時には名前を「田村玲子」と変えていた。
- パラサイトの生殖能力を確認するために、「A」とセックスして子供を妊娠したり、新一とミギーを「貴重なサンプル」として観察を続けたり、最強のパラサイト集合体である後藤を作ったりと、研究者的な探究心をみせる。緻密な戦術と多彩な攻撃形態による高い戦闘能力を持ち、それは後藤にも「良い戦いができそうな相手」と言わしめるほどだった。通常一匹のパラサイトは1パターンの攻撃形態しか使えないが、田村玲子は2パターン以上の攻撃形態を同時に使えるようである。
- 徐々に「自分達は何のために生まれてきたのか?」ということを考えるようになり、その追究の一環として「A」との間にもうけた子供を出産、育て始める(子供は普通の人間である)。広川剛志に興味を覚え、彼が提唱したパラサイト組織の設立のために協力するが、本人としてはパラサイトが生まれた目的の追求が第一であり、設立後の組織の目的にはあまり協力的ではなく、傍観者的立場を取っていた。「田宮良子」の母に会った際、特別な能力もない人間に正体を見破られたことから「何故だ」と疑問を持ち、やがて人間のように「笑う」という感情表現を身につけていく。
- 倉森に子供を持ち去られたために指定された公園に赴き、彼を殺害。直後に新一と接触した所を平間達に目撃され銃撃を受けるが、その際に人間で言う母性が目覚めたのか、赤ん坊を身を挺して守るというパラサイトとしてはあり得ない行動に出る。その行動は新一に大きな影響を与え、彼の「胸の穴」を塞ぐ事となった。
- A
- 田村玲子(当時は田宮良子)が新一に紹介したパラサイト。特に名前を持たず、田宮良子が便宜的に「A」と呼んだ。新一の存在に強い危機感を覚え、彼の通う高校に単身乗り込む。新一とミギーの連携プレーにより返り討ちにあって瀕死の状態になり、田宮良子の体に同居しようとしたが、逆に罠にかかり爆死。この時点では人間側に情報は渡らなかった。
- その行動からミギーに「楽天的で行きあたりばったりなヤツだ」と評価される。
- ジョー
- 宇田に寄生するパラサイト。寄生した際、海へと転落した母体(=宇田)の生命を救う事を優先した結果、脳を奪うことに失敗し、現在は顔下半分から胸部にかけて寄生している。ミギー同様、宿主の身体から直接養分を摂取しているため、独自の捕食活動を必要としない。言葉を発する時は宇田から口の主導権を奪う形でしゃべり出す事がある。当初は宇田から「パラサイト」と呼ばれていたが、後に世間でその呼称が一般化したことから「ジョー(下顎)」と名づけられる。テレビドラマや映画が好きで、その影響で読書家のミギーに比べ言葉遣いはかなりくだけており、エピローグではアメリカン・コメディの翻訳調セリフ回しに似せた表現を披露するなど、作中他のパラサイトにはあまり見られないユーモアもある。だが性格は他のパラサイトと同じように極めて冷静で、泉信子の体を乗っ取ったパラサイトと戦った際には正確に状況を分析し、そのパラサイトを殺す事に成功した。母体である宇田の身体能力が低い上に、寄生箇所が箇所なだけに戦闘時は呼吸が大きく制限され、また宇田の頭や首に掛かる負担が大きすぎる為、スタミナ切れを起こしやすい。しかし、母体の重要な臓器の位置を直接ずらして守ることができるという、彼ならではの利点もある。
- 島田 秀雄(しまだ ひでお)
- 新一を観察するために田村玲子が高校に送り込んだパラサイト。「人間と同じ食事を摂り、パラサイトと人間との共存を目指している」などと語り(しかしこれは嘘で、実際には夜ごとにナンパした女を食べていた)、新一と明確に敵対せず接近を目論んだ。「体の操作が上達する」という理由でスポーツを好む。「A」などとは違い(表面上は)理性的であるため、ミギーからは「話せば分かるタイプ」と分類された。
- 後に正体を見破った同級生・裕子が突発的に投げた瓶詰めの強酸を浴びて細胞統制が錯乱した状態に陥り(パラサイトの性質を参照)、校内で暴れながら生徒・教師・警官の計18名を殺害した。最後は屋上に出たところを、新一の身体能力とミギーの変化させた右腕による石の投擲で胸部を破壊されて絶命する。その死体は専門機関の手に渡り、日本における初めてのパラサイトのサンプルとなった。
- 草野(くさの)
- 組織の幹部的役割を持つとみられるパラサイト。邪魔者は手段を問わずに即刻排除するという強引で性急な考え方の持ち主。組織にとって障害となった新一と倉森の抹殺を企てたものの、その実行者が後先を考えずに倉森の家族のみを殺害し、本来の目的を果たすこと自体には失敗したという報告を受けた際には、まるで人間のように怒りの感情を発露した。彼らの無謀な行動を咎めた田村玲子を危険視し仲間と共に抹殺しようとしたが、仲間共々返り討ちにあった。
- 後藤(ごとう)
- 田村玲子が作り上げた生物。通常は人間一人の身体に一匹のパラサイトが宿るのに対し、彼の場合は一体に五匹(後にミギーを含め六匹)のパラサイトが宿っている。
- 五匹のパラサイトのうち一匹が通常のパラサイト同様頭部に寄生しており、「統率者」として他のパラサイトを自在に操っている(その際、頭部は全身の制御に専念しなければならないため、自らが変形・攻撃等をしている余裕は無い)。後藤というのは、その統率者としての一匹のパラサイトを指す場合もあり、これは別の統率者である三木(後述)と頭部役を交代する事もある。運動性がいまひとつの三木とは違い、一瞬にして体の他のパラサイトを統率する事ができる。
- 頭部になれるのは後藤と三木の二匹で、他の四匹を完全に統率できるのは後藤だけである。これについて後藤自身は「できるようになったのはつい最近」と述べており、非常に難しい行為のようである[7]。また、「体の操縦」の訓練のためにピアノ(イラストから察すると、かなりの難曲とされるショパンの木枯らし)を弾いている描写もある。
- 母体である人体の大半がパラサイトに置き換わっているために、かなりの自由度でその姿を変える事ができる。体はパラサイトの鎧(作中での運用を見るとより柔軟な生物装甲というべきだが)で守られており、走行しているトラック同士の交差による激突の衝撃にも耐え、ショットガンの直撃を複数受けるなどしても基本的にダメージを受けない。ただ、ミギーの指摘によると、全身くまなくパラサイトの鎧で固めるとかえって動きが鈍くなる為、体のどこかに鎧の隙間が存在するはずであり、事実市役所戦ではわき腹にある装甲の隙間に二発被弾している。この事が、最後の戦いで致命的な敗因に繋がる事となる(後述)。
- 極めて高い戦闘能力を有しており、市役所戦では前述の防御力に加えて廊下や壁を利用した高速移動や全身に浴びた散弾銃の弾を指先に集めて撃ち返す技術を用い、自衛隊の一部隊を単身で壊滅状態に追いやった。この戦いで装甲を斜めに構えて弾丸を受け流す事でダメージを軽減させたり、相手の手元の動きから次弾の発射を予測して回避するといった芸当も披露しており、高い戦闘センスと論理的かつ冷静な思考力をも持ち合わせている事がうかがえる。また、過去には暴力団事務所での実験的殺戮(白昼堂々玄関から侵入、掃討を始めてからの自分の受けた攻撃をカウント、殺戮後に通行人と即座に入れ替わり逃亡)をするなど、島田以上に戦闘的な「練習」も行っている。
- 市役所戦では広川を初めとする多くの仲間を失うも、前述の通り単身で戦局をひっくり返し、「戦いこそが自分の存在意義である」と自覚するようになる。その後は純粋な殺戮本能(ミギー曰く「脳を奪わなかった私にはない怒り」)に従って殺し損ねた新一とミギーの殺害を図り、2人の予想外の作戦に追い詰められながらも勝利、ミギーを取り込んだ。その後は完全に人間の姿を捨て、化け物となって山中で殺戮を繰り返していた。新一との最後の戦いでも終始圧倒的な実力差を見せつけたが、市役所戦で後藤の脇腹に血が付いていた事を思い出した新一が、一か八かで山中に不法投棄されていた猛毒の産業廃棄物が付着した鉄棒を脇腹(プロテクターの隙間)に打ち込んだ事で形勢が逆転。その毒素によって他のパラサイトがパニックを起こしたために統制がとれなくなり、その混乱に乗じて新一の元に戻ったミギーによって全身をバラバラに引きちぎられた。それでも何とか存命しており、必死に招集をかけて元の姿に戻ろうとしていたが、最後は新一の手で剥き出しになった内臓を破壊され死亡した(ミギーは「一度は肉体を共有した同種を殺すのは人間で言う殺人と同じだ」として、手を下すのを止めた)。
- 三木(みき)
- 通常は後藤の右腕部を務めるパラサイト。その名前は「右手」→「みぎ」に由来する。メインの統率者である後藤(の頭部)に代わって頭部(統率者)をこなすことが可能だが(その際はメイン統率者の後藤が代わって右腕部を務める)、全身を完全に統一制御することはできず、そのため運動性はいまひとつである。無駄を嫌うパラサイトの中では珍しく饒舌でお調子者的な性格をしており、人間の「表情」を意識して真似ようとする遊び心も持つ。そのため、一見すると他のパラサイトと違って陽気で表情豊かに見えるが、実際には人間としての感情を身につけているわけでなく、微妙な機微を察することが出来ずに作った表情は大げさかつ場違いとなる事が多い。その違和感は人間とパラサイトの間の本質的な違いに通じている。
- 新一・ミギーへの刺客として後藤が推挙されたところに自ら志願し、彼らの元へ赴く。刃物化した両腕による攻撃を繰り出し、新一たちに脅威を感じさせたが、戦っていくうちに徐々に露呈した制御力不足という弱点を突かれて敗北、後藤と交代する。以降は作中の描写内では「三木」として現れることはなかった。
[編集] パラサイトとは
パラサイトには細かい設定やルール付けがなされており、それらが複雑に絡み合っている。なお「パラサイト」という名称は人類が呼称した名称であり、この生命体の自称というわけではない。
[編集] 寄生ルート
- パラサイト誕生のあらまし
- 作中での最初の描写は、どこからか飛来して(人口の多い都市部に多く飛来したとされる)、上空からボール状の卵が落下したところから始まる[8]。卵から生まれて脳を奪ったパラサイトによる、捕食後の人間の遺体(食べかす)について当初詳細を知っている人間は新一だけだった。ニュースでは「ミンチ(ひき肉)殺人事件」として扱われ、唾液も検出されたがパラサイトという存在は分からなかった。また、国内だけではなく世界中で犠牲者が増え、5ヶ月たっても犯人が1人も捕まっていないことから、狂信的集団の組織犯罪と認識された。その後、徐々にパラサイトの存在が明らかになり、世間を騒がせることとなる。
- 寄生前の形状
- 人間への侵入方法
- 卵から生まれるとすぐに本能(後述「本能」を参照)に基づいて、地をはって移動し人間を探す。体が薄いため閉じられた襖(ふすま)やドアのわずかなすき間からでも入ることができる。そして、変形した後にドリル部を使って人間の鼻や耳など頭部の孔から侵入する。場合によっては、タンスほどの高さから目標めがけて飛びついたり、成人男性の顔の高さまで地面からジャンプすることもある。この時ドリル部は強い力を発揮し、ポロシャツ程度の厚さの服もろとも直接皮膚を突き破って体内に侵入することもできる。その後は脳に向かって進行し、寄生すると宿主の頭部および首の辺りまでが完全にパラサイトの組織に置き換わる。ちなみに侵入時にできたこの穴は、何の傷跡も残さず痛みもないまま直後に消えてしまう。
[編集] 思考的特性
- 本能について
- 卵から生まれた時は、「人間の脳を奪って寄生する」という本能により行動する。続けて、寄生生物が肉体を奪うことに成功した際に発せられる本能(田宮によると「命令」)は、「この種を食い殺せ」つまり、共食いにより人間の数を減らすことだとされる。寄生生物の行動パターン原理の大半はこれに従って形造られている。
- また、頭を奪えた寄生体は、寄生に失敗した「人間の脳が残っている寄生体」に遭遇すると本能的に危険な存在として察知し排除しようとする。
- 基本的な思考パターン
- 性格に個体差はあるが、基本的には思考パターンが人間とは全く異なる。そのため、人間の感情を理解することも無く自己中心的で冷酷である。生存本能が極端に強く、自分の生存を守るためならたとえ同種であっても他者を殺す事をためらわない。ミギー曰く、「人間で言うところの情は無い」。
- 元が擬態であるため、またパラサイトにとってその必要性がないことから、感情を表現する目的で顔の表情を変化させることがあまり無い。ただし、「泣く」「笑う」と言ったような感情は持たないが、基本的に冷静なパラサイトたちも作中において「怒り」のような感情を何度か垣間見ることができる。ちなみに島田はその無表情な顔のせいで、同じクラスの裕子から密かに「能面男」と呼ばれていた。
- また、登場時のパラサイトたちは基本的に個人行動していたが、一部のパラサイトたちは田村などを中心に時折集まり、様々なことについて話し合いで方向性を決めるなど徐々に社会的・組織的に活動するようになった。
- 思考変化、個性について
- パラサイトの思考や行動は、寄生する宿主の環境や様々な状況から影響を受けて変化し、それが個性となる場合がある。
- 田宮は脳を奪った当初、宿主の以前の立場をそのまま引き継ぐという珍しいタイプで、その後様々な要因からパラサイトとしての性質・考え方が大きく変化した。
- 時が経つにつれ、中には他人のために命を投げ出す者や、人間の考え方について勉強しようとする者が現れた。また、そうとは知らず「怒り」の感情を抱く者、あえて普通の人間のように表情を変え欺こうとする者。宿主である肉体が生んだ子供であるにもかかわらず人間で言う「母性」を持って、死を覚悟で守る者もいる。
- このように感情、もしくはそれに類似する物が発生した個体も存在し、その可能性については未知数なところが多い。後に田村は「徹底して合理的な行動・考え方をするパラサイトは、組織づくりも容易いと思っていたが、見込み違いだった。寄生生物それぞれが個体差――個性を持ったことを喜ばしく思う」などと語っている。
- 名前に無頓着
- 考え方を表す特徴の1つに「自身の名前に対して無頓着」というものがある。パラサイトたちは「大した意味はないが、便宜上とりあえず名付けた」というような名前のものが多い。そのため作中では、三木を除いたミギーや後藤など多くのパラサイトが「名前なんてどうでもいい」という考えを持っている。
- 新一がミギーの名前を考えた時に「いらん。私は人間ではないし、ペットでもない」と一度断わっており、ミギーと名付けられた(正確には自ら提案した)後も名前の必要性を感じていない。また、ジョーのように、しばらくは名無しで通しており、それで十分としていた者もいる。加えて高い知性を持つ田宮良子ですらその傾向が見られ、その後、顔と立場を変えて別人になったが名前に無頓着なため元の名前に似た「田村玲子」に改名した。
- 三木はミギーと同じく『右腕→みぎ』という意味から、後藤は、「五体の統率者→五頭(当初は『五人』と表現されていた)」から、どちらもかなりいい加減で安直なイメージから名付けられている。ちなみに三木は、この名づけ方に不満がある様子でミギーと会った後に「ほんとにみんな(パラサイト)呼び名に工夫がないな」と気持ちを漏らしている。
[編集] 身体的性質
身体的な特徴として、パラサイトは基本的に物を考える「寄生部分」と、元の人間や生物の肉体である「宿主」に分かれる。
- 寄生部分の役割など (寄生に失敗したパラサイトについては「寄生失敗」を参照)
- パラサイトは人間の脳を奪うと首から上と同化して全身を操り、顔は同じでも元の宿主とは全く別の人格となる。寄生部分である表面を含めた頭部全体が「脳細胞」の状態となり、脳・眼・触手などの役割を兼ねる。
- 一見すると一般の人間と同じだが、戦闘時に頭部は一瞬で自由に変形しゴムのように伸縮したり、鋼鉄のように変質させ武器にする事ができる。変質後は鉄をも切断するほど強力であり、かつ動く速さは尋常でなく、一般人の動体視力ではその動きを判別することは不可能に等しい。
- これらの要素を総合し、作中では学者がパラサイト細胞体のことを、解り易い例えとして「考える筋肉」と表現している。
- その他の頭部の特徴
- 寄生体は痛覚が鈍く、体のどの部分を攻撃されてもあまり苦痛を感じないような描写が見て取れる。ただし、痛みを感じにくいだけであって、自身が受けたダメージが命の危険が及ぶかどうかについては、もちろん気づく。ちなみに、痛覚に弱い人間を「痛がり屋」と表現して蔑視している個体もいる。
- 加えて頭部を切りつけられても容易に再び結合でき、生命や思考力に危険は無く、再度血液の循環する人体内などへ入り込めば生命を維持できる。ただし、「寄生生物」であるため、宿主の内蔵や消化器官を借りて生きているので、主要な内蔵への攻撃を受けると死んでしまう。同じく頭部が肉体と切り離されると、その体を維持できず、死ぬ直前の形態のまま急速にミイラ化して死ぬ。
- 身体能力を引き出す
- 寄生体は宿主の体を身体能力の限界に近い状態で長期間稼働させる事が可能である。作中の学者によると「全身の司令塔の役割を150%も果たしきる能力を持っている」と解説している。ちなみに島田は体育の授業で優れた身体能力を活かしてスーパープレイを披露している。
- また、学習能力も高く、基本的に1~数日あれば一つの言語をほぼマスターできる。加えて新一は、勉強好きなミギーについて「『今に泉新一は、頭より右手の方が頭いい』なんてことになる」などと若干皮肉めいたことを言っている。
- ちなみにパラサイトの寿命は不明だが通常の人間より長いらしく(後述「生殖活動・寿命」を参照)、これも元の肉体が持つ生命力の強さを最大限に引き出しているのが原因と思われる。
- 弱点など
- 先述のとおりパラサイトには様々な性質・特別な能力があり、少々の攻撃では防御されたり、ダメージとして感じないなどほぼ影響が無い。パラサイトを殺害するには寄生部位ではなく、弱点である宿主の肉体への攻撃が不可欠だが、常人が武器無しで戦うことは無謀に近い。有効的な攻撃方法としてショットガンにより大粒な弾を心臓へ打ち込む面的破壊が考案され、人類はこれで多くの個体を狩った。
- また、物理的な攻撃には極端に強靭な一方で、硫酸を振りかけられたり、火をつけられたりする「性質そのものを変化させられる攻撃」にはめっぽう弱い。
[編集] パラサイトの生活状況など
- コミュニケーション方法
- パラサイト自ら人間に寄生して脳に成り代わるため言語等は引き継がれず、寄生後にそれぞれが独自の方法、周囲の状況に応じて学習することになる。基本的には言語による会話、文字、その他、人間が持ち得るあらゆる通信手段を行使可能である。
- コミュニケーションにおける最大の特徴として独自の通信手段を持っており、微弱ながら特殊な脳波のようなものを常に発信、及び受信することで、付近にいる同種の存在をお互いに感知することができる。受信の有効半径は約300メートルだが、発信元の個体の判別についてはパラサイト同士でも難しいとされる。ただし、予め発信パターンを仲間内で決めておけばモールス信号のように簡単な通信手段として使うこともできるとされる。
- この脳波は機械で受信可能かは不明だが、通常の人間では受信できないことになっている。ただし、作中ではごく限られた人間だけが微弱ながら感じ取り、さらにその人間からも信号を送信できるかのような描写がなされた。
- 「食事」に関して
- 一般的なパラサイトは、本能により宿主と同種の生物(人間なら人間、犬なら犬)を主食としている。ただし、前述の通り消化器を含めた内臓は宿主のものを流用しているため[9]、その生物の本来の食事だけでも(要は、共食いをしなくても)生きていくことはでき、それを実行したパラサイトもいる。
- また、アルコール等を摂取すると通常の人間同様に酔っぱらい、パラサイトによると人間の顔に戻したつもりが知らず知らずのうちに顔が歪んでしまうとのこと。他にもタバコや麻薬、その他何らかの薬品を摂取しているなど生物にとって有害なものを含んでいる人間の肉は、パラサイトからもあまり好まれないようである。
- パラサイトが出現し始めた頃は、行き当たりばったりにその場で人間を殺して食べ、食べかす(遺体)を放ったらかしにしていた。その後、一般人に見つかると色々と面倒になることを学習して、ナンパを装うなどして人間に近づき人気のない所で襲って食し、食べかすも処分するようになった。さらにパラサイトたちは、人間を食す場所を「食堂」と名づけて、基本的に街中に指定されたいくつかの場所で「食事」するというルールを作った。このため、表向きは「ミンチ殺人事件」が減ったように見えたが、その代わり行方不明者数が増えることになる。
- 生殖活動・寿命について
- 寄生生物には生殖能力が無く、新しい世代を作れない。寄生体の男女が宿主部分同士で性交を行っても、生み出されるのは、通常の宿主と同種の子供(一般的な子供)である。作中ではパラサイトは後に駆逐されたか、あるいは完全に人間社会に浸透することにより事件は収束していったことから、新たな個体が飛来することもなかったとみられる。
- パラサイトの寿命は不明だが、新一が初めて会った『パラサイトに寄生された人間』によると「我々(自身とミギー)が管理するこの肉体なら140年は生きられるだろう」とミギーを自分の肉体に誘ったことがある。
[編集] 寄生部位の分離・合体など
- 寄生部分の分離・分裂
- 前述の通り、母体から離れたパラサイトは死んでしまうが、一時的であれば母体から離れた状態でも活動することはできる。訓練によって自らの力で母体から離れて動いたり、複数に分裂・思考することができるようにもなる。ただし、分裂体が小さくなるほど知能が落ちていき、ついには元に戻れず、その細胞は干からびて死んでしまう。ミギーの場合、分裂前に「元の通り1つに戻る」などと簡単な意思統一(合言葉)をすることで元の状態に戻っているとのこと。
- ちなみに、死ぬなどして失われた細胞は成長などで補えるのか、それとも失ったまま新たに増える事は無いのかは不明だが、ミギーは細胞を作り出すことは不可能であった。なお新一の場合、ミギーの細胞が体中に散らばり取り込まれた際、身体能力が飛躍的に向上している(さらに精神面にも影響があったような描写がなされている)。詳細は後述)。
- 寄生部分の他者への移動・合体
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- 同じ部位同士の移動
- 寄生した肉体が致命傷を負った時には手近な他の人間の頭部を斬り落とし、相手の頭部へ移動してつながりその肉体を奪うケースがある。ただし、性別の異なる体へ移動した場合は、生殖器[10]を操る方法が分からず、更に拒否反応が起こる。
- パラサイトによると脳ほど複雑でない「腕から腕」などへの移動は簡単にできるとのこと。ただし、ミギーが別のパラサイトから自分の右腕に移動(つまり合体)してくるよう誘われた時に「肉体の移動に確信が持てない」との理由で断っている。
- 別の部位への移動
- 初めに同化した部位よりも複雑な構造の部位(例えば「右手」から「頭部」)への移動は「操り方が分からない」という理由で不可能だが、「頭」から「手」や「足」などの逆パターンは安易のようである。
- 合体について
- 複数のパラサイトが同居する寄生体は、1体のみが寄生するものに比べ、より強力になり、前述の通り長寿も得られるという。
- パラサイトの見分け方
- パラサイトは頭部に寄生すると、髪の毛などの頭部の毛1本1本に至るまでパラサイトの細胞となる。前述の通り、細かい細胞のため髪の毛に意思はないものの、体から離れると戻ることはできないが、生きようとしばらくもがく。劇中ではこの性質を利用して、髪の毛(頭部であればまゆ毛でもいい)を引き抜いて「毛がもがけばパラサイト」というように人間とパラサイトを判別するという方法が考え出された。その方法は警察などの一部事情を知る政府関係者によって「噂」として流され、一般市民の間で流行した[11]。
[編集] 寄生失敗について
本来この生物は、本能的に「人間の体内に潜り込んで脳を奪って寄生すること」が目的だが、様々な理由から「寄生失敗」となることがある。
- 人間以外の生物に間違って寄生したパターン……作中ではイヌに寄生したものが登場している。
- このタイプでは、「同種の生き物を捕食する(共食い)」の本能は受け継がれているため、寄生した生き物(犬なら犬)を食べる。
- 知能や戦闘能力は人間型に比べかなり劣っていたが、人語を理解しつつ拙いながらも言葉を発する。また、身軽さを活かして若干強引ではあるが、寄生部分である頭部を翼に変えて飛行するなど本来のイヌの能力を上回っていることには変わりない。
- 侵入時のなんらかのアクシデントによって頭以外の部位に寄生(周辺組織と同化することもある)したパターン……ミギーやジョーがこのタイプである。
- このタイプは、脳を「食べた」パラサイトと違い「母体となった種を捕食する」という本能が目覚めないという大きな違いがある。彼らは寄生部位に宿主とは独立した意思を持ち、目や口などの器官もあるため宿主と会話できるのが特徴。
- 他のパラサイトが「寄生した脳」が変形するのと同様、寄生した部位(ミギーなら右腕)が自由自在に変形することができる。戦闘時は、ミギーは新一と会話をしながら2人で作戦を練って、協力して攻撃と防御を織りまぜながら戦う。しかし、宇田の場合は寄生部位が「口から胸のあたり」ということで変形すると会話はできず、鼻だけで呼吸するので息苦しくなる。
- 食事に関して、同種の生き物を共食いするという本能がないため、人間から養分をもらっており、そもそも食欲というものがない。ミギーの場合は食事の味は全く関係なく、むしろ栄養バランスを気にかけていた。また、普通よりも栄養分が必要になるためか、新一は寄生されて以降、食欲が旺盛になった(宇田については不明)。
[編集] 新一とミギーの変化
物語の途中で母の体を乗っ取ったパラサイトに胸部を貫かれ、心肺器官への重篤な損傷で瀕死の重傷を負うがミギーが新一の体内に潜り込んで治療したことにより一命を取り留める。しかし、その際、ミギーの体組織が全身に混ざったことで影響(副作用)が起きた。
- 新一の変化
- ミギーの変化
- 治療を行った際、パラサイトとしての性質に突然変異(弱体化とも取れる)をきたし、一日のうち4時間だけ、同属を察知する能力さえ働かない「完全な眠り」に陥るという弱点ができてしまった(眠りについている間も変質化した状態は維持される)。またこの治療で新一の全身に散らばった細胞(全体の1/3)が回収できなくなり、肩まであった寄生部が肘の上あたりまでとなった。
[編集] 補足
英訳版では左開きに対応させるため、原作の左右を反転させており、「ミギー」の名前も「Lefty」(左利き、左派)と改められている。2011年現在、清水崇監督によるハリウッド実写映画化が予定されている。
[編集] 関連書籍
- リチャード・ドーキンス『利己的な遺伝子』(紀伊國屋書店、1991年) ISBN 4314005564
- 『寄生獣』作品中、田村玲子が大学で学ぶ講義で言及される他、中盤以降の背景に置かれている。
- パラサイト博物誌編集部『寄生獣の秘密』(データハウス、1994年) ISBN 9784887182363
- 『寄生獣』をテーマとした研究本。
- 佐倉統『生命をめぐる冒険 進化・ミーム・コンピュータ』(河出書房新社、1998年) ISBN 4309250955
- 『寄生獣』論から人工生命や情報などのテーマを説き起こした論考。
- 熊田一雄『“男らしさ”という病? ポップ・カルチャーの新・男性学』(風媒社、2005年) ISBN 4833110679
- 『寄生獣』が読者に強烈な衝撃を与える背景を社会学的に考察した論考が収録されている。
- 青土社『現代思想』2006年12月号 ISBN 4791711572
- 杉田俊介「自立と倫理・カントとともにある『寄生獣』、『寄生獣』によるカント」 p152~p170
[編集] 書誌情報
[編集] 単行本
- 第1巻 1990年7月23日刊行 ISBN 4063140261
- 第2巻 1991年1月23日刊行 ISBN 4063140296
- 第3巻 1991年7月23日刊行 ISBN 4063140369
- 第4巻 1992年1月23日刊行 ISBN 4063140407
- 第5巻 1992年8月22日刊行 ISBN 4063140458
- 第6巻 1993年1月23日刊行 ISBN 4063140547
- 第7巻 1993年7月23日刊行 ISBN 4063140644
- 第8巻 1994年2月23日刊行 ISBN 4063140768
- 第9巻 1994年11月22日刊行 ISBN 4063140954
- 第10巻 1995年3月23日刊行 ISBN 4063141071
[編集] 完全版
完全版では連載当時のカラー原稿がカラーページとして収録されている[1]。
- 第1巻 2003年1月23日刊行 ISBN 4063346641
- 第2巻 2003年1月23日刊行 ISBN 406334665X
- 第3巻 2003年2月21日刊行 ISBN 4063346803
- 第4巻 2003年2月21日刊行 ISBN 4063346811
- 第5巻 2003年3月17日刊行 ISBN 4063346927
- 第6巻 2003年4月23日刊行 ISBN 4063346978
- 第7巻 2003年5月23日刊行 ISBN 4063347222
- 第8巻 2003年6月23日刊行 ISBN 4063347346
[編集] 脚注
- ^ a b c “本のご紹介 寄生獣<完全版>(1)”. 講談社BOOK倶楽部. 講談社. 2011年8月5日閲覧。
- ^ 早稲田大学週刊広報紙『早稲田ウィークリー』
- ^ 岩明均 『寄生獣(完全版)第8巻』 講談社、2003年、268頁。
- ^ 山竹伸二 『16.書評 加藤典洋「「関係の原的負荷」―二〇〇八、「親殺し」の文学」』。
- ^ 新一の右手の変化に気付いた様なそぶりを見せた事もあり、ミギーからは「かなり鋭い感覚をもっている」と評された。
- ^ その平間の発言直後に新一自身が首を斬られ、そして新一が目を覚ます(実は夢だった)という描写になっているため、平間の発言が現実での出来事だったのか新一の見た夢だったのか不明瞭。
- ^ 統率が完全では無い「三木」について、ミギーは「3体のパラサイト」と感じた事がある。なお後藤と新一がはじめて目をあわせた時、ミギーは壇上に6体のパラサイトがいるとした。実際には壇上の6人の内広川は人間であったため、恐らく完全に全身を統率できていなかった後藤を複数のパラサイトとミギーが感じたためである。
- ^ その描写と後述の「形状」から宇宙からの飛来物であると解釈した読者が多かったが、作者としては地球上のどこかで発生したというイメージだったとの事
- ^ 数十キログラムにおよぶ人体をごく短い期間で食すことから、消化能力は強化されていることが窺える。
- ^ と作中で書かれているが、実際は泌尿器。作中においてパラサイトが生殖器をその目的で扱った例は、Aと田宮良子のみ。
- ^ 人間とパラサイトの判別法を政府関係者が世間に流布したのは、パラサイトであると疑われた人間が不利益を被り、ついに自殺者が出るという事態に発展したからである。一般市民レベルにおいては、あくまでパラサイトと疑われた人間の無実を証明する事が目的である。実際にもパラサイトの数は人間に比べれば非常に少なく、そのような判別法で実際にパラサイトが見つかる例は少ない。そのため真剣な選別というより、単なる遊びやコミュニケーションの一種となっている(パラサイトの側でも「親しい人間を作らない」といった対処を行っている)。もっとも稀に本当にパラサイトが見つかった場合、対抗手段の無い一般人はほぼ間違いなく殺される事となる。なお政府関係者の間でこの判別法が行われた際には、対抗手段として小銃が用意された。
- ^ 仔犬の死を看取った後、ゴミ箱に捨てようとし、更に「死んだ犬はただの肉だ」と言い放って村野里美を絶句させている。
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