ヴィンランド・サガ

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ヴィンランド・サガ
ジャンル 歴史漫画
アクション
漫画
作者 幸村誠
出版社 講談社
掲載誌 週刊少年マガジン2005年
月刊アフタヌーン2005年 - )
レーベル 講談社コミックス
アフタヌーンKC
発表期間 マガジン:2005年第20号 - 第45号
アフタヌーン:2005年12月号 - 連載中
巻数 既刊14巻(2014年2月現在)
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ヴィンランド・サガ』(VINLAND SAGA)は、幸村誠による日本漫画作品。

概要[編集]

11世紀初頭の北ヨーロッパ及びその周辺を舞台に繰り広げられる、当時世界を席巻していたヴァイキングたちの生き様を描いた歴史漫画である。

2005年4月より『週刊少年マガジン』(講談社)で連載が始まったが、週刊連載に幸村の執筆が追いつかず、2005年10月に同誌での連載を終了。同年12月より『月刊アフタヌーン』(講談社)にて月刊ペースの連載を再開し、現在に至る。なお単行本は「マガジン版」の1・2巻が出されたあと、判型・収録話数を改めて「アフタヌーン版」として新しく1巻から再版されている。

2008年の時点で累計120万部を突破[1]2009年平成21年度(第13回)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。2012年平成24年度(第36回)講談社漫画賞「一般部門」受賞。

西本英雄によるスピンオフ作品として『元祖ユルヴァちゃん』がある。

あらすじ・構成[編集]

作中では明確な章分けはされていないが、構成をもとに以下のように分けて各編のあらすじを記す[2]

プロローグ(第1話~第2話)
11世紀初めの西ヨーロッパフランク王国領。この時代、ヨーロッパの海という海、川という川に出没し、恐るべき速度で襲撃と略奪を繰り返す北の蛮族、ヴァイキングは人々の恐怖の的だった。その日も、とあるヴァイキングの集団がフランク領主同士の小競り合いに乗じて包囲されていた都市を瞬く間に落とし、蓄えられていた財貨を残らず奪い去っていった。この略奪はアシェラッドという男が指揮する兵団の仕業で、その中に2本の短剣を武器にする凄腕の少年がいた。その名はトルフィン。今回の襲撃で敵指揮官の首を取る戦功を挙げた彼は、見返りとしてアシェラッドに彼との決闘を求める。
幼少編(第2話~第16話)
物語は10年前、1002年アイスランドにさかのぼる。アイスランドはノルウェー王の統治を嫌う人々がスカンディナヴィア半島から移り住んできた土地で、少年トルフィンは父トールズと母ヘルガ、姉ユルヴァとともに貧しいながらも平和に暮らしていた。父の友人、船乗りのレイフから様々な冒険譚を聞き、はるかな「ヴィンランド」に憧れるトルフィン。そこに北海最強の戦闘集団、ヨーム戦士団のフローキが現れる。
トールズは実は昔、「戦鬼(トロル)」の名で恐れられたヨーム戦士団の大隊長を務めていたが、ある日突然、首領シグヴァルディの娘のヘルガとともに姿を消していたのである。フローキはトールズの出奔を不問に付すかわりにイングランドとの戦に参加せよ、という首領の命を伝える。島民の身柄を押さえられたトールズはそれに応じ、数名の若者と友人レイフとともに本土との中継地点であるフェロー諸島を目指すことになった。これを知った少年トルフィンは、戦いへのあこがれから父に黙って勝手についてきてしまう。
しかしフェロー諸島で一行を待っていたのは、フローキから金と引き換えにトールズの処刑を命じられたアシェラッド兵団だった。トールズは「本当の戦士」たらんとする、自らの不殺の誓いを守り素手で奮戦、首領のアシェラッドまでも決闘の末に打ち破るが、トルフィンを人質に取られてしまう。トールズは決闘の勝利の証として一行の無事をアシェラッドに誓わせ、殺された。アシェラッドは誓い通りにレイフ一行を見逃すが、目の前で父を殺されたトルフィンは復讐に燃え、アシェラッドの兵団に取りついた。
ブリテン編(第17話~第54話)
9世紀から断続的に続いていたデーン・ヴァイキングによるイングランド襲撃は、11世紀に至ってデンマーク王のイングランド征服事業に発展し、大王スヴェンの時代に佳境を迎えていた。アシェラッド兵団はヨーム戦士団等と共にこの遠征に参加し、1013年、要地ロンドンの攻略に着手する。当時ロンドンを守っていたのはトルケルという名の巨漢のデーン人だった。アシェラッドは彼に対しトルフィンを差し向けるが、トルフィンは好戦するもトルケルとの圧倒的な体格差を前に敗北する。
短期のロンドン陥落は困難と見たデンマーク王は、4000人の軍勢を残して本軍を移動させ、幼さの残る王子クヌートを包囲将軍に命じる。しかしその後トルケルが攻勢に転じて包囲部隊を敗走させ、王子と護衛のラグナル、神父ヴィリバルドを捕虜にする。この局面を見たアシェラッドは単独でのクヌート王子救出を決意、マールバラ近郊でデーン軍部隊と交戦中のトルケル軍に火計を用いて奇襲し、王子たちを奪取する。アシェラッドにはクヌート王子を担ぎあげ、自らの野望の為に旗印とする腹積もりがあった。
アシェラッド兵団はトルケル軍から逃れるため、ウェールズを北上してデーンロー帰還を目指す。しかし、過酷な風雪のため南寄りのマーシアに進路修正を余儀なくされ、宿営に用いた寒村での失策からイングランド軍に発見される。その状況下、アシェラッドはクヌートを王者として自立させるため、ラグナルを暗殺する。保護者であったラグナルを失い、クヌートは混乱する。
トルケル軍の接近を知った兵団は動揺し、大半がトルケル軍に寝返る。アシェラッドは副官ビョルンとトルフィンにクヌート護衛を任せて橇で逃がし、裏切った戦士たちと交戦しているところにトルケル軍が到着。トルケルは反乱軍の申し出を拒絶し、彼らを皆殺しにする。
クヌートはラグナルの霊との会話を通じて、自分の進むべき道を見出す。一方、アシェラッドの危機を感じとったトルフィンは馬で戦場に戻り、トルケルと再び対戦する。アシェラッドの協力を得てトルケルを追い詰めるが、そこに以前とは打って変わり、王者の風格を備えたクヌートが現れて決闘を中断させ、さらにトルケル軍を帰順させる。アシェラッドとトルケルという強力な部下を得たクヌートは父王との対決を決意。デーン軍の本拠地ゲインズバラに帰還し、1014年、スヴェン王に謁見する。
王との謁見を成功させ、派閥の確立を得たクヌートだったが、王はアシェラッドのある弱みを突き、クヌートとの二者択一を迫った。追い詰められたアシェラッドは王を暗殺、その意を汲んだクヌートはアシェラッドを処刑すると王の代理たるを宣言、イングランドの実質的な覇権を握る。しかし復讐のみに生きてきたトルフィンはその目的を失い錯乱、廃人同様となってしまった。
奴隷編(第55話~ )
デンマーク軍を追放され、同時に生きる意味を失ったトルフィンは奴隷身分に落ち、ケティルという男に買われる。彼はデンマークのユトランド半島に広大な土地を所有しており、トルフィンはそこで森林の開墾を命じられる。1015年、同じく奴隷として買われた元農民の青年エイナルと出会う。用心棒や奉公人から嫌がらせを受けながらも、元奴隷の奉公人パテールやケティルの父親スヴェルケルの助けを受け、二人はひたむきに開墾作業を続ける。エイナルから農業の手ほどきを受け、生命を育てて糧を得る喜びを知ったトルフィンは、それまでの血に染まった生き方を悔いるようになる。不殺を貫いて凄絶な死を遂げた父トールズの姿、そしてアシェラッドの遺した「本当の戦士になれ」という言葉を噛み締め、トルフィンはこれからは二度と暴力を振るわないと誓う。
エイナルは同じ農場で働く奴隷、アルネイズに思いを寄せていた。しかしアルネイズは農場主ケティルの愛人にされていて、いずれ自分を買い取って出て行くことのできるエイナルやトルフィンとは違い、ケティルに飼い殺しにされ続けるしかない身の上だった。
そうした自らを取り巻く人々の身の上を思い、自らの生き方を省みるうち、やがてトルフィンの胸に、戦争も奴隷もない理想の国が、幼いころにレイフから聞いた「ヴィンランド」の物語と一体となって描かれ始める。
一方、クヌートは1016年にイングランド王を暗殺、イングランドの単独の王となり、さらに1018年、デンマークを治める兄ハラルドをもその手にかけ、デンマーク・イングランドの両王となっていた。
イングランドではデーン人駐留軍の維持費が問題となっていた。イングランド国民の反感を買わぬよう、税率を上げずに維持費をねん出するため、クヌートはデンマーク有数の生産量を誇るケティルの農場を接収しようとする。
接収の名分をたてるため、クヌートは農場主の次男、オルマルを利用する。恥辱を受け、さらに兄トールギルに煽られたオルマルは戦闘の口火を切ってしまう。
そのころ農場には、アルネイズの夫ガルザルが妻を取り返すために現れ、それを阻もうとした客人たちが次々に返り討ちにあっていた。アルネイズに同情していたトルフィンとエイナルは、スヴェルケルの助けを借りて二人を逃がそうとするが、客人たちの頭目、「蛇」に阻まれてしまう。
クヌートは自ら100人の手勢を引き連れ、農場の接収に現れた。ケティルは富を奪われることを恐れ、また心の拠り所としていたアルネイズに裏切られた事を知って怒りに我を忘れ、アルネイズを打ち据え、人手を寄せ集めてクヌート軍に抵抗するが敵うはずもなく、農場は惨劇の場と化した。混乱の中、トルフィンを探し続けていたレイフから救いの手が差し伸べられ、トルフィン達は重症のアルネイズを連れて脱出するが、アルネイズにはもはや生きる気力がなく、トルフィン達に感謝しながら息を引き取る。
トルフィンは農場の惨状を見かねて舞い戻り、特使としてクヌートへの謁見を試みる。クヌートは当初無視しようとするが、トルフィンは100回の殴打を耐え抜くことでトールズの息子という自らの血統を証立て、謁見にこぎつける。数年の時を経て邂逅した二人は、それぞれが異なる方法で理想を目指している事を知る。トルフィンの「ヴィンランド」への思いを聞いたクヌートは接収を取り止め、兵を引いた。

舞台と諸勢力[編集]

アイスランド
トルフィンの故郷。ノルウェーハラルドの支配を嫌った人々が、自由を求めて移住してきた土地。過酷な環境のため農耕による自活が難しく、漁業と牧畜中心の生活を続けている。島民同士の諍いは民会(シング)で調停する。その地理的条件から、戦乱の続くヨーロッパに比べて相対的に平和が保たれている。
フェロー諸島
アイスランドとノルウェーの中間に位置する島々。アイスランド、グリーンランドと本土の人と物をつなぐ中継地点、補給地点として機能している。
イングランド王国
アングロ・サクソン人の統一王国。9世紀にウェセックス王アルフレッドがそれまでの諸王国を併合してのちは南部のウェセックス地方が王国の中核をなす。首都はウィンチェスター。北部のデーンローを支配するデーン人とは微妙な小康状態を保ってきたが、11世紀初頭のイングランド軍によるデーン人虐殺[3]を機に関係が悪化、その後デーン軍相手に敗北を重ねる。1018年、賢人会議でアングロ・サクソンの王に代わりデンマーク王が推戴され、実質的にデンマーク王国に併合される。
デーンロー
ブリテン島北部のデーン人が実効支配している土地の総称。中心地はヨーク1013年の時点で北部のノーサンブリア、東部のイースト・アングリア、中部のゲインズバラを中心とする五城市地方などを支配下に収めている。
デーン軍
デンマーク王スヴェン率いるイングランド征服軍。1013年の時点で総勢約20,000人。一時トルケル率いる500人の部隊が離反するも、クヌートの帰還とともに再び合流する。王の死後クヌートが軍を引き継ぎ、イングランド征服を完了させる。人数は不明だがイングランド征服後も駐屯軍としてイングランドに留まっており、その駐留費用はクヌートを悩ませている。
ウェールズ小王国群
イングランド西部に隣接する諸王国。元来はブリテン島全体を支配する民族だったが、5世紀以降、統一国家を樹立する前にアングロ・サクソン人の侵攻を受け西部の山岳地方に追いやられた。現在は多数の王国に分かれており、個々の王国の力はイングランド王国やデーンローに及ばないが、イングランド人とデーン人の争いには中立の立場を守っている。辺境に追いやられたものの、ローマ属州時代の伝統を守っている。モルガンクーグ王国など一部の国にはアシェラッドの素性を知る者がおり、彼と個人的な協力関係を持っている。
デンマーク王国
クヌートの故郷。デーン人の王都イェリング、アシェラッド兵団の帰宿港の一つである領主ゴルムの村、ヨーム戦士団の本拠地ヨムスボルグ、大農場主ケティルの所有地などがある。
ヨーム戦士団
ヨムスボルグに基地を持つ、北海最強を自負するエリート戦士団。首領はシグヴァルディ。かつてトルフィンの父トールズが在籍していた。
アシェラッド兵団
アシェラッド率いる傭兵団。兵力100、軍船3艘。スヴェン王のイングランド征服に参加するが、途中でトルケルの軍勢と対戦し数名を残して全滅する。

登場人物[編集]

歴史漫画の性質上、実在の人物が多数登場するが、あくまで史実をもとにしたフィクションとして大幅なアレンジが加えられている。

トルフィン
物語の主人公。本名、トルフィン・トルザルソン[4][5]アイスランド出身。後に「侠気のトルフィン(トルフィン・カルルセヴニ)」とあだ名される。
ヴァイキング集団の首領・アシェラッドに父親を殺され、その復讐のために仇であるアシェラッド兵団の中で少年時代を過ごす。金髪で茶色の瞳、長めの髪はいつもボサボサで、服装にも頓着しない。二本の短剣(一本は父親の形見である)を武器とする。戦場の中で育ったので、極めて無愛想で無口だったが、クヌートの身辺保護を任されるようになってからは、少しずつだが口数が増えていた。兵団にいた頃は、戦いで得られるアシェラッドとの決闘の権利と、幼年期にレイフから聞いたヴィンランドだけが心の拠り所であり、関心事であった[6]
戦士としての能力は高く、トルケルを一度追い詰めたこともあるほどだが、短気な性格が災いして劣勢に陥ることも多い。特にアシェラッドにはその癖や思考パターンを完全に読まれているため、全く歯が立たなかった。
アシェラッドが殺された際に一時正気を失い、クヌートに斬りかかる。その結果、奴隷身分に落とされ、ケティル農場に引き取られる。奴隷になってからは無気力な人間になってしまうが、エイナルなどと出会い、農業に取り組む生活の中で、殺し合い以外何も知らなかった自分の半生を後悔し、これからどう生きればいいのかを模索するようになる。暴力を忌避するようになるが、奉公人に開墾した農地を荒らされる一件では、怒りにまかせて奉公人を殴り倒した。その後見た夢の中でアシェラッドと再会し、自身が今まで殺し合いの連鎖の中で生きてきたこと、未だそこから抜け切れていないことを悟る。以降は暴力との完全な決別を誓い、そしてたくさんの人を殺した後悔を背負いながら「本当の戦士」になることを目指していく。そのために自分が果たすべき使命として、遥か海の向こうのヴィンランドを目指し、そこに世の中から虐げられた人々を集めて「戦争も奴隷もない平和な国」を作ることを決意する。
アシェラッド
職業的ヴァイキング集団、アシェラッド兵団の首領。デンマーク出身。
飄々とした人物で、手腕は冷酷非情。常に先を読み、人の才覚や性格を見抜き操る術にも長ける。トルフィンには仇として命を狙われながらも、彼を手下として使いこなす。短髪であご髭をたくわえ、常にローマ風の一枚プレートの胴鎧(ロリカ)を身につけている。また、正式の場ではトーガのようなものを身に纏う。なお、トルフィンからは「ハゲ」と呼ばれる。
デーン人豪族の父ウォラフと、ウェールズの元王女の母リディアの間に生まれた混血児。名はアシェラッド・ウォラフソン(ウォラフの子アシェラッド)で通しているが、アシェラッドは「灰まみれ」という意味のあだ名である[7]。これは父が奴隷に産ませた彼に名前を与えなかったためである。庶子として馬小屋で育てられるが、11歳の時に父に才覚を見出され他の息子と共に館に住むことを許される。その後、2年で家族内での地位を固め、隙を見て父を暗殺し母の復讐と財産獲得を果たす。この時の自身への嫌疑をそらすために父と仲が悪かった兄に濡れ衣を着せるやり方は、後のスヴェン王暗殺計画でも踏襲している。14歳の時に末期の母を連れて故郷ウェールズへ赴き、このときウェールズの人脈を得る。
母親はアーサー王のモデルとされるケルトの将軍アルトリウスの子孫で、アシェラッドはその最後の末裔。彼のアイデンティティはデーン人ではなく母方のウェールズにあり、デーン人の兵団を率いながらも暴力のままに略奪を繰り返すヴァイキングを嫌っており、ブリタニアを滅ぼしたアングロ・サクソン人にも非情である[8]。彼のウェールズへの帰属意識は誓いの口上にも現れており、通常の誓いはノルド人の神オーディンに誓う一方、トルフィンからの決闘を受け入れる際やトールズとの約束など、真に守る誓いではアルトリウスの名に誓う。
幼少時代に母から「アヴァロンから伝説の君主アルトリウス公が復活し、国を救う」という伝説を聞かされて育ったことから、アルトリウスのような偉大な王が現れるのを待ち望んでいた。兵団壊滅後は覚醒したクヌートに君主の資質を見出して忠誠を誓い、彼をデンマーク王にするために補佐していく。デンマーク王スヴェンに故郷ウェールズとクヌートの命を天秤に掛けるよう迫られた際、そのどちらをも救える選択肢として自らの命を捧げる。その際、デンマーク王に対し自らをブリタニア王と名乗り、母に与えられた真の名として「ルキウス・アルトリウス・カストゥス」を称する[9]。致命傷を負った後、駆け寄ったトルフィンに「本当の戦士になれ」と言い残す。
後に奴隷となったトルフィンの夢の中に現れ、殺し合いの連鎖ではない、「本当の戦い」を戦うことをトルフィンに諭す[10]
クヌート
デンマーク王スヴェンの次男。
女性と見間違るほどの美形。幼少時から宮廷での政争と父からの抑圧にさらされていたため、非常に臆病な性格で、お付きのラグナル以外に口を開くことがなかったが、同い年であるトルフィンの挑発的な態度に対して激昂し初めてラグナル以外に口を開いた。料理なども趣味とする非常に優しげな性格だが、このような性格になった要因のひとつはキリスト教信仰にあるとスヴェン王に評されており、を「我らの父」、「天の父」と呼び実父と重ね合わせて絶対的なまでの愛情を抱いていた。
父に伴われてイングランド遠征に赴くも、ロンドン包囲戦で攻勢に出たトルケル軍に大敗、ラグナル、ヴィリバルドとともにトルケル軍の捕虜になるが、アシェラッドの計略で救出される。
ラグナルとの死別、ヴィリバルド修道士との問答によって、愛の本質と人間の不完全さを理解し、王となって神に代わって自らの手で地上に理想郷を築くべく、実父スヴェン王の打倒を誓う。その後戦場へと舞い戻り、豹変したその威風によりアシェラッドとトルケルの双方を従える。その瞳はトルケルがトールズの目に見出したものと同じ「不思議な輝き」を宿すようになる。
王位継承の意思を固めた後は性格が一変。軍規に厳しく、軍規を犯した兵には容赦しない。また暴走気味なトルケルやスヴェン王の重臣だったフローキ、それに両者を天秤にかけていたグンナルを見事に使いこなすなど指導者として著しく成長している。
イングランド王位についた後は長い髪を短く切りそろえている。最近ではデンマーク軍内でもその実力を認められている、とケティル農場に戻ってきたトールギルが話している。
王国の財源確保のため、オルマルの失態を口実にケティル農場の接収を図るが、トルフィンの説得に応じ兵を引く。
ビョルン
アシェラッド兵団の一員。アシェラッドの信任篤い片腕で、十数年間ともに戦ってきた傭兵団一の古参であるが、アシェラッドの過去に関しては何も知らない。殺しを好むがゆえに戦う、戦士としての矜持(プライド)が高い男。有事の際は「狂戦士のキノコ」と呼ばれる茸を服用して理性から解き放たれた狂戦士になる。
兵団の反乱の際にもアシェラッドへの忠義を保ち、クヌート王子を保護して逃走。追っ手を退けるために狂戦士化し大半を殺害するも、隙を突いたアトリに脇腹を刺され、重傷を負う。自らの死を悟った彼は尊敬するアシェラッドの手で死ぬことを選び、彼が底意ではデーン人を嫌悪していたことを知っており、彼との友情を確認してから果てた。
ゴルム
デンマーク・ユトランド半島の領主。アシェラッドとは父方の叔父にあたり、略奪行後の彼の兵団に帰宿港と食糧を提供する。金に目がない。
ホルザランド
ゴルムの女奴隷。元はノルウェーのホルザランドという土地の領主の娘だったが、戦争で家が断絶し、奴隷身分に転落する。

幼少編[編集]

トールズ
トルフィンの父。本名、トールズ・スノーレソン。トルフィンにとって理想の人物であり、強い影響を与える。人徳にあふれた人柄。
アイスランドに逃れる以前は、ヨーム戦士団の4人の大隊長の一人で、「ヨームの戦鬼(トロル)」と呼ばれた冷酷な戦士だった。だが長女ユルヴァの誕生や妻ヘルガによって戦場の非情と不毛に倦み、「本当の戦士」とは何かを見出し、戦士としての自分を放棄する事を決意する。987年ノルウェー沖の海戦で溺死を装ってヘルガとユルヴァと共に脱走。このとき大隊長のトルケルに発見されるが、問答の末彼をねじ伏せる。その後、妻子を連れてデンマークを逃れ、新たに産まれた長男トルフィンや村人と共に平和な生活を送っていた。
しかし彼の生存はヨームの首領に知られており、デンマークのイングランド侵攻のため、村を人質とした出征要請に応じ、再び戦場へ向かう決意をする。だが戦士団小隊長フローキはトールズに私怨を抱いており、密かにアシェラッド兵団にトールズの暗殺を依頼していた。フェロー諸島でアシェラッド兵団の罠に落ちたトールズは素手で兵団を圧倒するが、その後アシェラッドとの決闘の末、トルフィンらの命と引換えに自らの命を差し出す。その高潔な生き方と凄絶な死は、トルフィンを復讐に生きさせる元となった一方で、アシェラッドをして彼に理想の君主を見出させるものだった。また、彼の不殺の戦いは、真の愛を追求するヴィリバルド神父に示唆を与え、トルケルは出奔時の彼の目に「不思議な輝き」を見出した。
ヘルガ
トルフィンの母。ヨーム戦士団の首領シグヴァルディの娘で、トルケルの姪。戦いをやめる決意をしたトールズに同意し、赤子のユルヴァを連れて父の元を離れた。穏やかな性格だが、ユルヴァの誕生に際し、娘だったことに失望したトールズが名付けを怠ろうとした時には激昂して名付けを迫り、慌てたトールズが咄嗟に自分の母の名前を付けたというエピソードがあり、一度だけ妻が怒った体験として後にトールズが語っている。
ヨークでトルフィンに再会したレイフの話では、1014年の時点で体調が悪化している。
1018年の12月にトルフィンと再会。娘夫婦や孫たちに囲まれて暮らしている。
ユルヴァ
トルフィンの姉。母親似の美貌は村の青年達の心を惹いているが、クジラ漁で率先して一番槍を務めるなど性格は非常に勝ち気である。また金銭に執着しない父親に対して現実的な価値観を持っている。
トールズの死後、男手を失った家庭を必死に支えようと懸命に働く毎日を送る。それは父の死と消息不明の弟のことを生活の中で意識しないようにするためであったが、「もういい」という母の前で初めて号泣する。
レイフの話では、1014年の時点で、3人の子供を持つ母親となっているという[11]
1018年の12月にトルフィンと再会。感激に涙を流すかと思いきや、連絡の一つもいれずに家を空け続けた長男トルフィンに対し、怒りのアッパーで迎えるなど、豪快で男勝りな性格は変わっていない。
西本英雄によるスピンオフ作品『元祖ユルヴァちゃん』の主人公。
ハーフダン
トルフィンたちの村の隣にある村の主。冷酷なまでに規律を重んじ、秩序は人を鎖につなぐことによって生まれるという信条をもっている。鉄鎖を武器や拷問具として扱うことに長け、法を軽んじる態度には部下にさえ容赦ない制裁を加える。
アーレ
トルフィン一家の隣人で、ユルヴァに惚れているが幼少編の時点では相手にされていない。村の若者の中でも強い血気を持ち、トールズが出征するとき戦で一旗揚げようと同行した。だがその意気も本物の戦場で通じるものではなく、トールズの死に激昂してアシェラッドに斬りかかるも、一発で殴り倒されてしまう。
後にユルヴァと結婚し、1018年現在で4人[12]の子供を持つ父となった。
モード、マグニ、ハーコン、グリム
アーレと共にトールズの船に乗った、村の若者たち。
ファクシ
幼少時代のトルフィンの仲のいい遊び友達で、戦ごっこのやられ仲間。
レイフ
大西洋を旅する陽気なオジサン。グリーンランド出身のキリスト教徒。幼いトルフィンにヴィンランドの旅の話を聴かせる。
義理堅い人物で、トールズの恩に報いるためにも行方不明のトルフィンを11年間探し続けていた。1014年にヨークにてトルフィンと再会、一緒に帰ろうと説得するも、復讐に燃えるトルフィンに拒絶されてしまう。それでも彼をアイスランドに連れて帰る事を諦めておらず、奴隷になったトルフィンを身受けしようと各地の奴隷市場を探して回った結果、ケティルと出会い、ケティルの農場にてトルフィンとの再会を果たす。
実在の人物で、ヨーロッパ人としてはじめて北米に到達した人物として知られる。
フローキ
ヨーム戦士団の小隊長。強面で厳格な軍人肌だが、実際は嫉妬深く謀略家で、我欲でアシェラッドにトールズを暗殺させる。デンマーク王位継承問題では長兄ハロルド派で、クヌート帰還後は王子を葬る為に奸計を張り巡らせてアシェラッドと対立する。スヴェン王の死後、王に代わってデーン軍の主導権を得ようとしたがクヌートによりあっさり奪われてしまう。
クヌートが王位についてからは、重臣としてクヌートを支えている。なお、正確には完全にクヌートの家臣となったわけではない。フローキの所属はあくまでヨーム戦士団であり、クヌートとは同盟者のような関係にある。

ブリテン編[編集]

トルケル
「のっぽのトルケル」と呼ばれる、戦の大好きなデーン人の武将[13]。ヨーム戦士団首領でトルフィンの母ヘルガの父シグヴァルディの弟であり、トルフィンの大叔父にあたる人物。非常に巨大な体躯を誇り、ヨーム戦士団のみならずデンマーク軍の中でもトップクラスの鬼将。齢50を超えながらもその巨躯から繰り出される怪力は健在であり、常人を遥かに超える強さを持つ。
「戦士」というもののあり方への矜持が強く、戦乙女(ヴァルキリー)ヴァルハラへ導かれることを願っており、良き戦いを求めるためには敵に寝返ることも厭わない。逆に、命惜しさに寝返って来た者は容赦なく殺戮する。一方で裏表のない気さくな性格であり、配下の戦士たちや一度は裏切ったデンマーク王国の諸将からも極めて強い人気を得ている。カエルが苦手。
かつてはヨーム戦士団の4人の大隊長の一人で、同じく大隊長であり自分より強い唯一の戦士であるトールズに強い友情と敬意を抱いていた。戦死したと思われていたトールズと再会し歓喜するも、その脱走計画を知り激昂し、処罰のために戦いを挑んだが、敗れて脱走を許す。後々「本当の戦士」とは何かを知ったトールズに付いて行かなかったことを後悔し続けることになる。
戦いを求めてデーン軍からイングランド側に寝返りロンドンの守将となっていた。ロンドンの戦いでクヌート王子を破った後、一度は捕虜としたクヌートの身柄を奪い返すべくアシェラッド兵団を追跡。アシェラッドを裏切って投降してきた戦士たちをほとんど皆殺しにして兵団を壊滅させた。
その後、アシェラッドの身柄を巡ってトルフィンと決闘を行い、トルフィンを圧倒し追い詰める。だが、アシェラッドの助言を受けたトルフィンによって、弱点であるアゴへの一撃を受けて倒れ、自ら敗北を認める。この決闘の際、左目をトルフィンに抉られて失明している。その後現れたクヌートの目にトールズと似た不思議な輝きを見出し、クヌートについていくことを決め、デーン軍に復帰。クヌート王子の有力な将となる。
アスゲート
トルケル軍の副将。戦いにしか興味のないトルケルの代わりにトルケル軍の指示を出すことも多い人物。
トルフィンとの決闘に横槍を入れてトルケルの怒りを買うが、命を賭してトルケルを諫止してみせた。それを見たアシェラッドからその態度と胆力を大いに評価されている。また、クヌート陣営の主立った作戦会議にはトルケルやアシェラッドと並んで参加している。
トルグリム
アシェラッド兵団の一員。弟アトリとの巧みなコンビネーション戦法を誇る。
打算的な男で、トルケル軍の脅威を前にしてアシェラッドを見限り、兵団を扇動して反乱を起こす。クヌートを手土産に寝返ろうとするが受け入れられず、トルケルと対峙した際に恐怖のあまり精神に異常を来し幼児退行する。後に弟のアトリに連れられ故郷に帰る。
アトリ
トルグリムの弟にして相棒。
兄のアシェラッドへの叛乱に際し、クヌートを連れて逃げるビョルンたちを追うが、最初にトルフィンの蹴りを食らって昏倒したため、狂化したビョルンと戦わずに済み、彼が正気に戻った隙に致命傷を負わせた。
アシェラッドからは「ヴァイキングに似合わない真人間」と評されており、反乱失敗後にアシェラッドのもとに復帰するも、裏切った事とビョルンの死の原因を作った自責の念から、兄トルグリムを連れて故郷に帰る。
アシェラッド兵団の一員。本名不明。優れた聴覚を持ち、索敵や早期警戒を担当していた。
兵団殲滅の折に戦死。生首を弄ばれる。
ラグナル
クヌートの忠臣であり教育係。キリスト教徒でトンガリ頭が特徴。権力闘争が繰り返されるイェリングの王宮で病弱なクヌートを守ってきた。クヌートがトルフィンと口論するまでは、彼の唯一の話し相手であった。
クヌートの「王としての成長」を促すために、アシェラッドの策略で殺害される。その後、クヌートの夢枕に立ち「王としての目覚め」を告げて消えていった。
ヴィリバルド
クヌート王子の教師を務める、キリスト教修道士
ボサボサに伸びた髪と髭のために年配に見えるが、実は23才の青年。身だしなみを整えると歳相応の顔になる。極度のアルコール依存症で、酒宴の席では酒神エギルの生まれ変わりと言われるほどの酒豪ぶりを披露していた。
みすぼらしい風体と異様な言動のため周囲から軽んじられるが、自らの信仰の中で熱烈に「愛」とは何かを常に追求している。そのあまりに真摯な追求ゆえにその結論は晦渋なものとなり、アシェラッドの手下たちやトルケル軍の戦士達にはほとんど理解されなかった。アシェラッド兵団の古参からトールズの「本当の戦士に剣は要らない」という言葉を聞き、そこにヒントを得る。その後、ラグナルを失ったクヌートに「愛」の本質は何たるかを教え、彼を王に導く。
グラティアヌス
ブリテン島南西部にあるウェールズの小国のひとつ・モルガンクーグ王国の軍団長(レガートゥス)。アシェラッドの要請に応えて自ら船団を率いて救援に駆けつける。「アルトリウスが西の彼方の妖精の島(アヴァロン)から戻り、古(いにしえ)のブリタニアを復興する」という伝説を信じている。また、身に着けている装束もローマの軍団長らしい古風な武装である。
アシェラッドが病で衰弱した母を連れてウェールズ沿岸を訪れたとき、初めて彼に会った。
アッサー
モルガンクーグ王国に北に接するウェールズ人の国、ブリケイニオグ王国の王子。アシェラッド兵団の領内縦断と兵糧の提供に一時難色を示すが、アシェラッドとグラティアヌスに彼らの計画を聞かされ、同意する。
リディア
アシェラッドの母親。ウェールズの王女で、アルトリウスの血を引く最後の一人。「白き女神(グウェンフィヴァル)」の生まれ変わりとわれるほどの美貌を誇ったが、ヴァイキングの襲撃にあい、ユトランドの豪族ウォラフに略取される。デンマークでは奴隷としてウォラフの寝室で「飼われ」、アシェラッドを産み病を得てからは馬小屋で「飼われ」ていた。アシェラッドが11歳の頃に発狂、ウォラフをアルトリウス公と錯覚して彼に縋りつく。死の直前、アシェラッドにより故郷のウェールズへ届けられる。
ウォラフ
アシェラッドの父親。ユトランドの豪族で、アシェラッド曰く酒と女と殺しが好きな典型的なデーンの男。とある事件でアシェラッドの才覚を見抜いて以降、息子の一人としてアシェラッドを館に住まわせていたが、2年後に彼に寝床を襲われ殺害された。
アン
イングランド北部のとある寒村に住む少女。住んでいた村がアシェラッド兵団の冬営地として標的にされ、家族含め村民が皆殺しにされたが、たまたま家を出ていた彼女だけは難を逃れた。風雪のなかさまよった後行き倒れていたところを救助され、アシェラッド兵団がトルケルに捕捉されるきっかけとなった。
スヴェン
デンマーク王。クヌートの父。イングランド遠征を主導し、デーン人支配地域(デーンロー)に滞在してヨークを拠点として整備する。かつて王国を憂いて父から王位を簒奪したが、自身も王位のもたらす権力の保持と拡大の欲求に取り憑かれる。
王位継承に関し、2人の息子による家臣同士の内乱とそれに伴う国力弱体化を危惧し、長兄ハラルドより貧弱な次男クヌートをイングランドで戦死させようと企てる。しかし、意に反してクヌートが苦難を乗り越えてたため、彼に辺境のコーンウォールを与えて懐柔を試みる。しかしこれもクヌートの腹心アシェラッドに逆にやり込められてしまう。一方でアシェラッドのウェールズへの執着にいち早く気づき、ヨークの宴席にて彼にウェールズかクヌートかの選択を迫る。
死後、生首の姿でクヌートの前に度々現れ、自分と同じ道を歩むクヌートを皮肉る。
グンナル
ラグナルの弟。風貌は瓜二つだが、兄より細身。ラグナルの命令を受け、クヌートの亡命先を確保していたが、クヌートはスヴェン王と対峙する道を選んだため亡命を断る。
兄ラグナルとともにクヌート側として働いていたが、兄の死を聞いた後、スヴェン王側の間諜を務める。アシェラッドに見抜かれていたが、あえて泳がされた。
クヌートがイングランド王位についた後は、フローキとともに重臣としてクヌートを支えている。

奴隷編[編集]

ケティル
トルフィンを奴隷として買ったデーン人の大地主。
自ら率先して農場で働く勤勉な人物。エイナルやトルフィンに自由身分を買い取るための方策を与えたり、自らの農場に盗みに入った幼い兄妹の身の上話しに同情して涙ぐんでしまうなど温和な性格の持ち主。そのデーン人としては優しすぎる気質は欠点であると、本人も自覚している。一方、昔はその勇猛な戦いぶりから「鉄拳のケティル」の異名を取った戦士だ、という逸話が若い戦士の間で知られているが、実は「鉄拳のケティル」とは同名の別人であり、周囲の勘違いを否定せずに利用しているだけである。この事実を知っているのは本物の「鉄拳のケティル」との面識がある「蛇」、秘密を打ち明けたアルネイズのみである。
一方で、強さこそを第一とするデーン人社会では、体面を保つために望まぬ行動をとらねばならず、しばしば苦悩している。デンマーク王のハラルドに寄進を行い後ろ盾を得ることで農場の安全を保っているが、その農場の方針で父スヴェルケルとは諍いが絶えない。
トルフィンとエイナルに対しては「働き者」と評価しており、彼らが自由身分を買い戻した後も農場で働かないかと誘う。
ハラルド亡き後はクヌートに取り入ろうとするが、オルマルの失態が原因で農場が危機に陥ってしまい、失意のあまり憔悴して農場に戻った際にアルネイズが逃亡を図ったことを聞いて激昂し、アルネイズを棒で打ち据えてしまう。怒りで我を忘れたうえに、クヌート軍が100人の少数と聞いて舐めてかかるが、圧倒的な個の戦力差の前に手勢は壊滅、奉公人や客人にも見捨てられ、自らも戦闘で重傷を負った。
戦後、傷は回復したもののアルネイズや富・名声を失ったショックから立ち直れず、隠居状態になった。
エイナル
ケティル農場に新しくやってきた奴隷。ノルド系イングランド人で、ノルド語とイングランド語に堪能。奴隷になるまでは農民をしており、農事にくわしい。農民として村に略奪を働く戦士達を憎んでいる。農場に連れて来られるまで何度も脱走を試みており、その度に罰を受けていたがあまりへこたれていなかった。
明るい性格で、あまり返事をしないトルフィンに対しても積極的に話しかける。また、ケティル農場の跡取り息子に殺されそうになった時、自分の身代りを名乗り出たトルフィンを身を挺して逃がそうとし、捕まった後もトルフィンの身を案じて暴れた。トルフィンが元戦士であったことを知った際は憎悪を抱いたが、罪の意識で毎晩うなされるトルフィンを見て考えを改め、友人として接するようになる。その後、トルフィンとは奴隷生活での様々な苦難や、アルネイズとガルザルの逃亡事件、クヌートとの停戦交渉などの修羅場を共に乗り越え、互いを兄弟とも呼び合う相棒のような存在となった。
根っからの農民らしく、農業に対しては非常に真摯かつ全力で取り組む。トルフィンと2人で開拓した農地を奉公人達に荒らされた時は、静かに激怒していた。
好意を持ったアルネイズに対し、これ以上不幸になってほしくないと考え、アルネイズと夫ガルザルの逃亡をトルフィンとともに助けるが、蛇達によって阻止される。この一件で、世の中から戦争と奴隷をなくしたいというトルフィンの理想に強く同調するようになる。
ケティルによる暴行が元でアルネイズが死んだことで、復讐心に呑まれそうになるが、トルフィンの思いを込めた説得を受け、アルネイズの墓の前で戦争も奴隷もない新天地を共に目指すことを誓った。
オルマル
ケティルの息子。次期当主だが、自分をケティルの息子としてでしか扱ってくれない周りに嫌気がさしている[14]
本人は剣で名を上げたいようだが実際はその腕も度胸もなく、クヌートにケティル農場の接収の口実作りに利用される[15]
その後は後悔と自責の念から、おぼろげながらも当主代理としての立場を自覚し、自らの選択で降伏(ケティル一族の国外追放)を決めるが、その後のトルフィンの体を張った和平交渉を目の当たりにして自らの至らなさを思い知る。戦後、半ば隠居したケティルの代わりに事実上の当主となる。
トールギル
ケティルの長男。クヌートの従士で、大柄で腕っ節が強く、戦いを好む典型的なヴァイキング気質の人物。
クヌートの策略をいち早く察知しながら、あえてオルマルを煽って戦闘の口実を作らせた。オルマルを侮辱した戦士数人を皆殺し、自分達を捕らえに来た兵達もあっさり血祭りにあげ、自ら戦争を招き入れた。
戦士としては有能であり、上司のウルフからは「良い部下だった」と言われ、クヌートによるケティル農場の侵攻の際にクヌートを狙って海から単身切り込みなどの大胆さをクヌートにも評価されている。また、農場に戦士を集める上でも一計を案じており、蛇からは「意外と戦上手」であると評された。戦後は行方不明となっている。
パテール
ケティル農場の奉公人。ケティル農場の経理を担当している。奴隷あがりのため、奉公人からはうとまれ、目の仇にされている。公平な人柄で、奴隷身分のエイナルやトルフィンの面倒を見る数少ない人物。しかし公平であるがゆえに、貧しさから盗みを働いた子供に対しても厳格な態度をとる[16]
戦争でトルフィンやエイナルに安否を気遣われたが、確認できる限りでは左腕を負傷しただけで済んでいる。
アルネイズ
ケティルの女奴隷。ケティルから大事にされており、それゆえ開放される事を諦めかけている。ケティルの正妻からは目の敵にされている。心優しい性格と美貌を持ち合わせ、エイナルに一目惚れされる。
奴隷になる前はスウェーデンの集落で夫ガルザル、息子ヒャルティとともに暮らしていた。遠方の泥炭地を巡る争いで男達が村を空けている隙に敵の襲撃を受けて村は壊滅、アルネイズは子供と引き離されて奴隷として売られ、ケティルに買われた。奴隷であるもののケティルの側仕えとして厚遇され、彼の子を宿す。
その後、他の農場主のもとから逃亡してきたガルザルと再会し、スヴェルケルやトルフィンらの助けを受けて二人で逃避行を試みるが、ガルザルは死に自身も脱走犯として捕らえられ、逃亡を図ったことを聞いて激昂したケティルに棒で殴打されて瀕死の重症を負ってしまう。
クヌートの軍勢によって農場が戦場になった隙をつき、レイフの手引きでトルフィンやエイナルと共に農場から連れ出される。夢の中でガルザルに促がされて一時的に意識が戻るがもはや生きる気力を失い、トルフィンやエイナルの懸命な呼びかけも及ばず、二人に感謝しながら息を引き取る。
スヴェルケル
ケティルの父で、先代の当主。気難しい人物だが、エイナルとトルフィンを見て彼の仕事を手伝う代わりに、二人に馬と重量犂を貸し与える。ケティルの農場経営方針を疑問に思っており、あまり折り合いが良くない。キリスト教徒だが文字が読めないので「蛇」に聖書を読んでもらっている。トルフィン達とともにアルネイズと夫の逃避行を助ける。
奉公人たち
自前の耕作地を持たず、ケティル農場で雇われている。自分らより身分の低いトルフィンら奴隷をいじめることでプライドを保っている。
「客人」
ケティルが雇っている農場の用心棒。「蛇」が言うには、「ヘマをやらかしたせいで、本名を名乗れない」者たち。故に構成員は「蛇」自身を含め皆「キツネ」、「アナグマ」など、動物の名前を通り名にしている。
「蛇」
「客人」たちのリーダー。
奴隷に対し悪ノリした客人たちを制裁したり、トルフィンら奴隷にも気さくに接するなど公平な人物。部下の命を大事にする一方、スヴェルケルとウマが合うようで、よく入り浸っている。「客人」の中でも腕が立ち、トールギルに剣を教えたのは彼のようである。教養があり、ベッドに寝たきりになったスヴェルケルに聖書を読み聞かせている。洞察力にも長け、トルフィンの戦士としての性質をいち早く見抜いていた。
逃亡奴隷ガルザルがアルネイズを連れ出した際、他の「客人」の命が損なわれたことに激怒し、アルネイズらを助けようとするトルフィンに対峙する。
本物の「鉄拳のケティル」に昔世話になったことがあり、地主のケティルがその名声を見栄で使用していることを知るただ一人の人物である。クヌートによるケティル農場侵攻の際には、ケティルに雇ってもらった恩を返す為に、勝ち目がない戦だと理解した上で、クヌート軍に対抗する為にケティルの元に寄せ集められた奉公人達の指揮を執った。後にトルフィンらの諫言により、クヌートが農場の接収を取りやめたことに感謝し、自らの真の名「ロアルド・グリムソン」(グリムの子ロアルド)をトルフィンらに教えた。
スチュル
ケティルの農場で盗みを働いていた少年。父を亡くし、病気の母を助けるため盗みを繰り返していたが、蛇に見つかって捕らえられ、一同のもとでの評決の結果、棒打ち20回の刑に処せられる。その後、家族ともどもケティルに奉公人として雇い入れられる。
トーラ
スチュルの妹。
エアドリク
エセルレッドに仕えるマーシア伯。デンマーク軍に制圧され、クヌートに銀8千ポンド(デーンゲルド)と引き換えに軍の退去を要求するが一蹴され、逆に圧倒的な力の差を見せつけられる。クヌートの配下に加わるも、エセルレッドの「病没」に関与した(させられた)せいか後に処刑されている。
史実ではイングランド内のデーンゲルド推進派であったらしく、方針の違いからかエセルレッドから離反してクヌート側に寝返っている。
エセルレッド
イングランド王。デンマーク軍の侵攻で一時ノルマンディーに亡命するが、スヴェンの死に乗じてイングランド王に復位。
その後、クヌートの策で部下に暗殺される(記録では「病没」とされている)。息子のエドモンドが跡を継ぐが、こちらも7ヶ月後に「病没」している。
なんの策もなくデーン人移民の虐殺を行い、スヴェン王による大規模な侵攻を招いた事から歴史上は「無思慮王(Ethelred the Unready)[17]」と呼ばれている。
ハラルド
スヴェンの長子。スヴェンの死後、デンマーク王位を継ぐ。イングランドを治める弟クヌートとは良好な関係を保っていたが、1018年、病に倒れそのまま崩御。嫡子がいなかったため、デンマークはクヌートが継いだ。作中では、両王国の盤石化を図ったクヌートによる暗殺となっている。
エストリズ
ハラルド、クヌートの妹。
ウルフ
クヌートの従士長で、剣の達人。トールギルを部下に持つ。クヌートの命により、短気なオルマルを利用してケティルを逮捕すべく部下をけしかける。
トルフィン(ギョロ目)
トルフィンに似た特徴(年齢、金髪、茶色の目)を持つ青年。そのためトルフィンと間違えられてレイフに買い取られた元奴隷で、現在はレイフの養子になっており、その目付きから「ギョロ目」と呼ばれている。イェリングでオルマルと諍いを起こす。
ガルザル
ケティル農場に現れた逃亡奴隷。アルネイズの元夫。帰る家を失ったのち自身も奴隷身分に落ち、デンマークの農場で働かされていたが農場主キャルラクを殺して逃亡、ケティルの農場で暮らすアルネイズを迎えにくる。戦士としてはかなりの腕前で、「客人」を何人も血祭りに上げた。

サブタイトル一覧[編集]

  • 第1巻 アフタヌーン版
    1. 北人(ノルマンニ)
    2. ここではないどこか
    3. 海の果ての果て
    4. 解かれ得ぬ鎖
    5. 戦鬼(トロル)
    特別編 ヴァイキングッ娘(こ)猛将伝ユルヴァちゃん
  • 第2巻 アフタヌーン版
    6. 戦場よりの使者
    7. 剣
    8. 旅の始まり
    9. 絶海の罠
    10. 夜の航海
    11. 檻
    12. 化け物以上
    13. 匂い
    14. トールズの剣
    15. 本当の戦士
    16. トールズの死
    特別編 取材レポート「オーロラの国へ行ってきました」
  • 第3巻
    17. イングランド-1008年-
    18. イングランド-1013年-
    19. ロンドン橋の死闘
    20. ラグナロク
    21. ヴァルハラ
    特別編 はたらくユルヴァちゃん
  • 第4巻
    22. 戦鬼(トロル)の子
    23. 援軍
    24. 対岸の国
    25. ハッタリ
    26. アルトリウス
    27. 戦士と修道士
    28. 夜間襲撃
    特別編 西本英雄版 ヴァイキングッ娘(こ)ユルヴァちゃん
  • 第5巻
    29. 父と子
    30. 主従の食卓
    31. ケダモノの歴史
    32. 逃亡兵団
    33. 裏切り
    34. アヴァロン
    35: 両軍接触
  • 第6巻
    36. 戦場のふたり
    37. 愛の定義
    38. ゆりかごの外
    39. 王の目覚め
    40. トールズ伝
    41. 共闘
    42. 裁定
    特別編 うろおぼえ う゛ぃんらんど・さが
  • 第7巻
    43. 王子生還
    44. 王冠の呪い
    45. 最後の友達
    46. 二匹の孤狼
    47. 英雄不在
    48. 再会
    49. カルルセヴニ
  • 第8巻
    50. 謀略
    51. 誤算
    52. 英雄復活
    53. ブリタニア王猛(たけ)る
    54. END OF THE PROLOGUE
    55. 奴隷
    56. ケティル農場
  • 第9巻
    57. 若様
    58. 殺してもいい人間
    59. 蛇
    60. 最初の友達
    61. 血の道
    62. クヌートのやり方
    63. 馬がほしい
    64. 続・馬がほしい
  • 第10巻
    65. 大旦那の家で
    66. 発芽
    67. 鉄拳ケティル
    68. カラッポな男
    69. いじめ
    70. 夢の中身
    71. 誓い
  • 第11巻
    72. 呪いの首
    73. 自由になったら
    74. 逃亡奴隷
    75. 王と剣
    76. オルマル晴れ舞台
    77. 侮辱
    78. 反逆罪
  • 第12巻
    79. 暗雲の先触れ
    80. ガルザル来襲
    81. 嵐
    82. 縛(いまし)め
    83. 償い
    84. 都合のいい夢
    85. 対決
    86. 帰れないふたり
    おまけ漫画 ムッシュムラ村のとなり村(漫画:熊谷杯人
    ムッシュムラ村は、西本英雄『元祖ユルヴァちゃん』でユルヴァが住んでいる村の名前。
  • 第13巻
    87. 最初の手段
    88. 罰
    89. 開戦前夜
    90. 飯の代金
    91. ケティル農場の戦い
    92. 百数える間
    93. 戦士の誕生
  • 第14巻
    94. 降伏勧告
    95. 忘れ物
    96. 無敵
    97. 叛逆の帝王
    98. ふたつの楽土
    99. 船出
    100. 帰郷

脚注[編集]

  1. ^ 単行本第6巻帯
  2. ^ ただし、奴隷編に関しては単行本第9巻帯に「奴隷編開幕」、第10巻帯に「奴隷編<前章>クライマックス」と記されている。
  3. ^ 英語ではSt. Brice's Day massacre(聖ブライスの日の虐殺)として知られるが、どの程度の規模の虐殺だったのかは歴史家の中でも評価が分かれている。スヴェン王の妹(Gunhilde)及びに彼女の夫(Pallig)も虐殺の犠牲者だったとされるが、資料が少ないためこの「妹」が実在したか疑問視する向きもある。
  4. ^ 当時のノルド人は家族の代わりに父称を使用した。「~ソン(son)」は「~の息子」(女性の場合「~ドーテル(~dotterもしくは~datter)」で「~の娘」)という意味を表すに過ぎず、現代の日本人やイギリス人の姓とは意味合いが異なる。「トルザル(Þórðar)」は「トールズ(Þórðr)」の属格形。なお、アイスランドでは今でもこの方式を採用している(アイスランド語を参照)。
  5. ^ 父称は血統そのものを表すために、重要な場面では「トールズの子トルフィン」と称する。また、アシェラッドは「父は私に名を与えなかった」と答えたため、スヴェン王に「奴隷の子か」と返され、密かに激昂している。
  6. ^ 「アシェラッドを倒す事だけを生きがいとする」事に関してはアシェラッドにも「その後どうするつもりだ?」と指摘されたことがあるが、当時はアシェラッドを倒す事しか考えていなかったため、その質問を一蹴していた。
  7. ^ ノルウェーなどの伝承にはアスケラーデン(灰の子)という名前の妖精が登場する。伝承では他の者が失敗するところを知恵と胆力で成功する知恵者、という役回りで描かれる事が多い。ただしその際障害を取り除くために選ぶ手段は必ずしもフェアなものではない(トロルとの大食い競争に勝つため持っていた皮袋を切り開いて自分の胃袋を切り開いたように見せかけ、トロルにも同じ事をするように薦める、など)。また、大勢の兄弟の中の末っ子として登場することが多い(Askeladdenを参照)
  8. ^ ただしビョルンには死の間際に真の友人であることを認めた。
  9. ^ ただし、ルキウス・アルトリウス・カストゥスは2世紀にブリタニアに進駐していたローマ軍人の名前であり、5世紀に活躍したとされるアルトリウスと同一視する説は現時点では仮説の域を出ていない。
  10. ^ 他にもトルフィンが「蛇」と戦う事になった時に現れるなど、要所要所で現れてトルフィンに助言を与えている。
  11. ^ トルフィンが帰郷した1018年時点では4人の子供(男3人女1人)が確認されている。
  12. ^ 14巻時点で確認できる数
  13. ^ 歴史書『アングロサクソン年代記』に彼のモデルと思われる「のっぽのトルケル」という人物が記されている。
  14. ^ 末子相続のためケティルの息子の中では一番若い。他の兄弟はみな家を出てしまっている。
  15. ^ 単行本9巻巻末の「ケティル牧場人物相関図」には「バカ」と書かれている。
  16. ^ そのような事をしたら今後労働力として使い物にならなくなる、として盗みに入ったスチュルの両手を切り落とす事には反対したものの、子どもとは言え罰は必要だと主張し、無罪放免にしたいと思っていたケティルを困らせている。
  17. ^ 「無策王」と訳される事もある。

書誌情報[編集]

少年マガジンコミックス版[編集]

アフタヌーンKC版[編集]

外部リンク[編集]