ワルキューレ

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エドワード・ロバート・ヒューズによるヴァルキリーの不寝番

ワルキューレドイツ語: Walküre)は、北欧神話に登場する複数の半神

概要[編集]

戦場において死を定め、勝敗を決する女性的存在である。彼女たちは王侯や勇士を選り分け、ヴァルハラへ迎え入れて彼らをもてなす役割を担ったが、これは尚武を旨とするヴァイキングの思想を反映したものと考えられる[1]

日本語として定着した「ワルキューレ」は、ドイツ語の Walküre (ヴァルキューレ、ヴァールキューレ)に由来する。北欧神話の原語である古ノルド語では、単数形が Valkyrja (ヴァルキュリヤ、ヴァルキュリャ)、複数形は valkyrjur(ヴァルキュリユル、ヴァルキュリュル)で、語義は valr (戦場死体)と kjόsa (選ぶ)を合わせたもので、「戦死者を選定する女」を意味する[2]英語では valkyrie (ヴァルキリー)という。

ワルキューレはおそらく人間の魂が動物の姿をして現れる霊的な存在フィルギャから派生したものと考えられ[3]、主神オーディンの命を受けて、天馬に乗って戦場を駆け、戦死した勇士(エインヘリャル)を選びとってを天上の宮殿ヴァルハラへと迎え入れる役割を持っていた。この勇士達は、ラグナロクでの戦いに備えて、世の終わりまで武事に励むという。ヴァルハラにおいて、彼らをもてなすのもワルキューレの務めの一つである。

ワルキューレは天女のように白鳥羽衣を持ち、男にこれを奪われるエピソードや[4]、これを身にまとうことで白鳥に変身する描写も登場する[5]

本来、ワルキューレは9人いるといわれているが、伝承によって12人[6]、8人[7]と、人数に違いが見られる。また、サガの中に王の娘がワルキューレであると紹介される下りが見られる[8][9][10]

ルーン文字で書かれたレォーク石碑などによると、「ワルキューレの馬」という言葉は一般的なイメージとは違い、ケニングとして使われている。戦死者たちの死骸に集まる狼の群れをモチーフにしたものと考えられている。

オーロラは、オーディンの使者として夜空を駆けるワルキューレのが煌いたものだと考えられていた。

アーサー・ラッカムが描いた『指環』の挿絵より。ワルキューレの騎行。
同。ブリュンヒルデ。
同。ヴァルトラウテ(左)とブリュンヒルデ。

ワルキューレのリスト[編集]

古エッダ[編集]

  • ブリュンヒルデ (Brynhildr) - 勝利のルーンに通じる者
  • スクルド (Sculd) - 運命の三女神の三女で未来を司る(古エッダにおける、ワルキューレの項目に出てくるスクルドは、ノルンとは、別人であるとの説がある)。
  • スケグル (Scögul) - 戦
  • グン (Gunnr) - 戦争
  • ヒルド (Hildr) - 勝利
  • ゲンドゥル (Gondur/Göndul) - 魔力を持つ者
  • ゲイルスケグル (Geirscögul) - の戦
  • フリスト (Hrist) - 轟かす者、援軍
  • ミスト (Mist) -
  • スケッギォルド (Sceggiöld) - の時代
  • スルーズ (Þrúðr) - トールとシフの娘 強き者
  • フレック (Hlöcc) - 武器をがちゃつかせる者
  • ヘルフィヨトル (Herfiötur) - 軍勢の戒め
  • ゲル (Göll) - 騒がしき者
  • ゲイレルル (Geirölul) - 槍を持って進む者
  • ランドグリーズ (Randgrið) - を壊す者
  • ラーズグリーズ (Ráðgrið) - 計画を壊す者
  • レギンレイヴ (Reginleif) - 々の残された者
  • ヘルヴォル (Hervor) - 軍勢の守り手
  • アルヴィト (Alvitr) - 全知
  • エルルーン (Ölrun) - ビールルーン文字に通じる者

新エッダ[編集]

ワーグナーの『ニーベルングの指環』[編集]

ニーベルングの指環』はワーグナーの代表作の一つであり、15時間にも及ぶ巨大な楽劇である。北欧神話をモチーフとしており、序夜に続く第一夜はまさしく「ワルキューレ」と題されており、以下のワルキューレが登場する。

ヴォータン(オーディン)とエルダの娘

  • ブリュンヒルデ (Brünnhilde)
  • ゲルヒルデ (Gerhilde)
  • オルトリンデ (Ortlinde)
  • ヴァルトラウテ (Waltraute)
  • シュヴェルトラウテ (Schwertleite)
  • ヘルムヴィーゲ (Helmwige)
  • ジークルーネ (Siegrune)
  • グリムゲルデ (Grimgerde)
  • ロスヴァイセ (Rossweisse)

出典[編集]

  1. ^ 菅原、p.69 - 70。
  2. ^ 菅原、p.68。
  3. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集 p.21(訳注108)
  4. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集 p.162(「ブリュンヒルドの冥府への旅」6節)
  5. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集 p.93(「ヴェルンドの歌」)
  6. ^ 菅原、p.68(「ニャールのサガ」157章)
  7. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集 p.162(「ブリュンヒルドの冥府への旅」6節)
  8. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』 p.93(「ヴェルンドの歌」)
  9. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集』 p.112(「ヒョルヴァルズの子ヘルギの歌」9節)
  10. ^ 『エッダ 古代北欧歌謡集」 P.119、P.125(「フンディング殺しのヘルギの歌Ⅱ」4節、51節)

参考文献[編集]

  • V.G.ネッケル他編『エッダ 古代北欧歌謡集』谷口幸男訳、新潮社、1973年。
  • 菅原邦城 『北欧神話』東京書籍、1982年。

関連項目[編集]