シンフィヨトリ

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シンフィヨトリの遺体をヴァルハラへ送るオーディン

シンフィヨトリ(Sinfjötli)は『ヴォルスンガ・サガ』に登場する英雄ウォルスング家の血筋を引き、シグムンドが妹のシグニューとの近親相姦によって生まれた。シグルズ(ジークフリート)の異母兄。なお、『ニーベルングの指環』にはシンフィヨトリは登場しないが、代わりにジークフリートが兄妹の近親相姦によって生まれており、シンフィヨトリの人物造形の影響が見られる。なお、『ベオウルフ』などの記述から、もともとシンフィヨトリの名前は「フィヨトリ」だったものが、シグムンドの名前と頭韻を踏むために「sin」を付け加えられたという説が有力である。

生涯[編集]

彼の母親のシグニューは、夫シゲイル王によって、父ヴォルスングとシグムンド以外の9人の兄弟を殺されたため、復讐を誓った。当初はシゲイルとの間に生まれた子供に復讐をさせようとしたのだが、その子供達は役に立たなかったので、魔法で姿を変え、何も知らないシグムンドと臥所を共にしシンフィヨトリを生んだ。

こうして、復讐のために生まれたシンフィヨトリはヴォルスング一族の血を濃く引いた偉丈夫に成長した。10歳になる頃、シグニューは彼の肌着を腕に皮と肉ごと縫い付けることによって息子の精神を試したのだが、シンフィヨトリは泣き喚くことなく気丈にも耐えて見せた。これによって、シンフィヨトリはシグムンドのもとへ送られ、さらに修練を積むことになる。

シグムンドは、シンフィヨトリとともに強盗や追いはぎなどで生活し、心身を鍛えた。ただ、成長過程でシグムンドにより父と思い込んでいるシゲイル王の非道さを説明されていたため、特に家族に対する愛情には疎く育ったという。

成人すると、シンフィヨトリとシグムンドはシゲイルの敵討ちへと行動を移す。このとき、シンフィヨトリはためらいもなく自分の異父弟を殺害している。しかし、この時はシグムンドと共に捕らえられ、岩を隔てた穴へ生き埋めにされる。夜になるとシグニューの差し入れた剣で岩を切り裂いて脱出し、一気に奇襲をかけシゲイルの一族を皆殺しにした。なお、このときシグニューはシゲイルと共に死ぬ運命を選ぶが、その前に彼女はシグムンドとシンフィヨトリに出生の秘密を告げた。

こののち、シンフィヨトリは父シグムンドと共にフンの国(現在のドイツ)へ帰還すると、ヴォルスングの後に王になっていた人物を追放し、シグムンドを王にすることに成功する。さらに、シグムンドと後添いの王妃ボルグヒルドとの間に生まれた異母弟「フンティング殺しヘルギ」の指揮するヴァイキング行(略奪遠征)に補佐官として同行し、手柄を挙げた。

また、シンフィヨトリがヴァイキング行にでた時、一人の女性をめぐって継母ボルグヒルトの弟と対立し戦いになった。これに勝利はしたが、シンフィヨトリはボルグヒルトの怒りを買う。父親のシグムンドは二人の仲を取り持とうとするが修復はできず、ボルグヒルドはシンフィヨトリの毒殺を計画する。このとき、毒が効かない体質のシグムントが、二度までシンフィヨトリの代わりに毒酒を呑んだ。しかし、さすがに三杯目となるとシグムンドは酩酊し、判断力をなくしてしまっていたため、シンフィヨトリは毒酒を飲み、死んだ。

シンフィヨトリの死に嘆き悲しんだシグムンドは、息子を殺したボルグヒルドを追放にした。なお、シンフィヨトリの死体は、謎の渡し守(オーディンと思われる)とともに、どこかへ消えてしまったという。