シグルズ

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シグルズ

シグルズ古ノルド語Sigurðrシグルド 英:Sigurd) は、北欧神話に登場する英雄。『ニーベルンゲンの歌』の主人公ジークフリートと起源を同じくする。

その物語にはさまざまな異説があるが、『ヴォルスンガ・サガ』によれば、英雄シグムンドとヒョルディースの息子でシンフィヨトリの異母兄弟である。父の形見の名剣グラムを振るい、さまざまな軍功を挙げた。

概要[編集]

シグルズは鍛冶のレギンに養われ王子にふさわしい教養を身に着けたが、あるときレギンにシグルズが王の息子であるにもかかわらず、自身で自由にできる財産に乏しい事実を仄めかされ、竜の姿をした小人ファーヴニルを退治して勲しを上げると共に竜の守る莫大な富を入れて身分にふさわしい財を成すよう唆された[1]。シグルズは竜を退治するが[2]、実はレギンはファーヴニルの弟で、兄の財産を独り占めにするためにシグルズを利用していた。しかしシグルズは、剣リジルで切り取られたファーヴニルの心臓の脂を口にしたため、その魔力で鳥の言葉がわかるようになった。そして、シジュウカラの言葉から、レギンの裏切りを知って眠っている間に彼の首を刎ね、グラニに剣フロッティを含む財宝を積んで旅に出た[3]

フランケンへ向う旅の途上シグルズは、ヒンダルフィヨルの山の上に建つ炎に守られた館で、盾の垣の中で眠る身を鎧ったワルキューレ、ブズリの娘ブリュンヒルドを救い彼女と恋に落ち結婚を誓った[4][5]

しかしシグルズはライン河畔のギューキ王の宮廷で、王子グンナルをブリュンヒルドと、王女グズルーンをシグルズと結婚させようと目論む王妃グリームヒルドに忘れ薬を飲まされ、ブリュンヒルドを忘れてしまった[6]

シグルズはグズルーンと結婚し[7]、義兄グンナルがかつての恋人ブリュンヒルドに求婚する旅に同行した。ブリュンヒルドの館を取り巻く炎をグンナルは飛び越えることが出来なかった。グリームヒルドに秘策を授けられていたシグルズはグンナルに姿を変え炎を飛び越え彼女にグンナルとして求婚した。ブリュンヒルドは自分の城を囲む炎を乗り越えてきた勇士と結婚する誓いを立てていたため、やむを得ずグンナルと結婚した[8]

しかしその後グズルーンとの口論でブリュンヒルドは欺かれたことを知り[9]、誓約が偽計によって破られたのならば、シグルズか自分かグンナルのいずれかが死ななければならないと夫に告白した[10]。ブリュンヒルドを失うことを恐れたグンナルは弟ホグニと計り、もう一人の弟グットルムにシグルズを暗殺させた[11]。グズルーンはグリームヒルドの忘れ薬で兄たちへの恨みは忘れたが、シグルズを忘れることはなかった[12]

シグルズがファーヴニルから奪ったアンドヴァリの呪われた遺産は、彼の死後も悲劇の原因となった[13]

脚注[編集]

  1. ^ 『アイスランドサガ』p.551-555「ヴォルスンガサガ」第13節-第15節。
  2. ^ 『アイスランドサガ』p.557-558「ヴォルスンガサガ」第18節。
  3. ^ 『アイスランドサガ」p.560-561「ヴォルスンガサガ」第19節 - 第20節。
  4. ^ 『アイスランドサガ』p.565-566「ヴォルスンガサガ」第22節。
  5. ^ シグルズは一度ブリュンヒルドと別れるが、彼女の養父ヘイミルの館で養父の元に戻った彼女と再会する。彼は結婚の意志を新たにするが、ブリュンヒルドは自分たちの恋は成就しないだろうと予言する(『アイスランドサガ』p.567-569「ヴォルスンガサガ」第25節)。
  6. ^ 『アイスランドサガ』p.571-572「ヴォルスンガサガ」第27節。
  7. ^ 『アイスランドサガ』p.572 - 573「ヴォルスンガサガ」第28節。
  8. ^ 『アイスランドサガ』p.572-575「ヴォルスンガサガ」第29節。
  9. ^ 『アイスランドサガ』p.575-577「ヴォルスンガサガ」第30節。
  10. ^ 『アイスランドサガ』p.581-582「ヴォルスンガサガ」第30節。
  11. ^ 『アイスランドサガ』p.582 -p.583「ヴォルスンガサガ」第32節
  12. ^ 『アイスランドサガ』p.586- p.587「ヴォルスンガサガ」第34節。
  13. ^ 菅原、p.251。

参考文献[編集]

  • 『アイスランドサガ』谷口幸男訳、新潮社、1979年。
  • 菅原邦城『北欧神話』東京書籍、1984年。