ルーン文字

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ルーン文字
類型: アルファベット
言語: ゲルマン諸語
時期: Elder Futharkは2世紀-
親の文字体系: フェニキア文字
 → 古イタリア文字
  → ルーン文字
子の文字体系: Younger FutharkAnglo-Saxon Futhorc
Unicode範囲: U+16A0-U+16FF
ISO 15924 コード: Runr

ルーン文字(ルーンもじ、Runic alphabet)とは、ゲルマン語の表記に用いられた文字体系。ルーン(あるいはルーネ)とは、スカンジナビア語やゴート語が語源で「神秘」「秘儀」などを意味する。音素文字である。

呪術や儀式に用いられた神秘的な文字と紹介される事もあるが、実際には日常の目的で使われており、ルーン文字で記された書簡や荷札なども多数残されている。呪術にも用いられていたがそれが盛んに行われるようになったのはむしろ、ラテン文字が普及し、ルーン文字が古めかしくいかにも神秘的に感じられるようになった時代に入ってからである。

1世紀頃に、ギリシャ文字やラテン文字、北イタリア文字などを参考に、ゲルマン語の発音体系に合うよう改変して成立した物と推測されている。ルーン文字の起源説としては、学者の間では北イタリア説が最も有力である。 世界最古のルーン文字は、北ドイツで出土した1世紀の遺物のブローチに彫られたものであるといわれている。その他にはブラクテアートと呼ばれる薄い黄金製の円盤にルーン文字を刻んだものが多数発見され、護符を兼ねた装飾品として扱われていた。

個々の文字をルーンと呼び、ルーン文字のアルファベットを、初めの6つのルーンから「フサルク」 (futhark) と呼ぶ。このうち、第3ルーン (þ) はソーン (þorn, þotn) と呼ばれ、現代でもアイスランド語で使われている。

本来、木片などにナイフで刻みつけて表記していた。そのため、木目と紛れて読みにくくなりがちな横線が避けられ、縦の長い線と斜めの短い線とを組み合わせた字形になっている。

目次

[編集] ゲルマン共通ルーン文字

以下に、まずゲルマン共通ルーンの字形を画像で示す。 次に、それぞれの文字の一般に行われているラテン文字への転写、推定されている名称と意味、推定されている字形の由来を示す。

ゲルマン共通ルーン文字

ラテン文字転写 名称 (意味) 表しうる発音 形の由来
f *fehu (財産、家畜。 英語feeやドイツ語Viehの語源) [f],[v] ラテン文字Fの横線を斜めにした形
u *ūruz (野牛) [u] ラテン文字Uを上下逆にした形
þ *þurisaz (巨人、怪物)、古英語形 þorn (棘、イバラ) [θ],[ð] 棘の形?
ギリシャ文字Φ?
a *ansuz (神) [a] ラテン文字Aの右一画を短くした形か?
r *raidō (騎乗、乗り物。英語ride, roadと同語源) [r] ラテン文字R
k 不明。
古英語形 cén (松、松明)、古ノルド語形 kaun (腫れ物)
[k] ラテン文字C
g *gebō (贈り物。英語gift,giveと同語源) [g] ギリシャ文字X?
w *wunjō (喜び) [w] ラテン文字Vを左に倒した形?
h *hagalaz (雹。英語hailの語源) [h] ラテン文字Hの横線を斜めにした形
n *naudiz (欠乏。英語needと同語源) [n] ラテン文字Nの右一画を省略
i *īsa- (氷。 英語iceの語源) [i] ラテン文字I
j *jēra- (年。英語yearの語源) [j] 不明
ï , é *īhwaz (イチイの木。英語yewの語源) [i]と[e]の中間([ı]) 不明
p *perþ-? (不明) [p] ギリシャ文字Πを左に倒した形?
z, R *algiz? (不明) [z], [r] 不明
s *sōwilō (太陽) [s] ラテン文字Sを直線で描いた形
t *tīwaz (軍神テュール) [t] ラテン文字Tの横線を斜めにした形
b *berkanan (樺の小枝。英語birchの語源) [b] ラテン文字B
e *ehwaz (馬) [e] ラテン文字Eを右に倒した形
m *mannaz (人間。 英語manに同じ) [m] ラテン文字M
l *laguz (水。英語lakeと同語源) [l] ラテン文字Lを上下逆にした形
ŋ , ng *ingwaz (神または英雄の名前? 一説には豊穣神フレイの呼称) [ŋ], [ŋg] 不明
o *ōþila- (世襲の土地、領土) [o] ラテン文字Oを直線で描いた形
d *dagaz (日中、昼間。英語day, ドイツ語Tagなどの語源) [d] ラテン文字Dを左右二つ並べた形?

この字形はあくまでも一例である。実際の文字では、上記のものが裏返しになっていたり、 上下逆になっていたりしたものもある。

名称は、ゲルマン共通基語の再建形。実際にどこかに記録されていたものではなく、 あくまでも比較言語学上で推定されたものなので、史実とは異なる可能性もある。 発音も同様なので、あくまでも近似値と理解されたい。

8世紀頃までゲルマン語圏全域で使用された。

[編集] 北欧ルーン文字

以下にまず、表によって各文字のラテン文字転写、名称と意味、表し得る発音を示す。字形はいくつかあるので、それぞれの項目毎に画像で示す。

ラテン文字転写 名称(意味) Noreen式ラテン文字転写と表しうる発音
f fé (家畜、財産) f[f],[v]
u úr (ノルウェー語で残滓。アイスランド語で霧雨) u[u] ú[u:]
y[y] ý[y:]
o[o] ó[o:]
ø[ø] œ[œ:]
v[v],[w]
þ þurs (巨人、怪物、魔物) þ[θ]
ð [ð]
ą , o ą´ss , óss (アース神族) ą[a:],[ã]
ö[広いオ] ö´[広いオの長音]
o[o] ó[o:]
r reið (騎乗) r [r]
k kaun (腫れ物) k [k],[kj],[x] nk[ŋk]
g[g],[gj],[γ],[j] ng[ŋg]
h hagall (雹) h [h]
n nauð (必要) n [n]
i íss (氷) i[i] í[i:]
e[e] é[e:] æ[æ:]
j[j]
a ár (年) a[a] á[a:]
æ[æ:]
ö[広いオ] ö´[広いオの長音]
s sól (太陽) s[s]
t týr (軍神テュール) t[t] nt[nt]
d[d] nd[nd]
b bjarkan (樺) b [b] mb[mb]
p[p],[f] mp[mp]
m maðr (男) m[m]
l lögr (水) l[l]
R ýr (イチイの木) R[r]

8世紀頃より北欧を中心に使用され始めたルーン文字。 いくつかの字体があるが、特に以下に挙げる長枝ルーンと短枝ルーンが広く用いられた。

特徴として、文字数が、ゲルマン共通ルーンの24文字から16文字に減少した事が挙げられる。 この時期の古ノルド語が、音韻変化により音の数を大幅に増やした事に反するこの現象の為、 一つの文字でいくつもの音を表す事になった。

綴り方の特徴としては他に、重子音や同種の子音に続く鼻音が省略される事が挙げられる。 例えば「王」を意味するkonungrは、oの代わりにuを、gの代わりにkを用い、gの前のnを省略して、kunukr、またはkunukRのように綴られた。 同様に「王侯、君主」を意味するdróttinnは、trutinのように綴られた。

[編集] 長枝ルーン

長枝ルーン文字

デンマーク形ルーンともいわれるが、実際にはそれ以外の場所でも用いられた。ルーン文字の楷書体といえる。

[編集] 短枝ルーン

短枝ルーン文字

スウェーデン・ノルウェー形ルーンとも呼ばれるが、それ以外の場所でも用いられた。 長枝ルーンの画数を省略した物で、ルーン文字の行書体といえる。

[編集] ヘルシンゲルーン

ヘルシンゲルーン文字

ルーン文字の草書体といえる。ルーン文字の左側にある長い線を省略し、画数を減らしたもの。 10世紀から11世紀頃のスウェーデンで使用された。

[編集] アングロサクソンルーン文字

5世紀頃から始まりフリースラントイングランドで使用されたもの。9世紀ごろから廃れ始め、11世紀中には使用されなくなった。ゲルマン共通ルーンをもとにしつつも、a、o、æの文字が区別されるなど、古英語フリジア語の音をより正確に表記できるように文字が追加されている。

[編集] 占い

ルーン文字を刻んだ石、木、金属、ガラスなどを使用して占う。占い方法は古来から全てのルーンを投げてから一つ拾うキャスティングという方法があるが、現在では全てのルーンを袋の中に入れ、質問を念じながら手を入れ、一つつかみ出したルーン文字が回答とする方法が一般的である。 その他、昨今は紙に印刷されたルーンカードを使用する場合も多い。

[編集] 関連項目