注音符号

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注音符号
Zhuyinbaike.svg
注音符号による「百科全書」
類型: アルファベット
言語: 中国語 (主に普通話)
時期: 1913年 - 21世紀(現在は漢字の発音記号としての位置付け)
親の文字体系:
漢字
  • 注音符号
Unicode範囲: U+3100-U+312F
U+31A0-U+31BF
ISO 15924 コード: Bopo
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号(IPA)を含む場合があります。
注音符号
各種表記
繁体字 注音符號
簡体字 注音符号
拼音 Zhùyīn Fúhào
注音符号 ㄓㄨˋ 丨ㄣ ㄈㄨˊ ㄏㄠˋ
発音: ヂューインフーハオ
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青銅器時代中期 前19–15世紀

メロエ 前3世紀
カナダ先住民 1840年
注音 1913年
完全な系図
注音符号の筆順及び拼音との対応表

注音符号(ちゅういんふごう、ちゅうおんふごう)とは、中国語の発音を記述するための方法の一つ。先頭の四文字「ㄅㄆㄇㄈ」 (bpmf) からボポモフォ (bopomofo) とも呼ぶ。本来の意味は「読みを綴る」。

概要[編集]

1918年中華民国の教育部(文部省)が、日本語カタカナにならって、漢字の右側に読む音を注記するために「注音字母」を公布した[1]。そのため当初の正式名称は「注音字母」であり、漢字に代わる表記法と位置づけられていた。南京国民政府でも引き続き公認されたが、1930年に「注音符号」と改称され、位置づけが漢字の発音記号に縮小された。今は主に台湾中華民国)で使用・奨励されている。中国中華人民共和国)やシンガポールや世界各国では廃止され、拼音を使用している。

日本語仮名と同じく、ある音に合う漢字の一部を取り出して使用しているため、カタカナと似た字体の文字もあるが、読みが共通しているものは存在しない。また、日本の仮名と同じく、台湾では初等教育の初期からこれを習い、キーボードや携帯の入力に用いる。また、電報にも使えるようにコード化されている(電碼参照)。

台湾で定められた文字コードセットである Big5 にも、中国大陸の GB 2312 とその後継規格にも収録されており、Unicode では U+3105 から U+312D に割り当てられているので、コンピュータインターネットでも使用できる。

もともと、「國語」(現在の普通話にあたる)の音を表記するために考案されたが、制定当初は「国語とは何か」についてまだ総意がなかったため、呉語声母に存在する「」(ほとんど形が同一の漢字:万、[v])、「」(兀、[ŋ])、「」(广、[ɲ])も字母として正式に制定されている(Unicode 登録済み)。この三字母は「京音京調」(北京音と北京の声調)が「国語」の正式の発音に認定された1923年以降使われなくなり、学校教育での表からも外されている。一方、近年の台湾では新たに台湾語客家語の音を表記するために注音符号を変型した方言字を作ったり、補助記号を付けた表記法も考案されている。一部の文字は "Bopomofo Extended" (注音字母拡張)の名で Unicode の U+31A0 から U+31B7 に割り当てられている(中国語版の記事台灣方言音符號を参照)。

注音符号の文字[2][編集]

子音字[編集]

子音字は、漢語拼音の子音表記をそのまま置き換えるだけである。拼音の j, q, x ([d̥ʑ̥, tɕʰ, ɕ]) が g, k, h (/ɡ̊, kʰ, x/) の異音であることは利用されていない。普通話#声母を参照すること。

注音符号
漢語拼音 b p m f d t n l g k h j q x zh ch sh r z c s
IPA m f n l ɡ̊ x d̥ʑ̥ tɕʰ ɕ d̥ʐ̥ tʂʰ ʂ ʐ ʣ̥ tsʰ s
由来 𠫓 𡿨

母音字[編集]

注音符号
漢語拼音 a e i u o ü ê ai ei ao ou an en ang eng, -ng er,r
IPA a ɤ i u o y e an ən ɑŋ ɤŋ, ŋ ɚ, r
由来 𠀀 𠀀 𠀅 𢎘 𠃑 𠃋
  • 拼音の zhi, chi, shi, ri, zi, ci, si の -i は表記しない。
  • は縦書きの時は「一」、横書きの時は「丨」と表記される。
  • の後では [ɛn] と発音する。の後では [n] と発音する。
  • は他の母音字の後では [ŋ] と発音する。
  • r 化にも使用される。r 化の際、母音が鼻母音に変わるなどの変音は記述分けしない。

声調記号[編集]

第一声 第二声 第三声 第四声 軽声
注音符号 なし ˊ ˇ ˋ ˙

漢語拼音とは違い、省略した場合は第一声になる。声調記号は、縦書きの時は最後の母音字の右上方、横書きの時は最後の母音字の左上方または右側に書く。ただし、軽声の記号のみ音節の先頭に書く。Unicode では U+02CA, U+02C7, U+02CB, U+02D9 に割り当てられており、漢語拼音で使用する声調記号と統合されている。

漢語拼音との相違点[3][編集]

基本的には上の表による置き換えで良いが、以下の母音の表記が異なる。

漢語拼音 注音符号 説明
wei, -ui ㄨㄟ u + ei
ye, -ie 丨ㄝ i + ê
yue, -üe ㄩㄝ ü + ê
yin, -in 丨ㄣ i + en
yun, -ün ㄩㄣ ü + en
ying, -ing 丨ㄥ i + eng
-ong ㄨㄥ u + eng
yong, -iong ㄩㄥ ü + eng

また、zhi, chi, shi, ri, zi, ci, si の -i は /i/ と異なり、子音を発音する口の形のまま発音する母音なので、母音字を表記しない(専用の字母を用いて書くこともある)。

以下に韻母の表を示す。

主母音 尾音 介音
Ø /i/ /u/ /y/
/a/ Ø
a
丨ㄚ
ya
ㄨㄚ
wa
 
/i/
ai
  ㄨㄞ
wai
 
/u/
ao
丨ㄠ
yao
   
/n/
an
丨ㄢ
yan
ㄨㄢ
wan
ㄩㄢ
yuan
/ŋ/
ang
丨ㄤ
yang
ㄨㄤ
wang
 
/ə/ Ø
e
丨ㄝ
ye
ㄨㄛ¹
wo¹
ㄩㄝ
yue
/i/
ei
  ㄨㄟ
wei
 
/u/
ou
丨ㄡ
you
   
/n/
en
丨ㄣ
yin
ㄨㄣ
wen
ㄩㄣ
yun
/ŋ/
eng
丨ㄥ
ying
ㄨㄥ
weng ²
ㄩㄥ
yong
Ø
-i

yi

wu

yu
  1. (b), (p), (m), (f) の後では, -o を用いる。
  2. 頭子音があると weng から -ong になる。

特徴[編集]

  • 子音字と母音字が分かれているので、漢語拼音の「'」(隔音符号)のような記号を必要としない。母音字の書かれない歯茎音・そり舌音に母音のみの音節が続くような場合でも、声調記号が隔音符号をも兼ねる。
  • 普通話のすべての音節が、必ず3文字 + 声調記号に収まるようになっている。例えば印刷のルビのレイアウトに適合している。文字入力の手段としても入力キー数がある程度抑制できる。
  • 漢字や仮名と同様に、無理なく縦書きも横書きも自由自在にできる。
  • 漢語拼音の diu, dui のような短縮型が使われず、英語などの発音に影響されることなく正確な発音をしやすい。
  • 漢語拼音の場合、ローマ字の母音の数に制限され、一つの文字で違う音質として使うことがある。例えば zhi と xi の i、bian と ba の a など、初学者が間違えやすい表記がある。一方、注音符号ではそれぞれ違う記号が作られたため、間違えにくい。

用例[編集]

Tái wān

ˊ

このように一般的には漢字音を注記する時に使われるが、台湾ではスラングなどで漢字のない音を表すときにもこの符号を文字として発音を書き表す。また、漢字が有る場合でもアルファベットと同様に代用表記として使われている。一般的によく使われるのは「」(欸、呼びかけの言葉)。

台湾鉄路管理局貨車の形式表記では、独立した文字として使用されている。

コンピュータ[編集]

Unicode一覧[編集]

Bopomofo U+3100 - U+312F 及び Bopomofo Extended U+31A0 - U+31BF
U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
3100     
3110
3120  
31A0
31B0     

キーボード[編集]

注音符号

Windowsの中国語(繁体字、台湾/New Phonetic)キーボードの配列は以下の通り。

  • 「子音+母音」+「声調」で漢字変換 (記号を持たない第一声に関しては、スペースキーを使用)、↑↓矢印キーで候補選択。
  • 注音符号そのものを入力したい場合は、そのキーを押した直後に、スペースキーを押せば、そのまま入力できる。
左側に子音字、右側に母音字が並ぶ。句読点は左上のキーを押して入力。「Shift+Space Key」で全角・半角切り替え。(水色の「ü」はピンイン入力時のキーの位置を表しているので、ここでは無視して構わない。)


脚注[編集]

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  1. ^ 岡田英弘「歴史とはなにか」 2001年 文藝春秋
  2. ^ 注音符号の文字と実際のㄅㄆㄇㄈ発音
  3. ^ 組み合わせ音の発音

外部リンク[編集]