ティフィナグ文字

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
この項目には、一部のコンピュータや閲覧ソフトで表示できない文字(ティフィナグ文字)が含まれています詳細
原ティフィナグ文字
類型: アブジャド
時期: 紀元前3世紀から3世紀まで
親の文字体系:
原シナイ文字
子の文字体系: ティフィナグ文字、新ティフィナグ文字
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
ティフィナグ文字 (トゥアレグ)
類型: アブジャド
言語: トゥアレグ語
時期: ??から現在まで
親の文字体系:
原シナイ文字
子の文字体系: 新ティフィナグ文字
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
新ティフィナグ文字
Tifinagh.png
類型: アルファベット
時期: 1980年から現在まで
親の文字体系:
原シナイ文字
Unicode範囲: U+2D30–U+2D7F
ISO 15924 コード: Tfng
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。
マリ北部のキダルのウェルカムサイン。町名がティフィナグ文字 (ⴾⴸⵍ) とラテン字で書かれている。

ティフィナグ文字 またはティフナグ文字(Tifinagh)(発音:tifinaɣ, ベルベル・ラテン・アルファベット (en:Berber Latin alphabet)ではTifinaɣ、新ティフィナグ文字では ⵜⵉⴼⵉⵏⴰⵖ 、ベルベル・アラビア文字en:Berber Arabic alphabetでは تيفيناغ と書かれる。) は、ベルベル人の一部特にトゥアレグ人によってトゥアレグ語を書くために使用される、アブジャド の一揃いであり、また アルファベット文字である[1]

「新ティフィナグ文字」として知られる、伝統的文字から派生した現代の文字は、20世紀に導入された。日常的なコミュニケーションの手段としては広く普及していないが、ベルベル・アイデンティティを政治的・象徴的に主張するためにしばしば使われる。

「Tifinagh Ircam」と呼ばれるわずかに修正された伝統的文字は、限られた数のモロッコの小学校でベルベル語を児童に教えるため使用されている。

「ティフィナグ(tifinagh)」や「ティフィニグ(tifinigh )」という単語は、「punic(ポエニの)」という単語女性複数と同源であると広く考えられている。つまり女性接辞の「ti」とラテン語の「Punicus」で、「ティフィナグ」は「ポエニの(文字)」を意味すると考えられる。 [2][3]

起源[編集]

この文字の早期の形つまり「原ティフィナグ文字」または「リビュコ・ベルベル文字」は、おそらくフェニキア文字のポエニの変種から発展したのであろう。 .[4] 原ティフィナグ文字はおおよそ前3世紀から3世紀にかけて使用された。

東部と西部の2つの変種が知られている。 東部変種は、現在のアルジェリアコンスタンティーヌオーレス地方とチュニジアで使用された。この変種は、特にチュニジアのドゥッガでの)いくつかのヌミディアのリビア語とポエニ語で書かれた二カ国語の碑文の発見により、最も解読された変種である。24文字のうち22文字が解読されている。 西部変種はより原始的である。(Février 1964–1965)カビーリヤからカナリア諸島にかけての地中海沿岸で使用された。13の追加文字を使用した。

リビコ・ベルベル文字は純粋なアブジャドであり、母音がない。長子音の印は書かれない。筆記は通常下から上、右から左だが、他の順番も発見されている。縦書きと横書きで、文字は異なる形を取る。[4]

トゥアレグ・ティフィナグ文字[編集]

原ティフィナグ文字は、トゥアレグ語の伝統的な筆記手段として使用された。 伝統的には、単語の終わりを除いて、母音の印を付けない。いくつかの地域では、母音を示すためにアラビア文字の母音記号がティフィナグ文字と組み合わせて使われる。

時折、Tagdal ソンガイ語英語版といった近隣の言語を表すためにも用いられている。

新ティフィナグ文字[編集]

上から、アラビア語、ティフィナグ文字、フランス語が併記された看板(モロッコ
上から、アラビア語、ティフィナグ文字、フランス語が併記された案内標識(アルジェリア

新ティフィナグ文字とは、ティフィナグ文字の初期形態から派生した20世紀の文字である。これはアルファベットであり、左から右へと書く。フランス国立東洋言語文化研究所の教授Salem Chakerが新ティフィナグ文字の変更を提案した。 (Tafsut 1990 #14).

最近まで、重要で堅い用途には活動家がラテン文字(またはまれにアラビア文字)を好んだため、事実上このアルファベットで出版された本やウェブサイトはなかった。しかしながら象徴的な用途にはとても普及しており、異なる文字で書かれた多くの本やウェブサイトがロゴやタイトルに新ティフィナグ文字を使用している。

モロッコでは、2003年にラテン文字とアラビア文字の主張に対し、新ティフィナグ文字を導入することにより、国王が中立の立場を取った。 結果として、本がこの文字で出版され始め、いくつかの学校で教えられた。しかし、多くの独立ベルベル語出版物は、ベルベル・ラテン文字を使用して出版されている。モロッコ国外では、公的な地位はない。皮肉なことに、1980年代や1990年代ではモロッコ国はこの文字を使用した人々を逮捕し投獄していた。[5]

アルジェリアでは、ほとんど全てのベルベル語出版物は、ティフィナグ文字ではなく、ベルベル・ラテン・アルファベットを用いている。

リビアでは、カダフィー体制は、店のディスプレイや旗といったような公的な文脈でのベルベル・ティフィナグ文字の使用を一貫して禁止していた。 [6]

最近のリビアの体制転覆の後、国民評議会(反体制派)はベルベル語に対し開放性をみせた。カタールに本拠地を置く独立反体制派en:Libya TVは、ベルベル語やティフィナグ文字をいくつかの番組に導入している。.[7]

文字[編集]

基本文字 (付加記号を含む)
コード 字形 Unicode 翻字 名前
ラテン文字 アラビア文字 IPA
U+2D30 2D30.png a ا æ ya
U+2D31 2D31.png b ب b or β yab
U+2D32 2D32.png b ٻ b or β yab fricative
U+2D33 2D33.png g گ ɡ yag
U+2D34 2D34.png g ڲ ɡ yag fricative
U+2D35 2D35.png dj ج d͡ʒ Berber Academy yadj
U+2D36 2D36.png dj ج d͡ʒ yadj
U+2D37 2D37.png d د j yad
U+2D38 2D38.png d د j yad fricative
U+2D39 2D39.png ض ðˤ yaḍ
U+2D3A 2D3A.png ض ðˤ yaḍ fricative
U+2D3B 2D3B.png e ه ə yey
U+2D3C 2D3C.png f ف f yaf
U+2D3D 2D3D.png k ک k yak
U+2D3E 2D3E.png k ک k Tuareg yak
U+2D3F 2D3F.png ⴿ k ک k yak fricative
U+2D40 2D40.png h
b
ھ
ب
h
b
yah
= Tuareg yab
U+2D41 2D41.png h ھ h Berber Academy yah
U+2D42 2D42.png h ھ h Tuareg yah
U+2D43 2D43.png ح ħ yaḥ
U+2D44 2D44.png ʕ (ɛ) ع ʕ yaʕ (yaɛ)
U+2D45 Yakh.svg kh (x) خ χ yax
U+2D46 2D46.png kh (x) خ χ Tuareg yax
U+2D47 2D47.png q ق q yaq
U+2D48 2D48.png q ق q Tuareg yaq
U+2D49 2D49.png i ي i yi
U+2D4A 2D4A.png j ج ʒ yaj
U+2D4B 2D4B.png j ج ʒ Ahaggar yaj
U+2D4C 2D4C.png j ج ʒ Tuareg yaj
コード 字形 Unicode 翻字 名前
ラテン文字 アラビア文字 IPA
U+2D4D 2D4D.png l ل l yal
U+2D4E 2D4E.png m م m yam
U+2D4F 2D4F.png n ن n yan
U+2D50 2D50.png ny ني nj Tuareg yagn
U+2D51 2D51.png ng ڭ ŋ Tuareg yang
U+2D52 2D52.png p پ p yap
U+2D53 2D53.png u
w
و
ۉ
w yu
= Tuareg yaw
U+2D54 2D54.png r ر r yar
U+2D55 2D55.png ڕ yaṛ
U+2D56 2D56.png gh (ɣ) غ ɣ yaɣ
U+2D57 2D57.png gh (ɣ) غ ɣ Tuareg yaɣ
U+2D58 2D58.png gh (ɣ)
j
غ
ج
ɣ
ʒ
Aïr yaɣ
= Adrar yaj
U+2D59 2D59.png s س s yas
U+2D5A 2D5A.png ص yaṣ
U+2D5B 2D5B.png sh (š) ش ʃ yaš
U+2D5C 2D5C.png t ت t yat
U+2D5D 2D5D.png t ت t yat fricative
U+2D5E 2D5E.png ch (tš) تش t͡ʃ yatš
U+2D5F 2D5F.png ط yaṭ
U+2D60 2D60.png v ۋ v yav
U+2D61 2D61.png w ۉ w yaw
U+2D62 2D62.png y ي j yay
U+2D63 2D63.png z ز z yaz
U+2D64 2D64.png z ز z Tawellemet yaz
= Harpoon yaz
U+2D65 2D65.png ظ yaẓ
U+2D6F 2D6F.png +ʷ ۥ+ ʷ Labio-velarization mark
= Tamatart
= <super> 2D61
2文字で1音素を表すもの(合字を使う場合もある)
コード 字形 Unicode 翻字 名前
ラテン文字 アラビア文字 IPA
U+2D5C U+2D59 2D5C.png2D59.png ⵜⵙ ts تس t͡s yats
U+2D37 U+2D63 2D37.png2D63.png ⴷⵣ dz دز d͡z yadz
コード 字形 Unicode 翻字 名前
ラテン文字 アラビア文字 IPA
U+2D5C U+2D5B 2D5C.png2D5B.png ⵜⵛ ch (tš) تش t͡ʃ yatš
U+2D37 U+2D4A 2D37.png2D4A.png ⴷⵊ dj دج d͡ʒ yadj
Color Key
Basic Tifinagh (IRCAM Extended Tifinagh (IRCAM)  Other Tifinagh letters  Modern Tuareg letters 
IRCAMのティフィナグ。33文字から成る。

上記「基本・拡張」などの分類は、IRCAMの採用文字種を中心としたモロッコ中心の区分である。

ユニコード[編集]

ティフィナグ文字はユニコードスタンダードに2005年5月にバージョン4.1のリリースと共に追加された。 ティフィナグ文字のユニコードのブロックはU+2D30–U+2D7F。灰色部分はコードが割り当てられていないポイント。

Tifinagh[1]
Unicode.org chart (PDF)
  0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
U+2D3x ⴿ
U+2D4x
U+2D5x
U+2D6x
U+2D7x ⵿
Notes
1.^As of Unicode version 6.1

IRCAMは、無料のUnicodeフォント Tifinaghe-ircam Unicode ほかを配布している[1]。収録文字種はIRCAMのティフィナグを中心としている。別の組織からは Hapax Berbère などのフォントも配布されている。こちらもUnicode互換のフォントで、トゥアレグ系の文字・IRCAM以外の新ティフィナグの文字などUnicode未収録の文字も外字(PUA)領域に多数含んでいる[2]

参照[編集]

参考文献[編集]

  • Aghali-Zakara, Mohamed (1994). Graphèmes berbères et dilemme de diffusion: Interaction des alphabets latin, ajami et tifinagh. Etudes et Documents Berbères 11, 107-121.
  • Aghali-Zakara, Mohamed; and Drouin, Jeanine (1977). Recherches sur les Tifinaghs- Eléments graphiques et sociolinguistiques. Comptes-rendus du Groupe Linguistique des Etudes Chamito-Sémitiques (GLECS).
  • Ameur, Meftaha (1994). Diversité des transcriptions : pour une notation usuelle et normalisée de la langue berbère. Etudes et Documents Berbères 11, 25-28.
  • Boukous, Ahmed (1997). Situation sociolinguistique de l’Amazigh. International Journal of the Sociology of Language 123, 41-60.
  • Chaker, Salem (1994). Pour une notation usuelle à base Tifinagh. Etudes et Documents Berbères 11, 31-42.
  • Chaker, Salem (1996). Propositions pour la notation usuelle à base latine du berbère. Etudes et Documents Berbères 14, 239-253.
  • Chaker, Salem (1997). La Kabylie: un processus de développement linguistique autonome. International Journal of the Sociology of Language 123, 81-99.
  • Durand, O. (1994). Promotion du berbère : problèmes de standardisation et d’orthographe. Expériences européennes. Etudes et Documents Berbères 11, 7-11.
  • O’Connor, Michael (1996). The Berber scripts. The World’s Writing Systems, ed. by William Bright and Peter Daniels, 112-116. New York: Oxford University Press.
  • Penchoen, Thomas G. (1973). Tamazight of the Ayt Ndhir. Los Angeles: Undena Publications. 
  • Savage, Andrew. 2008. Writing Tuareg – the three script options. International Journal of the Sociology of Language 192: 5-14
  • Souag, Lameen (2004年). “Writing Berber Languages: a quick summary”. L. Souag. 2005年7月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年7月6日閲覧。
  • イスラーム百科事典, s.v. Tifinagh.

外部リンク[編集]