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宮本武蔵が槍でと戦う画(画:歌川国芳

(やり)は刺突を主目的とする猟具、武器武具の一種。投擲することを目的としたものは投槍という。有史以前から人類が使用し続け、銃剣に代替されるまで長く戦場で使われ続けた。とも書く。

概要[編集]

槍は人類最古の狩猟道具・武器の一つで、白兵戦用武器の中で最も活躍した実用的な武器の一つであり、その用途、種類は幅広く類似品も数多く存在する。槍は人類の戦いの歴史に無くてはならない武器であり、全ての時代において使用され続けている。近世以降は銃剣を着剣した小銃が狭義の槍に取って代わったが、その使用法は槍そのものである。

旧石器時代には既に人類は投石と槍を使用していたことがわかっている。鋭い牙や爪、突進力を有する動物に対するために槍の長さは有効であり、この利点はそのまま対人の兵器としても発展していった。刺突だけでなく斬撃や打撃を駆使して戦うことができる。そのため戦斧、鎌、フック、鶴嘴、ウォーハンマー、戈、など多種多様な長柄武器に発展していった。欠点としては、大型の武器の為、閉所での戦闘には向かないことや、長い柄が不利に転じ得る、携帯に不便などである。

担架もっこの代用品として負傷者や荷物などを運ぶ道具として使用されることもある。旗竿としても使われる。

戦闘時に相手との距離がとれることによる恐怖感の少なさや、振りまわすことによる打撃や刺突など基本操作や用途が簡便なため、練度の低い徴用兵を戦力化するにも適した武器であり(ただしハルバードなどのように多数の機能を持つ複雑な穂先を持つ場合、その扱いには一定の技量が必要な上、重心が穂先に向いてしまうため、初心者には不向きな物も多い)、洋の東西を問わずに戦場における主兵装として長らく活躍した武器である。一方、槍術と呼ばれる技術体系も存在し、棒術と組み合わせることも多い。また、その長さの持つ威圧感から、軍事力の象徴的に扱われることがあり、特に衛兵や門番は槍を持った姿が多い。 槍を長くするほど、相手との距離を開けて戦える上に相手の攻撃が届かず優位に立てる。一方で、槍が長くなればなるほど近距離での戦闘が絶望的になるのと同時に、森林や狭所での移動や取り回しが難しくなるなどの(大型の武具全般に言える)欠点がある。この欠点は洋の東西を問わず認識されており、ファランクス槍衾(やりぶすま)など野戦で横列を作り、「槍の壁」を作ることで仲間同士で弱点をカバーし合う戦術が考案されている。これらの戦術を用いることにより、集団戦術において槍は有効な武器となっている。 個人戦の場合、武術体系を習得し扱いきるのは困難である。槍術は習得するのが非常に難しい上、棒術などの他の武術体系の習得の必要性が多くなってしまうからである。とは言え、同じ長物である大剣等と比較すると、そこまで扱い辛い物では無く、近間での戦闘でも長柄によって問題なく戦闘ができる。

長柄形の武器は、基本的に使用者の身長辺りから、それより2倍位までが最も無難であるとされるが、使用者の身長の数倍以上の物を扱う者もいる(約4〜6m)。逆に1m位の物もあり、片手で扱う武術もある。 「無用の長物」と言うように、使用者が扱えない程長くなれば戦闘に殆ど使えないということもあり得るので、特殊な方法(集団戦法など)を除いて自分の力量や戦術に似合った大きさの物を選ぶ方が良い。 単純に刺すだけでなく、叩く、薙ぎ払う、掠め・叩き斬る、絡める、引っ掛ける等様々な戦い方が開発されている。

両手剣類を扱い易くする形で、槍に似た形を得た武器もある。長巻ツヴァイヘンダーなどがいい例であり(刀身根元付近に刃着けしないかあるいは革柄で覆ったリカッソと呼ばれる部分を施したグレートソードや、同様に大太刀から長巻に変遷する途中に刀身中程まで柄巻きを施した中巻野太刀のように、形状は異なっても扱いが槍や薙刀に近似しているものもある)、何より原始に初めて槍が使われ始めた頃から現代に至るまで、一部の例外を除き基本的な構造にほとんど変化が見られないことからも、槍は武器として一つの完成形とも考えることができる。19世紀頃になると火器類が普及するようになり、槍はこれに取って代わられていった。しかし戦闘時に於ける槍としての機能の有効性は未だ健在であり、軍用のサバイバルナイフの中には柄の部分が空洞になっていて、木の枝を挿し込んで(ソケット式の)槍にする物もある。銃剣は剣と書くが、実質は扱い・形状共に槍(銃剣単体=穂、銃身=柄、とも見て取れる)であり、歩兵銃にも銃剣が付けられることを最低条件としている国もある。元々工具のシャベル(形状が一般的な槍に似ている)も時には白兵戦の際の打撃武器として有効で、特に塹壕戦では白兵戦用の武器の中で最も活躍した立派な武器として認知されている。

槍を投擲する概念も、現在の陸上競技では投げた槍の飛距離を争うやり投が存在する。しかし、投射の目的で作られているピルムやアフリカ、オーストラリアニュージーランドパプアニューギニアポリネシアメラネシアミクロネシア太平洋諸島圏及びハワイ諸島、南米奥地等にかつて観られた狩猟・戦闘兼用の投擲槍等を除き、ほとんどの槍は、投げることには不向きである。

構成[編集]

槍は主に、長い棒(柄)とその先端に付く硬質な部品(槍頭)の二つで構成される。基本的に衝撃に耐え得る様に分厚く丈夫に作られていることが多い。

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柄は、最も重要な部品で、柄の造りで槍の強度が左右されると言っても過言ではない。また、状況や使用法によっては柄自体も打撃武器となり得る。また、柄の造りは千差万別でひとくくりにはできない。

柄の長さは、短いもので数10cm、長い物では6m以上に及ぶものも存在する。断面形状は円柱形(突く・振り回す・叩くことにはこちらが使いやすい)が多いが、刃の角度が手の感覚で分かり易く、手首の捻りで角度を変え易い斬撃用に特化した楕円形・倒卵形、栗形(宝珠形とも:たまねぎ状)や多角形(角を丸めた三角・四角や五角~八角、十二角~ほぼ円に近い五十二角など)のものもある。太さは個人の好みや使い易さにより様々であり、さらに柄に枝や節が付いているものや、木刀の柄のように木の素地を生かす・またあるいは打刀長巻のように柄巻きを施して手だまりをよくし(握りやすい程度の摩擦力を生じさせ)打撃や斬撃に適したもの、漆や蝋などを塗り滑りやすくしたものもある。

柄は主に木製であり、特別に製作される場合を除き、地域ごとに自生し普及性のある材が最も多く用いられることが普通である。 基本的には胡桃ブナオノオレカンバオークウォールナットの木などの頑丈な木材が加工されて使われることが多い。

クヌギナラカシワカツラは、胡桃ブナなどに次いで重硬で柔軟性もありやや割安なので比較的利用された。

磨けば光沢も美しく硬いが柔軟性には欠ける椿カヤケヤキビワトチイスノキイチイ(黒柿と呼ばれるタンニン分を多く含んだ心材)は、衝撃にやや脆くあまり長く作れないうえ、材自体も希少でコストパフォーマンスが悪い、あるいは飢救食料である等の理由により、美術装飾用など特別な生産の場合を含め、生産はごくわずかである。

また、日本では、室町時代後期から戦国時代にかけて一時期即席の槍として、その急務性と軽さから農民兵に貸し出し用に生産された「お貸し槍」などにヒノキサワラ (植物)ツガなど針葉樹が使われたが、一部の特殊なもの(山岳北斜面に植えるなど日照生育を作為的に悪くし年輪が詰まってヤング率が比較的重硬・頑健になった吉野杉北山杉秋田杉、雨が多い地域で充分に育ち樹脂分を多く含み耐水・耐不朽性が強い屋久杉ヒノキ)を除き、さほど頑丈ではないためあまり普及しなかった。

中国では元来天秤棒もっこ物干し竿などの竿とともに日常的に使われていた、軽くて叩き付けてもしなやかで折れにくい白蝋棍白蝋樹白蝋木とも。大陸産の柳の一種。近年での少し高級な材ではトネリコアオダモも代用される)が汎用性もある高品質の柄として、また棒術としても用いられてきた。(→長器械

大航海時代になり交易が盛んになって後記にある熱帯性の重硬材が流入されるまで欧州では、北欧など北方地域では上記のような重硬な木材が手に入りにくいため、ヒノキヒマラヤスギ類などの比較的軽くて耐寒性と水や湿気に耐腐朽性があり普及している針葉樹系の心材やヒイラギアッシュ、南欧ではブナオノオレカンバオークウォールナットセイヨウイチイマロニエオリーブ月桂樹レバノン杉カシューナッツ胡桃など比較的重硬な材が使われた。また、大西洋航海路が確立後は北米からヌマスギも安価な用材として比較的多く流入した。

東南アジア・中南米・西アフリカなど熱帯多雨林地域では、重硬な丁子ムクロジ菩提樹ニセアカシアゴムノキ類など木材類や黒檀、シャム黒柿、紫檀鉄木タガヤサン(テットウボク)、癒創木(リグナムバイタ)、プビンカ(ブビンガ)、ローズウッド類などの最も硬質な木材類が、生育もよく、採集も容易だったため多く用いられた。 その他、軽量さや生産コストの低さを求め、強度に不安のある材質や、品質の悪いものが使用されることもあったようであるが、これらは往々にして粗悪で、折れやすいものであった。また例外的に、装飾用・儀礼用として実戦を想定しない類のものには、柄の材料としては向かない上記以外の木材が使用されることもあった。

のヒゲ、イッカクの角、象牙サイの角など、動物性の材も、儀礼・装飾用や木材の採れない地域での槍に用いられることはあるが、木材と比較すると脆く強度に欠けるのでセイウチの牙、水牛の角などとともに芯材の補強用にとどめる場合が多い。

鉄鋼・青銅真鍮などによる総金属造りのものも存在するが、金属部をしなやかな細身にしたり鋼管技術が発達するまでは柄として用いられたことは多くはない。これは、総金属製の柄でできた槍が重く、扱うために平均以上の膂力と全身持久力が必要となること、また寒冷・高山地では熱伝導率上持ち手が凍える、同様に熱で素手では触れないほど熱くなることもあるが(もっとも、この場合柄の表面に別の素材(布・紐・革など)を張り合わせれば解決できるためあまり問題ではない。※ただし、重い金属製を扱う場合は磨耗に耐久性のある材質でないと使用頻度により取り替えることになるのでコストパフォーマンスはそれだけ下がることになる)、感触が硬く衝撃の際に手が痺れる、手の内が汗などで滑りやすい、などの理由によるものである。そのため、特殊な場合(身体を鍛錬する、身体の壮健さをアピールするなど)の他は、熱帯地域以外ではあまり好まれて使われない。

複合素材を用いた例として、日本では室町時代後期から「打柄(うちえ)」と呼ばれるものが存在する。これは、頑丈な木材ほど重くなりやすく、柄を長くすると扱いづらいため穂先が小さく短くなりやすく、また、重硬な木材は製造が高価になるという問題を克服するためである。制作法は厚めの竹を裂いて断面が台形もしくは三日月型・小波紋型になるように割った細長く加工した竹樋子(籤:ひご)を、心材(木・あるいは鉄製)の周囲に巻いて円柱状になるよう取り囲んで組み、ニカワで接着して麻紐で巻き、さらに補強と防水・防汚をかねてを掛けて固めるという加工を施す。これは、工程量に大きく差はあるものの、打ち柄より先に確立していた和弓の合成弓の製造法に類似している。

補強[編集]

一般的に穂先近くの柄に補強が施されることが多く(日本では太刀打という)、柄全体には布、皮や樹皮等を巻き付ける物や、縦に細長い鉄板を前後左右どちらかの片側か両側に貼り付けるタイプの物、その両方を組み合わせてある物も多い。例外的に蛭巻きという鉄などの金属を柄に巻き付ける手法や長覆輪という薄い金属の板でぐるりと覆う手法もある。補強を施す一番のメリットは、激戦での槍や長柄武器の破損を防ぐほか、柄に傷が入った場合、柄を削り直すか交換する必要があるが、補強部分だけの交換だけで済むことにある。また金砕棒棍棒の様に破壊力と強度を合わせ持つことにもある(中には十手のように横に状の突起が出た物もある)。補強に使われる素材は等の植物性素材や和紙を紙のりとして用いた天然樹脂や等の加工品、真鍮などの金属および合金素材、、牛やサイなどの象牙等の動物性素材や、鉱石など非金属など多様で、柄と同じく漆や蝋などで塗り固めて作った物も存在する。

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柄の中にはが付属されている物もあるが、打撃に耐え得るように太く作られている物が多い。空気抵抗などが大きくなる為か、サイズは小さくなる傾向が見られる。また、刃渡自体が短いので鍔のリーチを伸ばす為に柄の方に寄っている、又は刺突時や振り回す時のストッパーや邪魔にならない様に小さめにして柄の中間辺りに付く物や、ランス (槍)の場合は突撃時やほとんど持ち方を変えない槍の手元の防護や体当たりの補助のために根元辺りに鍔として付いている。 また、日本では十文字槍などのなかには打刀同様鍔を設けたものがある他、項目「日本における槍」でも後述するように滑り止めのための血留玉や項目「槍及び長柄武器の分類」でも後述する管槍が存在する。

装飾[編集]

槍や長柄武器の中には敵を威圧・挑発・威嚇するためや上司や敵におのれの奮闘振りを見せ付けるため、個人が所有を特定するため、あるいは敵に対する目くらまし、宗教的・呪術的な儀礼や生存への渇望や戦勝祈願・加護・心理的な威力付与・敵に対し畏怖によって怯ませる効果を求めての護符アミュレット)や縁起かつぎ、または闘争用には用いず元から装飾用及び宝飾用・奉納用・一族繁栄を願っての祈祷用に用いるため、または補強を兼ねるためや補強を隠すために装飾を施したものもある。 例としては次のようなものがある。

  • 西欧のルンカ・パルチザン・ハルバード・戦斧では鉄や金や真鍮、銀など金属や象牙等の動物性素材補強部や鍔や幅広い刃や柄に彫刻細工や刻印、金・銀などの貴金属や貴石半貴石や南方の鉄木類をはじめとする高級木材などの象嵌や嵌め込みや箔押し鍍金、塗装などの細工意装がある。また、まったくの装飾用で作られたものの中には磨き上げた大理石などの非金属鉱石で補強部を作る、あるいは装飾するものもある。
  • 中国武術の花槍の赤い飾り房や鍔・刃の細工彫刻、柄の漆細工螺鈿細工などがある。また、三叉戟方天戟には穂や補強部になんらかの護符の意味も込めて細工彫刻が施されることが多い。
  • 中東からインド亜大陸をまたいで東南アジアに及ぶまで、実用品・宝飾品ともに金や銀をはじめとする貴金属や・真鍮・青銅などの象嵌や細工彫刻、貴石のはめ込みが穂から柄まで施されることが多い。また、柄も上記に記したように柄材には金属類や重厚で高級な唐木類が使われたので精緻な細工を施されたものも少なくない。
  • 日本の槍では上司や敵におのれの奮闘振りを見せ付け戦功をアピールするために大身槍などの刃に細工彫刻を施すほか、打柄の技術から木柄や穂鞘でも防水・防汚のために黒・青・赤・茶などさまざまな色の漆塗りを行うようになり、その透過度を利用して螺鈿細工や金・真鍮・銀・銅あるいはそれらの合金などの箔押しや金泥塗りなどの泥箔蒔絵細工を行ったり、キジクジャクタカなどの見た目も美しく高価な鳥の羽や飾る、または鼈甲水牛の角、珊瑚鮫皮など動物由来の高級材で装飾なども行った物があった。また、寺社に奉納された槍や矛、皇族・貴族など所有のそれらもの、出土したそれらのものには奉納品や装飾品・宝物(ほうもつ)として貴金属や真鍮などの鍔に透かし彫りなど細工彫刻や飾り鉤、柄には象嵌・箔押し、上記のように漆細工の施されたものの他、古代には刃部以外の部位に翡翠瑪瑙水晶真珠珊瑚など貴石・半貴石の嵌め込み装飾やそれらの珠を付けた飾り紐での装飾がある。

石突き[編集]

刃と逆の先端部分は石突きと呼び、木材の柄を石突きの代用にしていた物や量産型(数物)で簡略された物以外では鉄製の物が多いが、中には全体の重心のバランスをとったり重くする為、青銅・真鍮・鉛製、時代が古いと時に石製の物もある。地面に突き立てる、突き立てる際の柄の保護、重心を中央に安定させるなどの他にも、先を鋭く尖らせて刺突や疾走時の補助として棒幅跳びのように槍を用いたときの接地時の支柱やブレーキ機能及び、同じ要領で流れの緩やかな河底を鎧着込みのまま潜って移動する際にのように一時固定するとしての機能を持たせたもの、錘 (武器)メイスを取り付け打撃力を強化した物などの、攻撃用に特化されている物も存在する。通常の石突きでも、殴りつけるなどの攻撃は可能である。

また、石突きの部分が穂先と同じ様に刃や剣身、針などのように鋭利な形状に作られている物も世界中に少数存在するが、扱いづらく、下手をすれば自分自身や騎乗している馬、味方さえも傷つけやすい上、石突きとしては使えない為、どちらかといえば「個人用のカスタム仕様」の様な物であり、あまり普及していない。

槍頭[編集]

槍頭(穂)は打突時の構造上強度がある三角錐状(平三角、正三角など)・四角錐状や刀剣の刃状、円錐状で、石製の物から金属製の物まで時代や地域によって異なる。穂先が刃状の場合、斬撃の機能もあり、同種の武器である薙刀と比較すると刃に反りがない分、刃物としての切断効率は幾分劣るが、打撃によって叩き斬ることを目的に設計されている物が多い。これは細身の刃では斬撃の衝撃に耐えるのが難しい為、無理に刃を付けるよりも、打撃力その物を強化した方が効率的だったからである。槍の種類の発展型としてハルバードのように斧・鎌・鉤などを組み合わせ、斬撃の機能を強化する、引っ掛ける、敵刃を捕らえるなど多機能化した枝物(えだもの)が存在する。矛先が複数に分かれている物は場合によっては刺突の際、威力が分散されることが多く、三叉、二又等のと同一、戦場では多少改善されている物が主流。刃渡は大体5cmあれば(先が尖ってさえいれば)刺突には全く差し支え無く使える為、その他多くの槍、特に突きや打撃に特化した物の多くは刃渡が5cmにも満たない(刃が付いていない物もある)。

穂鞘[編集]

槍の携行時や運搬時に槍頭(穂)の防汚・防錆や欠損防止、また人員や馬などの家畜、物資や構築物に接触した際に損傷させることを防ぐために、中世以降は戦時以外では刀剣と同じように鞘に収めることも考えられた。

材質としては西欧では皮革製、アジアでは布を巻きつける簡素な手法や陶器製・木製のものを着ける、日本では打刀の鞘と同じように木製が多く、後世(少なくとも江戸時代前期)にはのりで厚く重ねた和紙を漆で固めた簡易の鞘も出てきた。凝った物や装飾用のものには西欧では内側をスエード羊毛ビロードなどを鞘の中に内貼りにする、日本では平安時代から獣の毛皮を内側に貼るなどして緩衝材と防湿・防水の効果を持たせる場合があった。

また、日本では戦国末期から江戸時代にかけては螺鈿細工などの蒔絵細工を施すなど装飾する場合や家紋を入れる場合もあった。

接合法[編集]

柄と槍頭の構成は基本的に、柄に被せる袋穂式(ソケット状)と挿し込み式{日本刀(中芯・中心:なかご)}のような造りがあり、単純に武器としての耐久強度としては挿し込み式の方が高いが、総合的に見ると絶対的に有利とは限らない。また、これらの接合に使われる部品は必然的に柄の補強とも統合される場合が多い。袋穂式は、完全に包み込む物と両側で挟み込む物、片側のみで柄と繋ぐ物などがある。柄の製作や修理が比較的容易にできる代わりに、特に斬る・打つことがし難く、逆に造りによっては挿し込み式より頑丈になることもあるが、金属製の補強用材(鉄及び真鍮・青銅など)のため重量が膨大になり易い(袋槍を参照)。ヨーロッパ諸国の多くや中国をはじめとする東・東南アジア諸国などで使われていた槍はかぶせ式が多い。挿し込み式は、途中まで半分に割った柄の間に挟む形式(柄その物が二つに分かれる物もある)と、柄を空洞になる様に刳り抜き中に入れる形式等がある。修理に時間と専門技術が必要になるが比較的丈夫にできる為、頑丈な槍を作りやすい。また、刃:茎の比率を1:2〜1:3と長く作り、柄と槍頭の安定化と相手からの斬撃で容易に柄から斬り落とされない様にするために日本の槍の多くはこの造りである{余程のことがない限り柄から斬り落とされること自体ないが、鎌倉時代から槍と同じく台頭してきた大太刀は初期のこの構造になる前の槍の穂(袋穂か短い茎の穂)を柄ごと斬り落とすために開発された長物とも言われている。また同様に平安時代後期に台頭してきた薙刀も同じく槍以前に袋穂を持つの穂先を斬り落とす用法がある}。また、前述の太刀打ちと茎挿し込み式の強度を利用して足軽などの傭兵された農民兵はお貸し槍(貸し出された槍)で文字通り「叩き合った(≒戦った:たたかった)」。これは、不慣れな長物で敵を刺突するよりもからさおなどで脱穀する動作に近い叩く方が慣れているからとも、傭兵として相手方にも雇われている身内・親類もしくは同郷の友人・知人を昏倒させるにとどめて殺傷しないように配慮したからとも言われている。

また日本のほとんどの槍には挿し込み式・袋穂式ともに穂から柄にかけてくびれた首のようなものがあり、これを塩首(けらくび・しおくび)という。この部位は細く柄と穂を繋ぐもっとも衝撃と圧力が加わる部位の一つなのでそれらを分散するように三角・平三角穂は五角柱、四角錘穂や剣刃状穂の場合は八角柱に形作られている。

日本における槍[編集]

和槍

日本における槍の一般的な構造は、木製あるいは複合性の「打柄」の長い柄の先端に、先を尖らせて刃をつけた金属製の(ほ)を挿し込んだもの。

日本では古墳時代からの使用が見られ、槍の使用例は少ない。その数少ない例として、宴会で酔った大海人皇子(天武天皇)が槍を床に刺したという逸話がある[1]

その後は矛は廃れ、平安時代末期からは薙刀のほうが普及する。しかしその後薙刀よりも実戦向であるとして、槍が普及することとなる。

ちなみに矛と槍の違いについては諸説ある(詳細はの項目を参照のこと)、前述の大海人皇子が使ったとされる槍も、矛が使われた時代である事から、詳細は不明だが矛とは構造的に異なるものであったと思われる。しかしながら、矛が廃れた後で登場した槍については、同じものを古代は矛、中世以降は槍と称したと解釈して問題ないように思われる。例えば「柄との接合部がソケット状になっているのが矛。茎(なかご)を差し込んで固定する方式が槍」という説があるが、実際には接合部がソケット状になっている袋槍が存在する。新井白石も槍について「"やり"というのは古の"ほこ"の制度で作り出されたものだろう。元弘・建武年間から世に広まったらしい」と著書で述べている。そして文中の記述において、"やり"には"也利"、″ほこ"には″槍"の字を充てている。

俗説では箱根・竹ノ下の戦いにおいて菊池武重が竹の先に短刀を縛り付けた兵器を発案したとされる。『太平記』などによれば、1,000名の兵で足利直義の率いる陣営3,000名を倒したという。 菊池千本槍は、熊本県菊池神社で見ることができる。後に進化し、長柄の穂と反対側の端には石突(いしづき)が付けられるようになった。

実際には鎌倉時代後期には実戦で用いられていたと見られる。茨城県那珂市常福寺蔵の国の重要文化財紙本著色拾遺古徳伝』(奥書は元亨3年11月12日)には片刃の刃物を柄に装着した槍を持つ雑兵が描かれている。

その後、戦国時代に盛んに用いられた。戦国時代の戦闘用の槍には身分の高い侍用のものと、「数物」と呼ばれる足軽用に量産されたものとが存在し、戦国時代後期には10mにも及ぶ長槍を足軽部隊に配備していた戦国大名もあり、戦場においては、その長大さにより刺突のみならず打撃(集団を形成して打ち下ろす)のための長柄武器としても用いられた。また、合戦時に一番乗りで敵と槍を交えることを一番槍という。

また、この頃になると多くの素槍には血留玉(ちどめだま・ちだめだま)と呼ばれる2-3mmほどの太さの麻紐を太刀打や物打の下あたりにぐるぐると巻いて拳大の球状にし、ニカワで固めた鍔のような物を設けた。これは、相手を仕留めた際の返り血で濡れて滑り手だまりが悪くならないように考案された。この血留玉は返り血でニカワが溶け紐がほつれたり敵刃の斬撃で破損したりするので戦(いくさ)のたびにそのつど換えられていた。また、つけたまま保存したとしても虫食いや湿度やカビのために維持が難しく、そのため、現存する槍の中で血留玉がついたままの物は極めて珍しい。

各種の槍 左から順に、鉤槍、大身槍、素槍

穂や柄の形によって、素槍(すやり)、管槍(くだやり)、片鎌槍(かたかまやり)、鎌槍(かまやり)、十文字槍(じゅうもんじやり)、鉤槍(かぎやり)など様々な種類がある。特に刃長の長いものは「大身槍」と呼ばれ、概ね刀身が1尺(30cm)を越えるものを「大身槍」として分類している。

使用例[編集]

(片手用の)などを持った相手のリーチ外から攻撃する、馬上から、あるいは馬自体または騎兵を攻撃する、越しに攻撃する、など、用途は多岐に渡る。欠点は、特に大型武具に多く見られる取り回しの悪さと携帯性の悪さである。

柄の長さを変えて攻撃範囲を変動させる上、二方向に攻撃力を持たせる為、そこから繰り出される攻防は変幻自在で、相手は慣れていなければ混乱し易い。また、長柄による大きな回転運動慣性の法則によって得られる打撃や斬撃に高い威力を持たせることも可能で遠心力、重力の活用により その破壊力は凄まじく 腕や足など骨ごと切ることさえあったという。梃子(てこ)の原理を応用して振り回す技もある(腹、足、肩などを支点や力点にする)。棍棒の様な使われ方もされる。槍の中には形状や流派などにより使用方法が全く異なる物がある。太刀と同じ使用法も可能。

集団戦では、人と人との間をできるだけ狭めた、密集した陣形を築き、その陣形の形や盾持ち、弓兵などの支援兵種を布陣させ防衛ラインの形成や反撃、攻撃または、騎兵を馬から叩き落とす陣形などもある。もちろんこれほど密着した陣形を取ると、振り回すことが困難になり、前方以外からの攻撃に脆く、また軍団の移動速度が極端に遅くなるデメリットがあり、ありとあらゆる解決方法が多国で試された。さらに、これらの戦法で使われる槍は5〜8mと長くなる傾向がある。

(※武具の項目『武具#使用方法』も参照)

柄を長く持つ
長さを有効活用し、相手の有効攻撃圏外から先制攻撃を仕掛けやすく、突き、払い、斬り、(相手を)跳ね飛ばす、叩き潰す、などの動作を行い易い。また慣性等の法則が最大限に生かせるので威力の高い攻撃が可能である。至近距離での戦闘は難しいが、柄の持ち方を変えながら、できれば移動も合わせれば対応しやすい。これができない場合なら、石突き・柄の部分で対応することも可能だが、動作が中途半端になりやすい。
柄の中ほどを持つ
棒術や格闘技で威力を発揮しやすく、切り替えもスムーズに行うことができ、また石突き部分を効率良く使いやすい。槍を横や縦にしてその両側を駆使して叩きつける、地面に突き付けて防御・移動など、多種多様な技を持つ。しかしこの持ち方では戦闘に十分対応するには個人の経験や技術などが深く関係し特に扱いに不慣れな者は使い難い。
柄を短く持つ
至近距離での突き刺し、斬り裂きなどの戦闘を行い易いが、柄が長い為ナイフのように取り回せないことを考慮しなければならない。槍の中には短く持てない物もあるため、動き回り近付かれないようにすると良い(近付かれても対処法はある)。石突きで殴る奇襲やフェイント(相手側からは柄の長さが分からない為、有効最大攻撃範囲が悟られにくい)が効果的。逆手に持てば前に棍棒、後ろに短剣の形になるが、相手に掴まれ易いため、動き続けて掴まれない様にする必要がある。
下から斬り・突き上げる (下段の構え:朔(さく)る)
相手側からは対処しづらい為突撃にも使われやすく、日本の戦争画や武士・侍を題材に描いた中世の絵画にはその様な構えをしている武士の絵が多く見られる。撥ね上げと同じ要領で槍身を蹴り上げる技もある。砂・泥を跳ね上げて相手の視覚を塞いだり引っ掛けた物を飛ばす方法もある。畳返しという技はこの手法を取り入れた後世の小説による創作である。
足払い
足に柄を引っ掛けて転ばせたり、足を払ったりして相手の体勢を崩す(あるいは足などを負傷させる)為の技。相手の移動を制限させることができ、成功すればそのまま柄で動きを封じたり窒息させて失神する、あるいは止めを刺すこともできる。
格闘戦・関節技の補助に使う
槍を手足の延長や相手への障害として扱う。肘打ちや蹴り、頭突きなどもできるため色々な技がある。槍を横に倒し腕と槍の間に首、腹、足を入れて相手を動けない様にし、殴る蹴るなどを行う、先端・真ん中を腕、首などの間に突っ込み捻り上げる方法等があるが、この様な使い方をする場合、槍はなるべく簡素で棒状の方が使い易い。
巻き上げ (巻き技)
剣術の技にもあるが、棒状の武器同士でなければこの技は使い難い。相手の武器を巻きながら押さえ込んで、可能ならば跳ね飛ばし、使えなくする技。また相手の武器を絡め捕ると、相手は攻めに出にくい。
手の中で回す
よく映画などの創作作品で見かけるが(映画などの場合は見栄えを良くするためで見本にはならないが)、敵に近付くことができない様に脅す効果と、相手が下手に手が出せない様にする目的がある。また目の前で回して相手の攻撃を逸らしたり受け流し、弾いて、次の攻撃に備え、または変幻自在な棒術、格闘技または斬る・突くとして反撃を狙う。しかし場所を広く取る為、狭い場所や集団戦では仲間に当たるなどの危険があり、武器自体が使用者の身長より長いと使い辛いなどの問題がある。
槍を投げる
ほとんどの槍は投擲には適さない物が多いが、投擲に適している物なら十分な威力を期待できる。その射程距離は低くて約15mから一番長い物で約90mにもなるが、次の槍を投げるまでに時間が掛かる上に、弓矢などより射程が短いため使い勝手が悪く、また、持ち運びが困難であるなど、運用上の問題点は多く、その上相手側に再利用され易いという問題もあった。再利用できないように、刺さると自壊する物を製作した程である。それでも古代に於いては重要な戦術だった。代表例としては、ローマ軍団兵の主要装備の一つであったピルムが挙げられる。弓矢などの射撃用武器が発達していくなかで、次第に廃れていった。投槍器等の発明や投槍自体にも様々な改良も施されたが、槍の中では弓矢や投石などの射出武器ほどの性能は得られず、実用的な運用法も確立できなかった。その為、槍は近距離・中距離戦重視の武器として発展した。今ではやり投げという競技だけが残る。ただし、矢よりも長く重いため、盾に突き刺さった場合には、相手の運動性を低下させる効果が期待できる。撓り易い素材及び棍術(琉球棒術)の麦粒矢(むぎつぶや)のように中ほどが太く両端が細い麦粒形(ばくりゅうがた)の構造なら空気抵抗を受けた際の振動率も良く、トビウオが飛ぶが如く細微に振動して遠くまでよく飛ぶが(遠くに飛ばすためのこのときの振動はトビウオのように水平方向ではなく垂直方向のままで進行するか、振動が進行方向に対し螺旋を描くように柄を軸にトルクとなって現れる:ねじれの位置を連続して回折し光線同様波動を保った上で矢や弾丸のように回転して進行する)、スローイング時に大きく角度をつけ力んで撓らせるように手離れさせると極端な振動と撓りの合力により柄材が耐えられなくなり、飛行中にはぜ割れるように材の繊維方向に縦に裂け折れる。アフリカやハワイで投擲研究者が狩猟・戦闘用の槍投げを現地人に行わせたところ、しばしばこの現象が起こった。投擲した槍が振動することについてはやり投げ競技を行うか間近で観察する機会があれば『ビィーン』と言う音と共にごく微細に振動しながら飛んでゆく槍を見ることができる。
戦闘以外の用法
戦闘以外では、長い柄を利用した人や物の運搬や移動の補助ないし制限、多数の槍を並べて攻撃する壁を作るといった使い方があるが、中にはその様な使い方には適していない物もある。の代わりや負傷時に松葉杖の代わりに使うほか、担架もっこ神輿の様に人や物を担ぐ方法があるが、二本以上で井桁型に組めば安定しやすいが、二本で運用する場合は間にロープやシート(代わりに盾を利用することもある)等を付けなければ不安定になり易い。1本で運ぶ方法は対象が人の場合、腹などに当てる、背負うなどの補助で安定させるのが基本となる。対象が物の場合は梃子の原理の応用で、軽い物なら柄にくくり付け肩を支点にして、手を力点として運ぶ(槍を天秤棒として荷う)。対象が重い物なら、柄を対象の間に仕込んでどこか安定した場所に当てて梃子として動かす方法がある(槍を天秤棒として担ぐ)。また堀や小川を棒幅跳びのように飛び越える際の支持棒、あるいは幅が広く流れのゆるい河底を重い具足を着込みのまま潜って水中歩行する際に石突を河底に引っ掛けて支持棒として用いる。そのほか少し高い場所に取り付けて物干竿としても代用できる。

槍及び長柄武器の分類[編集]

※未だ詳しく地域と時代別には分けられてはいません、ご注意ください。

槍の分類としては大きく分けて「長槍」「短槍」「投槍」に分けられるがこれらの分類に明確な違いはなく曖昧な上、その他の「長柄武器」との混合で厳格な分類は非常に難しくなっている(なお、この分類も正式な物ではない)。

長槍は、集団同士の戦闘で効果を発揮しやすく、長ければ長いほど有利に働くために短槍から完全に分離して独立した武器となるが接近されると対処が非常に難しい武器である。

短槍は、個人戦や室内戦などの閉所で活躍しやすく、また複雑な形状をしている物も短槍が多い、また騎兵槍もここに入る。

投槍は、投射しやすいように造られた物で、短槍の中にも投射できるように造られた物も存在する。

日本の槍及び長柄武器・捕具[編集]

千鳥十文字槍
  • 菊池槍:短刀に長柄を付けた物(菊池千本槍)。片刃槍
  • 素槍直槍:一般的な槍。量産用の槍。16〜30cm程度の穂を持つ。16cm〜(室町時代後期)21cm(江戸時代中期)前後が普通。柄の長さは警備用・室内など狭窄空間用に1.8~2m、馬乗用2~3m、歩兵用4~8m前後。これは製作時期によって背景が変遷するので規格が大きく変動する。
    • 短槍:用心槍枕槍(6尺以下4尺)や斤侯(せっこう)用の細い短めの物見槍番所槍とも)や忍槍、また駕槍、接柄式の継槍などが考案された。
      • 手槍:短槍で主に室内戦などで使われた。
      • 手突矢:弓や通常の槍が使えないほど近接戦になったときに弓兵が矢を短槍として用いた。また、その用途専用に柄を折れにくく太く作ったものもあり、その場合は矢羽はそなえてないことが多い。この場合は手突槍とも見て取れる。
        • 手投矢:弓が破損するなどして使えなくなった場合に手裏剣のように投擲して用いた手突矢。60-100cm程度の普通の矢を投擲する場合もある。手突矢同様刺突に用いるほか、投擲しやすいように15-30cmと短くしたものもあり、それは西欧のダーツにあたる。手槍としてみるともっとも短い部類に入る。
        • 手突槍:穂長6〜18cm、柄長:60cm〜100cm前後。手突矢の発展型。派生の物に矢に近い形状の打根(打ち根とも表記)がある。
        • 打根
    • 大身槍(おおみやり):平三角及び剣刃状の30〜60cm前後の大型の穂を持つ。柄は扱いやすいよう刃の長さと共に反比例して太く短くなる。時には穂が120cmを超えるものもある。刃長60cm超え級のものは大抵柄長180cm太さφ4cm程。全体の重心のバランスを取るためと剛健に作るためにほぼ中芯()が石突まで達し時に石突と一体化して作られる。柄は堅牢さを重視するため打柄よりも赤樫製のものが多い。但し、それに比例して槍自体の重量が非常に重く、筋力と膂力に余程優れた者で無ければ扱えなかったと言う。天下三名槍と呼ばれる御手杵日本号蜻蛉切が最も有名な大身槍である。
    • 管槍(くだやり):手管(てくだ)と呼ばれる真鍮製の移動可変型の把管が柄の前方に付く。これによりしごかなくても手の内がスライドし、素早く槍を連続して繰り出せる。次第に手管は掌一つ分の単なる管から鍔を付け手の内が滑ってもつかみやすいよう把握部を掌一つ半〜二つと長くしたものに改良されていった。江戸時代中期草創期には管槍としての未使用時に手管が鉤状の留め金で固定されていてワンプッシュでバネにより外れ、横に開いた留め具が簡易の護拳鉤になるものが発明された。また、管槍は槍術秀でたものにお貸しされた。練習者には金具補強なしの長さ:30〜50cm、幅:元2cm先3cm程の平たい先太な尖った比礼のような形状の革紐「剣革(けんかく)」を、熟練者は先端が真鍮金具で補強された「剣革」を二本、さらに手練の者には三本と支給され、これを取り付けた手管を動かすと先が円を描くように革紐が回転し飛来する礫や威力の弱まった遠矢を払うための盾(「剣革盾(けんかくだて)」)として用いた、と構想されたようだが実戦では使われた記録は残っていない。このことから元来無駄なくスムーズに管槍を繰り出せるよう練習させるために剣革が支給されたのではないかという見解もある。手練(てだれ)が自由自在に管槍を扱うことから手練手管(しゅれんてくだ)の語源となったとされる説もあるが詳細は不明。
    • 方形槍(別称:ノミ形槍・シバキ槍(忍術)・忍槍の一種):30cm程の太く平たいノミの形のような穂を持ち掘り棒芋掘り鍬:細身の)の刃を分厚くしたに物に似ている。柄は短く60〜180cm。武器以外の用途にも土を掘ることにも適している。柄まで総鍛鉄造りの頑丈で尾部も四角錘に尖っているものは大きな平型に錐型鏨を繋げたような形状であり、土壁の破砕や削岩など硬いものを切削・破砕することもできる。初見良昭著書:武道選書 - 槍術に記載されている古老の伝聞によると槍鉋から派生したのではないかと言う意見である。
  • 枝物槍(別称:枝物枝槍枝付き槍):鍛造時に「割り込み」を入れ、刃から割り出してまさに植物の枝のように分岐させて成形した枝を付けたものと、後から素槍の中芯(なかご)の塩首(けらくび)や柄に、枝の付いた輪を差し込ように通して嵌めたタイプがある。大抵の刃のある鎌槍の場合は前者で刃の必要のない鍵槍の場合は後者。
    • 鍵槍十手のように鉤状の金具が穂あるいは太刀打などからせり出していて敵刃を受け止めたり絡みとったりするために用いる。佐分利流がこの槍を使う事で有名。
      • 十文字鍵槍:左右共に鉤が付いている槍。普通は突進方向に向かった上向きに付けられる。
      • 卍鍵槍:左右の鉤が上向きと下向きに付いて左右非対称になっている鍵槍。喰み違い鉤槍とも。
    • 鎌槍:鎌状の突起が槍穂に付いていて引っ掛ける、切る、敵刃を受け止めるといった用途がある。
      • 片鎌槍:片方に鎌が付いている槍。
        • 片鎌槍鉤槍:バランスをとるためにも鎌の反対側に鉤が付いているもの。武術書によっては単に片鎌槍とも呼ばれることがある。
      • 両鎌槍(もろかまやり):両枝が鎌になっている槍。両方上向き・下向き、左右上下喰み違いになった上下鎌槍(卍鎌槍)もある。
        • 十文字槍:鎌槍よりも細長く優美な刀のように湾曲した刃の枝を持つものと真っ直ぐにのびた剣状の十文字のものがある。前者は鎌槍同様上向き、下向き、喰み違い十文字などがあり、特に宝蔵院流槍術が上向きの物を使うことで有名。後者は剣十文字の別称でも呼ばれ、一見するとまるで十字架の様な形状になる。
          • 千鳥十文字槍:短く比較的やや太い上向きに湾曲した十文字槍。千鳥が飛び立つように羽を広げて見えることからこう呼ばれる。宝蔵院流槍術でもこの形式を使った槍が上述の十文字槍と共に多く見られた。
          • 沢瀉槍:丸い葉のような刃を前一方、後二方もち、ずんぐりとした鏃のような形をしている。
        • 蝙蝠槍(こうもりやり・別称:鱶鰭槍-ふかひれやり):中心の素槍の両横にハルバードのような斧のような刃が付いている。ただし、その斧状の刃部は一見透かし彫り装飾にみえる細かい鉤が無数に設けられている。敵刃というより衣服を絡め取るためと考えられるが用途を記したものが現存しないので不明。
      • 月槍三日月槍月型槍月剣):三日月状の刺叉に近い形状、内側に刃が付いている。外側にも刃が付いているものは月剣。鎌枝が余分に付いている物もある。中国武術の月剣(月牙鏟月牙)の影響を受けていると思われる。
  • 仕込槍:元来槍に見えない杖や棒状の物、及び万が一穂先が斬り飛ばされた場合に備えて長物の柄の途中に仕込み敵の意表を衝くために用いた仕込み武器隠し武器
    • 幔幕槍(まんまくやり)・陣中槍(じんちゅうやり):陣を敷く際の幔幕を支える陣杭に仕込み槍を組んだもの。いざ陣付近まで敵勢が攻め入り槍が足りないという時に引き抜き穂鞘になっている杭頭を外せば素槍の穂が現れ、幔幕の紐をかけ結ぶ鉤もついているため簡易の鉤槍となる。また、杭自体の土中に刺す鋭利な部位が石突に当たるものになるので、穂が二つ付いているような攻撃の効果をもつ。戦国末期に三河地域周辺で考案されたとされるが詳細は不明。杭自体は木製よりも鍛鉄製のものが多い。杭頭は立方体の角を切り落とした形の切子頭のものが多く柄となる杭柱の断面は六角および八角、後にねじ式蓋で穂鞘を外す物も出て来た。全長は2~5m程度。元は陣杭として作られたため丈夫であるが重く比較的短い部類なのであまり野戦向きではない。長い物は軽量化のためか柄部が木製で作られていることが多い。
    • 脇差仕込みの槍:脇差のを槍穂にし、柄を取ると短槍になるように改造した隠し武器。殿中でも護身に差すことを許された脇差を敵対勢力に万が一抜き奪われそうになった時に簡単に柄が抜けるので相手の不意を衝き、攻勢に転じるために考案された。古武器商古美術商では江戸中期の作と伝えられている。隠し武器としてだけではなく槍という観点で見ると最も短槍の部類に入る。
  • 袋槍(ふくろやり):袋穂状の穂先を被せた槍。江戸時代ごろには穂口に合うよう加工した柄に差し込み目釘を打つだけなので穂先を革袋などに入れ携行できるようにしたものもあった。かぶせ槍とも呼ばれる。
    • 弭槍(はずやり):弓の弦を掛ける弭先に袋穂状のかぶせ槍穂をつけたもの。弓兵が矢尽きたり矢を番えるのが間に合わないほど近接戦になったときに手突矢・脇差・隠匿しておいた手裏剣など手持ちの補助武器と共に用いた。
  • 竹槍(たけやり):竹を鋭利に切りあるいは槍の穂状に切り落とし先を火であぶるなど硬化加工し即席の槍としたもの。耐久性は低いが材料の手に入りやすさと加工の安易さから一揆落ち武者狩りに農民らが使用した。また、資料によっては竹竿に短刀や袋槍などを取り付け簡易の槍としたものも竹槍と呼ぶ。

槍以外の長柄武器[編集]

上から 刺又、袖搦、薙刀、長巻
    • 手鉾(てぼこ:手矛とも表記される):穂というよりもエジプトの斧刀(コピシュ)にも似たS状に湾曲した刀身が銃剣(バヨネット)のように柄の軸からせり出しているタイプの物(筑紫薙刀に似る形状)と、あまり湾曲していない菊池槍を長くした様な形状で片刃・諸刃のタイプものがある。前者は穂長16〜40cm、柄長40〜130cm程の携行しやすい小ぶりな長柄武器(正倉院所蔵記録)。後者は野外戦用に作られ穂長30〜50cm、柄長150〜180cmで『金蛭巻き(かねひるまき)』と呼ばれる柄に銀、銅、鉄製帯金を巻き付け補強した蛭巻き手鉾が時々存在する(石上神宮長滝白山神社所蔵記録)。共に武器だけではなく警備防犯装備捕具としても用いられた(→薙刀の歴史の項、及び長滝白山神社文化財も参照)。
  • 薙刀長刀(なぎなた):薙鉈とも記される。静型、巴型などのタイプもある。手鉾の消滅時期(平安中期)から同じく斬る・突くという目的の長柄武器として現れるので手鉾から発展したのではないかという見解もあるが不明。時々手鉾同様金蛭巻きに補強されたものが平安時代鎌倉時代の作に散見される。
  • 長巻大太刀を改良していく過程で誕生した物で分類としては太刀に入る。大太刀ツヴァイヘンダーのリカッソ同様刃の中ごろまで柄巻をした中巻野太刀の発展型。
  • 長柄鎌:農業用のに長柄を取り付けた物。
    • 双鎌(そうれん):鎌が左右対称に柄の先に付いたもの。両鎌槍の槍穂部を抜いたような形状の長柄武器とも見て取れる。
    • 薙鎌(ないかま・ないがま):元は水軍が船底に引っかかった藻などを外し切るために用いた長柄の鎌。後に金具で補強されやや刃も長く太くなり実戦にも用いられた。刃長:30〜47cm、柄長:1.8〜4.8m程。
  • :元来は材木の伐り出しに用いられたが長柄武器としての転用も少ないながらあった。鉞の場合猪の目(いのめ)とよばれるハートを逆さにした形の透かし彫りを施し、補強のために柄を金属で蛭巻きにしたものもしばしばあった。
  • 掛矢:元来は建築用具であるが長柄武器として転用されることもあった。

捕具[編集]

東アジア由来の槍及び長柄武器 (長器械・長兵器)[編集]

その他・日本および東アジアで武器以外としての用途に用いられた槍[編集]

  • 毛槍:大名行列の先頭を飾った穂先が綿毛のようになっている物。
  • 旗竿:古代中国から中世の中国および日本の戦国時代の戦場で用いられた。軍団の目印として幅広く活用されている上、戦場においては部隊の位置や把握、さらに兵士に近くに部隊があると言う安心感をもたせる為、旗持ちの重要性は高い。

欧州由来の槍及び長柄武器〜古代以降〜(ポールウェポン)[編集]

欧州由来の槍及び長柄武器〜中世以降〜(ポールウェポン)[編集]

新大陸由来の槍及び長柄武器[編集]

流派[編集]

伝承・逸話・神話[編集]

打柄の槍を持ち、地面に立て掛けて馬の突撃を跳ね返したと記録している書物がある。槍折という言葉の通り、折れて柄だけになった槍で戦うことが戦で実際にあり、その際、棒術として戦ったという記述がある。

有名な槍[編集]

  • 天下三名槍蜻蛉切日本号御手杵
  • 天沼矛(あめのぬぼこ):日本創生の矛。
  • 天之逆矛
  • 政常黒田長政の槍、秘蔵の槍に長吉一国御鑓一国長吉とも呼ばれる)がある。
  • 当麻
  • 勝光
  • 人間無骨:織田信長に仕えた森長可の槍。敵の首を鋒に刺し、槍を立てて一突きすると、首が柄を貫き降りて石突に至るほど刃が鋭かったという。大きな十文字槍で直刃のけら首から鋒までが一尺二寸二分、横手刃端の見渡しが一尺一寸、表に「人間」、裏に「無骨」と刻まれ、茎には「和泉守兼定」の銘があった。
  • 岩突きの槍阿久和安藤氏
  • 皆朱槍 :天下無双と誉れ高い前田利益が愛用していた名槍。上杉家では許された者のみが身に付けられる槍であったため、ほかの家臣からの羨望を一身に集めたという。
  • 出石桙:新羅の王子天日槍が将来した七つ(または八つ)の宝物のうちの一つ。垂仁88年、これらの宝物は、天皇の求めに応じて、天日槍の曾孫清彦によって献上されるが、その中に出石桙の名は見えない。
  • 隼風:震旦国の陳の大王の娘、大比留女が七歳の時、朝日によって懐妊してできた息子八幡が、日本の大隅国で隼人を討ち取った際に用いた鉾。身の長さが八尺、広さが六寸もあった。『八幡愚童訓』諸本は「隼風鉾」「隼風ノ鉾」とするが、『宮寺縁事抄』や『八幡大菩薩示現記』は単に「隼風」と表記する。
  • 梅實今川義元徳川家康(当時は次郎三郎元信もしくは松平元康?)に贈った鎗。ある日、義元は梅の実を突き試みた鎗を家康に贈り、梅の穂を貫いた鎗を阿部正勝に与えた。これを喜んだ家康は、その鎗を梅實と名づけた。
  • 梅穂:今川義元が幼少より徳川家康に仕えた阿部正勝に与えた鎗。ある日、義元は梅の実を突き試みた鎗を家康に贈り、梅の穂を貫いた鎗を正勝に与えた。これを喜んだ家康は、正勝に鎗を梅穂と名づけるよう命じた。
  • 蜈蜙槍:旗本奴「大小神祇組」の首領水野成之(十郎左衛門)が、侠客幡随院長兵衛を殺した際に用いた槍。長兵衛はしばしば水野の邸に出入りしていたが、腰の刀を風呂にまで持ち込んでいた。主人の身を心配した水野の若党、軍平と権平は先手を打って長兵衛に斬りつけ、これに気づいた十郎左衛門は駆けつけて板囲越しに浴槽まで刺し貫いた。十郎左衛門は二人の無益な忠義を叱り、二人は切腹して果てた。水野家重代の大身槍で関の大兼光の作だという。
  • 岩融武蔵坊弁慶が愛用していたと伝わる大薙刀。
  • 聖槍(ロンギヌスの槍):キリストを受けた槍。
  • グングニル戦争の神オーディンが持つ槍だとされている。
  • ブリューナク:太陽神ルーの武器、「投げると稲妻となって敵を死に至らしめる灼熱の槍」他諸説ある。
  • ゲイボルグ:海獣の骨で造られた槍で、投げれば30の鏃となって降り注ぎ、突けば30の棘となって破裂する。
  • アキレウスの槍トロイ戦争の英雄アキレウスの槍。この槍で受けた傷は普通の治療で治らず、この槍の穂先を削った粉末を掛けることでしか治らなかった。
  • 屠殺者ペルシア王ペザールの所持する毒槍。槍先が灼熱しているため、平時は大釜(氷、又は氷水)につけて保管されている。ルグトゥレンの息子たちに要求したものの一つ。
  • 急進ルビ:ダート):ウシュリウの息子たちとの戦いにおいて、アルスターコンホヴァル・マク・ネサが息子フィアクラに貸し与えた王自身の武具の一つ。
  • 殺し屋ルビ:スローター):ウシュリウの息子たちとの戦いにおいて、アルスター王コンホヴァルが息子フィアクラに貸し与えた王自身の武具の一つ。
  • ルーン:アルスターの戦士ケルトハル・マク・ウテヒルの槍。血に餓えており、毒液の大釜につけておかないと柄が燃え上がってしまう。
  • ゲイ・ジャルグ:フィアナの戦士ディアルミド・ウア・ドゥヴネの所持する投げ槍。ダグダの息子オイングスからの贈り物。
  • ゲイ・ボー:フィアナの戦士ディアルミド・ウア・ドゥヴネの所持する投げ槍。魔術師マナナーン・マク・リルからの贈り物。
  • ロンゴミニアトブリトン人の長アルスルアーサー)の所持する槍。"rhon"は「槍」、"gomyniad"は「打ち手」を意味する。
  • ロン:ブリトンの王アルテュール(アーサー)の持つ槍。「その鉄、先端が鋭くとがり、長く幅広く、戦場に恐るべき力発揮せり」と詠われる。
  • マルテ:バビロニアの総督バリガンのもちいた矛。その柄は棍棒のように太く、穂先のみで優に驢馬の一荷となるという巨槍。
  • グラーシーザソルケルの子ギースリ(『ギースリのサガ』の主人公の伯父)が、兄アリの仇ビョルンと決闘する際、兄の妻の奴隷から奪った剣。決闘には勝利するが、剣を取り返そうとした奴隷を斬りつけた際、折れてしまう。のちに槍の穂に鍛えなおされ、甥のギースリ(同サガの主人公)のものとなる。
  • ヴィグ:コルマクがステインゲルズと二人きりで杯を傾けていた時、コルマクが脱いだマントの留め金をある男が盗み、それに気が付いたコルマクがその男に投げつけた槍。しかし、槍は命中しなかった。
  • トリアイナ:海神ポセイドンの持つトライデント
  • トリシューラ:破壊を司るシヴァ神の力の象徴。
  • ヴィジャヤインドラの力の象徴の一つ、稲妻を表す。
  • レーヴァテイン(ただしの解釈あり):世界を焼き滅ぼすの武器[要出典]
  • ミスティルテイン(剣、(手投げの)説あり):ヤドリギで作られた槍、唯一バルドルを殺すことができる。
  • ロムルスの槍ロムルスの持つ、ローマの王者の槍。彼の槍はパラティウムという丘の上に突き刺した際、樹木になった。

脚注[編集]

  1. ^ 藤氏家伝

関連項目[編集]

その他[編集]

外部リンク[編集]