麻 (繊維)

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大麻繊維、別名ヘンプ

(あさ)は、植物表皮の内側にある柔繊維または、葉茎などから採取される繊維の総称。

概要[編集]

皇大神宮所管の神麻続機殿神社において宮中祭祀である神御衣祭で用いる麻の繊維の衣服を織る様子(無形民俗文化財
麻の茎の繊維

元来日本語で麻繊維はアサ科アサ属大麻(学名Cannabis sativa)から作られた繊維を指す名称であった。古代から日本に自生し繊維利用の盛んだった植物Cannabis sativaを麻と呼称していたが、後に海外より持ち込まれたアマ科亜麻Linum usitatissimum)やイラクサ科苧麻Boehmeria nivea var. nipononivea)などを含めた植物繊維全般を指して「麻」の名称を使うようになったため、本来の麻Cannabis sativaを植物の背丈が大きく成長する特徴から、大麻(おおあさ、たいま)と区別して呼称するようになったとされている。 現在日本で麻の名称で流通している繊維のほとんどは亜麻(学名Linum usitatissimum)から作られるリネンである。また、日本で麻の名称で流通させて良い繊維は亜麻と苧麻のみであり、本来の麻(大麻)は指定外繊維となる。

麻と呼ばれる繊維は数種類があり、家庭用品品質表示法によると、苧麻(ちょま : カラムシ、ラミー)と亜麻(あま、リネン)の2種類を指す。これらは光沢と通気性があり、肌触りの良さから夏物の衣料品や寝装具などに用いられることが多い。繊維的には羊毛や綿花より硬いので、硬質繊維といわれる。他植物の麻繊維や薬物の大麻との混同を避ける目的から、日本でも大麻繊維を英語に倣いヘンプ(hemp)と呼びかえる動きがある。なお、亜麻色とは、黄みを帯びた薄い茶色のことで亜麻からきた色名である。

戦前では、1909年(明治42年)の小学校の理科の教科書で、大麻について教えられており、栽培方法や繊維の製法、用途としては、布、糸、縄、帆、下駄の緒、茅葺屋根、小鳥の餌に麻の実を、また麻油があるとしている[1]。また、中学校の教科書では、加えて紙に用いられることが教えられており、[2]教員用の教科書では、大麻は衣服の原料として綿のない時代から今日まで広く栽培され重宝されたと記載されている。[3]

ヘンプクリート、麻で作られた建築用ブロック

その他の類似繊維[編集]

バショウ科バショウ属マニラ麻Musa textilis)やリュウゼツラン科リュウゼツラン属サイザル麻Agave sisalana)は船舶用ロープとして用いられる。シナノキ科ツナソ属コウマCorchorus capsularis)やシマツナソCorchorus olitorius)がからとれるジュートはいわゆる麻袋(ドンゴロス)を作るのに使われている。2000年頃からはアフリカ原産でアオイ科フヨウ属ケナフ(洋麻。Hibiscus cannabinus)からとれる繊維、洋麻(アンバリ麻、ボンベイ麻)もジュートの代用で注目されているほか、の繊維分としても利用されている。

利点と欠点[編集]

利点[編集]

  • 通気性が良い。
  • 吸水性がある。
  • 水に濡れることで強度が増し洗濯に強くなる。
  • 光沢がある。
  • 引っ張りに強い。

欠点[編集]

  • しわになりやすい。
  • 水に濡れるとよりしわになる。
  • カビに弱い。
  • 摩擦や水に濡れた状態で毛羽立ちやすい。
  • 硬く伸縮性がない。
  • 繊維が固く、肌にチクチクとした刺激がある。
  • 保湿に乏しい。
  • 濃い色は透けやすい。

脚注[編集]

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  1. ^ 理科研究会 『小学理科詳解 高等第1学年』1909年(昭和42年)、58-60頁。
  2. ^ 松村任三,斎田功太郎 著 『中等植物教科書』1897年(明治30年)、91-93頁。
  3. ^ 浜幸次郎,稲葉彦六 著 『新理科教科書 教員用2巻』1901年(明治34年)、82頁。

関連項目[編集]