フェリドゥーン

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フェリドゥーンペルシア語: فریدون‎、Fereydun)は、イラン神話の人物であり、ゾロアスター教に登場する英雄。ゾロアスター教の聖典『アヴェスター』ではスラエータオナ(Thraetaona/Θraētaona)と呼ばれる。父はアーブティーン、母はファラーナク。先祖にはタフムーラスがいる。息子はサルム、トゥール、イーラジ。曾孫はマヌーチェフル

最も有名な伝承が、邪竜アジ・ダハーカとの戦いである。女神アナーヒターの加護を受け、最終的にアジ・ダハーカを封印することに成功した。

シャー・ナーメ:王書』では暴君ザッハークを幽閉した。アーブティーンとファラーナクの間に生まれたフェリドゥーンは、父親をザッハークの肩のへの生贄にされ、ファラーナクはフェリドゥーンがザッハークを滅ぼすという予言を聞き、美しい雌ビルマーヤの飼われている牧場へ息子を連れて向かった。親子は牧場にたどり着き、フェリドゥーンはビルマーヤの乳を飲んで育った。これを知ったザッハークによって牧場に追手が送り込まれるが、危険を感じたファラーナクはフェリドゥーンを連れてエルブルス山に上り、ある隠者と出会った。ファラーナクの頼みを聞き入れた隠者はフェリドゥーンの父親となった。

それから16年が過ぎ、エルブルス山を降りたフェリドゥーンは母親から真実を聞き、ザッハークを倒す事を決意する。フェリドゥーンはザッハークに苦しめられている老鍛冶屋・カーヴェらの助けを借りてザッハークに戦いを挑んだ。フェリドゥーンはカーヴェにビルマーヤの頭を模した牛頭の矛を作らせ、自身の武器とした。フェリドゥーン達が出撃すると、美しい若者に姿を変えた天使が現れ、フェリドゥーンに魔法を解く方法を教えた。フェリドゥーン達はバグダードからチグリス川を渡り、エルサレムにあるザッハークの城へと向かった。フェリドゥーンは仲間達と共にエルサレムを攻め落とし、さらに悪魔と人間の混成軍を率いるザッハークの頭を牛頭の矛で打ち砕いた。フェリドゥーンがザッハークに止めを刺そうとしたその時、天使:ソルーシュ(スラオシャ)が現れてザッハークには死期が来ていないことを告げ、ダマーヴァンド山に幽閉するよう告げた。フェリドゥーンはザッハークの手足をライオンの皮で作った縄で縛り、鉄の杭と鎖で動きを封じたザッハークを洞穴に閉じ込めた。その後フェリドゥーンは500年間王位に就いた。

フェリドゥーンはザッハークに囚われていた2人の姫・シャフルナーズアルナワーズを王妃に迎え、フェリドゥーンが50歳を過ぎた時、シャフルナーズとの間に2人、アルナワーズとの間に1人の子供をもうける。彼等を区別したくなかったフェリドゥーンは3人に名前を付けず、3人は立派に成長した。フェリドゥーンは顧問官に「正しい王家の血筋を引き、妖精のように美しく、誰にも見分けがつかず、両親が名前を付けていない娘達」を王子達の嫁に選ぶよう命じ、その結果イエメンサルヴ王の3人の娘達がそれに当たる事が分かった。しかし娘達を手放したくないサルヴは1人の将軍の助言に従って使者を送り、3人の王子達に直接来てもらう旨を言伝て、自身は王子達に難題を出そうと企んだ。サルヴの思惑を見抜いたフェリドゥーンは息子達に助言をし、王子達は難題を解いた為、見事サルヴの娘達との婚約が成立した。

その後フェリドゥーンは3人の王子達の真実の心を試す為、に姿を変えて彼らの前に現れた。長男は戦いを避けるため逃げ出し、二男は勇気を振り絞って立ち向かおうとし、三男は思慮深く竜を説得しようとした。フェリドゥーンは元の姿に戻ると真実を明かし、長男にはサルム、二男にはトゥール、三男にはイーラジの名を与えた。その後、フェリドゥーンが招いた占星術師の占いの結果、イーラジの不吉な運命を象徴する予兆が見え、彼は心を痛めた。

フェリドゥーンはサルムにルームユーラシア大陸の西方を、トゥールにトゥーラーン中国を、イーラジにイランを与え、それぞれの国を治めさせた。しかしイーラジを妬む2人の兄はこれを不公平と非難する声明をフェリドゥーンとイーラジに送り、フェリドゥーンはこれに対して断固として立ち向かうことを表明した。フェリドゥーンはイーラジに身を守るよう助言するが、イーラジは兄達への信頼を捨てず、彼らに服従する道を選んだ。フェリドゥーンはサルムとトゥールにイーラジの決意を書いた書簡を送ったが彼等は聞き入れず、ついにイーラジを殺害した。イーラジの首を届けられたフェリドゥーンは嘆き、神にサルムとトゥールを罰し、イーラジの敵を取るよう願った。悲しみの涙を流す内フェリドゥーンは失明し、胸からは嘆きの草が生えた。

その後、イーラジの娘とその夫との間に息子が生まれ、曾孫を見る事ができないフェリドゥーンは神に祈った。するとフェリドゥーンの目は光を取り戻し、その曾孫にマヌーチェフルの名を与え、風や陽射しから守るよう乳母や従者達に命じた。フェリドゥーンはマヌーチェフルに様々な財宝を与えた。マヌーチェフルが成長すると、サルムとトゥールは保身の為イランと和解する事を考えた。そこで彼等は「マヌーチェフルを自分達に送ってくれるなら自分達はマヌーチェフルに服従する」と財宝を持たせた使者に述べさせた。しかしフェリドゥーンは彼らの思惑を見抜き、逆に彼等をマヌーチェフルに討たせる決意を固めた。そしてマヌーチェフルはその通り彼等を打ち取った。マヌーチェフルの勝利を見届けたフェリドゥーンは神に感謝し、曾孫に王位を譲ると、この戦いで得た多くの財宝を戦いの功労者達に分け与えた。その後、フェリドゥーンは俗世から身を引き、静かにその生涯を終えた。

参考文献[編集]