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15世紀-16世紀のスイスのロングソード

(つるぎ、けん、劍)は、長い両刃の剣身を持つ手持ちの武器の一種。現代の長剣は儀礼用としてのみ使われる。両刃である点でと区別するが、文脈で広義に刀を含むこともある。

概要[編集]

剣は武器(ないし武具)として利用するためのもので、機械要素としての(狭い範囲に圧力を集中する楔構造)によって対象に損傷を与える。史実的には刃物としてではなく質量を生かして鈍器として用いられるか刺突の機能に期待され、西洋では基本的に損耗しやすい刃の研磨加工は行われず重要視されなかった(素手で剣身を握り込んでも怪我をすることはなかった)。一般的に60cm程度より長大なものを指し、より短く軽量のものは刃を研磨されナイフなどと呼ばれ区別される。素材に関しては、後述するようにその地域で得られる様々なものが利用された。その発達の歴史においては常に最新の素材を利用する傾向も見られる。

ただ、その制作には使用する素材にも拠り一定以上の冶金技術が不可欠であり、また工業が限定的な時代や地域(例えば工芸との区別が曖昧な時代)では量産が難しく、大型のものではコストも高くついたため稀少であったり、訓練においても相応の時間を費やす必要があるなどの傾向も見出せる。このため各々の剣にに対する特別の意味付けがあるものも散見され、歴史的記念物として保存されたものや、象徴として装飾されたものが現代に伝わっている。

今日では、戦争の形態が火器(個人装備では自動小銃自動拳銃)を用いる形態が主流であるため、剣を使う戦闘も銃剣など補助要素的なものに変化し、その中では中世の銃の登場以前に発達した多種多様な刀剣類を見ることは無い。しかし歴史的に権力(いわゆる全般)の象徴としてや、なにがしかのシンボルとして剣のモチーフが登場するほか、フィクションの分野でも歴史的な題材のみならずファンタジーからサイエンスフィクションにまで幅広くその類型が見出せる。

機能と構造[編集]

剣には対象を叩き(斬り)つける効果と貫き通す(刺す)ための機能を持つものが多く、重い鎧が流行した中世頃は質量を生かした鈍器と貫く刺突を兼ね備えた機能を、銃が発達し軽装となった近世以降ではレイピアなど専ら刺すことが重視されたようである。また剣の中には血抜き(日本刀でいうところの樋・「血溝」は俗称)が施されているものがある。これは刀身に沿って溝が穿たれ、軽量化に役立った一方で、相手を刺した際に武器が抜けなくなる事を予防するため、血を抜き圧力を下げる一方で引き抜く際に切断面と剣との隙間に空気が入ることで武器を抜きやすくする機能を持つ、この様な構造を持つ物は等にも見られる。

ほとんどの中世以降の西洋の剣は、振る際に生じる遠心力による負担と隙を軽減するため、その重心を持ち手の近くに収めることが念頭に置かれている。そのため刀身はできるだけ薄く細く、柄側には刃部全体と釣り合うだけの重量を持たせていることが多い。時に使用者はその特性を利用して柄頭で打撃を加えたり、刃の部分を持って鍔を嘴として攻撃することもある。また、耐久面への配慮として刀身の柔軟性が重視されており、質のいいものは刀身を90度曲げても元に戻る。このような工夫にあっても、西洋で剣が活躍した時期は古代を除き殆どなかった。西洋剣は日本刀とよく比較されるが、前述したことからも分かる通り用途や製作理念が異なるため安易な比較をするべきではない。

また、知識不足やファンタジー系の創作による影響があるためか西洋の剣に対する間違った俗説が広まりつつもある。例えを挙げるなら「西洋剣は斬撃を行える」といったものがある。まず西洋の剣は板金鎧などに用いられる鉄板の防御力には、切れ味の点においても衝撃の強さにおいても(鎧の隙間を狙う・刺突などの別の手段は除外すれば)無力であり期待されていなかった。西洋の剣は基本的に砥ぎ加工が行われておらず、そもそも布や革でさえ切り裂くことが難しい[1]。ナイフなどの小刀や日本刀の機能を、西洋の剣へ投影し解釈してしまった勘違いである。

剣と戦争[編集]

剣による戦闘(白兵戦)では、相手も剣を備えて攻撃に用いるため、これを防ぐ防具としての側面があり、この戦闘において手を守る機能を備える剣も多い。剣は個人対個人が戦う上では、基本的な装備の一つとなる。しかし戦争では、刀剣類のうちでも大型の物は扱いに相応の技量を要求し、一般の者では扱い辛いことや、敵にかなり肉薄した状態でしか使えず、長い訓練を必要とした。さらに装甲を突破して相手を負傷させるには適切な武器の選択とこれを扱う技量を必要とする。白兵戦のうちでも携帯性に優れた剣は他の武器の補助として使い、相手に対し距離を置いて対処できる槍や弓矢などが使えず、また敵味方が入り乱れるような混乱した状況で利用された。

こと中世から近世における戦争において、一般から招集される民兵は補助的武器のものであり、歩兵はまずを基本的な戦闘単位として考え、これらの補助として剣を装備していた。ただ人類の歴史において有史以降いずれの国家においても戦争に対する備えとして平時より生産と保有が行われたことから、弓や槍に比べ扱い易い剣にも一定の信頼性が保たれていたことがうかがえる。

ただし戦国時代に代表される乱世の頃の剣と、後世や平時における護身用の剣との間には明確な隔たりが存在する。前者は切れ味よりも耐久性が求められ、ここに前述の鈍器としての剣や、あるいは腰に吊って日常的に持ち歩くことを前提としないことから肉厚で重量のある剣が利用され、また装飾などの意匠性を求められることも少なかった。後世の剣は対人でも一人ないし数人を傷付けひるませたり撃退することができれば用を成したのとは異なる。こういった変化は、日本刀でも戦国時代のものと後世のそれとで明確な差異も見られるが、西欧においてもショートソードのような歩兵装備としての剣や扱いに技能を必要とするツーハンデッドソードなどが戦争に使われた。しかし鎧や火器の発達と共に戦場での活躍は少なくなってゆき、次第に装飾的、象徴的な用途で扱うのみになっていった。同時に実用的な剣術も多くの指南書を残しながらも人々の記憶から消えていった。一般の護身用や決闘用ではある程度の携帯性と扱いやすさを持ったものが愛用され、装飾によって携帯者の地位を示すこともできた。中世盛期では十字型の片手剣やファルシオン(しばしばバックラーもセットで持ち歩く)、近世(ルネッサンス)以降では斬るよりも刺すことが重視され始め、より決闘向きのレイピアなどといった刺突系の刀剣が流行した(ちなみに刺すという攻撃は加減も難しく致命傷になり易いため、決闘や喧嘩の死亡率は高まった。そして揉め事の件数が以前より減少した)。近世末期には斬るのにも刺すのにも効果が高いサーベルが台頭し、拳銃が登場して以降も長らく人々の腰に吊られていた。

剣と刀[編集]

Épées. フランス語版より

刀剣のうち、片刃のものをと呼び、両刃のものをさして剣と呼ぶのが中国語漢字の字義からは正しい。ただし日本語およびその文化では、広義の「剣」は刀も含めた刀剣類全般を指す言葉として用いられる。これは、日本刀の発明以後、両刃の剣が完全に廃れてしまい、日本では区別する必要がなくなったためである。

特殊な物を除き一般的な刀剣は、突いたり斬ったりするのに一番重要なのは、切先から10〜30cm辺りである。数打ちと言われるような大量生産された物の中には最低限の刃しか付いていない物もある。

木刀や刃引きされた刀(刃をなくし切れない)に対して、「木剣」や、実際に刃を有する刀を「真剣」と称し、また「刀」を用いる武術武道のことを、刀術(『本朝武藝小傳』など極少数の文献にのみ使用される)ではなく剣術剣道と言うことからも「刀」と「剣」という語の関係が透けて見える。これは、日本では、剣から刃先を鋼にする日本刀へ、ほぼ完全に変化した事が大きく影響されていると思われる。

中国では両手に同じ大きさの剣を持つ双剣術と日本刀と同じように一本の剣を持つ単剣術があるが、基本的に片手だけで扱う。両手で扱うものは双手剣として分けられる。

日本で剣と単に呼ぶ場合、剣術・剣の道・剣の技・流派・生き様などを指すことが多く、武器そのものを意味する場合は剣と書いて「つるぎ」と読ませることもある。

歴史[編集]

刀剣の歴史は長いが、旧石器時代以前から狩猟に用いられてきたほどに古いものではない。

新石器時代のアジアやメソアメリカなどは、鋭利に磨かれた黒曜石の刃を木で作った刀身に並べて付けた細石刃を用いた剣などが存在する(マカナ)。同様に、金属の加工や入手が困難であった太平洋地域では、木製の平たい棍棒サメの歯を並べて植えた剣が作られた。なお、純然たる木製の剣もアフリカ地方には存在している。これらも使いようによっては十分に致命的な威力をもつ武器であった。

青銅器時代から金属加工技術の冶金技術の発達により、刃の長い武器、すなわち剣が制作可能になり、使用されるようになった。材料は青銅が用いられていたが、鉄器時代を経てが用いられるようになり、やがて鉄を高温ので精錬したが用いられるようになった。

銃器が発明された頃には、銃が先込め式で一発撃つと再装填に時間がかかるため、外した場合ほとんど無防備になるなど、信頼性を欠くことから、先込め銃と複合させた剣も一時期製造された。

象徴としての剣[編集]

剣「ラハイヤン」とアラビア語の信仰告白「アラーの他に神はなし。ムハンマドはアラーの使徒である」が描かれたサウジアラビアの国旗
剣が画かれたシティ・オブ・ロンドンの旗

剣は、王位の象徴とされることが多く、神話や伝説中では魔法の力を持つなどとされて、名を残している剣も数多い。中でも、アーサー王伝説に登場するエクスカリバーや中世叙事詩『ローランの歌』に登場するデュランダルは有名である。

フィクションでの扱い[編集]

コンピュータゲーム、特にファンタジーや中世が舞台のロールプレイングゲームなどでは剣は最も登場頻度の高い武器であり、ゲーム内では最も優秀で一般的な主力近接武器として扱われがちである(実際の戦場ではハルバートなどの長柄武器の方が剣に比べてリーチや機能性といった点で圧倒しているため、決闘でもない限りほとんどの剣はサブウェポンの域を出ない)。ゲームによっては短剣、長剣、刀(日本刀)に分類され、それぞれに特徴的な性質を持たせる。キャラによっては扱える種類があるなどの設定を加えることもある(非力な魔法使いは長剣や刀は使えないなど)。

主な剣の種類[編集]

ここでは、狭義の剣の種類を述べる。

短剣[編集]

日本においては脇差という武器が存在したため、普通の刀の半分程度の長さの刀を短剣と呼ぶ。西洋では60cm程度未満の場合に「ナイフ」や「ダガー」と呼称され、短剣と訳されることが多い。 なおショートソードという区分も存在するが、これは多くの場合で歩兵が用いた通常の剣を指し、それに比べて騎兵が馬上から用いた長いロングソードと区別するために後から付けられた名前とされている。そのためショートソードを短剣とするのは誤りである(ロングソードを徒歩で使用することもない)。短剣は高い携帯性から主な用途は護身用やサブウウエポンであり、しばしば暗殺の道具としても用いられる(リーチが短いので振りが速く、咄嗟に刃を受け流すのが難しい)。それ以外の使い方としては武器を受け流す盾に近い使い方をするなどが挙げられる。

長剣[編集]

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関連項目[編集]