ナチス式敬礼

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帝国議会でナチス式敬礼を受けるヒトラー、ベルリン、1941年

ナチス式敬礼(ナチスしきけいれい、: Nazi salute)またはヒトラー式敬礼: Hitlergruß )は、国家社会主義ドイツ労働者党(以下、単に「ナチス」)やナチス・ドイツが採用した敬礼

ローマ帝国ローマ式敬礼を、ベニート・ムッソリーニファシスト党イタリア軍で復活させた[1]ものを、ナチスが更にドイツで採用したもの[2]

一般にはナチスのイメージが強いためナチス式敬礼と呼ばれる場合が多い[3][4][5]が、第二次世界大戦中はドイツ式敬礼 (Deutscher Gruß) とも呼ばれた。隠語として 88 (achtundachtzig、Eighty-eight) とも呼ばれている。これはアルファベットで H が 8 番目である事から Heil Hitler を意味するとするものである。またファシスト式敬礼とも呼ばれる。

概要[編集]

直立の姿勢で右手をピンと張り、一旦胸の位置で水平に構えてから、腕を斜め上に、掌を下側に、突き出すジェスチャーによる敬礼[6]。通常は「ジークハイル」(Sieg Heil、勝利万歳)、あるいは「ハイル・ヒトラー」(ドイツ語: Heil Hitlerヒトラー万歳)の声を付随させる。これはヒトラーへの権力や力の集中、忠誠を意味しており、これを受ける唯一の存在である総統ヒトラー自身は、肘から指先までを上に挙げる答礼でこの敬礼に応える。ヒトラー以外の人は同じ敬礼で応える事が義務であった。

ヒトラーと袂を別った反ヒトラー派のシュトラッサー率いる革命的ナチスの場合は、同じようなスタイルで「ハイル・ドイチュラント」(ドイツ語: Heil Deutschland, ドイツ万歳)と言った。

突撃隊親衛隊では公式な敬礼として用いられ、国防軍でも1944年7月20日のヒトラー暗殺未遂事件以降、従来の一般的な挙手注目敬礼ではなくこの敬礼が求められるようになった。

第二次世界大戦後のドイツでは、ナチス式敬礼は「ナチ賛美・賞賛」と見做され民衆扇動罪で逮捕・処罰の対象となる。オーストリアでも同様な法律があり、取り締まりの対象になっている。2006年、ドイツで店のクリスマスディスプレーで右手を挙げた複数のサンタクロース人形が、ナチス式敬礼とされ問題となり撤去された[7]。2014年5月、P&Gがドイツ国内で発売した洗濯洗剤に書かれた「88」が「ハイルヒトラー」を暗示するとされ、アドルフヒトラーのフルスペルを暗示するとされる「18」が書かれた別製品を含め、出荷停止となった[8]

学校でのナチス式敬礼、1934年
ブッシュ政権への皮肉の意図を込めてナチス式敬礼とガチョウ足行進を行うデモ参加者。ただし挙げているのは右腕ではなく左腕。ワシントン、2005年

今日、ネオナチなどは摘発を避けるためにこの敬礼を行う事を避け、大胆な敬礼 (Kühnengruß) と呼ばれる肘を曲げて右手を肩の高さまで上げ親指と人差し指と中指のみを立てる敬礼を行う事が多い。本来は宣誓のための挙手[9]であったが、転じてヒトラーへの忠誠を誓うという意味を持たせるようになった。

その他の諸国[編集]

中東に於いては、ナチス・ドイツに亡命したパレスチナ人のアラブ民族主義アミーン・フサイニーの強い影響力があり、パレスチナ警察やシリア陸軍、レバノンシーア派武装組織ヒズブッラーがナチス式敬礼を行っている。[要出典]日本では高校野球宣誓をはじめ、中学高校体育祭や競技会などでナチス式敬礼(ローマ式敬礼)に似た敬礼を行っているケースが全国で見られる。国民体育大会の入場行進でも、貴賓席の天皇皇后に対する敬礼として行なわれていたが、問題になったため、県花やイメージカラーのハンカチを振る挨拶に切り替えられた[要出典]。 

近年では、イタリアのサッカー選手パオロ・ディ・カーニオが試合中パフォーマンスとして度々ナチス式敬礼をし、非難されたが、彼は古代ローマ式敬礼と主張している[10]

スイスでは、「宣伝目的でない限りヒトラー式の敬礼は罪に問われない」とする連邦最高裁判所の判例があり、国内外で議論が起こっている[11]

脚注[編集]

  1. ^ Winkler, Martin M. (2009). The Roman Salute: Cinema, History, Ideology. Columbus: Ohio State University Press. ISBN 0814208649, 9780814208649.(p74-101)
  2. ^ Evans, Richard J. (2005). "The Rize of Nazism". The Coming of the Third Reich (reprint, illustrated ed.). Penguin Group. pp. 184–185. ISBN 0143034693, 9780143034698.
  3. ^ パリス・ヒルトン、今度はナチス式敬礼おふざけで大ヒンシュク - Movie Walker
  4. ^ ナチスの敬礼をした庭置き人形、独検察当局が違法性を捜査 - AFP BB News
  5. ^ 「ナチスケーキ」で裁判沙汰に - Rocket News 24
  6. ^ Grunberger, Richard (1995). The 12-year Reich: a social history of Nazi Germany, 1933–1945 (illustrated ed.). Da Capo Press. ISBN 0306806606, 9780306806605.
  7. ^ St. Nick Scandal in Germany: Is Santa Claus a Nazi?
  8. ^ ドイツで洗剤回収 ヒトラー示す隠語 客指摘 東京新聞2014年5月10日
  9. ^ http://i30.photobucket.com/albums/c342/zvoncic/handzar_division.jpg
  10. ^ Nazi deportees speak to Di Canio
  11. ^ レナート・キュンツィ (2014年6月11日). “ヒトラー式敬礼が許されるスイス 「刑法は鋭い武器であるべき」と法学者”. スイス放送協会. http://origin.swissinfo.ch/jpn/%E3%83%92%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC%E5%BC%8F%E6%95%AC%E7%A4%BC%E3%81%8C%E8%A8%B1%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9--%E5%88%91%E6%B3%95%E3%81%AF%E9%8B%AD%E3%81%84%E6%AD%A6%E5%99%A8%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%B9%E3%81%8D-%E3%81%A8%E6%B3%95%E5%AD%A6%E8%80%85/38776410 2014年6月29日閲覧。 

関連項目[編集]