ポセイドーン

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ミロス島から出土した紀元前2世紀のポセイドーン像 (アテネ国立考古学博物館蔵)
ギリシア神話
Zeus Otricoli Pio-Clementino Inv257.jpg
主な原典
イーリアス - オデュッセイア
神統記 - ギリシア悲劇
ビブリオテーケー - 変身物語
オリュンポス十二神
ゼウス - ヘーラー
アテーナー - アポローン
アプロディーテー - アレース
アルテミス - デーメーテール
ヘーパイストス - ヘルメース
ポセイドーン - ヘスティアー
ディオニューソス
その他の神々
カオス - ガイア - エロース
ウーラノス - ティーターン
ヘカトンケイル - キュクロープス
タルタロス - ハーデース
ペルセポネー
ヘーラクレース - プロメーテウス
ムーサ - アキレウス
主な神殿・史跡
パルテノン神殿
ディオニューソス劇場
エピダウロス古代劇場
アポロ・エピクリオス神殿
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ポセイドーン古希: ΠΟΣΕΙΔΩΝ, Ποσειδῶν, Poseidōn)は、ギリシア神話地震を司るである[1]。イオーニア方言系ではポセイダーオーンとも呼ばれる。最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る。海洋の全てを支配し、全大陸すらポセイドーンの力によって支えられている。怒り狂うと、強大な地震を引き起こして世界そのものを激しく揺さぶる。また、地下水の支配者でもあり、泉の守護神ともされる。エノシガイオスという名もある[1]日本語では長母音を省略してポセイドンとも呼ぶ[1]

概説[編集]

ゼウス・エナリオス(海のゼウス)と呼ばれるほどポセイドンの地位と実力は高く、その支配力は全物質界に及んだ[2]ティーターノマキアーの際にキュクロープスから贈られた三叉の矛(トリアイナ)を最大の武器とし、これによって大海と大陸を自在に支配する。これを使えば容易く嵐や津波を引き起こし、大陸をも沈ませることができる上に、万物を木端微塵に砕くことができる。世界そのものを揺さぶる強大な地震を引き起こすことも可能で、そのあまりの凄まじさに、地球が裂けて冥界が露わになってしまうのではないかと冥王ハーデースが危惧したほどである。また、山脈を真っ二つに引き裂いて河の通り道を造ったり、山々と大地を深く切り抜いて海中へと投げて島を造ったこともある。

古くはペラスゴイ人に崇拝された大地の神(特に地震を司る)であったと考えられ、異名の1つに「大地を揺らす神」というものがある[2][1]。また、との関わりが深く、競馬の守護神としても崇められた[2]。故にその象徴となる聖獣は馬、牡牛イルカであり、聖樹はである。真鍮の蹄と黄金のたてがみを持った馬、またはヒッポカムポスの牽く戦車に乗る。ポセイドーンの宮殿は大洋の中にあり、珊瑚と宝石で飾られているとされる。

また、大地の神であった特質からデーメーテールの夫の位置にいることもあり、ピガリアではデーメーテールとの婚姻も伝えられている。ポセイドーンの名前の意味も、「ポシス=ダー(大地の夫)」からきているとされているが、ジョン・チャドウィックは「ダー dā という語彙はギリシア語には1度しか現れないし『大地』という意味でもない」としてこの説を斥けている。

家系[編集]

神話では、クロノスレアーの子[1]ハーデースの弟でゼウスの兄[1]オリュンポス十二神の1柱である。ネーレーイデスの1人であるアムピトリーテーを后とし、トリートーンオーリーオーンペーガソスなど多数の子がいる[1]。姉のデーメーテールに惚れて交わったり、怪物になる前のメドゥーサを愛人としていたこともある[1]。聖獣である馬はアムピトリーテーへの贈り物として創造した物であり、その美しさは彼女を喜ばせ、ポセイドーンの求愛を見直すきっかけとなった。

物語[編集]

ティタノマキア[編集]

王位簒奪を恐れたクロノスによって呑み込まれていたが、ゼウスによって救出された。オリュンポス側としてティタノマキアに参戦し、ゼウスやハーデースと共にティーターン神族と戦った。キュクロープスから海と大地を操ることのできる三叉の矛を贈られ、以後彼の主要な武器となる。三叉の矛によって宇宙を揺さぶり、ゼウスたちとの共闘によってティーターン神族を敗北させた。

ギガントマキア[編集]

巨人族との戦争であるギガントマキアーにもポセイドンは参戦し、火山や島々を投げ飛ばしては巨人ギガースを戦闘不能にさせていた。ポセイドーンはコス島の岩山をもぎ取り、ギガースの一人であるポリュボーテースに打ち付け、その岩山は後にニーシューロスという火山島になった。岩山に封印されたポリュボーテースが重みに耐えかねて火炎を吹くのである。

トロイア戦争[編集]

トロイア戦争ではトロイアの王ラーオメドーンが城壁を建造した際の報酬を踏み倒した事を根に持っていたためにアカイア側に属している[1]。アカイア勢を常に鼓舞し、ゼウスから参戦許可が下りた後は積極的に介入し、三叉の矛で全世界を揺さぶって威圧した。この宇宙規模の地震は冥界に座するハーデースが恐れおののくほどであった。

オデュッセイア[編集]

ホメーロスの『オデュッセイア』ではキュクロープスのポリュペーモスはポセイドーンの子といわれる[1]。ポリュペーモスをオデュッセウスが奸計を用いて盲目にしたところから、ポセイドーンが怒ってオデュッセウスが放浪することになったという[1]

アテーナーとの争い[編集]

スニオン岬にあるポセイドーン神殿

アテーナイの支配権をめぐりアテーナーと争ったといわれる[1]。2人がアテーナイの民に贈り物をして、より良い贈り物をした方がアテーナイの守護神となることが裁定で決まり、ポセイドーンは三叉の矛で地を撃って塩水の泉を湧かせたが、アテーナーはオリーブの木を生じさせた[1]。これによってアテーナイはアテーナーのものとなったという[1]。この結果に納得がいかなかったポセイドーンはアテーナイに洪水を起こしたが、ゼウスが仲介に入ってアテーナイのアクロポリスにアテーナーの神殿を、エーゲ海に突き出すスニオン岬にポセイドーンの神殿を築き、2人は和解した。アテーナイのアクロポリスには、この塩水の泉が枯れずに残っていたといわれる。この他にも、ゼウスやヘーラーディオニューソスヘーリオスとも領有地争いを起こしている[2]

海の怪物[編集]

ポセイドーンは傲慢な人間たちに罰として海の怪物を送り込むことでも知られる。一番有名なエピソードはエチオピア王妃のカッシオペイアへの罰であり、自らの美貌は女神にも勝ると豪語したカッシオペイアに対して海の怪物ケートスを送り込んでエチオピアを滅ぼそうとした。ポセイドーンの怒りを鎮めるためにアンドロメダを生け贄として捧げるのだが、通りかかったペルセウスによってアンドロメダは救出され、ケートスも彼の持っていたメドューサの首によって石化して退治された。

また、報酬を支払う約束を反故にしたトロイア王ラーオメドーンにも海の怪物を送り込んでいる。この海の怪物は巨大であり、凄まじい力を持っていたが、通りかかったヘーラクレースによって退治された。ヘーラクレースはわざと呑み込まれてこの怪物の胃袋に入り込み、三日間も腹の中を暴れ回って内蔵を破壊し、この怪物を討伐したのであった。

反乱[編集]

実力は高く、一度はヘーラーとアテーナーの力を借りてゼウスを縛り上げ、オリュンポス山から追放しかけたこともあったが、結局は失敗に終わった[1]。その後、ラーオメドーンに1年間仕えさせられることになり、彼のためにトロイアの城壁を築いた[1]

評価[編集]

プラトーンは対話編の中で上記の話について、神々が己にふさわしい地を知らないはずがなく、このような争いがあったとは思われないと批判している。対話編『クリティアス』の中ではポセイドーンは伝説の島アトランティスを自らの割り当ての地として引き受け、その中心に人間の女たちに生ませた子を住まわせたとしている。

ギリシア彫刻の多くにおいて堂々とした威厳ある壮年の男性の姿で描かれる。アルテミシオン沖で発掘された古代盛期の青銅像が著名である。この像ではポセイドーンは裸体で三叉の矛を持った立像となっている。

ローマ神話におけるネプトゥーヌス(ネプチューン)と同一視された[1]古代ローマでは、はじめの神として崇拝され、また競馬の神とされた。ローマでは競馬場の近くにネプトゥーヌスの神殿が建てられた(紀元前25年)。祭日ネプトゥーナーリアは7月23日に行われた。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル 『ギリシア・ローマ神話事典』 大修館書店
  2. ^ a b c d フェリックス・ギラン 『ギリシア神話』 青土社

関連項目[編集]