ムーサ

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ギリシア神話
Zeus Otricoli Pio-Clementino Inv257.jpg
主な原典
イーリアス - オデュッセイア
神統記 - ギリシア悲劇
ビブリオテーケー - 変身物語
オリュンポス十二神
ゼウス - ヘーラー
アテーナー - アポローン
アプロディーテー - アレース
アルテミス - デーメーテール
ヘーパイストス - ヘルメース
ポセイドーン - ヘスティアー
ディオニューソス
その他の神々
カオス - ガイア - エロース
ウーラノス - ティーターン
ヘカトンケイル - キュクロープス
タルタロス - ハーデース
ペルセポネー
ヘーラクレース - プロメーテウス
ムーサ - アキレウス
主な神殿・史跡
パルテノン神殿
ディオニューソス劇場
エピダウロス古代劇場
アポロ・エピクリオス神殿
ウィキプロジェクト

ムーサ古希: Μοῦσα, Musa)またはムサは、ギリシア神話文芸μουσικη; ムーシケー、ムシケ)を司る女神たちである。複数形はムーサイΜοῦσαι, Musai)。英語フランス語ミューズ (英語・フランス語単数形: Muse、フランス語複数形 Muses) やミューゼス (英語複数形: Muses) としても知られる。

ムーサたちはパルナッソス山に住むとされる。ムーサたちを主宰するのは芸術の神・アポローンである。しばしば叙事詩の冒頭でムーサたちに対する呼びかけ(インヴォケイション)が行われる。なお『ホメーロス風讃歌』にはムーサたちに捧げる詩がある。

ムーサたちの一覧[編集]

ヘーシオドスの『神統記』によれば、大神ゼウスムネーモシュネーの娘で9柱いるとされる。別伝ではハルモニアーの娘とする説や、ウーラノスガイアの娘とする説もある。古くはその人数は定まっておらず、デルポイシキュオーンではウーラノスの娘であるアオイデー(歌唱(aoide))、ムネーメー(記憶(mneme))、メレテー(実践(melete))の3柱、レスボス島では7柱とされていたが、ヘーシオドスによって9柱にまとめられた。ピーエリア王ピーエロスの娘・ピーエリスたち(ピーエリデス)とも同一視された。

アルクマーンによる3柱[編集]

アルクマーンによると、ウーラノスガイアの娘。主に詩歌の形式と技巧を司る。

ムーサ el la 名前の意味
アオイデー Αοιδή Aoide 歌唱
ムネーメー Μνήμη Mneme 記憶
メレテー Μελέτη Melete 実践

キケローによる4柱[編集]

キケローによると、ゼウスネダー(またはプルシアー(Plusia))の娘。主に曲芸の形式と技巧を司る。

ムーサ el la 名前の意味
テルクシノエー Θελξινόη Thelxinoe 魅惑
アオイデー Αοιδή Aoide 歌唱
アルケー Αρχή Arche 始源
メレテー Μελέτη Melete 実践

ヘーシオドスによる九姉妹[編集]

9柱それぞれの名前と司る分野、および持ち物は以下の通り。

ムーサ el la 分野 持ち物 名前の意味
カリオペー
(カリオペイア)
Καλλιόπη Calliope 叙事詩 書板鉄筆 美声
クレイオー
(クリーオー)
Κλ(ε)ιώ Clio 歴史 巻物または巻物入れ 讃美する女
エウテルペー Εὐτέρπη Euterpe 抒情詩 喜ばしい女
タレイア Θάλεια Thalia 喜劇牧歌 喜劇用の仮面羊飼いの杖 豊かさ
メルポメネー Μελπομένη Melpomene 悲劇挽歌 悲劇用の仮面・葡萄の冠・悲劇の靴 女性歌手
テルプシコラー Τερψιχόρα Terpsichore 合唱舞踊 竪琴 踊りの楽しみ
エラトー Ἐρατώ Erato 独唱歌 竪琴 愛らしい女
ポリュムニアー
(ポリュヒュムニアー)
Πολυ(υ)μνία Poly(hy)mnia 讃歌物語 - 多くの讃歌
ウーラニアー Οὐρανία Urania 天文 渾天儀コンパス 天上の女

当初は特定の分野が割り当てられず、音楽・詩作・言語活動一般を司る知の女神たちであったようだが、古典期を通じてローマ時代の後期には各ムーサがつかさどる学芸の分野が定められ、現在広く知られる形が出来上がった。

ムーサ九姉妹と古き三柱のムーサたち (ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ、1884–1889)

文化への影響[編集]

ヨーロッパの多くの言語では、「音楽」を意味する語(英語: music)、また「美術館」「博物館」を意味する語(ミュージアム、英語: museum)が、この名前から派生した。古典古代の学堂であったムセイオンは、もとは文芸の女神ムーサを祀る神殿であったが、後に文芸・学問を研究する場にも使われるようになった。ルネサンス以降に西洋に博物館が成立した際に、ムセイオンの名が復活している。

ルネサンス期以降、ムーサたちにちなんで、Gradus ad Parnassum 『パルナッソスへの階梯』という名の詩学・音楽教本が多く書かれた。ドビュッシーの『子供の領分』第1曲「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は、これをもじった題名である。

関連項目[編集]