アエネーイス

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ピエール=ナルシス・ゲラン『トロイアの陥落をディードーに語り聞かせるアエネーアース』
ローマ神話
Bas relief from Arch of Marcus Aurelius showing sacrifice.jpg
主な原典
アエネーイス - 変身物語
ディー・コンセンテス
オリュンポス十二神相当)
ユーピテル - ユーノー
ミネルウァ - アポロ
ウェヌス - マールス
ディアーナ - ケレース
ウゥルカーヌス - メルクリウス
ネプトゥーヌス - ウェスタ
バックス
その他の神々
ユースティティア - クピド
ウラヌス - サートゥルヌス
アウローラ - プルートー
ヤーヌス - フォルトゥーナ
主な神殿・史跡
パンテオン
ウェヌスとローマ神殿
ウェスタ神殿
サートゥルヌス神殿
メゾン・カレ

アエネーイス』(古典ラテン語Aeneis)は、古代ローマ詩人ウェルギリウス前70年前19年)の叙事詩。全12巻。イーリオス(トロイア)滅亡後の英雄アエネーアースAenēāsギリシア語ではアイネイアース Αἰνείας)の遍歴を描く。

アエネーイスは「アエネーアースの物語」の意。

ウェルギリウスの最後にして最大の作品であり、ラテン文学の最高傑作とされる。この作品の執筆にウェルギリウスは11年(前29年前19年)を費やした。最終場面を書き上げる前に没したため未完である。彼は死の前にこの草稿の焼却を望んだが、アウグストゥスが刊行を命じたため世に出ることになった。『アエネーイス』以後に書かれたラテン文学で、この作品を意識していないものはない。

主な登場人物[編集]

英雄と人間[編集]

アエネーアース(Aenēās)
主人公であり、『イーリアス』に登場するトロイア勢の英雄。トロイア陥落後、息子アスカニウス、父アンキーセースとの放浪の末、新天地イタリアにたどり着く。
アスカニウス(Ascanius)
アエネーアースの息子。冒頭では幼児として描写されるが、作中にて優れた戦士へと成長する。ユールス(Jūlus)とも呼ばれており、後のユリウス氏族との関係が仄めかされている。
ディードー(Dīdō)
カルタゴの女王。流れ者であるアエネーアースとの情熱的な恋に落ちるが、アエネーアースがカルタゴを去ると、別れを嘆き、その身を薪の火に投じて壮絶な自死を遂げる。その際、後のポエニ戦争でローマがカルタゴ軍により苦しめられることを示唆する恨み言を遺す。
ラティーヌス(Latīnus)
イタリアの一地方の王。有能な王として描写される。
ラーウィーニア(Lāvīnia)
ラティーヌスの娘であり、トゥルヌスと婚約していた。しかしラティーヌスが実力を認めたアエネーアースと彼女を結婚させようとしたことが、トゥルヌスがアエネーアースと戦うきっかけとなる。
トゥルヌス(Turnus)
イタリアの一地方の王であり、そこに辿りついたアエネーアースと対決することとなる。『アエネーイス』の最終場面は彼とアエネーアースの一騎打ちであり、まさにその勝負がつかんとするところで現存する作品は終わっている。

神々[編集]

ウェヌス(Venus)
愛と美の女神で、アエネーアースの母。彼の身を案じ、時には策略を用いて彼を援助する。
ユーピテル(Jūpiter)
神々の王。ウェヌスにアエネーアースが苦難を乗り越えローマの礎を築く運命にあることを伝える。
ユーノー(Jūnō)
ユーピテルの妻。パリスの審判を恨み、トロイア滅亡後もアエネーアースの旅路を妨害する。

内容[編集]

アエネーアースの行程

トロイアの王子でウェヌスの息子であるアエネーアースが、トロイア陥落後、カルタゴの女王ディードーとの悲恋を経てイタリアにたどり着き、現地王の娘との婚約とそれに反対する勢力との戦いを描く。詩の中でしばしばその建設が予言されるアルバ・ロンガはローマの創立者ロームルスレムスの出身地であり、当時ローマの礎と見なされていた。単に神話的英雄を謡うにとどまらず、当時内乱を終結させたローマの実力者アウグストゥスの治世をアエネーアースに仮託し、褒め称える構造をもつ。ディードーと別れたのち冥界で今後進むべき道について受ける託宣には、主人公アエネーアースにとっては未来、ウェルギリウスにとっては同時代である、アウグストゥスの治めるローマの栄光が予言として歌い上げられる。アウグストゥスの属したユリウス氏族はアエネーアースの子孫を称しており、アエネーアースはアウグストゥスを連想させた。作中に登場するアエネーアースの息子アスカーニウスはまたの名をユールス(Julus)といい、彼が後のユリウス(Julius)氏族へと繋がることが示されている。

構成はホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』に範を取っている。すなわち、前半部分(1-6巻)の、アエネーアースがイタリアにたどり着くまでに放浪を続ける箇所が『オデュッセイア』的であり、後半部分(7-12巻)の、イタリアにたどり着いたアエネーアースが、土着の勢力と戦う箇所が『イーリアス』的であるとされる。前半部についてはアエネーアースにオデュッセウスが投影されていることが明らかであるが、後半部については『イーリアス』の様々な英雄の属性が投影されている。例えば婚約が決まっていた娘ラーウィーニアと結婚する異国人の立場はパリスを連想させ、逆に一騎打ちから逃げる敵の大将トゥルヌスを追うさまはメネラーオスを連想させる。また一騎打ちの決着後参戦したパッラスの剣帯を見て、友を殺された怒りからトゥルヌスに報復するさまはアキレウスを連想させる。もちろん、全編に渡って、ホメーロスの影響は大きく、以上の『オデュッセイア』『イーリアス』の区分はあくまで作品全体を巨視的に見た場合に妥当するものである。

『アエネーイス』を題材とした作品[編集]

『アエネーイス』の物語は、後世でも多くの絵画や彫刻の題材となった。

参考文献[編集]

  • 泉井久之助訳注 『アエネーイス』 岩波文庫全2巻、1976年、度々復刊
    • 初版『アエネーイス』 世界古典文学全集 21巻:筑摩書房、1965年、復刊2005年
  • 岡道男高橋宏幸訳注 『アエネーイス』 西洋古典叢書:京都大学学術出版会、2001年
  • 小川正廣 『ウェルギリウス アエネーイス 神話が語るヨーロッパ 世界の原点岩波書店〈書物誕生〉、2009年
  • 逸身喜一郎 『ギリシャ・ローマの文学=韻文の系譜= 第二版』 放送大学教育振興会
  • 松田治 『アエネアスの冒険』 (世界の英雄伝説7)筑摩書房、1987年 

関連項目[編集]