ラミアー

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ギリシア神話のラミアー

ラミアー長母音を省略してラミアとも表記される)は、ギリシア神話に登場する人物や怪物、またはブルガリアの民話に登場する怪物。

ギリシア神話には以下の5つが登場するが、しばしば混同される。

  1. 子供をさらうという怪物。ベーロスリビュエーの娘。本項で詳述する。
  2. ポセイドーンの娘。ゼウスとの間にリビアの巫女シビュレーを産んだ。
  3. 子供の血を吸うという複数の女の怪物(吸血鬼)。
  4. デルポイの怪物シュバリスの別名。アルキュオネウスが生け贄として捧げられた。
  5. レスボス島の子供をさらう若い女の幽霊ゲローの別名。

ギリシア神話のラミアー[編集]

ラミアー古希: Λαμία, Lamiā)は、ギリシア神話に登場する人物、もしくは怪物。

海の神ポセイドーンの息子ベーロスとその母リビュエーとの間の娘。元々はリビアの女王であったが、その美貌でゼウスに見初められた。結果、ゼウスの妻ヘーラーの怒りを買い、ゼウスとの間に産まれた子供を全て殺され、自身も怪物に変えられてしまった。

ヘーラーの呪いはそれだけでは終わらず、子供を失った悲しみから常に逃れられないよう、眠りさえも奪われてしまった。ゼウスは彼女が休めるよう、目を取り外して眠れるようにしてやったが、子供がいる他の母親を羨むあまり、ラミアは他人の子供を食べるようになってしまった(他にも、生まれてきた子供を喰う呪いをかけられ、その後上半身が女性で下半身がの怪物になったという話や、ヘーラーに子供を殺されてしまい、哀しみのあまり怪物と化したという話もある)。

彼女は多くの場合、女性の頭と胸に、蛇の下半身を持つという姿で描かれるが、時には、男性として描かれたり、両性をもつ者として描かれることもある。人語は話せないが、代わりに美しい口笛を吹いて人を虜にする。

本来はスキタイの戦いの女神だったといわれる。またはリビアの愛と戦いの女神だったという説もある[1]

ジョン・ランプリエールは『ギリシア・ローマ事典』の中で、ラミアーは、声は魅力的だが子供たちを殺す小さなアフリカの怪物ラミアイ(Lamiae)の原型になり、そしてそれが現在レムレース(Lemures)と呼ばれているものである、と主張した。

歴史上では、母親たちが子供への脅しに使うこともあり、子供が悪いことをすると「○○をするとラミアーが来るよ。」と言う風に使われた。

名前は「貪欲」を意味するラミュロス(古希: λαμυρός)からきていると言う説がある。同じ語源からレムレースがきているという説もあるが、確かではない。

ポセイドーンの娘でシビュレーの母であるラミアーともしばしば混同される。また、ラテン語に入ってからは、女の吸血鬼を意味するようにもなった。

レイミア[編集]

ジョン・キーツは生前の1819年に出版した詩集 Lamia [2](『レイミア』 イザベラ、聖アグネス祭前夜その他の詩集)のPart Ⅰにラミアーの伝説に基づく詩を書いた。これは、ロバート・バートンの『憂鬱の解剖学』の第3部第2節第1条第1題の逸話、ジョン・ランプリエールの『ギリシア・ローマ事典』(ジョン・ポッターの『ギリシア古俗』)に基づいている[3]。その内容は「レイミア(ラミアー)と人間の恋物語(異類婚姻譚)である。

主な内容としては、ある男がレイミアの化けた女性と結婚することになるが最終的にその正体を暴き、彼女は正体を現して泣きながら去って行ったというものである。

蛇女伝説[編集]

ラミアー伝説が東洋に伝来し中国の白蛇伝の基になったとの説が唱えられている[3]

ブルガリアのラミア[編集]

ブルガリアの民話にもラミアブルガリア語: Ламя / Lamya)という怪物が登場する。こちらは、切っても切っても生えてくる複数の頭を持つヒュドラに似た大蛇である。人々(特に若い女性)の血液を栄養源としている謎の怪物として描かれている。村人たちを苦しめ、洞窟や地下で発見されるというストーリーが多い。いくつかの物語では、恐竜のような怪物、あるいは翼を持ち、炎の息を吐くドラゴンとされることもある。特に性別を示すようなところはないが、普通は女性とされている。

現代のラミアー像[編集]

ロールプレイングゲームダンジョンズ&ドラゴンズ』では、多種多様なラミアー像が描かれているが、後発のRPG作品では上半身は美女だが下半身は蛇で、人間の血を吸う怪物として描写されている事が多い。また、グループSNEの「ソード・ワールド」シリーズでは、人間と友好的になる事もあると描写されている。

脚注・出典[編集]

  1. ^ 健部伸明と怪兵隊 『幻想世界の住人たち』 新紀元社 1988年
  2. ^ Wikisource reference John Keats. Lamia. - ウィキソース. 
  3. ^ a b 『蛇女の伝説』南條竹則、平凡社新書059、2000年

関連項目[編集]