ヘスペリデス

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ヘスペリデスの園 (フレデリック・レイトン, 1892年)

ヘスペリデス古希: Ἑσπερίδες, Hesperides)は、ギリシア神話に登場する美しいニュンペーたちである。「黄昏の娘たち」という意味。ヘスペリデスは複数形で、単数形はヘスペリス古希: Ἑσπερίς, Hesperis)。ヘーシオドスの『神統記』では夜の女神・ニュクスが1人で生んだ娘たちとされるが[1]、一般的にはアトラースの娘として知られ、プレイアデスヒュアデスプレーイオネーとの娘たちとされるのに対し[2]、ヘスペリデスはヘスペロスの娘ヘスペリスとの間に生まれた娘たちであり、母の異なる姉妹関係になる[3]

ヘスペリデスは世界の西の果てにある「ヘスペリデスの園」に住んでいる[4]。その近くでは、父アトラースが天空を背負って立っている。「ヘスペリデスの園」にはヘーラーの果樹園があり、ヘスペリデスは果樹園に植えられた黄金のリンゴの木を世話して、明るい声で歌を歌っている。リンゴの木は、ゼウスとヘーラーの結婚の祝いとしてガイアが贈ったもの[5]。しかし、ゼウスがこのリンゴを採っては恋の贈り物としてばらまいてしまうため、ゼウスの手が届かないように、アトラース山の頂にある果樹園にヘーラーが移し植えたとされる。

木の世話をしているヘスペリデスがリンゴを盗んでいるのを見つけたヘーラーは、百の頭を持つ(または)・ラードーンに木の周りをぐるぐる巻き付かせ、番をさせることにした。「ヘスペリデスの園」は、主にペルセウスのメドゥーサ退治の伝説、ヘーラクレース11番目の功業の物語の舞台となった。ヘーラクレースが持ち帰った黄金のリンゴは、エウリュステウスが彼に返したため、アテーナーがヘーラクレースから受け取って再び元の場所に戻したという。ヘーラーの持ち物を本来の場所以外のどこに置くことも違法とされたからである[6]

彼女たちは、3人あるいは4人、それ以上の7人説ともいわれる。アポロドーロスによればヘスペリデスは多くが日没に関係した名前を持ち、アイグレー(Aegle、輝き・明るい女)、エリテュイア(Erytheia、紅・赤い女)、牛の眼のヘスペレトゥーサ[7](Hesperethusa、夕焼け女)の3人姉妹にヘスペレトゥーサからヘスペリアー(Hesperia、夕方の女)へ変更し、アレトゥーサ(Arethusa)を加えた4人の姉妹としている[8]。まったく異なる説として、リバラー(Lipara、柔らかい光)、クリューソテミス(Khrysothemis、黄金の秩序)、アステロペー(Asterope、閃光)、ヒュギエイア(Hygieia、健康)があり、さらにゴルゴーンがヘスペリデスの園に住んだとされることから、混同されてゴルゴーンのメドゥーサ[9]、さらにはハルピュイアイのマプサウラー(突風)を加えるものもある。普段は3人の美しい姉妹(アイグレー・エリテュイア・ヘスペレトゥーサ)を描いていた。

明らかなヘスペリデスたちの名前は下表参照。

ヘスペリデスの園 (エドワード・バーン=ジョーンズ, 1869-73年)
ヘスペリデス el la 名前の意味
アイグレー Αιγλη Aegle 輝き・明るい女
エリテュイア
エリュテーイス
Ερυθεια
Ερυθεις
Erytheia
Erytheis
紅・赤い女
ヘスペレトゥーサ Ἑσπερεqουσα Hesperethusa 夕焼け女
ヘスペリアー
ヘスペリエー
ヘスペルーサ
ヘスティア
ヘスペレイア
Ἑσπερια
Ἑσπεριε
Ἑσπερυςα
Ἑστία
Ἑσπερεια
Hesperia
Hesperie
Hesperusa
Hestia
Hespereia
夕方の女
ヘスぺラ
ヘスペレ
Ἑσπερα
Ἑσπερε
Hespera
Hespere
黄昏の女
アレトゥーサ Αρεθουσα Arethusa -
アイリカー Αιρίκα Aerica -
リバラー Λιπαρα Lipara 柔らかい光
クリューソテミス Χρυσοθεμις Khrysothemis 黄金の秩序
アステロペー Αστεροπη Asterope 閃光
ヒュギエイア Ὑγιεία Hygieia 健康

脚注[編集]

  1. ^ ヘーシオドス、211~216。
  2. ^ ヒュギーヌス、192。
  3. ^ シケリアのディオドロス、4巻27・2。
  4. ^ 「ヘスペリデスの園」の場所については諸説あって一致しない。ヒュペリボイオス人の国のアトラース山、マウレターニアのアトラース山、大海オーケアノスのどこか、エチオピアのヘスペリアイに近い「西の角」と呼ばれる岬の近くにある二つの島などがそれである。
  5. ^ ウェルギリウス作『アエネーイス』についてのセルウィウスの註によれば、黄金のリンゴはアプロディーテーのものだとする説もある。
  6. ^ アポロドーロス、2巻5・11。
  7. ^ 「ヘスペラレトゥーサ」、「ヘスペラトゥーサ」や「ヘスペレストゥーサ」など多数の通り名を持つ。
  8. ^ アポロドーロス、2巻5・11。
  9. ^ このため、ヘスペリデスをポルキュスケートーの娘とする場合もある。

参考図書[編集]

関連項目[編集]