アスファルト

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精製されたアスファルト
アスファルト舗装

アスファルト(asphalt、土瀝青(どれきせい))とは、原油に含まれる炭化水素類の中で最も重質のものである。減圧蒸留装置で作られた減圧残油はそのまま製品アスファルトとなり、ストレート・アスファルトと呼ばれる。

ストレート・アスファルトの性状を改善するため、溶剤抽出(溶剤脱瀝)や空気酸化(ブローン・アスファルト製造)などの処理を行うこともある。粘度の高い液体ピッチ)であり、常温ではほとんど流動しないものが多い。道路舗装や防水剤などに使われる。

トリニダード・トバゴでは純度の高いアスファルトが天然で噴出し、湖を形成するという稀なケースが見受けられる。これは、地中の原油から揮発成分が蒸発し、アスファルト分のみが残ったものと考えられる。→(ピッチ湖

歴史[編集]

長崎市グラバー園に存在する日本最古のアスファルト道路

天然のアスファルトは瀝青(ビチューメン)と呼ばれ、古代から使用されてきた事がわかっている。紀元前3000年頃の古代エジプトでは、ミイラ防腐剤としても使用された[1]

天然アスファルトは主に接着剤として使われ、旧約聖書の『創世記』ではバベルの塔の建設にアスファルトの使用が記述されている[2]。アスファルトという単語が英語に現れたのは原油の利用が一般的になり始めた18世紀に至ってからである。このため、英語においてもギリシア語ασφαλτοσ(asphaltos)からの外来語であった。a(しない)とsphalt(落とす)という意味がある。

日本では縄文時代後期後半から晩期にかけて、北海道から日本海側の秋田県山形県新潟県などで産出した天然アスファルトを熱して石鏃(せきぞく:石の矢じり)や骨銛(こつせん:骨のモリ)など漁具の接着、破損した土器土偶の補修、漆器の下塗りなどに利用された。産出地のほか関東地方でもアスファルトの付着した遺物が出土し、黒曜石ヒスイなどとともに縄文時代の交易を示す史料になっている。これらは明治期に佐藤伝蔵による東京大学人類学教室の資料調査において発見され、佐藤初太郎によってアスファルトである事が確認された。藤森峯三は秋田県昭和町(現潟上市昭和)において縄文時代のアスファルト産出地を確認し、現在では原産地を特定する技術により広域に流通していたことが判明している[3]

日本書紀には、668年に「燃ゆる土」が越の国から天智天皇に献上されたとの記録があるが、これはアスファルトであるとも言われる。

日本で初めてアスファルト舗装が施されたのは長崎県長崎市グラバー園内の歩道である。その後東京で舗装し始めた。使用されたのは秋田県(現在の潟上市)からはるばる運ばれた天然アスファルトであった。

用途[編集]

防水剤
鉄筋コンクリート構造の建物に多い陸屋根の防水工事に用いられる。繊維を原料とした不織布・布・紙などにアスファルトを浸透させてシート状にしたアスファルトフェルト、ゴムやプラスチックをアスファルトに添加した改質アスファルトなどがある。
乳剤
道路舗装の表層(及び基層)を施工する際、防水効果を得たり、合材との接着をよくするためにまかれる褐色の液体。また舗裝の継ぎ目にも隙間からの破損等を防ぐために流し込まれる。水とアスファルトを界面活性剤を使って混合させたもので、水分が蒸発すると黒色になりアスファルト分だけが残る。表層と基層間に撒かれるものをタックコート、合材と路盤間に撒かれるものをプライムコート、継ぎ目に流し込まれるものをシールコートと呼ぶ。
道路舗装材
アスファルトを結合材として、骨材(砂利や砂、一部融解スラグ等)やフィラーを混合したアスファルト・コンクリート舗装に用いる。
アスコン(アスファルト・コンクリートの略)、合材(アスファルト混合材料の略)などと呼ばれる。
工業用アスファルト
鋼管・鉄筋などの防錆材や自動車のアンダーコート用塗料の原料、電気製品の制振シートの原料、電池などの絶縁材料や接着剤、防湿剤、顔料などにも使われる。
和式便器の埋め戻し部分には緩衝材としてアスファルトが各メーカー出荷時より塗装されている
緩衝材
和式便器(和風便器)埋め込み部の緩衝材として用いられている。和式便器はコンクリート床等に埋め込んで施工されるが、コンクリートの収縮や床のひずみなどによる陶器の破損防止の為に陶器とコンクリートが接する埋め戻し部分には緩衝材としてアスファルトが各メーカー出荷時より標準で塗装されている。

構造と成分[編集]

アスファルテンと呼ばれる高分子炭化水素が多環の炭化水素の油やレジンの中にコロイド状に分散している。 アスファルテンとは、ヘキサンなどの軽質の炭化水素に溶けない成分で縮合環の芳香族炭化水素が架橋結合して出来た高分子化合物である。 レジンと油分は軽質の炭化水素に溶ける成分であり、合わせてマルテンと呼ばれる。レジンは比較的融点が高い樹脂状物質である。

  • 油分
  • レジン - 縮合多環芳香族 (500-50,000)
  • アスファルテン - 縮合多環芳香族の層状構造 (1,000-100,000)

分類[編集]

改質方法などの違いによる分類[編集]

ストレート・アスファルト(straight asphalt)
減圧蒸留装置からの分留された減圧残油をそのまま使用したもの。アスファルトのほとんどを占める(1995年で96%)。
針入度0-300の範囲で10段階に分類されている。主に道路舗装用に使用される。
ブローン・アスファルト(blown asphalt)
ストレート・アスファルトに高温の空気を吹き込み軟化点を高くしたもの。耐候性と耐水性が高い。建築材料に使用される。
舗装用改質アスファルト
舗装道路の破損を防ぐ為にストレート・アスファルトを改質して特性を高めたもの。
舗装道路の破損とは、流動、わだち、ひび割れを指す。
添加物を加えるものとブローイングを行なうものがある。
  • 添加物を加えるもの
    • ゴム(スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム) - 改質アスファルトI型とII型の主流
    • 熱可塑性エラストマー(スチレン・イソブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブテン共重合体) - 改質アスファルトのほとんどに使用
    • 熱可塑性樹脂(エチレン、酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン) - 耐流動用材料
  • ブローイングを行なうもの
    • セミブローン・アスファルトと呼ばれ、加熱したストレート・アスファルトにブローン・アスファルトよりは軽度に高温の空気を吹き込み、軟化点を高くしたもの。

道路舗装の施工法による分類[編集]

道路舗装の施工法の違いによってアスファルトと骨材の混合方法が変わり、以下に分類される。

加熱アスファルト混合物
最も一般に使用されているアスファルト混合物で、「アスファルト・プラント」と呼ばれる加熱装置内でアスファルトと骨材を加熱・混合して熱いうちに作業を行い、冷えれば道路としての強度が得られるもの。
  • アスファルト溶解温度:140-150℃
  • 骨材加熱温度:130-190℃
  • 混合時間:45-60秒
  • 混合物の温度:145-175℃
アスファルト乳剤
アスファルトと水を乳化剤によって乳化し流動状態で骨材と常温で混合する。道路の路面として作業後、時間とともにアスファルトが水と分離すると強度が得られる。
乳化剤は以下のものが使われる。
  • カチオン系:牛脂やヤシ油の脂肪酸誘導体のアミンの塩酸または酢酸塩 pH2-5
  • アニオン系:高級アルコール硫酸塩 pH12-13
  • ノニオン系:アルキル基(ノニルフェニルなど)にエチレンオキサイドを付加したもの。中性付近となる。
カットバック・アスファルト
アスファルトと溶剤を混合して骨材と常温で混合する。道路作業後、溶剤が気化することで強度が得られる。大気汚染防止や危険防止のためにこれが使用されることは少ない[4]

語源[編集]

  • イングランドの言語: Asphalt
  • フランスの言語: Asphalte
  • ラテンの言語: Asphalton, asphaltum
  • ギリシアの言語: Asphalton, asphaltos (άσφαλτος)

出典[編集]

  1. ^ アスファルト利用の歴史,日本アスファルト協会
  2. ^ 創世記11章3節
  3. ^ “アスファルトの歴史 浮上する謎も”. NHK. (2013年11月8日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131108/k10015891731000.html 2013年11月8日閲覧。 
  4. ^ 小西誠一著 『石油のおはなし』 日本規格協会 第1版第1刷 ISBN 4-542-90229-3

関連項目[編集]

外部リンク[編集]