コークス
コークス (Koks) とは、石炭を乾留(蒸し焼き)した燃料のことである。
コークスはドイツ語 Koksで、英語ではコーク cokeである。漢字では骸炭と書く。
蒸し焼きにすることで石炭から硫黄、コールタール、ピッチなどの成分が抜ける。この乾留工程を経る事で燃焼時の発熱量が元の原料の石炭より高くなり、高温を得ることができることから蒸気機関車や鉄鋼業などを中心に、現在においても重厚長大産業には欠かせない燃料となっている。外見は石炭に似るが、多孔質であるため金属光沢は石炭に比して弱い。多孔質は、乾留(1,300℃以上)の際に石炭中の揮発分が抜けてできるものであり、結果的に炭素の純度が高まり高温度の燃焼を可能とする。
乾留時に可燃性のコークス炉ガスが得られ、このコークス炉ガスは、かつては都市ガスの主成分となっていたが、液化天然ガスを原料としたガスの普及に伴い、コークス炉ガスは、含有する一酸化炭素による中毒事故の危険性が高いため、2011年現在、日本では見られなくなっている。乾留の工程でコールタールが副産品として生じるが、これはかつてはトルエン、ベンゼンなど多くの化学製品の原料として使われていた。
コークスには石油精製から作られるものもあり、石油コークスと呼ばれる。常圧蒸留残油や減圧蒸留残油などの重質油を、コーキングという熱分解処理を行ったときの残渣である。石油コークスには、一般に石油コークスと称されるディレード・コークス (delayed coke) と、コーキング装置から採取されたそのままの生コークス (raw coke)、さらに生コークスをもう一度焼いて揮発分を除去した煆焼(かしょう)コークス (calcined coke) とがある。またコーキングの方法によってはフルード・コークス (fluid coke) と称する粉状で燃料に使用されるものも製造されている。
なお、石油コークスは用途上、硫黄分・金属分などは好ましくない。そのため原料油は低硫黄分のもので、バナジウム、ニッケルなどの重金属分の少ないことが望まれる。また、高硫黄残油ではコーキングの前処理として直接水素化脱硫装置にかけられ、脱硫および脱メタルが行われることもある。
主な用途 [編集]
製鉄においては、石炭が持つ硫黄分は鉄の品質低下を招き、コールタールやピッチは高炉の高温燃焼を妨げるため、石炭が直接高炉に投入されることはなく、高炉の燃料には必ずコークスが用いられる。石炭からコークスを乾留生成するコークス炉を併設している製鉄所が多い。
冶金材料、鋳物 ・合金鉄用燃料、カーバイド工業の炭素材、アルミニウム精錬用等の電極、そのほか研削材原料に使用される。
寒地では暖房にも使われ、中華料理の世界では、その火力が活用される。屋内の厨房ではガスに取って代わられてしまったが、屋台などでは今でもコークス燃料のコンロが使用されている。日本でもまる鍋の専門店では、スッポンを強力な火力で一気に炊きあげるために、欠かせない燃料であるといえるが、家庭での燃焼環境では大量の一酸化炭素が発生するために、換気に注意が必要である。
また1970年代頃までは、関東以北の小中学校の教室の多くでは、主にコークスを燃料としたダルマストーブが暖房器具として利用されていた。
なお、日本の自治体のごみ焼却場の多くでは、燃焼を補う為に、コークスを使用しており、近年のコークス価格高騰が、自治体の財政を圧迫している。