ヘル

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18世紀のアイスランド語写本『SÁM 66』に描かれた、バルドルの奪還に来たヘルモード(左)を迎えるヘル(右下)。

ヘル (Hel) は、北欧神話における老衰、疾病による死者の国を支配する女神エーリューズニルという館に住む。

古ノルド語のヘルはゲルマン祖語の隠すと言う意味の* khalija、また、その語の元となったインド・ヨーロッパ祖語の隠す、秘密にするという意味の*Kel-から来ている。英語の Hell地獄)と語源が共通している。

散文エッダギュルヴィたぶらかしでは、ロキ巨人アングルボダとの間にもうけたと云われ、フェンリルヨルムンガンドは彼女の兄弟であるが、ヘルだけはロキがアングルボダの心臓を食べて、その後に女巨人に変身して自らヘルを生んだという説もある。

ヘルはオーディンによって兄弟達同様に遠隔地へ追放された。オーディンはそこに九つの世界において名誉ある戦死者を除く、たとえば疾病や老衰で死んだ者達や悪人の魂を送り込み、彼女に死者を支配する役目を与えた。その地は彼女の名と同じく「ヘル」(ヘルヘイム)と呼ばれる。

北欧神話の中で唯一、死者を生者に戻すことができる人物である。そもそも彼女以外に死者の蘇生ができるのなら、ヘルモードがわざわざヘルの元に行く必要はない。神々でさえも死ねば(北欧神話に登場する神々は全知全能の存在ではないし、不老不死の存在でもない)全てヘルの元に行き、彼女の下す裁定に従わなければならない。実際にロキの陰謀で死んだアース神族のバルドルがヘルの元にいるのでこの説は間違いないようである。

絵画では(左右)半身は白く、半身が黒い姿(あるいは半身が赤、半身が青)で描かれる。これは彼女の体の半分が生きていて、もう半分が死んでいるということを意味している。

フリッグの命によりヘルモードがバルドルの蘇生をヘルに懇願したが、死者をみだりに復活させるのは九つの世界の秩序を乱すことであり、蘇生はできないと拒否するが、それでも食い下がり必死に懇願するヘルモードに九つの世界の住人すべてがバルドルのために泣いて涙を流せば蘇生させてもいい、という条件を与えた。しかし女巨人に化けたヘルの父のロキが涙を流さなかったのでバルドルが蘇ることはなかった。

ラグナロクのときは、死者の爪で造った船ナグルファルに死者を乗せ、アースガルドに攻め込んでくるというが書物によっては死者の軍勢を送り、彼女自身はヘルヘイム(ニヴルヘルともいう)に残ったままという説もある。

ラグナロクが起きた後で彼女がどうなったのかはわからないが、バルドルが復活するのは冥界からと「巫女の予言」にあるので、ラグナロクが起きた後でも冥界(あるいはその一部)が残り、ヘルや戦いに参加しなかった(女性や子供・老人などの戦闘ができないので参加できなかった)死者が残った可能性が強い。また新たな世界でもやはり悪人は存在し、死から免れることはできないと「巫女の予言」にあるので、新たな世界の死者(またはラグナロクで死んだ者たちの)女王になったという説も存在する。さらにオーディンやフレイのようにはっきりと死んだ、と書かれていないので彼女が生き残ったという根拠のひとつに挙げる研究者もいる。

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