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『ピアノの森 -The perfect world of KAI-』(ピアノのもり)は、一色まことによる青年漫画。
講談社発行ヤングマガジンアッパーズにて1998年より連載、途中休載期間・掲載誌廃刊をはさんだ後「モーニング」に移籍。不定期連載の後に長らく休載していたが、2006年12月に連載再開された。また2008年5月から隔週連載から不定期連載になった。2007年にアニメーション映画化(製作:「ピアノの森」製作委員会、制作:NAS)された。第12回(平成20年度)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞受賞。
注意:以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。
[編集] あらすじ
町外れの「ピアノの森」で育った少年カイの物語。はじめは楽譜すら読めないカイが周囲を取り巻く人々によりピアニストとしての才能を開花させていく過程を描いている。
[編集] 主な登場人物
- 一ノ瀬 海(いちのせ かい)
- 本作の主人公。通称・カイ。天才的なピアノの才能を持つ少年。幼い頃から特殊な森のピアノを弾いて育ったことにより、その素養は磨かれて行った。小学5年の折(物語開始時)にピアノの道を志す同級生・雨宮と出会う。同時期にピアノの元の持ち主である阿字野に偶然見出され、成り行きでコンクールに出場。会場を巻き込んで熱狂的な演奏を披露するが、結果的には「コンクール」の趣旨には合わずに落選してしまった。この経験によって「人前でピアノを聞かせる」ことの快感に目覚めるカイだが、森のピアノはその苛烈な環境のために劣化して行き、次いで落雷により焼失してしまった。
- 失意に暮れるカイであったが、その後行きがかりのホコ天ライブにて再度ピアノに触れ、自らの生きるべき道=ピアノと共に生きることを再確認。阿字野に弟子入りをし、ピアノを生きて行く寄る辺とすることになる。
- それから5年後、ストリップ劇場(Pクラ)での女装してのバイトや旧友たちとの再会などを経てショパン・コンクールに挑戦することになる。
- 雨宮 修平(あまみや しゅうへい)
- カイの親友であり、ライバル。ピアニストの家系に育ち、幼少から英才教育を受ける。第56回全日本ピアノコンクール・中部南地区本選で満点を取って全国大会に出場し、そこでも優勝を果たすが、カイのピアノの天賦の才を恐れた父の勧めもありオーストリアへと留学する。
- 数年後、留学中に偶然カイが演奏するピアノを聴き、自信を喪失するが、一時帰国してカイと再会することによって自らを取り戻した。
- カイが純粋に「自分のピアノ(音)」を追求するのに対し、雨宮はあくまで「他人と比較した上での自分」を価値の基準としてしまう傾向がある。その為、雨宮はカイをライバル視しているものの、当のカイからは結果的に相手にされず、そのことがまた雨宮を苛立たせることとなっているようだ。
- 阿字野 壮介(あじの そうすけ)
- かつての天才ピアニスト。交通事故によって左手の自由を失い、失意と諦観の中、カイの通う森脇小学校の音楽教師をしていた。カイの才能、そしてかつて自分が捨てた森のピアノがそれを育てていたことを知り、紆余曲折を経てカイの師となる。現在は、表舞台へと出て行くカイの後ろ盾になる為ということもあり、桐山音大ピアノ科教授に就いている。
- 修平の父・洋一郎と同世代であり、現役時代は輝かしい経歴を誇っていた。日本国内の音楽コンクールで賞を総なめにし、ショパンコンクールでは予選敗退したものの名ピアニストで指揮者でもあるジャンの支持を受け、ジャンとショパンコンクールの間に確執を生む原因を作るほどである。その演奏のために今もなお根強い崇拝者を持っている。
- 丸山 誉子(まるやま たかこ)
- ピアニストを志す少女。第56回全日本ピアノコンクール・中部南地区予選においてカイと出会う。家庭環境によるプレッシャーによるものか、あるいは生来のものなのか、重度のあがり症であり、そのことから周囲に対し必要以上に攻撃的なところがあった。しかしカイとの対話を通してそれを克服する。
- カイの演奏に感化されてからは、それを認めない「コンクール」に対し度々挑戦をする。結果には必ずしも結びつかないものの、その演奏は音楽教師・司馬の目に留まり、以後彼の師事を仰ぐことになる。
- カイとの再会を夢見ながら彼女はショパン・コンクール1次、2次予選をパスしていくが、密かに腱鞘炎を患っていたことが露見した為に本選を辞退。その直後、大分で開催された「JAPANソリスト・コンクール」会場でカイとの再会を果たし、手を直して再度カイと同じステージで戦えるようになることを決意する。
- 一ノ瀬 怜子(いちのせ れいこ)
- カイの母親。生まれた時からの森の端の住人であり、水商売で生計を立てている。15歳の時にカイを産む。父親不詳ということもあり、その事実は周囲(森の端の外の一般人)からは無責任、あるいはモラルに欠ける行為だと揶揄されているが、カイと本人の間には深い愛情と信頼関係がある。出身に関わらず純粋にカイの資質を評価する阿字野を信頼し、カイを任せることになる。
- 雨宮 奈美恵(あまみや なみえ)
- 教育熱心な修平の母親。
- 雨宮 洋一郎(あまみや よういちろう)
- 修平の父親。国内でも有名なピアニストであり、その演奏は「癒しのピアノ」と呼ばれ一般に高い評価を受けている。
- かつては同世代の阿字野の才能を恐れ、対抗心を抱いていたようだ。その弟子となったカイの才能も高く評価し、同時に息子がカイという天才に潰されてしまうことを恐れている。
- 亜理沙(ありさ)
- 森の端で働く母親の居ない少女。軽度の知的発達遅滞がありながらも、森のピアノを最後まで守ろうとした。
- ベンちゃん
- "森の端"の便利屋。ダルメシアンのてん丸と一緒に大型トラックで様々な荷物を運ぶ仕事をしている。年齢は怜子の5歳年下、カイの10歳年上。カイの実の父親という噂も森の端でささやかれていたが、真相は不明。
- ピエロのバイトの仲間たち。
- ヴィオラの蒲田、チェロの高田馬、ヴァイオリンの品川、元ピアノ担当でヴァイオリンの渋谷の四人。それぞれの名前の由来は東京都内にあるJR東日本の駅の名前。カイが、中学・高校時代にピアノの才能を育むのに大いに協力したメンバー。カイがバイトをしているのを学校にばれるのを防ぐために、暑いさなかでも、ピエロの扮装をして路上コンサートを行っていた。
- 岸上 冴(きしがみ さえ)
- 彫師。女性だと思っていたカイに想いを抱きPクラに通っていた。やがて男性と知りショックをうけながらも、カイの気持ちを知り、後に同棲することになる。
- 佐賀 武士(さが たけし)
- 浪花音楽大学学長代理。コンクールの審査員をあまり引き受けたがらない。少年時代、阿字野に憧れていた。彼自身も若いときにはピアニストを目指したが、指を痛め断念したいきさつを持つ。第56回全日本ピアノコンクール・中部南地区でカイの演奏を聞いて驚愕したが、審査基準に従い0点と採点した。しかし本選で丸山誉子の特別賞受賞を提案して、「一線を越えた音楽家」に理解を示している。ショパンコンクール予選で誉子の腱鞘炎を見抜き、指導者である司馬に本選の辞退を進言するなど、物語上の役割はとても大きい。
- カイが扮装するマリアの演奏を聞きにPクラまで車を飛ばして聞きにくるほどの、マリアファン。カイがPクラを辞めた後は必死になってマリアを探していた。
- 司馬高太郎(しば こうたろう)
- ハヤマ音楽大学附属ハヤマ音楽高等学院ピアノ科教諭。彼もまた、第56回全日本ピアノコンクール・中部南地区におけるカイの演奏に取り付かれた一人。同じようにカイを探していた誉子と出会い、彼女に音楽を教えていくことになる。
- 金平 大学(かねひら だいがく)
- 小学校時代のクラスのイジメっ子。カイとは犬猿の仲。あだ名はキンピラ。
- ジャン・ジャック・セロー
- 25年前(1970年か?)のショパン・コンクールで阿字野の演奏を唯一評価したピアニスト。事故後、心を閉ざした阿字野を慰めるため日本語を覚えた。カイとは大分で開催された「JAPANソリスト・コンクール」で指揮者として共演した。彼のチケットは、音楽界に顔が利く佐賀でさえ入手が困難なプラチナチケットとなった。マルタ・アルゲリッチをモデルにしていると思われる。
- 平田 光生(ひらた こうせい)
- ショパン・コンクール参加者。カイや雨宮と年齢は一緒。ポーランドに留学している。最年少入賞を狙っていたが、予備選であがってしまい、まともな演奏もできなかった。その後は何故かカイと一緒に行動している。
- 龐 威(パン ウェイ)
- ショパン・コンクール参加者。中国人のピアニスト。その演奏は若かりし頃の阿字野に似ている。彼の生い立ちに起因している性格は、人を傷つける性質を持つ。
- 本人は阿字野の事を知らないと雨宮に断言しているが、実際は知っているようである。
- レフ・シマノフスキ
- ショパンコンクールの参加者。ポーランド人のピアノスト。祖父はかつて偉大なピアニストだったディミトリ・シマノフスキ。ひとつ上の姉のエミリア・シマノフスカもピアニストだったが5~6年前の事故で消息不明。(父親が消息について封印している)
- 演奏前夜に度々具合が悪くなり、一時審査では二日目に演奏する予定だったが最終日に変更してもらった。
- アン・チャンウ、アン・チャンス
- ショパンコンクールの参加者。韓国人のピアニスト。双子。チャンウが兄で、チャンスが弟。二人とも二日目に演奏する予定だったが、比べて見られることを避けて、弟のチャンスは八日目に変更させてもらった。
[編集] 作中に演奏された音楽
[編集] 小学校編
- 『茶色の小瓶』
- 壮介アレンジ。最初の演奏は壮介。ただ、その演奏中にカイに2回ミスしたことを指摘される。それがカイの音楽の才能を気づかせる結果となった。その後、「森のピアノ」でカイが修平を前にまた聞かれているとは知らずに、壮介の前でも演奏された。
- 『ラジオ体操』
- カイがジャズ風にアレンジ。修平の家のピアノで演奏。ただ、ピアノを本格的に勉強していないカイの演奏は機関銃のよう。
- 『ピアノソナタ ヘ長調 K.280』
- 第56回全日本ピアノコンクール課題曲。修平がカイの前に演奏したのが最初。カイは、修平の演奏で1回でこの曲を覚えてしまう。
- 『エリーゼのために』、『運命』、『結婚行進曲』、『小犬のワルツ』
- いずれも、壮介がカイに聞かせた曲。小犬のワルツが「森のピアノ」で演奏できなかったカイにとっては、小学生時代で恐らく、一番ショッキングな楽曲。壮介によると「ショパンの曲は力で弾くのではなく柔軟性と運動能力を必要とする」らしい。
- 『交響曲第9番-新世界より-第4楽章』
- チェロの高田馬がアレンジしたユーロビート。カイは、初見でパーフェクトの演奏を路上で行い、中学生以降、カイが大きく成長する素地となったピエロのバイト入りを認めさせた曲でもある。
[編集] カイの成長期
- J.S.バッハ『イギリス組曲 第2番』、リスト『葬送曲』
- カイがPクラで演奏した楽曲。カイはこの2曲でストリップの伴奏をしていた。武士「お前はクラシックを冒瀆する気か」、修平「この曲はこんなコトのために作られたんじゃない」
- ハノン『アルベジオ』
- 指の練習曲。カイは、ピアニシモをマスターするために、練習していた。
- 『やつらに捧げるバラード』
- 大貴が作曲。40番まである。スランプに陥った修平の回復に一役買う。
- リスト『ラ・カンパネッラ』
- 5年間のカイの成長を修平が聞くという形で演奏された。カイの大きな成長に修平は圧倒される。
[編集] ショパン・コンクール前夜
- ショパン『ノクターン ハ短調 作品48-1』、『エチュード 変ト長調 作品10-5』
- ショパン・コンクール推薦オーディションで誉子が演奏した。武士もよく若いときに選択して演奏した曲目。それがゆえに、武士は誉子の変調を確信した。
- ショパン『華麗なるワルツ ヘ長調 作品34-3』
- 同棲を開始した(?)冴がカレーライスを作っているときに、自宅でカイが練習していた曲目。
- ショパン『ワルツ 変イ長調 作品69-1』
- カイのPクララスト・ステージで、武士のリクエスト曲。カイがマリアの姿で演奏した最後の曲目。
- ベートーベン『ピアノ・ソナタ 月光』
- カイが、大分で開催された「JAPANソリストコンクール」で演奏した曲目。演奏中にピアノの弦が切れるハプニングがあったが、この演奏でソリスト賞を受賞。
- ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第3番』
- 指揮はジャン。演奏はM響。カイがソリストとして演奏。
- ショパン『華麗なる大ポロネーズ』
- 演奏はカイ。リクエストしたのはセロー。福岡市内のレストランでカイが演奏した。別のところでカイの演奏を聞いていた武士は自分の車が盗難され最後まで聞けずじまい。
[編集] ショパン・コンクール
- エチュードC-dur、ほか1曲
- カイがワルシャワではじめて公に演奏した予備選の曲目。緊張して1曲目のC-durはまともに演奏できていない。しかし、インターバル中に修平が会場に来ていることに気づき、無事予備選通過。2曲目の曲名は不明だが、描かれている楽譜はOp.25-5 e-mollである。
- エチュードハ長調作品10-1、エチュードイ短調作品10-2、ノクターン第3番ロ長調作品9-3、ワルツ第8番変イ長調作品64-3、第7番嬰ハ短調作品64-2、第6番変ニ長調作品64-1、バラード第4番ヘ短調作品52、プレリュード作品28より12曲(第13番から第24番まで)
- カイが一次審査の際に演奏した曲目。
[編集] その他
高田純次が本作品のファンであり、新装版の単行本の帯にコメントを寄せている。また、「おしゃれカンケイ」でも自らファンである事を語っており、その際に本作品の小学校編の全キャラクターが描かれた一色まこと直筆のイラストを貰っている。
[編集] 映画化
2007年7月21日にアニメーション映画公開。
[編集] スタッフ
[編集] 主題歌
- 『Moonshine ~月あかり~』
[編集] 声の出演
[編集] 既刊情報
2008年5月発行の15巻が最新。9巻までアッパーズKCで発行していたが、モーニングに移籍したことにより、カバーデザインを一新し、モーニングKCで再版。10巻発売当初、この新デザインのカバーのプレゼントサービスも行われたが、現在は行っていない。
[編集] 外部リンク